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2005-02-20
■ [media]事実関係の整理(続・あびる優の窃盗告白@カミングダウト その1)
サーチエンジンで2/17のエントリにたどり着いた方がかなりの数にのぼるようです。単に関連する条文を羅列しただけでほとんど中身がないので、そんなに多くの方々の目にとまったとあらば、もう少し書いてみたいと思います。
昨日(2/19)、所属事務所のホリプロから謝罪文の発表があったとのこと。yahooニュースではpdfファイルでホリプロのサイトにアップされている旨の記載があったものの、ざっと探したところ見当たらないので、各社報道(朝日新聞、日刊スポーツ、サンケイスポーツ、スポーツニッポン、デイリースポーツ)からその概要を抜き出すと以下のような内容でした。
#天漢日乗の2/19付エントリに謝罪文が転載されていますが、今のところ裏がとれないので、紹介にとどめます。
- 事件についてのあびる優自身の証言は、「小学5年生のころ、自宅近所の菓子店で万引した経験があり、番組を盛り上げようと自分の判断でフィクションを交え、誇張した話として披露した」というもの。万引きしたのは1回だけ。
- これに対するホリプロの見解は、「誠に遺憾で、深くおわびする」「万引は犯罪であり、決して許されない。番組で題材にすること自体に問題認識の欠如があった」というもの。
- その結果、本人は当面芸能活動を自粛、マネージャーは「処分」。
#ネットには掲載されていませんでしたが、東京中日スポーツ(「★あびる優の「万引事件」について、ホリプロ釈明の詳細」(@★てれびまにあ。2/18付)に転載)では、万引きした菓子の例はラムネであること、先の紹介したあびる自身のコメントを受け事務所は集団で段ボールごと商品を盗んだ事実はないとしていること、番組の打ち合わせ・収録にはマネージャーが付き添っていたこと等が報道されたとのこと。
カミングダウトでの告白と異なるのは集団ではなく単独犯であるとしたこと、継続的ではなく1回のみであるとしたこと、盗んだ量を単品であるとしたことであり、告白では明らかでなかった点としては犯行時は小学5年生だったとしたことです。
これらにより法律的な意味づけは相当程度変わってきます。詳しくは次のエントリで分析しますが、さすがに今度はきちんと事前に詰めて公表したようでツボを押さえてきたように思います(当然弁護士にも相談したのでしょうし)。
#再度ビデオを見直してみたのですが、確かにダウト臭くはあり、トゥルーであることに違和感があるのは事実です。犯行の経緯等の説明が妙にたどたどしいといいますか、思いつきっぽい雰囲気が漂っていましたようには思いました。
■ [media][law]キーワードは「小学5年生」「単独」「1回限り」(続・あびる優の窃盗告白@カミングダウト その2)
というわけで引き続き、このエントリでは上記を前提に法律の適用関係を検討してみます。
#言うまでもありませんが、webmasterは弁護士ではないですし、ましてこのエントリも裁判官が裁判所で判決として書くものでもありませんから、単に条文を機械的に見ていけばどのような結論が導き出されるか、という以上のものではありません。
最大のポイントは犯行が小学5年生のときに行われたものであるということです。刑法第41条は、「十四歳に満たない者の行為は、罰しない。」と定めていますので、これにより刑法犯ではなくなります(病気等で年齢と学年の関係が変わっていれば話は別ですが)。この場合、少年法に基づく保護観察等の処分を受けることになりますが、これらは刑法等に基づく「罪」に対する「(刑)罰」ではありません。
さらに言えば、最高刑が10年以上の有期刑である罪(窃盗罪など)の公訴時効は7年(刑訴第250条)ですから、現在18歳のあびる優が年齢どおりの学年であれば小学5年生時は11歳で18-11=7で公訴時効が成立していますから、少年法に基づく処分も受けないということになります。
#条項のみを紹介している条文については、2/17のエントリを参照してください(以下も同じです)。なお、刑=刑法、刑訴=刑事訴訟法、少=少年法、盗=昭和5年法律第9号(「盗犯等ノ防止及処分ニ関スル法律」)という略称を用います。
この年齢要件をとりあえず捨象するとしても、次のような違いが出てきます。
| カミングダウトでの告白 | 謝罪文での証言 | |
| 該当する罪 | 窃盗罪(刑第235条) 住居侵入罪(刑第130条) | 窃盗罪(刑第235条) |
| あり得る懲役期間(刑) | 3年以上15年以下 | 10年以下 |
| あり得る懲役期間(少) | 3年以上5年以下の短期の限度、10年以下の長期の限度の範囲内の不定期 | 左に同じ3年以上の不定期または3年未満の定期 |
解説をしますと、まず「カミングダウト」では倉庫から盗み出していますから住居侵入もしてますが、「謝罪文」では万引きは店内に入ることそのものは違法ではないので、ひとつ罪が減っています。
#番組中でそう言っていたから仕方がないとはいえますが、いずれにしたって窃盗ではあっても強盗ではありません。「暴行又は脅迫を用いて他人の財物を強取」するのが強盗ですから(刑第236条第1項)。
それが懲役期間に影響するかといえば、実はしないというのが答えです。刑法第54条第1項は、「一個の行為が2個以上の罪名に触れ、又は犯罪の手段若しくは結果である行為が他の罪名に触れるときは、その最も重い刑により処断する。」と定めており、住居侵入は懲役3年が上限ですから(刑第130条)、「最も重い刑」である窃盗罪の懲役10年(上限)に吸収されるのがその理由です。
#仲間に盗品を配ったという行為についても、自分が盗まなかったときに人に売り渡す手助けなどをしていると罪となりますが、その刑も10年が最長ですので(刑第256条第2項)、仮にそれに該当するとしても結論は変わりません。思いっきり雑談ですが、刑法が現代語化されて、「贓物牙保」という言葉もなくなってしまったのですね・・・。
では懲役期間が「カミングダウト」と「謝罪文」で異なるのはなぜかといいますと、「集団」で「継続的」にやっていたかどうかです。こうした場合には、より悪質だということで3年以上の有期刑が適用されることとなり(盗第2条)、有期刑は最高15年(刑第12条第1項(犯行当時)。今は法改正がなされ、最高20年になっています)ですから、上の整理のとおりとなるわけです。
ただし、少年法の世界においては有期刑の長期限度は最高10年ですから(少第52条第2項)、結局のところは上限についてはどちらでも換わらないことになります。
#民事の話については、おそらく加害者があびる優であると知ったのは今回の放送によるでしょうから、時効にはかからず損害賠償請求が可能ですが、「謝罪文」が正しいとすればお菓子を一回万引きしただけですから、事実上請求は無理ということになります。
些細なことですが,倉庫なので住居ではなく建造物侵入でしょうね。あと,少年審判は刑事手続ではないので,公訴時効は無関係ではないでしょうか。
まあ、小学生が万引きを1回しただけなら、常識的に考えて、お灸を据えて終わりでしょうね。仮に、家裁に言っても、審判不開始でしょう。
>大理少卿
コメントありがとうございます。見出しに「住居侵入等」とあるうちの「等」ですね。ちなみに少年審判ですが、公訴時効が経過した後であっても審判は開始できるのでしょうか? 審判であっても公訴時効経過後は無理ではないかと思って書いたのですが・・・。
>大理少卿さん
上のコメントでは呼び捨てにしてしまい大変失礼いたしました。ごめんなさい。
>ononomiyaさん
実際にはそうなるであろうことにまったく異論はありません。ちなみに、それをどう構成するかで大いに議論が紛糾するのが刑法学だ、という偏見をもってます(笑。念頭にあるのはいわゆる可罰的違法性をめぐる議論などです)。
理屈の上では審判の対象にすることも可能だと思います。たとえ公訴時効が成立しても,触法行為そのものがなかったことになるわけではありませんし,よく言われるように少年審判は保護が目的で刑罰の代替ではなく,公訴提起が不可能だからといって保護処分の必要性がなくなるわけでもありませんので。
>大理少卿さん
なるほど、そういう整理は考えられますね。22日のエントリで議論を敷衍してみたのですが、罰則の適用については公訴時効があっても、審判そのものは処分の必要に着目して判断されるということですね。ありがとうございました。