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2005-02-06

[economy][BOJ]実質金利ギャップの検証

以前ご紹介した「経済変動と3つのギャップ―― GDPギャップ、実質金利ギャップ、実質賃金ギャップ ――」での、実質金利ギャップは現在マイナスであり、金融政策は緩和状態にある、という主張を検証してみます。

このペーパーでは、実質金利ギャップについて、

  • 実質金利ギャップを、実質金利−均衡実質金利、と定義。(p5)
  • 均衡実質金利は潜在成長率を用いる。(p7)
  • 実質金利は、コールレート−内需デフレータの先行き1年の変化率。(p9)

という考え方で計算しています。つまり、実際に計算する際には、

実質金利ギャップ=コールレート−内需デフレータの先行き1年の変化率−潜在成長率

と定義されます。今はゼロ金利ですからコールレートはゼロですから、結局は内需デフレータの先行き1年の変化率(=期待インフレ率)と潜在成長率に依存することになります。さらにかみ砕けば、とりあえずデフレであることを前提とすると、期待インフレ率の絶対値が潜在成長率を上回れば実質金利において引き締め(例えば期待インフレ率が-4%、潜在成長率が3%であれば1%ポイントの引き締め)となり、逆であれば緩和(期待インフレ率が-1%、潜在成長率が3%であれば2%ポイントの緩和となります。ここで、ペーパーにおける実質金利ギャップの値(p8)をみますと、幅を持った推計値ではありますが、その中央値は0%台前半ぐらいとなっています。

具体的に内需デフレータの先行き1年の変化率をどの程度においているか、また、潜在成長率をどの程度においているかはわかりませんが、日銀の金融経済月報(2005年1月)では、2005年度のCPI見通しは0.1%(最終ページの「(参考)」)、潜在成長率(連鎖方式移行後ベース)は1%程度(p16)とおいていますから、CPIと内需デフレータの絶対水準の差を考えると(たとえば2004年の計数ではCPI(総合)は0.0%、内需デフレータはp8を目分量で見てだいたい-0%台後半です)、ほぼこのベースで数字をはじいているものと考えてよさそうです。

では、この計数は妥当なものかどうか。まず金利ですが、少なくとも内需デフレータのベースが1年ですから、コールレートというオーバーナイト(1日)物はあきらかに期間があっていません。では、1年物の金利として、たとえば今年1月の円liborの1年物の月中平均をとると0.093%ですから、それでもなんとか「緩和」と言えそうです。しかし、さらに長期を見れば話は変わってきます。次の表は、bloomberg提供の国債イールドカーブ(2月4日)です。

2Y3Y4Y5Y6Y7Y8Y9Y10Y15Y20Y30Y
0.10.240.390.540.720.881.081.221.331.541.912.23

金利以外の要素を固定して考えれば、だいたい5年物以上は引き締めになりますから、中長期的な投資活動は抑制されていることになります。他の要素を固定することの是非ですが、潜在成長率はそう簡単には変わらないものですから固定してしまって差し支えないでしょう。他方、内需デフレータの先行き1年見通しですが、そもそも最近のCPIの下げ止まりは、総務省統計局による平成16年CPIの概要によれば、原油価格の高騰により石油製品が値上がりしたことに加え,台風や長雨などの天候不順による生鮮野菜の高騰や前年の冷夏による米類の高騰の影響が残ったことなどにより,前年と同水準となったということですから、むしろ来年はまた物価が下落する圧力がかかる(原油価格はこのまま横ばいであればCPIにはニュートラルですし、生鮮野菜については来年が今年ほどの台風の当たり年でなければ下落圧力となります)ことを考えると、去年より今年が改善するというのは楽観的に思えます。

もっと本質的な問題としては、このペーパーの式で緊縮か緩和かを語ってよいのか、ということがあります。ペーパーでの実質金利ギャップの推移(p8)を見ると、確かにバブル期はマイナス2%〜4%、対バブル引き締め期は1%〜2%、1995から6年にかけての好況期にはマイナス2%という金利ギャップがあり、景気の動向をかなりよく説明しています。他方で、98年以降は、実質金利ギャップはきわめて狭いレンジで推移していて、ゼロ金利解除もほとんど悪影響はなかったし、一昨年から昨年にかけての大規模為替介入とそれに伴う当預残高の引き上げもたいした効果がなかったということになります。この観察は正しいのでしょうか。

というわけで、次回はこの点をさらに掘り下げてみたいと思います。


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