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(ここはbewaad institute@kasumigasekiの過去ログ倉庫です。コメント等は仕様上受付けを停止しておりませんが、こちらではご遠慮いただければ幸いです。何かございましたら、現行サイトにお願いいたします。)
2005-06-11
■ [law]人権擁護法反対論批判 リジョインダー編(その14)
昨日のエントリに対して さん(全角スペース2字です)から次のコメントをいただきました。
現在の人権擁護委員も曖昧だ云々の所で言いたいのですが、現在が曖昧だろうと無かろうと今回の法案は人権擁護委員の権力が強すぎる、それほどの権力を持たせるのに曖昧なのは問題があるんじゃないか?現在は相談とかそれぐらいの事をするだけだから曖昧でもいいんじゃないか?という事ではないでしょうか。
つまり現行の人権擁護委員は加害者(加害者にされた)に干渉できない、被害者の一方的な言い分を聞くだけでいい。だから曖昧でもいいのでは無いのでしょうか?
ここに書いてる事はこれ以外のことも正直説得力や公平性に欠けることばかりで失笑してしまいましたがw
人権擁護委員の権力が強すぎるかどうか、具体的に人権擁護委員法と人権擁護法案に定める人権擁護委員の職務を掲げると次のようになります。
| 人権擁護委員法第11条 | 人権擁護法案第28条 | |
| 啓蒙活動 | 自由人権思想に関する啓もう及び宣伝をなすこと。(第1号) | 人権尊重の理念を普及させ、及びそれに関する理解を深めるための啓発活動を行うこと。(第1号) |
| 民間活動の支援 | 民間における人権擁護運動の助長に努めること。(第2号) | 民間における人権擁護運動の推進に努めること。(第2号) |
| 調査・救済 | 人権侵犯事件につき、その救済のため、調査及び情報の収集をなし、法務大臣への報告、関係機関への勧告等適切な処置を講ずること。(第3号) 貧困者に対し訴訟援助その他その人権擁護のため適切な救済方法を講ずること。(第4号) | 人権に関する相談に応ずること。(第3号) 人権侵害に関する情報を収集し、人権委員会に報告すること。(第4号) 第39条及び第41条の定めるところにより、人権侵害に関する調査及び人権侵害による被害の救済又は予防を図るための活動を行うこと。(第5号) |
| 包括条項 | その他人権の擁護に努めること。(第5号) | その他人権の擁護に努めること。(第6号) |
まず、人権擁護委員の権限そのものについては、ほとんど同じ内容であることをご確認いただけますでしょうか。
続いて、人権擁護委員から報告を受けた者の行動がより強権的となるので、形式的には同じ権限でも実質的には強くなるかどうかを検証してみたいと思います。まず、人権擁護法案による改正のうち組織・体制に着目すると、次のような変更が行われることとなります。
| 現行 | 改正後 | |
| 権限を有する者 | 法務大臣 | 人権委員会 |
| 実務担当 | 法務省人権擁護局 | 事務局 |
| 末端の窓口 | 人権擁護委員 | 人権擁護委員 |
では、法務大臣が現行法(人権擁護委員法+法務省設置法)に基づいてやっていることと、人権委員会が人権擁護法案に基づき行使可能な権限について比較すると、ADRや訴訟支援等を除いた行政組織・行為の側面に限った場合、実は立入検査についての次の違いしかありません。
| 現行 | 改正後 | |
| 根拠 | なし(被調査対象の同意に基づく任意調査) | 人権擁護法案第44条 |
| 拒否可能事由 | 不同意 | 不同意(ただし、正当事由なき場合には過料(最高30万円)) |
その他の人権擁護法案に基づく行為、例えば勧告やその公表についても、行政法学上のそれらは処分ではないとの整理に従い、現行制度においてもそれをやってよいと明示する法律の規定なくして既に行われているのです(例としては、昨年度行われたJR東海に対する勧告とその公表があります)。
ですから、人権擁護法案が成立すれば北朝鮮批判が人権侵害とされて抑圧されかねない、との主張が正しくあるためには、次の条件が満たされる必要があります。
- 「人権侵犯事件に係る調査並びに被害の救済及び予防に関すること」(法務省設置法第4条第26号)の規定よりも人権擁護法案の方が解釈の余地が広く、かつ、
- 独任制の法務大臣より合議制の人権委員会の方が法を濫用する。
単純化した例を示せば、よく引き合いに出される北朝鮮問題を考えた場合において、「在日朝鮮人の法務大臣が独断で、北朝鮮批判を人権侵犯であるとして取り上げることにより、北朝鮮批判が行いづらくなる」可能性よりも、「在日朝鮮人の人権委員がメンバーの1人である人権委員会が合議の結果、北朝鮮批判を人権擁護法案に定める人権侵害であるとして取り上げることにより、北朝鮮批判が行いづらくなる」可能性の方が高いことを証明しなければ、説得力がないと言わざるを得ません。
現行制度において、北朝鮮批判が人権侵犯でないとされていること、いわゆる確認・糾弾は人権侵犯に対する救済として不当であること、各都道府県弁護士会の一部が取り上げる「人権侵害」が政府にとって対応すべき人権侵犯でないこと、等々は法律的にはすべて「人権侵犯事件に係る調査並びに被害の救済及び予防に関すること」の29文字をそのように法務省が解釈した結果に過ぎません。曖昧な規定を政府が濫用して人権擁護の名の下に不当な言論弾圧等を行う危険性は、現行制度の方がよほど高いのです。
よく、人権擁護法案でできることは現行法制と大差ないから人権擁護法案はいらない、という主張がありますが(ADR等の司法・準司法周りの規定には十分意味があるのでwebmasterは大差ないとは思いませんが)、仮にできることが同じであっても、従来慣行として行われていたことを法律上きちんと規定し、行政の「暴走」リスクを減少させることには十分意味があるとwebmasterは思います(行政に広く裁量を認めてよいというのであれば、霞が関の住人としては楽でよいのですが(笑))。
以上、具体的にご不明の点をご指摘いただいたものにwebmasterの見解を示しましたが、下記に正誤訂正編とございますように、誤りを改めるにためらわないよう努めております。「説得力や公平性に欠けることばかり」とのことですが、もしよろしければこの余の点についてもお示しいただければ幸いです。
#このエントリは、以下の一連のエントリの続編です。
■ [government]コイズミズム
これも以前どっかに書いたけど、霞ヶ関関係の知り合いによると、小泉内閣になってから、経済財政諮問会議の民間委員数名でぺラッとペーパーを書いて首相に渡したら、それがなんの調整もなく内閣の方針になっちゃったりするので、霞ヶ関の官庁はやる気をなくしてすっかり白けちゃっていると。。。
若手のお役人さんは、留学でもしたら後は民主党から政界に出るかお給料のいい民間に移りたいとかばっかり考えちゃったりして。。。
そういうので、官庁の政策立案能力に問題が生じてるってことは大いに考えられるわけで、こういうのはどうするのかきちんと議論しとかないと、後で大変なことになると思うのだ。
「政治家のメルマガ・HPを読んでみよう。」(@かみぽこぽこ。6/9付)
webmasterの実感としても、この記述には頷いてしまいます。今話題の郵政民営化はもちろんですが、例えばその後に控える政策金融改革についても、現状維持は不可能というのが霞が関の最大公約数的な見方であるように思います。
他方で、世論調査により透けて見える世間の受け止め方においては、今の日本において最も政治力が強いのは官僚だということになっています。
これらからwebmasterが思うのは、コイズミズムをボナパルティズムと比較してみると、おもしろい分析結果が得られるのではないかということです(全体主義に擬える見方は既に多いですが)。王政復古派=官僚その他抵抗勢力、ブレビシット=世論調査、中央集権的官僚制=諮問会議民間委員に近い一部の構造改革主義的官僚、という類似のガジェットに対外強硬路線という共通項があると思うのですが、いかがなものでしょう?
お久しぶりです。
トラックバックをありがとうございます。
貴ブログも「東洋経済」で紹介されたようです。
拙ブログも紹介されましたが、拙者は思いっ切り実名が晒されておりました。
当方は匿名ですし、何より実名を晒してもニュースヴァリューがありませんから(笑)。