archives of BI@K

CSS: default alternative
(要cookie)

toppage memoranda

(ここはbewaad institute@kasumigasekiの過去ログ倉庫です。コメント等は仕様上受付けを停止しておりませんが、こちらではご遠慮いただければ幸いです。何かございましたら、現行サイトにお願いいたします。)

2005|01|02|03|04|05|06|07|08|09|10|11|12|
2006|01|02|03|04|05|06|07|08|09|10|11|12|
2007|01|02|

2005-04-14

[law]人権擁護法反対論批判 法案分析編(その6)

今回は、「松本純リポート2005(2005/04/08)」(@松本純の国会奮戦記4/8付)や「人権擁護法案修正案について1」「人権擁護法案修正案について2」「人権擁護法案修正案について3」(@VNSI堕天使の槍4/11、4/12付)で紹介されている法務省修正案について考えてみます(以下の修正条文案は前記各エントリによります(ただし、明らかに誤記と思われる部分はwebmasterの判断で訂正してあります。取消し線又は強調は原案(第154階国会提出版)との相違部分です))。

#最後に別件についても少し触れます。

第22条 人権擁護委員は、人権委員会が委嘱する。
2 前項の人権委員会の委嘱は、市町村長(特別区の区長を含む。以下同じ。)が推薦した者のうちから、当該市町村(特別区を含む。以下同じ。)を包括する都道府県の区域(北海道にあっては、第三十二条第二項ただし書の規定により人権委員会が定める区域とする。第五項及び次条において同じ。)内の弁護士会及び都道府県人権擁護委員連合会の意見を聴いて、行わなければならない。
3 市町村長は、人権委員会に対し、当該市町村の住民で、人格が高潔であって人権に関して高い識見を有する者及び弁護士会その他人権の擁護を目的とし、又はこれを支持する団体の構成員のうちから、当該市町村の議会の意見を聴いて、人権擁護委員の候補者を推薦しなければならない。
4〜7 (略)

現行の人権擁護委員法に同種の規定があり(「弁護士会その他婦人、労働者、青年等の団体であつて直接間接に人権の擁護を目的とし、又はこれを支持する団体の構成員」(第6条第3項))それが特段の弊害をもたらしているわけではないこと、現在の人権擁護委員の選任実態を見るとその手のクォータがなければ人が集めづらいことは否定しがたいこと(例えば人権擁護推進審議会第66回会議(平成13年7月6日開催http://www.moj.go.jp/SHINGI/010706-1.html]においては、「市町村あるいは市町村長のほうでどうやって候補者を人選しているかということにつきましては、市町村内の各地区や一定の団体にあらかじめ一定人数の候補者の人選をお願いしている、地区割あるいは団体割といったような例が多いようでございます」という事務局説明がなされています)にかんがみれば、削除する必要性に疑問がないわけではありません。

必要悪的な考え方ですが、むしろこうした団体要件を維持して、結果として各地区の人権擁護委員の構成において多様性が確保されることの方が無難にも思えますし、他方で、条文で削除したところで(市町村長の人選が飛躍的に向上するとも考えづらいので)実態は変わらないのだろうな、という気もします。

第38条 何人も、人権侵害による被害を受け、又は受けるおそれがあるときは、人権委員会に対し、その旨を申し出て、当該人権侵害による被害の救済又は予防を図るため適当な措置を講ずべきことを求めることができる。
2 人権委員会は、前項の申出があったときは、当該申出に係る人権侵害事件について、この法律の定めるところにより、遅滞なく必要な調査をし、適当な措置を講じなければならない。ただし、当該事件がその性質上これを行うのに適当でないと認めるとき、不当な目的で当該申出がされたと認めるとき、又は当該申出が行為の日(継続する行為にあっては、その終了した日)から1年を経過した事件に係るものであるときは、この限りでない。
3 人権委員会は、人権侵害による被害の救済又は予防を図るため必要があると認めるときは、職権で、この法律の定めるところにより、必要な調査をし、適当な措置を講ずることができる。
4 人権委員会は、第1項の申出に係る人権侵害による被害若しくはそのおそれ(以下この項において「人権侵害被害等」という。)が認められないものとして当該申出について第2項ただし書の規定により調査をせず、又は措置を講じなかった場合において、当該申出において人権侵害被害等を加えたとされた者が求めるときは、当該者に対して、当該申出に係る人権侵害被害等が認められない旨の通知をすることができる。

#この条については、具体的な修正案に関する情報がありません。上記は、法務省が示した方針(「法案第38条に、濫訴的な申出に係る事案等については、救済手続きを開始しない旨を追加するとともに、その具体例を規則で定める」、「法案第38条に、人権侵害の申出があっても、その事実がないときは、申出の対象者が求める場合には、人権侵害が認められなかった旨の通知をする旨の規定を新たに設ける」)に沿ってwebmasterがイメージとして示したもので、実際の条文案の規定を引いたものではありません。

第2項にwebmasterが追加した部分については、現在の人権侵犯事件処理においても、内規で「被害の申告が,過去にされた被害の申告と同一の人権侵犯に関するものであるとき」、つまり解決済みのものを蒸し返す申立や「当該人権侵犯による被害が生じておらず,又は生ずるおそれがないことが明らかであるとき」、つまり言いがかり的な申立は救済手続の対象外としていますので(人権侵犯事件調査処理細則第7条第1項)、人権擁護法施行後においても同様の対応を考えていたところ、法律として明確化を図ったということと察せられます。

理屈を言えば起訴便宜主義に対する検察審査会のような安全弁がなくていいのかという疑問もあり得ますが、調査すらしないで門前払いできるほどの案件であると思えば、それほど神経質になる必要はないでしょう。

第4項としてwebmasterが追加した部分については、どうせ聞かれれば答えるでしょうし、情報公開法に基づき請求されれば同じ結果になるだけのことですから、直接にもたらされる法的効果に意味があるというよりは、「冤罪」抑制の観点から「加害者」の便を図り間接的な効果をもたらすよう意図したものと考えられます。

第60条 人権委員会は、特別人権侵害が現に行われ、又は行われたと認める場合において、当該特別人権侵害による被害の救済又は予防を図るため必要があると認めるときは、当該行為をした者に対し、理由を付して、当該行為をやめるべきこと又は当該行為若しくはこれと同様の行為を将来行わないことその他被害の救済又は予防に必要な措置を執るべきことを勧告することができる。
2 人権委員会は、前項の規定による勧告をしようとするときは、あらかじめ、当該勧告の対象となる者の意見を聴かなければならない。
3 人権委員会は、第1項の規定による勧告をしたときは、速やかにその旨を当該勧告に係る特別人権侵害の被害者に通知しなければならない。
4 第1項の規定による勧告を受けた者は、当該勧告に不服がある時は、当該勧告を受けた日から2週間以内に、人権委員会に対し、異議を述べることができる。
5 前項の規定による異議の申述があったときは、人権委員会は、当該異議の申述の日から1月以内に当該異議について検討をし、当該異議の全部又は一部に理由があると認めるときは、第1項の規定による勧告の全部又は一部を撤回しなければならない。
6 人権委員会は、第4項の規定による異議の申述をした者に対し、前項の規定による検討の結果を通知しなければならない。
7 第3項の規定は、第5項の規定により第1項の規定による勧告の全部又は一部を撤回した場合について準用する。


第61条 人権委員会は、前条第1項の規定による勧告をした場合であって、次の各号のいずれかに該当する場合において、当該勧告を受けた者がこれに従わないときは、その旨及び当該勧告の内容を公表することができる。この場合において、当該勧告について異議の申述がされたものであるときは、その旨及び当該異議の要旨をも公表しなければならない。
 一 当該勧告について異議の申述がされなかった場合
 二 当該勧告について異議の申述がされた場合であって、前条第5項の規定により当該勧告の全部の撤回をするに至らなかった場合

2 人権委員会は、前項の規定による公表をしようとするときは、あらかじめ、当該勧告に係る特別人権侵害の被害者及び当該公表の対象となる者の意見を聴かなければならない。

条文に基づく議論の中では批判の多かった勧告及びその公表についての修正ですが、これで十分かどうかについては依然議論が残るところでしょう。

なお、この修正により、勧告に処分性がないことは(以前からそうだと指摘していましたが)明らかになりました。このような規定がなければ異議申立てはできないということは、すなわち勧告が行政不服審査法の対象である「処分」でないということですから。

第82条 この法律の適用に当たっては、救済の対象となる者の人権と他の者の人権との関係に十分に配慮し、かつ、他の者の人権を不当に侵害することがないように留意するとともに、本来の目的を逸脱して他の目的のためにこれを濫用することがあってはならない。

#この条については、具体的な修正案に関する情報がありません。上記は、法務省が示した方針(「法案第82条に、「他の者の人権を不当に侵害することがないように留意するとともに、本来の目的を逸脱して他の目的のためにこれを濫用することがあってはならない。」旨を追加する」)に沿ってwebmasterがイメージとして示したもので、実際の条文案の規定を引いたものではありません。

まあ確認規定ですから、世間で納得の得られるよう存分に美辞麗句をちりばめていただければ(笑)。ここで「濫用することがあってはならない」と規定するまでもなく、例えば公務員職権濫用罪(刑法第193条)などで禁止されていますし、具体的な法的効果はそちらで生ずるのですから。

別件についてのお知らせ(faqの追加)

以下を「faq編」に追加しましたので、お知らせいたします。

  1. 次の問答を追加しました。

    (Q2-4)「特定の者」には法人が含まれるので、政治団体等に対する批判が人権侵害として認定されるのではないか。

    (A)
    まず、「特定の者」という言葉が法人を含むのはそのとおりです(「者」とは、法的主体を指す言葉で、自然人・法人の総称と考えていただいて結構です。また、「他人」(第3条第1項)の「人」も同様です)。さらに、法人に対する人権侵害という概念が一般には成立し得るのも事実です(例えば、法人であっても刑法上の名誉毀損罪や侮辱罪の被害者たり得ます)。しかしながら、人権擁護法案において念頭に置かれている人権侵害は人種等の属性による差別的取扱い・言動と虐待で、人種等、すなわち「人種、民族、信条、性別、社会的身分、門地、障害、疾病又は性的指向」(第2条第5項)はみな自然人の属性ですので、人権擁護法案の射程に法人に対する人権侵害は入りません(虐待はあえて論じるまでもないですよね?)。
  2. (Q3-8)に追記し、次のような問答としました(追加部分は強調してあります)。

    (Q3-8)人権委員長・人権委員が不適切な行動をした場合であっても罷免できないのは問題ではないか。

    (A)
    独立性の確保のため限定的にしか罷免されないようになっていますが、人権委員会の他の委員全員の賛成があれば「職務上の義務違反その他委員長若しくは委員たるに適しない非行」を理由に罷免することができます(第11条第2号、第14条第4項)。なお、人権委員長・人権委員は特別職国家公務員ですので、職権の濫用により「加害者」に何らかの言動を強いた場合には、公務員職権濫用罪(刑法第193条)により刑事罰の対象となり得ます。

#このエントリは、以下の一連のエントリの続編です。

本編
前編(3/13)後編上(3/14)後編下(3/15)趣旨説明編(3/29)faq編(4/9)
リジョインダー編
1(3/17)2(3/18)3(3/19)4(3/20)5(3/21)6(3/22)7(3/27)8(3/30)9(3/31)10(4/2)11(4/4)12(4/5)13(4/8)
法案分析編
1(3/24)2(3/26)3(4/1)4(4/10)5(4/11)
正誤訂正編
1(3/25)2(4/6)

[politics]専門家、必ずしも信頼すべからず

「電波系国会議員登場」(@窓からは日比谷公園4/13付)にて、櫻井充参議院議員(民主党)が取り上げられています。どう取り上げられているかはぜひ当該エントリをご覧いただきたいのですが、その際には、次の事実を頭の片隅においておきますと、一段とその妙味を味わっていただけるのではないかと思います。

櫻井議員は医者です

本日のツッコミ(全6件) [ツッコミを入れる]
Apeman (2005-04-14 15:00)

bewaad様
またしてもミスの御指摘、ありがとうございました。道路運送法まで調べることないや、と高をくくっていました。おかげさまで先手を打って訂正できました。

トニオ (2005-04-14 20:58)

http://www.mainichi-msn.co.jp/seiji/gyousei/archive/news/2005/04/12/20050412ddm012010144000c.html

>(注1)人権侵害の定義
>法案は、人権侵害を「不当な差別、虐待その他の人権を侵害する行為」と定義している。
>法務省は「刑法上の犯罪行為と民法上の不法行為が該当する」と説明している。
今年施行される民法では不法行為は「故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利
益を侵害した者」となっている。

民法上の不法行為ってのはどの程度の範囲なんでしょうか?

BUNTEN (2005-04-14 22:02)

>専門家、必ずしも信頼すべからず

いや、専門外なんだと思いますよ、精神科は。(^_^;)

bewaad (2005-04-15 06:13)

>BUNTENさん
いや、あれは専門の中でも基礎の部分で、特化以前でしょ(笑)。

小僧 (2005-04-16 14:30)

電磁波問題に関する質問主意書
http://www.dr-sakurai.jp/03/q_h150402.htm#030304

は今回ほどお○○ではないように見えますので
とりあえずこの議員がどういう風に後始末を付けるかが個人的には見物です。

bewaad (2005-04-17 08:06)

>小僧さん
主意書はけっこうまともじゃないですか! まったく、役所呼ぶ前に自分でできる説得ぐらいしてほしいものです(笑)。

本日のTrackBacks(全1件) [TrackBack URL: http://bewaad.sakura.ne.jp/tb.rb/20050414]

今回は、法務省が明らかにした(とされている)人権擁護法案 修正(予想)案について検討します。 私は「白紙撤回の上改めて検討しなおすこと」が望ましいと考えておりますので、取り上げること自体を迷ったのですが、一応触れておく、ということで。 法務省の修正案その..


トップ «前の日記(2005-04-13) 最新 次の日記(2005-04-15)» 編集