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(ここはbewaad institute@kasumigasekiの過去ログ倉庫です。コメント等は仕様上受付けを停止しておりませんが、こちらではご遠慮いただければ幸いです。何かございましたら、現行サイトにお願いいたします。)
2005-04-16
■ [politics][economy]「もしも私がかの国の官僚だったなら。」(@梶ピエールの備忘録。4/15付)
先日の当サイトのエントリ、「中国の反日運動と経済見通し」を丁寧に発展していただきありがとうございます。kaikajiさんご提案の国内複数通貨制ですが、実はwebmasterもいちご経済板でその導入を(しかも日本で)提案したことがあり、その際にはwebmasterの専門知識不足故に、いろいろご協力をいただいたにもかかわらず、議論をうまく継続していくことができなかったので、kaikajiさんの議論を踏まえた今後の展開が非常に楽しみです。
マンデルの最適通貨圏理論は、つまるところ通貨統合の必要条件を示したものですから、最適通貨圏であることがイコール通貨統合によりベターな結果を保証するものではありません。例えば当たり前のことではありますが、中国国内においては、政府による資源配分として西部等における公的資本形成がなされ、また、農村部から都市部への人口流入が見られますから、中国は最適通貨圏の条件を満たすのですが、それはkaikajiさんのご提案がベターでないことの証明にはならないわけです。
通貨統合の十分条件の導出は、おそらくはミクロ分析によらざるを得ないでしょう。経済的観点のみでも、単一通貨によるメニューコストの低減などのメリットと、財政政策の出番が増えることによる政府の失敗のリスク増加などのデメリットを比較しなければなりませんし、まして同一の通貨を用いるというある種の連帯感の強化によるソーシャルキャピタルへの好影響といった非経済的要素にまで検討対象を広げるなら、定性的な水掛け論をいくらしても決着などつかないおそれが多分にあります。
とまれ、上記のいちご経済板では、webmasterが咀嚼しきれなかった論文が多数紹介されていますので、ご関心の方は一度ご覧下さい。
#webmasterは未読なのですが、今月号の諸君に切込隊長さんが、中国はいくら経済発展しても日本には追いつけない、高度成長が終わったら植民地になるぐらいしか有効な選択肢が考えられない、といった寄稿をされていると聞きました(同誌サイトでの紹介文では、外貨と公共事業に支えられている中国経済が崩壊する前に、誇りをもって、経済植民地化も視野に入れるべきだ
というものであるとのことです)。ご参考までに。
その他のご指摘として、国際収支と投資の関係についてもコメントいただきましたが、webmasterの主張は、日中ではフローでの格差以上にストックの格差、それもストックそのものの量というよりは、ストックが外国資本依存で形成されることにより、将来それを切り売ることができないという意味での格差が存在すると考えられ、安定成長期にはその分だけ中国がフロー格差以上に難儀な状態に陥るだろう、という趣旨でした。
kaikajiさんのコメントで示された、僕自身は、人民元がいくらか過小評価されているのは事実にしても、その切り上げが、国内における効率的なストック形成につながるかどうかは疑問だ、と考えている
という結論に、webmasterも異論はありません。
■ [politics][book]P.W.シンガー「戦争請負会社」
軍事組織の歴史的変遷、現代戦における作戦展開の具体、行政組織の民営化論などについて、簡潔にして要を得た(といっても対象が対象だけに全体のページ数は多いですが)描写が光る一冊です。前2つはある意味当然ですが、行政組織の民営化についても、各種メディアで氾濫している、民営化は100%善であるとのイデオロギーを疑いすらしない脳天気な論評とは切れ味が異なり、メリットやデメリット、デメリットへの対策や今後の方向性などについて、様々な考える材料を提供してくれます。
さらにお得なことに、日本の読者はすばらしいボーナスがあるのです。それは、伊勢崎賢治「武装解除」との併読が可能ということ。同様のテーマについて、全く違った切り口からの見解、それも甲乙付けがたいレベルのそれを味わえるというのは、なかなかあり得ない貴重なチャンスだとwebmasterは思います(主張と反論という形でなら、それなりにありますけれども、この2冊の組み合わせのように、独立してそれが達成される例はなかなかないでしょう)。全体として相補う部分は多いのですが、とりわけ、シエラレオネ内戦という同じ対象についての記述の読み比べは、絶対にお薦め。
■ [law][book]長尾龍一「ケルゼン研究 I」
ケルゼンらぶ、です。これまで門前ケインジアンを自認していたwebmasterですが、今後は門前ケルゼニアンとも自認いたします。もう1人Kで始まる学者に惚れ込めばKKKとそろい、差別主義者として名が体を表すのに(笑)。
#そこまでいうわりに、両名ともに本人の著書を読んでいないのがいかにも「門前」ですが。
何度も読み返して玩味熟読したいテキスト満載ですが、最近の人権擁護法案をめぐる議論について、特に次の2つのパラグラフが非常に印象深く感じられました。
公権力に特権的地位を認めることを一切排撃することが進歩的・民主的なる所以であると信ずるのは盲目的反権力信仰である。民主主義の本質は公権力を民衆の統制下におくことであって、公権力を否定することではない。公私法二元論のイデオロギーが反民主的であるのはそれが公権力に強力な権限を賦与するからではなく、公権力がいかなる場合にいかなる限度の特権的地位を有すべきかの認定権を国民代表機関たる議会から簒奪し、公権力に附された制限を実際上無意味なからしめるからである。
(pp242, 243)
#強調は、原文では傍点です。
自由の理念は、あらゆる社会的理念と同様に、科学的政治理論の見地からすれば、相対的な理念に過ぎない。しかしある人物の情念上の評価においては、これと矛盾する他の価値を排して選び取る至高至上の理念でありうる。私は、合理的科学の見地からはそれが相対的価値に過ぎないことを容認しつつも、民主制の実現しうる自由のために、無条件的に闘い、死することができる。「自己の信念の妥当性が相対的であることを自覚しつつ、なおそれを断固主張することこそ、未開人に対する文明人の優位である」というヨゼフ・シュムペーターの言葉は全く正しい。
(pp296, 297(, p330))
■ [economy][book]矢野誠「『質の時代』のシステム改革
前半の、例えば「一山取引」についての分析などは非常におもしろく読めたのですが、次第に日本の現状分析に移るにしたがい頭の中にクェスチョンマークが出てくるようになりまして・・・。
終章が脱力。矢野先生にしてこの程度の政策提言ですか。ポリティカル・アポインティの導入(行政)に、供託金の見直し(司法)に、定数是正・党議拘束の廃止(立法)ですか。
まあ百歩譲って、それらが本当に有効なのかどうかや、フィージビリティについてはいいとしましょう。しかし、なぜそれらの検討が前半のそれに比べあれほど底が浅いのでしょうか。官僚の自業自得である側面がないとは申しませんが、こと行政がからむ話になると、なぜこうも感情論が多くなってしまうのでしょうか。
少なくとも、次のような検討を行った上での政策提言であってほしかったとwebmasterは思います。
- 問題とされる事象の原因は何か。
- その原因への対策として取り得る選択肢は何か。
- それぞれの選択肢が有効と考えられるロジックは何か。
- それぞれの選択肢のメリット・デメリットは何か。
- 上記の検討の結果選ばれた選択肢について、デメリット抑制策はあるか。
ISBN:4140810106:imageISBN:4888489130:imageISBN:4061497677:image 家族がほしかった、という言葉が身にしみたり。また、刀槍など専門性の高い武器を鉄砲のように操作の簡単な武器に変えることで専門家による傭兵軍から徴兵制による国民軍に変化したのに、また専門家指向..
今回の齋藤さんの襲撃事件は痛ましい限りだが、この事件の情報を知るに連れて便衣兵のことを思い出した。雑
アクセスロゴをみれば誰だかわかるでしょ?(^^)。
ログの間違いでした(--;)。それと切込隊長の論文は読みました。非常にバランスのいい入門的な論説でしたよ。ただ「植民地になるくらしかない」命題はあまり関係ないのでは?
こちらこそ拙文を丁寧に読んでいただきありがとうございます。最適通貨圏についての考え方は大変参考になりました。ただ中国については、どうもじっくりマクロ経済談義をしていられないような情勢が続きそうですが・・
>あんときの12さん
その節は本当にお世話になりありがとうございました。そして、いただいたご示唆を活用できず本当にごめんなさい。切込隊長さんの論文は読むつもりですので、その後にまた取り上げたいと思います。
ところで、tDiaryにはアクセスログをとるプラグインはないので、正体を突き止めるにはいたっていないのですが(笑)、ドメインを見るだけでわかるほど有名なお方だとするとなおさら恐れ多いです・・・。
>梶ピエールさん
前回も書いたことですが、死者が出ると誰にとっても不幸な結末しか予想できないので、偶発的にアンコントローラブルな事態が発生しないよう願っています。
はじめまして、ですよね。政治屋から矢野先生に一言いわせてもらえば、定数是正と党議拘束の廃止は両立不可能な命題のような。現在の区割制度(小選挙区は300、県境を挟んだ区割りはしない、政令指定都市以外の自治体は分割しない)を守る限り、一票の格差は1.7倍(ほぼ現状)以下にはならないことはORの人たちが証明しています。これを打開するためには、自治体を細切れにしたり県境を跨いだ選挙区を作ったり(島根と鳥取で3選挙区とか)するか、あるいは比例代表制を選択するかですが、比例代表で政党名簿から選出されるのに党議拘束をかけないというのは、まず民主主義として間違ってますよね(笑)。アメリカは党議拘束なしですが、あれは小選挙区で候補者選出から地元の党組織でやってるくらい政党の分権度が高い国ですから。。。
Kで始まる学者:くるーぐまん(笑)?
シンガー:あれは本当によい本だと思います。同業者として博士論文かくありたい、と思いますね。翻訳はところどころ専門用語の訳に妙なところがありますが。
>政治学者の卵さん
いえいえ、3/11のエントリにもコメントいただいておりますよ(笑)。
定数是正の話は、確か軍板の政治スレでもお書きになられていたのを拝見し、なるほどと思いながら拝読したと記憶しています。あと、アメリカは大統領制で、しかも先進国中もっとも徹底的に行政府と立法府を遮断している点も違いますよね。
クルーグマンは私も考えたのですが、経済学者が2人入るのも偏っているかと思い、政治学者あたりで探してます(笑)。
博士論文がもし出版にいたったら、ぜひ教えてください。
すみません.最近いろいろなところで書き込みデビュー(笑)しているので,記憶が混乱してます.政治学者でKですか.うーん,キッシンジャーは純然たる学者というよりはむしろ政治家ですしね.
>政治学者の卵さん
わざわざお考えいただき恐縮です。とりあえずケナンあたりで暫定でしょうか(彼も学者じゃなく外交官ですが)。