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(ここはbewaad institute@kasumigasekiの過去ログ倉庫です。コメント等は仕様上受付けを停止しておりませんが、こちらではご遠慮いただければ幸いです。何かございましたら、現行サイトにお願いいたします。)

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2005-03-18

[law]人権擁護法反対論批判 リジョインダー編(その2)

最初に3/13付エントリにつきまして、Googleキャッシュから復元ができたのですが、メールにて3名の方からデータを送付していただきました。1名はプライベートでの友人なのでともかく(笑)、2名からは一面識もないにもかかわらずwebmasterの希望にお応えいただきまして、本当に感謝しております。ありがとうございました。

法務省批判

以下はリジョインダーではありませんが、電突の際の法務省見解があまりにもwebmasterの解釈と異なり、間違ったことを行ってしまったのかなぁと思いつつもロジックとしては法務省が誤っているのでは、と悩んでいたところ、自民党法務部会の際の法務省見解では概ねwebmasterの解釈と適合していたので、以下法務省(の電話で示された見解)を批判します。

なお、それら法務省見解について、本当に法務省がそのような説明をしたのかどうかについては疑義がないわけではありませんが、それを判定する材料をwebmasterは持っていないので、とりあえず「法務省見解」が間違っていた場合は、聞き間違いではなく説明が間違っていたものとして以下取り扱います。

具体的な指摘に入ります。論点は人権擁護委員に関するもので、ひとつは外国人就任の可否、もうひとつは立入調査権です。とりあえず一覧表にすると次のとおりです(「wm解釈」はこれまでに表明したwebmasterの解釈、「電話見解」は電突の際の法務省見解、「部会見解」は自民党法務部会の際の法務省見解を指します)。

論点wm解釈電話見解部会見解
外国人の人権委員・人権擁護委員への就任の可否条文上はどちらも拒否されていないが、人権委員は「当然の法理」により不可能「先週の法案では、外国人でもなれる」「外国人は中央の委員にはしない」
人権擁護委員による立入検査の可否人権擁護委員は不可能「現在、その件については議論中だが、先週時点の法案だと令状なしでの捜査は可能だったと思う」「立ち入り調査をする権限などは与えられない」

補足的に解説いたしますと、まず外国人の人権委員・人権擁護委員への就任の可否は、「電話見解」ではなく「部会見解」が正しいはずです。行政府内での法令解釈は究極的には内閣法制局の権限ですから、「法務」省とはいえそれを一存でひっくり返すことはできません。

次に人権擁護委員による立入検査の可否ですが、これも「電話見解」ではなく「部会見解」が正しいはずです。条文を見ると、一般調査(立入検査は含みません)が可能なのは人権委員会と「委員、事務局の職員又は人権擁護委員」ですが(法案第41条第2項)、特別調査(立入検査を含みます)が可能なのは人権委員会と「委員又は事務局の職員」ですから(法案第44条第2項)、人権擁護委員には立入検査権は認められていないとしか解せません。

人権擁護法案をめぐる主要な、かつセンシティブな論点の一つなのですから、このようなミスリードな説明であればしない方がましです。担当が忙しくてつかまらず、よく知らない職員が電話対応せざるを得なかったんだろうなと拝察します。同情はしますが、結果として嘘を言っちゃあだめでしょう。法務省は要反省かと。

#最近では電話での問い合わせにもノーコメントらしいですが、これが影響したのかな?

「bewaadさんの人権擁護法反対論批判」(@圏外からのひとこと3/16付)

上記は西尾先生のblogにリンクを張っていますが、「電話見解」自体をwebmasterが知ったのはこのessaさんのテキストを経由してのことでした。上記エントリでは、当ページの一連のエントリ中「後編下」を踏まえたご疑問・ご意見がまとめられていますので、それらについて触れたいと思います。

私としては、基本的には納得したのですが、わからないのが、古賀誠氏が熱心に推進しているのは何故かといういうことです。郵政民営化問題で党内に敵を増やしたくない時期ではないかと思うのですが、bewaadさんがおっしゃるような意味しかない法案であるとしたら、「賛成論はわずか」という状況の中で、どうしてここまでがんばるのか。そこが理解できません。

本筋の議論ではありませんが、ある意味人権擁護法案をめぐる議論を錯綜させている一因でもありますので、あえて取り上げました。あくまでwebmasterの個人的憶測ですが、古賀誠議員が熱心に推進する理由は野中広務前議員への友愛が最大のものではないでしょうか。魚住昭「野中広務/差別と権力」で公知の事実となったように野中前議員はいわゆる部落出身者で、その政治人生は部落問題を抜きにしては語れません。その彼が引退した今、古賀議員にとってこの問題は、野中前議員から託された政治的遺言のような重みがあるのではないかと。

自分が実現したいと思う政策であれば、自らの判断で妥協もできるでしょうけれど、人から受け継いだものであるからこそ妥協もできません。今回結局成立を見ず、その際に野中前議員から「古賀君、君があんなにがんばってくれただけで僕は十分だ。もうこの問題ではなく、君自身の政策を追求してほしい」と言われたところで(というより言われればむしろ、かな?)、自分の力不足を恥じ入って、ますます成立に執心するのではないかと思います。

#他方、何度か当サイトでは小泉総理の政局における強さ、喧嘩のうまさを指摘していますが、それはおそらく、彼がこのような義理にとらわれることが少なく、優れて自らの利害を冷徹に計算し、打算的に意思決定ができることに由来するのではないでしょうか。

もし、匿名掲示板(仮)のサーバ押収に関係する法律をbewaadさんに同じように解説していただいたら、どうなるのでしょうか?「そのようなサーバ押収は絶対に起こり得ない」という結論に達して、私は安心してしまうような気がします。

「匿名掲示板(仮)のサーバ押収」については上記エントリの直前のエントリで触れられた問題(そして当該エントリでは既述の「電話見解」を紹介しています)ですが、まさにそうした事態が起こるかどうかは人権擁護法案の「強制性」の検証になるのではないでしょうか。

サーバ押収は刑事告発を受けてのことですし、何より警察が動いていますから、刑事訴訟法に基づき行われたものです。条文を見てみますと、次のとおりです。

  • 裁判所は、必要があるときは、証拠物又は没収すべき物と思料するものを差し押えることができる。(第99条第1項本文)
  • 公判廷外における差押又は捜索は、差押状又は捜査状を発してこれをしなければならない。(第106条)
  • 差押状又は捜索状は、検察官の指揮によつて、検察事務官又は司法警察職員がこれを執行する。(第108条第1項本文)
  • 差押状又は捜索状の執行については、錠をはずし、封を開き、その他必要な処分をすることができる。公判廷で差押又は捜索をする場合も、同様である。(第111条第1項)

つまり、裁判所が必要を認めれば、差押状・捜索状を発して証拠物だと思うものを、警察官をその手足として差し押さえさせることができ、その際は実力で抵抗を排除できます(正当事由による拒否も認められません)。これほどの強制力が憲法により、厳格な手続の下でとはいえ、認められているのです(第35条)。

他方で人権擁護法案においては、正当事由のない資料提出拒否や検査拒否に30万円以下の過料が科されていますが(第88条)、これは正当事由により対抗できることはもちろんですが、はしなくも、最高で30万円払うことを覚悟しさえすれば、正当事由なしに拒否しても、資料提出や検査そのものは強制はされないということを意味しています。

司法府たる裁判所と、準司法機関と俗に言われても広義の行政府にとどまる人権委員会では、かくも大きな強制力の差があるのです。

ただ、その「行政」の範囲内では、チェックなし独自の判断で強制的に動ける部分があるわけです。ひとつは「当該行為に関する説示、人権尊重の理念に関する啓発その他の指導」、それと、立ち入り調査に協力しなかった場合の、上限30万円の過料。これらの措置については、人権擁護委員単独の判定でなし得るわけですが、それが即「有罪」ではないということですね。

人権擁護委員の「クロ判定」が「有罪」ではないという所が、どうも納得しがたいというかわかりにくいし、一般的にそのような理解が得られるかどうかが疑問です。一方的な「人権侵害クロ判定」を受けて裁判になった場合に、無罪判決を勝ち取るまで、会社にそれまで通り支障なく勤務していられるかどうか。

最初に事実関係を。「クロ判定」ができるのは人権委員会であって、人権擁護委員には不可能ですし、人権委員単独でも不可能です(「当該行為に関する説示、人権尊重の理念に関する啓発その他の指導」であっても、それを実施するのは人権委員や人権擁護委員ですが、実施していいとの判断は人権委員会にしかできません)。

続いて本題、「裁判」の際の社会的副作用ですが、本来刑事事件でこそ尊重されなければならない推定無罪の徹底がなされていないことの方が本質的問題ではないかと思います。

とはいえ、本質的な問題がどこにあろうと被害は被害なのですが、人権擁護法案を見る限り、その危険性は正規の裁判に比べれば低いと考えられます。essaさんが指摘した過料については、非訟事件手続法に基づき裁判所が判断しますが、刑事訴訟法とは異なり勾留は認められていないので、陳述を求められた際には出頭しなければならないものの、長期間にわたり自由が失われることはありません。簡単に言えば世間にばれにくい、ということになります(適当な理由で有給をとれば、会社にはわからないのではないでしょうか)。

その他の人権擁護法案上の諸措置についても、調停、仲裁、調査、勧告(公表前)などはいずれも非公開ですから、人権委員会レベルに問題がとどまっている限りは問題はありません。で、非公開でないのは勧告の公表と、裁判に至った場合における憲法の要請(第82条)に基づく原則公開原則です。裁判についてその対象となり得るのは、これまでも触れてきた勧告に係る公法関係確認訴訟と、人権擁護法案第65条の規定による差別助長行為等の差止請求訴訟の2つ(勧告は人権擁護法案第61条第1項によるものと第64条第1項によるものの2種類があるので、厳密に場合分けをすれば3つ)です。

#事後的には国家賠償請求訴訟もあります。

後述の理由によりこれらについての検討は明日にしますが、ここでは公表や訴訟になり得るのは極めて限定的なケースであることのみを指摘しておきます。

「おまえは人権侵害野郎だ」というバツ印は重いものであって、たとえ強制力が無く司法の場で回復可能なものであっても、「行政」の範疇にはそぐわないものであるような気がします。「水道料金滞納野郎」と「人権侵害野郎」では、法的な位置づけは同じでも、一般人の受け止め方が違うので、その効果は全然違います。

これまで何度か準司法機関という言葉を使ってきましたが、まさに「行政」の範疇にはそぐわないと考えられる事柄については、一般の行政機関ではなく準司法機関と称される組織(代表例が公正取引委員会であるように、その多くは三条委員会)が取り扱うこととされています。これらは、一般に行政からの独立性が確保され、合議制であるという特徴を有しています。

つまり、その組織が尊重すべき判断基準が一般行政の要請によりゆがめられないようになっており、かつ、独断ではなく合議によることにより、効率性やスピードを犠牲にしてでも、多少なりといえども独断の弊害の緩和を図っているわけです。

こうした措置が「人権侵害野郎」というバツ印を付す権限にふさわしい程度のものかどうかについての議論はあり得ると思いますが、人権委員会はそうした特徴を備えた特別の機関であり一般の行政ではない、ということだけ申し上げておきます。

なお、何回か書いてきましたが、こうした準司法機関、特に民事に属する事柄について当事者の合意形成の促進を図るものは多くの場合ADR(Alternate Dispute Resolution, 訴訟外紛争解決(手段))と呼ばれ、ポータルサイトがあるほど既に活用が図られています(といいますか、最近の流れとしてはもっと活用しよう、という方向性です)。裁判は強制力がありますからその分厳格な手続が要請されるので、効率性に劣るという欠点があります(乱暴なまとめですが)。コミュニケーション不足が紛争の原因で、第三者が間に入って調整すればより迅速・柔軟に紛争解決が図れるのであれば、その方がいいだろうというのがADRの思想です(これも乱暴ですが)。

ADRといってもピンキリで、純粋民間団体であれば(合意によらない)強制力はまるでない代わりに誤った解決をした際の悪影響も少なく、もう一方の極にADRならざる訴訟があり、その中間に公権力が何らかの形で介入し解決をもたらす推進力となる一方で誤った解決をした際の悪影響がそれなりにある、というADRが散らばっているわけです。

ですから、その是非を論ずる際には、公権力の行使であるかどうかといったデジタルな見方や、逆に司法府であるかどうかといったデジタルな見方ではなく、どの程度の公権力の行使で、それによりどの程度の悪影響がもたらされ得るのか、といった観点から論ずる必要があると思います。

この問題は、警察と司法の増員等の現行組織の強化で対応するのが望ましいのではないでしょうか。

これも一つの有力な選択肢だと思います。ただ、その是非を論ずるに当たっては、警察の介入を当事者がどう受け止めるかといった論点や、ADRが日本・海外を問わず広く活用されている中で、人権問題についてはあくまで裁判所のみにおいて取り扱うこととすることが適当か、また、現に法務省人権擁護局があるわけですが、これはお取りつぶしにしてすべて司法府に集中させるのか、それともこれはこれで現状維持(ないしは機能縮小)とするのか、といった論点への目配りが必要ではないかと思います。

次回予告など

先に勧告や訴訟については明日と書きましたが、この論点についてはan_accusedの日記において詳しく取り扱われていまして、当サイトにもtrackbackをいただきました。次回は、その蓄積をお借りして、それらの議論を深めてみたいと思います。

なお、今回は訴訟法関係を取り上げましたが、実はこの分野、官僚にとっては完全に専門外なのです(訴訟になった際には、法務省の検事さんに手伝ってもらいますので。しかもwebmaster個人について申し上げれば、学生時代にも履修していませんでした)。これまでも多くの誤りを犯し、有識者のご指摘をいただいて訂正をしてきたwebmasterですが、そうしたレベルのテキストであるということを踏まえて、疑いの目でお読みいただければと思います。また、誤り等についてのご指摘をいただければ幸いです。

#このエントリは、以下の一連のエントリの続編です。

  1. 人権擁護法反対論批判 前編
  2. 人権擁護法反対論批判 後編上
  3. 人権擁護法反対論批判 後編下
  4. 人権擁護法反対論批判 リジョインダー編(その1)
本日のツッコミ(全5件) [ツッコミを入れる]
トニオ (2005-03-18 05:06)

半分冗談なのですが、
この法案、所詮国連へのポーズで実効性が無いと言う
反対意見もあるのですが、それについてはどう思われますか?

BUNTEN (2005-03-18 06:32)

どうも、半数を超えない範囲で外国人ないし異人種を入れることを明文で決めた方がよさそーな気がしてきてます。(^_^;)

an_accused (2005-03-18 14:57)

webmasterさま
 常々尊敬の眼差しで拝見していたこちらのブログにお取り上げいただき、身の縮む思いをしております。
 法学部卒でもない素人による付け焼刃的な内容ですが、webmasterさまを通じて本法案をめぐる議論になにがしかをもたらすことが出来るとすれば望外の幸せです。この議論については、願わくば弁護士や公法学者たちがきちんとした整理を行い、私のような一国民にも腑に落ちるような説明がなされればと思っています。
 では、失礼いたします。

第3 (2005-03-18 16:34)

大変つまったご対応、本当にお疲れ様かつありがとうございます。当方はもはや、理屈で云々いうのは不可能かと考えていた次第ですが、ここまでのご回答、無給にも拘らず、役人の魂を見た気がいたします。

kenpo (2005-03-18 23:39)

自民党法務部会の詳細が報告されているページを発見しました。

3月15日 http://www.amaochi.com/yae_log064.html#050315
3月18日 http://www.amaochi.com/yae_log065.html#050318

これによると、国籍条項など以前の法案自体の問題のような気がします・・
ご意見をできればお願いします。

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an_accusedの日記:一休み (2005-03-19 01:12)

思いもかけず私にとってのカリスマブログ、Bewaad Institute @Kasumigaseki((http://bewaad.com/))にお取り上げいただき、正直ビビッております。国相手に本人訴訟を起こした人の気持ちを(何万分の一かですが)感じている次第です。 さて、ここのところ長文のエントリー..


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