toppage memoranda
(ここはbewaad institute@kasumigasekiの過去ログ倉庫です。コメント等は仕様上受付けを停止しておりませんが、こちらではご遠慮いただければ幸いです。何かございましたら、現行サイトにお願いいたします。)
2005-02-11
■ [economy][BOJ]日銀券残高と長期国債保有額との関係等
先日の「トンデモ#3:整合性欠く日銀の量的緩和」について、まさくにさんから次のようなコメントをいただきました。
銀行券残高はキャップ上限まで20兆円以上ありますが、これは関係ありますか?また、長期国債の買いオペ以外にも、TB、FB、CP、手形の買いオペでも札割れが発生しており、長期資金の問題なのでしょうか?経済理論や金融政策は、ほとんど解らないのですが、私が注目したのは政府預金残高の大幅な減少で、これを解決するよい方法は分かりません。年間3兆円程度TBの買入を行い、政府預金残高を増加させるとともに、債権をゼロ償却(放棄)して銀行券残高を減少させたらダメなのでしょうか?これがよく解らないところなのです。銀行券と当座預金は連動しているから、これもどうなのかな…?と。金利の影響も?よくわかりません。
また、日銀の金融緩和につきましては、finalventの日記でも、2/10付でいくつか当サイトのテキスト等をひいた言及をいただきました。これらについて、webmasterの考え方を説明したいと思います。
まさくにさんのコメントについて
- 「銀行券残高とキャップ上限まで20兆円以上」という部分は、それが日銀の国債保有額が銀行券残高を20兆円以上上回っている(本年1月末現在で約22兆円)ことを指すとすれば、キャップはあくまで「長期」国債ベースであってFB等を含む全ての国債ではない、ということで説明が可能です(いわゆる量的緩和に踏み切った2001年3月19日の金融政策決定会合決定においては、
日本銀行当座預金を円滑に供給するうえで必要と判断される場合には、現在、月4千億円ペースで行っている長期国債の買い入れを増額する。ただし、日本銀行が保有する長期国債の残高(支配玉<現先売買を調整した実質保有分>ベース)は、銀行券発行残高を上限とする
とされています)。ちなみに、同じく本年1月末現在で、長期国債保有残高は銀行券残高を6兆円強下回っており、きちんとキャップの範囲内におさまっています(詳しくは後述)。 - 長期国債買切オペは札割れしていません。他方で、各種短期資産が軒並み札割れしているのは、日銀が受け付けるオペ条件よりも有利な運用環境があるということを意味します。日銀は基本的に自分が損をしないオペ条件で受け付けていますから、短期金利で許される値幅は非常に狭いものとなりますが(金利が10円なら元本を10円上回る額の買い入れで収支トントンになってしまいます(現在価値云々は捨象してます))、長期金利は短期金利よりも高いですから、値幅が緩く市場より有利な条件が出しやすくなっているので、札割れが起きないのです。
- 政府預金ですが、日銀の営業毎旬報告で各月末値を見る限り、ここ1年ほどはだいたい4兆円程度で安定的に推移していて、最近になって大幅に減少しているといったことはないようです。FBの発行残高が傾向的に増加している場合には、調達した資金を使うまでの間の余裕金がたまりますから政府預金は増えますが、昨年第一四半期までの大規模為替介入以降はそうした状況が発生していませんので、仕方がないのではないかと捉えています。
finalventさんのエントリについて
- 「メモ」において、
「基準価格などとっぱらって、オペ額に達するまですべての札を受け入れるのであれば、札割れなど起きるはずもないのだ。」ってことなのか。ま、そう言われればそう鴨だが、しっくりこない
とのことですが、引用いただいたwebmasterのテキストは半分日銀への当てこすりでして(笑)、上記のまさくにさん関連の3番目のように、より長期のものにオペを切り替えれば十分だと考えます。 - 「現在の札割れ状況についてどう考えるといいのか?」において、
量的緩和はリフレ派(あくまで仮にリフレ派とするだけ)の意図するところではない、とか、だとすっきりしていいのだけど。ま、それならそれで、その意図がよくわからないとも言えるが…
とのことですが、単なる量的緩和では無意味で、将来においてもそれをきちんと継続し、足りなければさらなる緩和をするというコミットメントが重要だと考えています。日銀の量的緩和は、前者はまあある程度満たしていますが、後者がまるで欠けているので、リフレ派から見ると不徹底で不十分なものだと映ります。
日銀券残高と長期国債保有額との関係
では、ここで改めて、日銀券残高と長期国債保有額の関係について見てみたいと思います。日銀の営業毎旬報告から、量的緩和開始後の関連する計数等をまとめると次の表のとおりです(直近2ヶ月は月末、それ以前は半期末・年度末。単位が付されていないものは単位兆円。単位未満四捨五入)。
| 国債保有額 A | うち長期国債 a | a/A | 発行銀行券 B | A/B | a/B | 当預残高誘導目標 | 長期国債買切額/月 | 備考 | |
| 2001-3 | 57.7 | - | - | 58.7 | 98.3% | - | 5 | 0.4 | 3/19量的緩和スタート |
| 2001-9 | 75.8 | - | - | 59.7 | 127.0% | - | 6 | 0.6 | 8/14当預・長国引上げ |
| 2002-3 | 86.7 | - | - | 67.9 | 127.7% | - | 10-15 | 1.0 | 12/19当預・長国引上げ(→0.8) 2/28長国引上げ |
| 2002-9 | 83.6 | 53.3 | 63.8% | 67.1 | 124.6% | 79.4% | 10-15 | 1.0 | |
| 2003-3 | 88.7 | 58.5 | 66.0% | 71.1 | 124.8% | 82.3% | 15-20 | 1.2 | 10/30当預・長国引上げ 3/20福井総裁体制スタート 3/25当預目標引上げ(→17-22(4月以降)) |
| 2003-9 | 91.9 | 62.4 | 67.9% | 70.1 | 131.1% | 89.0% | 27-30 | 1.2 | 4/30当預引上げ(→22-27) 5/20当預引上げ |
| 2004-3 | 100.0 | 65.6 | 65.6% | 71.4 | 140.1% | 91.9% | 30-35 | 1.2 | 10/10当預引上げ(→27-32) 1/20当預引上げ |
| 2004-9 | 94.1 | 64.0 | 68.0% | 71.5 | 131.6% | 89.5% | 30-35 | 1.2 | |
| 2004-12 | 95.0 | 65.4 | 68.8% | 78.0 | 121.8% | 83.8% | 30-35 | 1.2 | |
| 2005-1 | 95.4 | 65.9 | 69.1% | 73.2 | 130.3% | 90.0% | 30-35 | 1.2 |
これを見ると、福井総裁体制になってからは、当座預金残高の誘導目標は積極的に引き上げていますが、長期国債買切額には全く手を付けていないことがよくわかります。長期国債残高と発行銀行券残高(a/B)の関係が80%台で安定しているところを見ると、発見銀行券から逆算で長期国債買切額を決めているのではないか、裏から言い換えますと、金融緩和のためにどれだけ必要かという観点からはじき出したものではないという仮説が考えられます。以下、検証してみましょう。まずは02年11月(長期国債買切額が1.2兆円/月に引き上げられた翌月)以降の計数の推移を月次で見てみます(出所は上に同じ)。
| 長期国債 a | 発行銀行券 B | a/B | 備考 | |
| 2002-11 | 55.7 | 68.1 | 81.8% | |
| 2002-12 | 56.1 | 75.5 | 74.3% | |
| 2003-1 | 57.2 | 69.4 | 82.4% | |
| 2003-2 | 58.4 | 69.9 | 83.5% | |
| 2003-3 | 58.5 | 71.1 | 82.3% | 当預引上げ(4/1以降) |
| 2003-4 | 59.6 | 71.4 | 83.5% | 当預引上げ(5/1以降) |
| 2003-5 | 60.6 | 70.3 | 86.2% | 当預引上げ(5/21以降) |
| 2003-6 | 60.4 | 71.2 | 84.8% | |
| 2003-7 | 61.6 | 70.8 | 87.0% | |
| 2003-8 | 62.5 | 70.7 | 88.4% | |
| 2003-9 | 62.4 | 70.1 | 89.0% | |
| 2003-10 | 64.3 | 70.6 | 91.1% | 当預引上げ(10/11以降) |
| 2003-11 | 65.4 | 71.0 | 92.1% | |
| 2003-12 | 64.4 | 76.9 | 83.7% | |
| 2004-1 | 65.6 | 71.5 | 91.7% | 当預引上げ(1/21以降) |
| 2004-2 | 66.6 | 71.4 | 93.3% | |
| 2004-3 | 65.6 | 71.4 | 91.9% | |
| 2004-4 | 66.3 | 73.2 | 90.6% | |
| 2004-5 | 67.2 | 71.1 | 94.5% | |
| 2004-6 | 65.7 | 71.5 | 91.9% | |
| 2004-7 | 66.6 | 71.7 | 92.9% | |
| 2004-8 | 67.3 | 71.6 | 94.0% | |
| 2004-9 | 64.0 | 71.5 | 89.5% | |
| 2004-10 | 64.9 | 71.8 | 90.4% | |
| 2004-11 | 65.4 | 72.6 | 90.1% | |
| 2004-12 | 65.4 | 78.0 | 83.8% | |
| 2005-1 | 65.9 | 73.2 | 90.0% |
とりあえず、両者について近似曲線をとってみますと、次の式になります。
- 長期国債
- y = 0.3919x + 57.61 (R-squared = 0.7622)
- 発行銀行券
- y = 0.1128x + 70.18 (R-squared = 0.1778)
ただ、これらには次のような撹乱要素が混じっています。
- 長期国債は、2003年前半の3ヶ月連続当座預金残高誘導目標引上げ後、対発行銀行券比率約90%程度で高止まっている。
- 発行銀行券は各暦年末に季節要因としての増加が見られる。
以上を考慮して、長期国債については2003-6以前、2003-07以降に期間をわけるとともに、発行銀行券について各年の12月はその前の11月・その後の1月の平均値に置き換えてみると次のようになります。
- 長期国債
- ○2003-6まで
y = 0.7464x + 54.954 (R-squared = 0.965)
○2003-7以降
y = 0.1647x + 63.463 (R-squared = 0.3389) - 発行銀行券
- y = 0.1249x + 69.362(R-squared = 0.6872)
つまり、2003年上半期までの「前期」では、毎月6,000億円以上のペースで長期国債保有残高と発行銀行券残高の格差が縮小していましたが、2003年下半期からの「後期」では、その格差の縮小ペースは毎月約400億円にまで落ち込んでいます。では、この「後期」におけるトレンドからの乖離を調べてみましょう(2003-7以降でサンプル数19、単位兆円)。
| 長期国債 a | 発行銀行券 B | B-a | |
| 乖離の平均 | -0.0005 | 0.039 | 6.46(最小値:3.9(2004-5)) |
| 標準偏差(σ) | 1.29 | 0.54 | 1.37 |
とりあえずこれらのサンプルが正規分布していると仮定すると、B-aの平均値6.46はその標準偏差1.37の4.7倍(最小値3.9をとっても2.8倍)、さらに安全を見てaの標準偏差とBの標準偏差の和1.83との比率を見ても3.5倍ですから、99%以上の確率でB-aは正の値をとる=長期国債保有残高は発行銀行券残高を下回ることになります。
また、既述のとおりトレンドとしては毎月約400億円ずつしか格差は縮まらないので、1年でも4,800億円、10年以上にわたりトレンドとしては現行のキャップを維持できるわけです(上記のような毎月のばらつきにより一時的にキャップを突き破る可能性は次第に大きくなりますが)。
#念のため申し上げれば、毎月1.2兆買っているはずなのに、ストックを見ると毎月0.16兆しか増えないのは、償還等による減少分があるからです。買切オペの額は、単にそれだけグロスで買うということしか意味していません。
というわけで、1.2兆という月間買い切り額は、絶妙な設定であることがわかります。多分、将来の償還額を計算してキャップが維持可能だと判断して設定したのでしょうし(また、だからこそそれ以上は引き上げられないのでしょうし)、かつ、買切オペをやる際の銘柄選定でも、それがいつ償還を迎えるか等をきちんと計算して額をはじいているのでしょう。一見金融緩和に(相対的には)積極的である福井総裁体制になって、何回か当座預金残高誘導目標を引き上げたにもかかわらず、長期国債買切オペ額は一回たりとも引き上げていない(つまり、この引き上げは速水総裁時代にしかなされていない)理由は、このような根拠に基づくものではないかと思われます。
さて、そもそも日銀の金融調節(オペレーション)とはどういうものなのかは一通り説明
ふざけたタイトルにしたが、話は量的緩和政策と実質的な増税論のことだ。が、さして私が詳しいわけでもないので、簡単に雑記しておくだけのことになる。 話のきっかけは、この手の話題の毎度毎度の毎日新聞社説"量的緩和策 金融政策は自然体が一番だ"
水着での仕事を断るほどガードのかたい彼女が淫らな裸を初披露!! 多くの映画に出演
詳しい解説を有難うございます。なるほど、と思うのですが、私の記事にも書きましたが、政府預金残高は2001年の22.1兆円から、現在約4.4兆円と各年度ごとに減少しています。2003年末には13兆円あったのですが、季節的要因なのかどうかは分りません。
長期国債の毎月買入額は、2001年7月まで4千億円、8月から6千、2002年1月8千、3月から1兆円、11月から1.2兆円と推移しており、上記説明とぴたり符号します。すごい分析です!(でも答えをあらかじめ知ってると、自分がズルした気になってしまいます、泣)。
>まさくにさん
2003年度末に13兆円あったのにその後4兆に、というのは2001年にも当てはまる話でして、22.1兆というのは3月末だと思いますが、その後程なく10兆円台前半まで落ち込んでいます。つまり、年度末(3月末)に向かってつみあがり、その後年度始めに支払いがかさんで落ち込んでいく、というのが政府預金のパターンです(他の年もそうなっています)。
政府「預金」といっても無利子なので、残高は少ないに越したことありません(国債等で運用すれば利子がつきますから)。FBの発行実績(http://www.mof.go.jp/jouhou/kokusai/fb/fb.htm)を見てもらえればわかりますが、2001年前半には金が余っているのにあえてFBを発行している、つまり不必要なお金を利子を払って調達した上で、無利子の口座に寝かせているというもったいない状況だったわけです。
ご丁寧な説明を有難うございます。デフレと分っていて、何故金融政策担当者はこれを解決する方法を採らないんでしょう?経済学理論の激突ということなんでしょうかね。長年この現象が続くのに解決されないのは、政策が悪いのか理論が間違っているのか、よく解りません。ありがとうございました。
いろいろ勉強になりましが、何故か理解しにくいのです。いったい何を基準にいくらまで銀行券を発行できるのですか?教えていただけたら幸甚です。