toppage memoranda
(ここはbewaad institute@kasumigasekiの過去ログ倉庫です。コメント等は仕様上受付けを停止しておりませんが、こちらではご遠慮いただければ幸いです。何かございましたら、現行サイトにお願いいたします。)
2005-07-12
■ [law]人権擁護法反対論批判 リジョインダー編(その17)
今回は、リジョインダー編(その15)を受けてお示しいただいた、an_accusedさんのエントリに対するwebmasterの考えを述べたいと思います。
対象となる前々回エントリにおいてwebmasterは、内閣法制局の存在により官僚レベルでは法解釈の統一がそれなりに図られるであろう、という趣旨の主張をしましたが、それに対してan_accusedさんからは、三条委員会である人権委員会は内閣としての統一法解釈とは独立して解釈権を行使するので、内閣法制局の解釈には必ずしも縛られないのではないかというご意見をいただいた、というのが現在の構図です。
まず、webmasterが見つけられなかった公正取引委員会の解釈権と内閣法制局のそれとの関係について、an_accusedさんが国会議事録を拾っていただきまして、ありがとうございました。詳しくはan_accusedさんのエントリをご覧いただきたいのですが、もっとも重要な部分を転載させていただきますと次のとおりです。
○林(義)委員 そうしますと、内閣の法律解釈というのは最終的には内閣法制局が持っておられる、こう思うのです。それと違った解釈というものが、独立してこの職権を行うのですから、公正取引委員会にあると、こう解してよろしゅうございますか。
○味村政府委員 そのとおりでございます。
#味村政府委員は当時内閣法制局第二部長です。
an_accusedさんご指摘のように、内閣においては内閣総理大臣の閣僚任免権を通じて意思の統一が図られ、したがって内閣法制局の解釈が内閣全体を縛ることが制度的に担保されるわけですが、上記の答弁例の公正取引委員会、ないし本件の人権委員会においては、内閣総理大臣の任命権はあれど罷免権はないので、その意味では制度的担保がないのは事実です。
#ただし、官僚側の感覚としては、大臣なら総理によって罷免され得るから軽く、三条委員会ならそれがないので重い、といったものではありません(webmasterの個人的感触なので、ひょっとしたら公取事務局あたりにはそうでない考えの官僚がいるかもしれませんが)。どちらにしても官僚から見れば組織のトップであり絶対的な存在で、上記はあくまで内閣総理大臣から見ての話です。
他方で、では内閣法制局が国会で内閣法制局としての法解釈を述べないかといえば、そうではないとwebmasterは考えます。an_accusedさんが引用の同じく味村政府委員答弁(日時は異なります)においては、具体的に公取がおやりになったことの当否という問題は、これは公取は独立して職権を行使されるわけでございますので、内閣法制局としては意見を申し述べることは差し控えさせていただきたいと存じます
とありますが、前々回紹介した工業再配置促進法の解釈についても、内閣法制局はあくまで一般論を述べているのであって、個別事例の適不適を述べないというのは相手が三条委員会である場合に限られるものではありません。
#その理由はもちろん、事実認定ができないからです。
となれば、内閣法制局を論破できるだけの理屈をこしらえることができなければ、一般論としての内閣法制局解釈を破るには多大な政治的リスクを伴うことになります。国会にだって罷免権はありませんが、不当な勧告等を行っていると問題になれば、それ自体が法的に権利義務を生じさせるものではないだけに、実効性が大いに損なわれることとなります。
もう1つの考慮事項として、an_accusedさんのやはり本年4月に施行された改正行政事件訴訟法、とりわけ「公法関係確認訴訟」がどの程度活用できるかを見極めることが必要となるのですが、本法案の法務省修正案にみられる「異議の要旨を併記する」ようなスタイルの「行政指導(勧告)」が、果たして「当事者間の法律関係に何らかの影響を及ぼすもの」と司法に評価されるのか、疑問を抱いています
とのご指摘について、先の週末本屋で改正行訴法の解説書をあさったのですが、いずれも行政指導が対象となり得るとしていました(今まできちんと裏取りせずに恐縮です)。
そうまで書かれるからにはと思い調べてみますと、国会質疑等でそのような答弁がなされていました。代表例として質問主意書への答弁を引いておきます。
三の3について
行政立法、行政計画、行政指導等のそれ自体としては抗告訴訟の対象とはならない行政の行為を契機として争いが生じた公法上の法律関係に関し確認の利益が認められる場合については、現行の行政事件訴訟法(昭和三十七年法律第百三十九号)においても、当事者訴訟として確認の訴えが可能であるが、その活用を図るため、「公法上の法律関係に関する確認の訴え」を当事者訴訟の一類型として明記する改正を行う法案を提出しているところである。
#原文の「三の3について」の「3」は丸付き数字です。
改正行政事件訴訟法第4条は「この法律において「当事者訴訟」とは、当事者間の法律関係を確認し又は形成する処分又は裁決に関する訴訟で法令の規定によりその法律関係の当事者の一方を被告とするもの及び公法上の法律関係に関する確認の訴えその他の公法上の法律関係に関する訴訟をいう。」との規定ですが、この条文は「当事者訴訟」=「当事者間の法律関係を確認し又は形成する処分又は裁決に関する訴訟で法令の規定によりその法律関係の当事者の一方を被告とするもの」+「公法上の法律関係に関する確認の訴えその他の公法上の法律関係に関する訴訟」と解すべきなので、本法案の法務省修正案にみられる「異議の要旨を併記する」ようなスタイルの「行政指導(勧告)」が、果たして「当事者間の法律関係に何らかの影響を及ぼすもの」と司法に評価され
なくてもよいわけです。
内閣法制局の意見が行政府内において事実上の拘束力を有するのは、彼(女)ら以上に説得力ある意見を展開させられないからですが、法的に説得力があるとは結局は裁判において勝てるかどうかで、このように裁判所の判断の対象になっているケースについては、その解釈では内閣法制局が納得しません=裁判に負ける可能性が極めて高いです、ということになります。それで納得するのであれば内閣法制局による実質的統制が完徹することになりますし、納得しなければ司法判断で、いずれにせよ判例等との整合性は確保されることとなります。
あれこれ書きましたが、結局のところ、「独立行政委員会における法の遵守の担保」は内閣法制局の有権解釈に求めるのではなく、司法審査に求めていかざるを得ないと考えるのが自然ではないでしょうか
というan_accusedさんのご意見に異論はなく、単に司法審査を背景に、より前の段階でも相当程度の担保が期待できそうだ、ということの補足にとどまります。
本件についてはこれで一件落着かな、とwebmasterは思いますが、いかがなものでしょう?>an_accusedさん。
#このエントリは、以下の一連のエントリの続編です。
- 本編
- 前編(3/13)、後編上(3/14)、後編下(3/15)、趣旨説明編(3/29)、faq編(4/9)
- リジョインダー編
- 1(3/17)、2(3/18)、3(3/19)、4(3/20)、5(3/21)、6(3/22)、7(3/27)、8(3/30)、9(3/31)、10(4/2)、11(4/4)、12(4/5)、13(4/8)、14(6/11)、15(6/30)、16(7/2)
- 法案分析編
- 1(3/24)、2(3/26)、3(4/1)、4(4/10)、5(4/11)、6(4/14)、7(5/21)
- 正誤訂正編
- 1(3/25)、2(4/6)
- 百地教授編
- 1(4/20)、2(4/21)
- マスメディア編
- 1(6/10)、2(6/14)、3(7/5)
[http://d.hatena.ne.jp/an_accused/20050630:title=前回のエントリー]で 「やはり本年4月に施行された改正行政事件訴訟法、とりわけ「公法関係確認訴訟」がどの程度活用できるかを見極めることが必要となるのですが、本法案の法務省修正案にみられる「異議の要旨を併記..
若干本筋から外れるかもしれませんが、行政訴訟について気になったことがあるので少々。
行訴法4条後段の訴訟はあくまでも主観訴訟の枠内での制度ですので、訴訟を起こすには訴えの利益(確認訴訟であれば確認の利益)が必要ですし、その前提として法律上の争訟であることが必要です。その意味では、当事者間の法律関係にまったく影響を及ぼさないような事案についてはやはり当事者訴訟の対象にはならないと思います。
改正行訴法4条後段の訴えにおいては、確認の利益の有無は民事訴訟の枠組みに準じて判断されると考えられているようですが(私自身によるシミュレーションはhttp://d.hatena.ne.jp/dpi/20050517#20050517f5)、それでは問題になっている人権委員会の「勧告」が例えば違法確認の対象となるかというと、それだけで確認の利益を根拠付けるのは少々難しいような気がします。「勧告」それ自体に法的効果はありませんし、その後に強制力を伴う手続が予定されているわけでもないので、「勧告」を受けることでどのような不利益が生じるかがいま一つ明らかでないからです。
もう一つは、人権侵害をめぐる紛争は侵害者対被侵害者の(民事)訴訟で最終的に解決することを、法が予定しているように思えるからです(人権委員会の訴訟参加を定めた法案63条はその徴憑かと)。このような役割を持つ行政委員会として公害等調整委員会がありますが、その責任裁定については行政訴訟の提起が明示に排除されています(公害紛争処理法42条の21)。人権擁護法案にはこのような規定は見当たりませんが、むしろ当然の事理として定められていないとも考えられます。
ただし勧告の公表まで含めて考えると話は別で、誤った内容の勧告が「公表」されると、名誉なり営業上の利益なりを損なう恐れがありますので、これを事前に差し止める訴訟(民事(当事者)訴訟か改正行訴法37条の4の差止めの訴えかはともかくとして)か、その前提としての「勧告」それ自体の違法確認訴訟(改正行訴法4条後段)を提起する余地はあると思います。
人権擁護法案についてはまったく不勉強で、思い違いがあるかもしれませんので、ご教示をいただければと思います。
いつもながら懇切なご回答をいただき、ありがとうございます。
内閣法制局が独立行政委員会に対して、国会答弁等を通じて(制度上はともかく)事実上大きな影響力を行使しうるだろうということはよくわかりました。
ただ、第2の論点である「人権委員会の『勧告』が公法関係確認訴訟の対象となりうるかどうか」ですが、それ自体では何らかの法的効果を生じせしめるものではない「勧告」が確認訴訟の対象となるかはやはり疑問です。
とくに、「勧告対象者が申し立てた異議の要旨」も同時に公表されることが、「『勧告の公表』によってもたらされる被侵害利益はない」と評価される余地を生じせしめるのではないか、そのことにより人権委員会の判断が司法審査の埒外となり、結果「法の遵守の(制度的)担保」がなくなってしまうのではないかと私は危惧しています(エントリーにおいて「異議の要旨を併記するようなスタイルの」と限った意図はここにあります)。
もちろん「政治的リスクを引き受けなければならない」という事実上の制約が存在することは否定いたしませんが、リコール制度などによって民意が反映されることがない独立行政委員会に対して「制度上の制約」をあいまいにしたまま「事実上の制約」に期待するのはいささか心もとなく感じられます。
(しつこくて申し訳ありません。)
>dpiさん
あくまで個人的認識ですが、法律の規定振りは勧告の後に禁止命令があっても決してすわりがわるくはなくて、調停・仲裁の流れと勧告の流れはある程度別の枠組みとして想定されている気がします。
行政事件訴訟法の解釈を間違っているかもしれませんが(塩野本が出たら目を通すべきですね・・・)、1つには、公表を受けての確認訴訟が可能であるなら、確認すべき対象である人権侵害をしたという認定自体は勧告の段階で確定していて、それを公表されるまでは争えないというのはしっくりこないこと、2つには(dpiさんのエントリの例に関連しますが)むしろ行政処分後置のものは抗告訴訟で処分自体を争えるわけですが、これだけ行政指導も対象になるといっておきながら、その種の行政指導(=そのうち訴訟可能)のみが対象で、それ以外のありがちな行政指導は引き続き対象外というのは説明としてピント外れですから、そういう趣旨ではないのではないか、と思います。
訴えの利益ですが、特別救済措置の名宛人になるということは、同時に第3条に違反した状態であるという認定がなされているということになりますから、もちろん第3条違反には罰則等はなく物理的な損失は生じないわけですが、法的なステイタスとして第3条の禁止規範に反しているかどうかの確定は意味があるのではないかと思う次第です。
>an_accusedさん
やはりその併記の部分に問題意識がありましたか。そうではないかな、と思いつつも楽な方に流れてしまいました(笑)。
勧告ないし公表の利益の有無によってではなく、違法か合法かという法的なステイタスの確定自体に確認の意味があることで十分プロセスにのせることができるのではないか、と個人的には思っていますが、そのあたりは解説書等を見てみたいと思います。
はじめまして、utushiと申します。
人権擁護法案反対論批判についてリンクを貼りたいのですが、まとめたカテゴリーみたいのが無いので、個々の記事直接にリンクすることになってしまい、読むべき順番がわかりづらかったり、新たな記事が上がったときの捕捉が新たにURLを貼りなおさないとならないため、リンクが貼りづらいです・・・。
どうにかなりませんか?
即座にいい対応が思いつかないので便宜的ではありますが、lawカテゴリ(下記URI)にリンクしていただければ、とりあえずご指摘のデメリットは一応回避可能かと思います。
http://bewaad.com/?category=law