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(ここはbewaad institute@kasumigasekiの過去ログ倉庫です。コメント等は仕様上受付けを停止しておりませんが、こちらではご遠慮いただければ幸いです。何かございましたら、現行サイトにお願いいたします。)
2005-01-18
■ [economy][pension]マクロ経済から公的年金を考える その4
今までの議論が混乱しているとのご指摘もあり、改めて頭を整理しつつ議論を進めたいと思います。
この連載においては、マクロ経済の観点から見た公的年金の存在意義は、社会全体の異時点間資源配分の最適化であると整理しました。つまりは、貯蓄が少なくて済み、消費がその分増えるということです。とすれば、それが実現するためには、実質価値ベースで確定給付型でなければなりません。実質価値ベースでの年金受取額が変動するようでは、その変動リスクをヘッジするための貯蓄を各人がしなければならなくなるからです。
そのためにもっとも適した方式は何かと考えますと、まず、世代レベルでの原資負担については、積立方式です。というのも、積立方式での運用はインデックス運用を前提としますから、そのインデックスに正しくインフレヘッジ資産(インフレ連動国債、株式など)を組み込んでいれば、あとは年金数理に基づき保険料を設定することで、相当程度の確度で実質価値ベースでの年金受取額を確保できるからです。他方、賦課方式では、どうしても人口変動リスクがヘッジしきれない可能性が高いと考えられます。
これは世代全体の集団での話ですが、上記の異時点間資源配分の最適化においては、高所得者層から低所得者層への所得再分配も前提としています。とすると、原資の徴収方式としては、上のパラグラフでは「保険料」と書きましたが、保険料方式よりも税方式の方が適しているように思われます(ただし、年金数理により当該世代に必要な額は計算されているので、目的税等によることとし、歳入額が変動して所要の額が徴収できなかったり、逆に過剰に徴収したりすることは望ましくなく、地方交付税交付金のようにその必要な額を社会保障基金に繰り入れる方式となるでしょう)。
・・・と言いたいところですが、若干問題なしとしません。なんといっても、この方式は実質的に高所得者層への増税ですから、その導入に対する政治的リスクはかなり高いものと言えます。しかも、この方式においては、単に低所得者層へ移転される額だけでなく、自分が将来受け取る額(それも、自分が支払ったよりも少ない額)の分まで一旦は支払う、つまりグロスの増税額は相当なものになると考えられりますから、なおさらです。木村剛氏の年金脱退権−すなわち、年金はいらないから払わない−を求める主張がそれなりに支持を集める現状を踏まえると、このリスクは軽視できません(なお、彼の主張については田中(秀)先生が、国の確定債務超過について債権放棄をするものだ、と指摘していますが、これは当たらないと思います。というのも、彼の主張は、将来させられるであろう確定債務超過の穴埋めをしない代償として、これまでに保険料を支払ったことにより将来受け取ることができる年金はあきらめるというものですから、前者が後者より大きければ(で、これに当てはまる人しか脱退権は行使しないはずです)、ネットで見れば債権放棄ではなく債務超過の拡大につながるからです)。
更に言えば、この高所得者層に対する増税=高所得者層における可処分所得の減少の影響も気になるところです。これについては定量的な議論をしないと意味がないとのご指摘が予想されますが、しかし、ある方法をとることにより、定性的に影響をこの案以下に抑えることが説明可能と考えられます。
そのある方法とは、
- 保険料方式として、所得に対して定率の保険料を徴収する。
- 最低所得者層が支払える保険料でも老後の生活に必要な年金受給額となるよう、最低所得者層の予定利率を高く設定した上で、その世代における予定利率を制約条件として、所得に応じて予定利率が下がっていくよう、所得別の予定利率を設定する(この予定利率の低下分は、実質的な課税。しかし、最高所得者層についても最低保証予定利率を設定し、少なくとも支払った額以上の年金は受け取ることができるようにする)。
- 自らの所得に応じた予定利率が世代全体の予定利率よりも低いものとなる者については、上記の実質的な課税額を支払うことにより、年金受取権を停止することができることとする。すなわち、自分で十分にインデックス運用ができ、政府にやってもらう必要がない高所得者層については、低所得者層へ移転する額のみを支払うこととし、自らの「元本」的な部分については支払わずに支払額を圧縮することができるようにする。当然ながら、実質的な課税額を支払っている状態はあくまで年金受取権を停止しているだけなので、所得額が下がってきた場合には、停止を解除して「元本」的な部分も支払うことにより、無事低所得者層としての年金受取を享受できる。なお、停止までに支払った分は、そのまま預けておいてもいいし、実質的課税額の支払いに充当してもいい。
というものです。これであれば、高所得者層は低利回りの年金を受け取るため満額支払うか、それとも所得移転分のみを支払ってあとは自助努力で対応するか、いずれか自分の好きな方を選ぶことができるため、少なくともこの世に後者が一人でもいる限りは、例外なき税方式よりも社会全体としての効用の合計量は上昇するはずです。
この制度において依然として残る問題は、運用等の結果が年金数理の前提と食い違うリスク(典型例はいわゆる逆ざや)です。次回は、この問題への対応を考えてみたいと思います。
■ [economy][game]まんきうのげゑむ:まだはまってます
「彼らは、月に青くなれと命じる事もできるさ、けど、それは起こらない・・・指揮官というものは、おまえが彼らに持たせておいてやるだけしか、権限を持たないんだ。おまえが彼らに従えば従うほど、それだけ多くの権力を、彼らはおまえにふるうのだ」・・・って、これはゲーム違いですが(笑)。さて、全然数字に従ってもらえない=権力がないのであれこれ試行錯誤しながら、何とかコンプリートできました(16年間)ので、それを達成するまでの軌跡をご紹介いたします(ゲームについてはマンキュー教授のページをご覧ください)。
| 回数 | 順位 | スコア | 任期 | 実質GDP成長率 | 失業率 | インフレ率 | 財政赤字 |
| 5回目 | 5位 | 80.6点 | 7年 | 2.52% | 5.25% | 6.87% | -1.14% |
| 6回目 | 5位 | 80.6点 | 7年 | 2.52% | 5.25% | 6.87% | 0.73% |
| 7回目 | 4位 | 88.56点 | 10年 | 3.73% | 5.94% | 4.28% | 0.5% |
| 8回目 | 5位 | 83.49点 | (記録漏れ) | 3.08% | 6.42% | 4.77% | 1.0% |
| 9回目 | 圏外 | 70.36点 | 4年 | 1.03% | 7.40% | 5.78% | 2.8% |
| 10回目 | 5位 | 80.47点 | 11年 | 2.40% | 5.89% | 5.73% | 1.45% |
| 11回目 | 5位 | 83.48点 | 15年 | 2.77% | 6.15% | 4.57% | 1.33% |
| 12回目 | 5位 | 80.67点 | 7年 | 2.53% | 6.18% | 5.45% | 0.57% |
| 13回目 | 5位 | 82.65点 | 11年 | 2.81% | 6.50% | 4.54% | 1.27% |
| 14回目 | 5位 | 82.15点 | 13年 | 2.65% | 6.36% | 4.68% | 1.27% |
| 15回目 | 圏外 | 62.59点 | 3年 | -0.35% | 8.39% | 5.43% | 2.67% |
| 16回目 | 5位 | 84.84点 | 13年 | 2.84% | 5.57% | 4.9% | -0.38% |
| 17回目 | 4位 | 88.48点 | 8年 | 3.77% | 5.09% | 5.68% | -0.5% |
| 18回目 | 4位 | 88.36点 | 15年 | 3.58% | 5.45% | 4.8% | 0.33% |
| 19回目 | 4位 | 89.18点 | 16年 | 3.71% | 5.72% | 4.24% | -0.31% |
振り返ると、開眼したのは17回目でした。この回は、それまで今ひとつ突き抜けられなかったので、「そういえばインフレ率は10%ぐらいまでならたいした問題じゃないよな」と思い、インフレ率上昇を放置していたら終わってしまいました。ところが、数字をご覧いただければわかると思いますが、実質GDP成長率平均値と失業率平均値は実はこの回がベストで、インフレ率も平均値では極端に悪くはないわけですが、最後の年はインフレ率が9.1%になってしまっていて、これが原因か、と(ちなみに同年のGDPは3.7%成長、失業率は3.9%)。つまり、1つの数字が極端に悪くなっていくトレンドが出ただけで、他の2つの数字がよかったとしても終わってしまう設計と推測できます。
というわけで、もしうまくいかない方がいらっしゃれば、次の点に気をつければそれなりにやっていける可能性が高いと思います。
- 基本はインフレギャップ・デフレギャップのコントロールです(いちご経済板ロビーvol14の805さん、アドバイスありがとうございました)。
- インタゲの設定は、webmasterはだいたい下限3%上限5%でやっていましたが、特にインフレの抑制はオーバーキルになりやすいので、金融政策のみではなく増税や財政支出削減によるインフレギャップ吸収とのポリシーミックスがいいように思います(財政政策の乗数効果はあまり大きくなく、結果が予測しやすいのです)。また、レンジを逸脱した場合でも、レンジ内に戻そうとするよりは、横ばいにもっていく程度にとどめておく方が有効な場合が多いです(次項記載の理由によります)。
- 1年で大幅に数字が動くこともありますが、どこまで自力回復するか読めないので、自力回復と政策対応の相乗効果によるオーバーシュートを防止する観点から、あまり極端な対応はしない方がいいようです。とはいっても、そうこうしているうちに終わってしまうこともあるのですが(15回目がまさにそうやってハマりました)。
- 時折スタグフレーションに出くわしますが、その際は強烈な金融引き締めと大胆な減税and/or財政拡大を指示し、後は神に祈るだけです。
- 結局、一番重要なのは、運です(笑)。
さて、これからクリントンを抜くまでやるか、さらに90点台を目指すか・・・。
■ [economy][book]中村宗悦「経済失政はなぜ繰り返すのか−メディアが伝えた昭和恐慌」
歴史学者、経済史学者、政治史学者、社会史学者らの学際的コラボレーションによる、総合的な戦前史の必要性を強く感じさせる一冊でした。昭和恐慌は明らかに大東亜戦争(満洲事変から太平洋戦争までの全体を指す呼称として他に適当な語がないので用いますが、それ以上に意味はありません)の遠因となったと思いますが、大東亜戦争が愚行だったことは明らかでも、それを当時の人間がバカだったからそんな愚行をしたのだ、と片づけてしまっては何も歴史から学べません。各時代にはどのような他の選択肢があって、でもなぜそれらの選択肢ではなくて戦争に進む道を結果的に選んでしまったのか、それを網羅的・総合的見地から分析することが我が国においてもっとも必要な(であるにもかかわらず行われていない)歴史研究だと思います。多士済々なMHETあたりならその起爆剤となるポテンシャルをもっていると思いますが、皆さんお忙しくてそこまで手が回らないでしょうか(といっても、そういう目的の会ではないので無理は言えませんが)。
■ [book]福井晴敏「終戦のローレライ I」
解説を書いている藤田香織ってのはトンでもないやつです。あんなネタばれもどき、最終巻ならともかく1巻に載せるな! 書いた本人も、そしてそれを止めなかった講談社の編集も、一体何を考えているんだか・・・。未読の方、絶対にアレを読まないように。
bewaadさんの案って、積立方式の年金加入を任意とした上で、最低限年金制度を維持できるだけの財源は税で賄うというイメージですよね。
低所得者への移転分を明確に税とするか予定利率差とするかはテクニカルな問題ですが、個人的には、積立方式に移行するならば目的税としたほうが分かりやすくて納得感があると感じますが。。。
木村剛氏の年金脱退権について、
>前者が後者より大きければ
ですが、前者は現状リスク分だけ誇大に認識(というかリスクプレミアムが乗っている)されているものと思われ、期待値としてはやっぱり国に利益かと思います。
クレジットが悪化した企業が安くなった自社債券をアンダーパーで買い戻しているだけのことで、債権者にとっては合理的、債務者にとっても利益となる取引じゃないでしょうか。
コメントありがとうございます>鰻谷さん。例の件の方は、明日か明後日ぐらいになりそうですが、こちらの手を離れたらメールします、
目的税がいいかどうかは、個人的には所得再分配を組み込む以上所得連動にしないと意味がなく、かつ、オプション(要は時価買い取りなので期待値では等価交換ですが、リスクアバースかどうかで効用が変わり得る)税金を払うオプションしかないよりはましかな、と。
そういう意味では木村理論の評価も同じのような気がしてきましたが、とりあえず直感で答えるとロジックを間違えそうな気がしてならないので(笑)、ちょっと明日まで考えてみます。
拙著をご紹介いただきありがとうございます。戦争に至るまでの過程の総合的見地からの研究,確かに必要だし,やられていませんね。しかし,「戦後」も還暦を迎える今,その必要性はさらに高まっていると。
ところで,MHETメンバーリスト,更新しなければなりません(2003年で止まっていますので)が,しばしお待ちくださいm(_ _)m
>中村先生
「失敗の本質」のようなミクロの見地からの優れた分析はあるだけに、マクロの見地からの分析も欲しいところです。今のところ、司馬遼太郎の小説をそういったものとしてありがたがるような向きがいるだけに、特にそう思います。