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(ここはbewaad institute@kasumigasekiの過去ログ倉庫です。コメント等は仕様上受付けを停止しておりませんが、こちらではご遠慮いただければ幸いです。何かございましたら、現行サイトにお願いいたします。)
2005-03-04
■ [government]官僚人事の副作用
かつてwebmaster宛にマシナリさんという地方公務員の方から、当サイトでの霞が関の人事制度についての議論に欠けている点があるとのメールをいただいておりまして、この場でお答えさせていただくと返信しておきながら今日に至っているわけですが、ちょうど一昨日・昨日と関係のある話題を取り扱ったこともあり、いただいたメールをもとに考えたことを明らかにしたいと思います。
メールでのご指摘の概要は次のとおりです(非常に長文のメールをいただきましたので、webmasterの責任でまとめました)。
- 天下り、及びその背景にある早期退職を論ずるには、同期横並び昇進・年次逆転なしという慣行を無視すべきではないのではないか。この慣行により、官僚のモチベーションは出世のみに偏っているのではないか。
- 天下り廃止の副作用としてwebmasterが掲げる「老害」とは何か。また、そうした副作用があったとして、何らかの対策がたてられないのか。対策があるのであれば、そうした対策を講じた上で天下りを廃止することができるのではないか。
- 官僚人事を官僚の世界だけで語るのでは不十分。例えば、官僚が地方公共団体の管理職に大量に出向し、他方で地方公共団体職員が中央に出向する場合にはほとんどは事務員として扱われるので、官僚は地方公務員が管理職として必要な経験を積むことができるポストを横取りしている、という問題があるが、これは官僚の世界の中だけを見てデメリットがないから大丈夫だとされるべきものではない。
順序は逆になりますがエントリの構成上第3点からまずお答えします。マシナリさんは「あの」主意書への答弁を引きつつ、旧自治省や警察庁の人間の出向がいかに地方公共団体において重きをなしているかを主張されています。webmasterも、そうした出向が地方公務員のキャリアパスをゆがめ、モチベーションを下げているのは事実だと思います。が、地方公共団体にとっても必要性や利益がある(地方公務員一般にとってはそうではないことは認めます)からこそ出向が受け入れられていることもまた事実ではないでしょうか。
わかりやすいのは警察です。というのも、警察の現場は各都道府県警ですが、現場の警察官が犯罪者を取り締まる基準となる法律そのものは中央政府が決定するので、中央政府において法律の解釈を整理し、各都道府県警にそれを伝えるという機能は必ず必要になります。当然ながら、まちまちに各省庁がそれをやるよりは、どこかで一括対応した方が明らかに効率的ですから、警察全体を代表する中央政府部門、現在の霞が関であれば警察庁(及びその上位組織である国家公安委員会)には存在意義がありますし、各都道府県警に対する指揮機能もまた必要でしょう。
#また広域捜査も、各都道府県警の自主性に完全に任せるよりは、中央のある程度の関与があった方が円滑に進むのではないかと。
わかりやすい(?)例を挙げてみます。内閣提出法案や政令案を策定する際には法令協議といって、全省庁(宮内庁は省略することが多いですが)にそれらの案を配布して質問や意見を受け付けるのですが、罰則に関する規定を含む場合、警察庁から多くの質問を受け取るケースがよくあります。というのも、例えば○○をしたら3年以上の懲役、という規定がある場合、実際に○○を行った人間を逮捕するのは都道府県警ですから、その○○とは何かということをそれらに属する警察官に周知徹底しなければならず、その過程ではこれは○○に該当するのかとか、そういった質問が数多く出てくるでしょうから、警察庁はそれに答える必要があり、いろいろと確認してくるわけです。その答えに基づき、警察庁は各都道府県警にあーだこーだ指示を出して全国的な法施行に備えることになります。
こういった上意下達の性質がある以上、警察において中央の警察庁から地方の都道府県警にご指摘のような形で人が出て行くのは、もちろん程度において適切かどうかの議論はあるにせよ、致し方ないのではないでしょうか。
旧自治省はこれほど明確な関係がないので話はそう簡単ではありませんが、少なくとも霞が関において地方公共団体の利害を代弁するのは旧自治省しかいないのは事実です。典型例は昨年の三位一体騒動ですが、もちろん旧自治省と地方公共団体(とひとくくりにするのも乱暴ではありますが)の間にもいろいろと争いはあるにせよ、「中央」が全体として地方公共団体と対立することがあり得る以上は、地方公共団体としては旧自治省がそれなり力を有し、事が起こったときにはねばり強くがんばってくれる存在でないと困るでしょう。単に地方自治法等を所管するのみならず、実際に地方公共団体に多くの職員を出向させていることが旧自治省の力の源泉でもあるわけですから、地方公共団体自身のそろばん勘定として、なかなかもう旧自治省からの出向はいりません、独自に勝手にやりますというのはなかなか難しいのではないかと思います。
#時として首長が選挙により交代して官僚の出向を断るというケースが見られるように、勝手にやるよという決断は法律上は何の問題もなくできるのですから。
続いて第1点と第2点です。まず「老害」ですが、なかなか人が辞めないこと、とりわけ上位の職種にある者が公的/非公的な職権を用いてその座に居座ることをイメージしてこの言葉を使いました。第1点と第2点をまとめていることにも相通じるのですが、この手の老害を含む出世欲を断ち切る策として、同期横並び昇進・年次逆転なしという人事管理が行われているものとwebmasterは理解しています。どんなに有能であっても/がんばってもいきなりの出世はありませんし、長期政権(極端な例を出せばフーバー元FBI長官)もありません。だからこうした運用により出世欲がかき立てられているのではなく、むしろ抑制されていると。
この人事制度のメリットは、出世やポストへの執着に基づく内部抗争が非常に起こりづらくなるということです。陥りがちな権力者の罠として、自らの座を脅かす有能なナンバーツーを排除するというものがありますが、官僚の場合、そんなことをしても無意味で、例えば事務次官になったときにどれだけ有能な部下を排除したところで、1年(まれに2年)たてば必ず後任に席を譲らなければなりません。逆にナンバーツーから見ても、今抗争をしかけて追い落とさなくとも、来年まで待てばその座に就くことができるのですから、そんなことをしようという気にはなりづらいと言えます。
逆にデメリットは何かと考えますと、非常に無駄が多いと考えられます。ほぼ毎年組織のトップにふさわしい(と考えられている)人間を外部に放出しているわけですから。見方を変えれば、ほぼ毎年そうした人材を輩出できるからこそ、そうした無駄が許されてきたのだとも言えるのかもしれません。
その意味では、このままでは霞が関の人材のレベルが下がるよ、とwebmasterは言ってきましたが、今はやはり過剰に人材を集めているのであって、レベルが下がる=他の分野に人材が回っていくことは望ましいことなのかもしれません。毎年裁定でも誰か1人は事務次官にふさわしいレベルの人間が入ってくるという確率が下がることに応じて、事務次官に就任したら民間企業の社長のように4年から6年程度は務めるようにし、以下同様に局長や課長も在任期間を延長して、局長や課長になれる人数を(人材のレベルの落ち込みにあわせて)減らしていけば、要すれば今は無駄に放置している能力を効率よく活用することになりますから、人材のレベルが落ちるほどには組織の能力は落ちないはずです。
この場合、その選ばれた人間の権威・権力は相対的に高まりますし、それに端を発する様々な摩擦や軋轢も避けがたいでしょうし、癒着やイエスマンの増加といったマイナスも生じるとは思います(あと、現に組織にいる人間としては、バカな上司の下に配属されたときに、1年我慢したところでおさらばできるとは限らなくなるのは嫌です(笑))が、人材のレベルが下がり、能力の無駄遣いが許されなくなる以上、そうした普通の組織になっていかざるを得ないでしょう。それがどのくらい先のことなのかはわかりませんが、そうした状態になるまでの間は、霞が関から人材が流出し、学生の間での人気が落ちたところで、下手に対策を講じない方がいいのかもしれません。そうした状態になってもなお対策を講じないのは問題でしょうけれども。
■ [media][law]NTVが警察に「おわび」(続^7・あびる優の窃盗告白@カミングダウト)
日刊スポーツより。
日本テレビの番組「カミングダウト」で女性タレント(18)の窃盗行為をクイズの題材にした問題で、同局は3日、警視庁に経緯の報告とおわびをした。警視庁は、青少年の健全育成に協力を求める要請文を同局に出したという。
日本テレビ総合広報部は「これを機に戒めの気持ちを新たにし、より良い番組づくりに一層努力する」としている。
他方で、CXは番組を差し替えていなかったりもするわけですけれども、素朴な疑問なのですが、テレビ局にとって、出演者が何らかの犯罪を犯した場合、絶対に差し替えなきゃいけないと思う基準はあるのかないのか、あるとすればそれはどの程度のものなのでしょうか? さすがに殺人事件ぐらいになると、いくら金をかけた番組でも放送は取りやめるのではないかと思うのですが、これもまた裁量に任されていて明確なルールはないのかな? 判決確定までは推定無罪だから取りやめないという考えもありますが、視聴者の反発が怖くてそこまで理屈で割り切れるものではないようにも思いますし。
#このエントリは、以下の一連のエントリの続編です。
- あびる優の窃盗告白@カミングダウト
- 事実関係の整理(続・あびる優の窃盗告白@カミングダウト その1)
- キーワードは「小学5年生」「単独」「1回限り」(続・あびる優の窃盗告白@カミングダウト その2)
- 本日のテレビ番組その2:カミングダウト(NTV, 2355-)(続々・あびる優の窃盗告白@カミングダウト)
- 火曜日のテレビ番組その2:カミングダウト(NTV, 2355-)(続々々・あびる優の窃盗告白@カミングダウト)
- あびる優に警察が事情聴取(続^4・あびる優の窃盗告白@カミングダウト)
- 落ち穂拾い(続^5・あびる優の窃盗告白@カミングダウト)
- 万引きで幕引き?(続^6・あびる優の窃盗告白@カミングダウト)
名言密集地さんからトラックバックをいただきました。(*^^)/。・:*:・゜★,。・:*:・゜☆アリガトー!産業再生機構の依頼でカネボウ社長に送り込まれた小城武彦氏の言葉。それがこの書き込みのタイトルです。たぶん、システムを維持管理する仕事と、システムの中で...
一般人には官僚が優秀であることが、国にとってどれだけ大事かがわかりにくいので、そのあたりをよく説明くださると幸いです。
日テレはおわびをする相手を間違っていると思う。
おわびをする相手は視聴者だろ(゜Д゜)ゴルァ!!
日テレHP(http://www.ntv.co.jp/)も
カミングダウトHP(http://www.ntv.co.jp/doubt/index.html)も
なんにも出していないし。
マスコミがどっち向いて仕事してるかよく分かる例。
>一国民さん
おわかりいただけるよう努めたいと思いますが、わかっていただいた結果、やっぱり大事ではないという結論にならないといいなぁ(笑)と思います。
>しきのぴぃちゃんさん
よしあしはともかく、以前の謝罪文の公表で彼らの頭の中では謝罪済みという整理になっているのではないかと思いますです。
地方自治体が旧自治省からあれだけ出向者を受け入れている最大の理由は、地方交付税と地方債の起債許可権限を握られている、すなわちお金を握られているからではないでしょうか(各県の財政課長や地方課長に旧自治省から多く出向していることからもそれが感じられます)。「持ちつ持たれつ」的な感覚とはだいぶ異なる気がします。補助金うんぬんよりも、旧自治省の地方債の許可権限の廃止(自治体が自由に起債できるようにする)、地方交付税制度の改革(特別交付金等旧自治省の裁量が強く働く部分を極力減らす)により旧自治省の自治体「支配」をなくすことこそが真の「地方分権」につながるような気がします。やっぱり旧自治省が各地方自治体への出向ポストを大前提として本省定員におさまりきらない人数を毎年当たり前のように採用している現状はおかしいですよ。
>ぼよよんさん
ご指摘はごもっともなのですが、交付税的な地域間格差平準化のための仕組みがある限り、その仕組みの運営者は存在するわけで、例えばご指摘の措置を講じたとしても、それが公営公庫の進化した形なのか、それとも地方六団体が新たに経団連事務局のような組織を立ち上げるのか、形式はどうであれそういう人々を根絶はできないのではないでしょうか。もちろんそうした平準化をやめれば話は別ですが、そうした意見は国会でも地方六団体でも多数派にはならないのではないかと。
以上を前提とすれば、そうした組織が中央の側に立つのか地方の側に立つのかは大きな話で、メリットがあるわけではなかったとしても、デメリットの防止策として、地方にとってやはりやらないよりはやった方がいいとそろばんをはじくのではないでしょうか。