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(ここはbewaad institute@kasumigasekiの過去ログ倉庫です。コメント等は仕様上受付けを停止しておりませんが、こちらではご遠慮いただければ幸いです。何かございましたら、現行サイトにお願いいたします。)

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2005-07-14

[law]小倉秀夫「著作権侵害の情報交換を眺めていただけで共謀罪になる?」(小倉弁護士のPC法律相談室第15回@PC JAPAN 2005.8, p185)

小倉弁護士が予告されていた共謀罪と著作権侵害についてテキストが、標記記事にて公開されました。以前の共謀罪エントリにおいて崎山さんから問題提起があり、後でお答えとさせていただいておりましたので、ここで回答させていただきたいと存じます。

#といいつつも、webmasterの刑法における知識のなさ故、独自の見解を示すというよりは教えて君になっております。その程度のレベルのテキストであることをあらかじめお断りいたします。

小倉弁護士があり得る共謀罪の濫用としてお示しの部分は次のとおりです(文の後のアルファベットは後の議論のためにwebmasterが付したものです)。

たとえば、ゲームのユーザーズグループ(以下、UG)やアイドルの非公式ファンクラブなども、ここでいう「団体」にあたる可能性があります。[a](略)また、UGに代表者なり仕切屋がいたとすれば、「指揮命令」関係が認められる可能性があります。[b](略)

仮に、ゲームのUGで、あるゲームについてセーブデータのパラメータデータの改造方法などが議論されていたとします。(略)そして、そのUGでパラメータデータの改造についての情報交換が広く行われていた場合、「そのUGはパラメータデータの改変を行うための組織であり、そのUGでの情報交換に基づいて行うパラメータデータの改造は、UGの活動として組織的に行われるもの」と判断されるおそれがあります。[c](略)

さらに、現在の判例実務では、共謀共同正犯(実行には参加しなかった者)における「共謀」は黙示によるものでもよいとされています。[d](略)「共謀」に「黙示の共謀」が含まれる場合には、具体的にパラメータデータの改造に関して議論を行っていたメンバーはもちろんのこと、UGでパラメータデータの改造についての情報交換が行われていることを知りながらこれを容認していたメンバーも、「黙示の共謀」をしていたと認定される可能性があるのです。[e]

#第1文の「ここでいう」とは、共謀罪を定める改正組織的犯罪処罰法案第6条の2第1項柱書に規定するという趣旨です。

議論の便のため、まず同法案の関係条文を掲げますと次のとおりです。

第2条 この法律において「団体」とは、共同の目的を有する多数人の継続的結合体であって、その目的又は意思を実現する行為の全部又は一部が組織(指揮命令に基づき、あらかじめ定められた任務の分担に従って構成員が一体として行動する人の結合体をいう。以下同じ。)により反復して行われるものをいう。

2〜7 (略)

第3条 次の各号に掲げる罪に当たる行為が、団体の活動(団体の意思決定に基づく行為であって、その効果又はこれによる利益が当該団体に帰属するものをいう。以下同じ。)として、当該罪に当たる行為を実行するための組織により行われたときは、その罪を犯した者は、当該各号に定める刑に処する。
 一〜十五 (略)

2 (略)

第6条の2 次の各号に掲げる罪に当たる行為で、団体の活動として、当該行為を実行するための組織により行われるものの遂行を共謀した者は、当該各号に定める刑に処する。ただし、実行に着手する前に自首した者は、その刑を減軽し、又は免除する。
 一 死刑又は無期若しくは長期十年を超える懲役若しくは禁錮の刑が定められている罪 五年以下の懲役又は禁錮
 二 長期四年以上十年以下の懲役又は禁錮の刑が定められている罪 二年以下の懲役又は禁錮

2 前項各号に掲げる罪に当たる行為で、第三条第二項に規定する目的で行われるものの遂行を共謀した者も、前項と同様とする。

webmasterが賛成の部分をお示ししますと、[a]には異論はありませんし、[d]の黙示の共謀の共謀罪への適用も、審議会の議論では共謀共同正犯の「共謀」と共謀罪の「共謀」は同じものという前提だとの説明がありましたので、小倉弁護士ご賢察のとおりかと存じます。

他方でwebmasterがにわかには肯んぜられない部分として、まず[c]ですが、2点論じたりないと思います。1点目として、小倉弁護士は[b]から[c]を導いていますが、第2条に定める組織の定義としては、一般的な指揮命令関係の存在のみではなく、その指揮命令に基いての「あらかじめ定められた任務の分担」が要件となっています。お示しのケースにおいてこの任務分担が成立しているかどうか、疑問が残ります。

2点目として、小倉弁護士は第6条の2第1項柱書中「団体」に該当することは論じられていても、「団体の活動」に該当するかどうかは論じられていません。この「(団体の)活動」は一般名詞ではなく、第3条第1項柱書において「団体の意思決定に基づく行為であって、その効果又はこれによる利益が当該団体に帰属するもの」と定義されている名詞です。お示しのケースにおいてこの団体の意思決定が成立しているかどうかについても、疑問が残ります。

これらの指揮命令に基づく任務分担や団体の意思決定の構成要件として、共謀と同様に黙示で足りるのか、それとも明示された行為を必要とするのか、もちろん団体の通常の運営で想定される行為なのか例外的な行為なのか等によって要求されるレベルは異なるとは思いますが、判例実務において後者であるなら、「UGでパラメータデータの改造についての情報交換が行われていることを知りながらこれを容認していたメンバー」は当てはまりようもありません。

これらの規定は、現行の組織的犯罪処罰法に存在しているわけですから、若隠居さんがご指摘のように、現行法の運用を見れば前者か後者かはわかるはずです。この論点に直接答えるものではありませんが、法務省のfaqでは組織的犯罪処罰法における組織的な殺人等の加重処罰の場合と同じ要件であり,実際の組織的犯罪処罰法の組織的な殺人等の適用事例も,(1)暴力団構成員等による組織的な殺傷事犯,賭博事犯,(2)悪徳商法のような組織的詐欺事犯及び(3)暴力団の縄張り獲得,維持のための業務妨害,恐喝事犯等に限られていますとしています(webmaster注:括弧付き数字は原文では丸付き数字です)。

であるならば、お示しの例にあるような有機的組織体としての体裁がそれほど整っているわけではないケースは含まれない、webmasterの整理ならば原則として明示的な指揮命令や意思決定が必要とされている(「黙示の共謀」に近いものであるためには、団体の通常の運営においてそのような指揮命令や意思決定を改めてしなくとも相当程度の徹底が可能)のではないかとの推測が成り立つのではないでしょうか。

続いて「黙示の共謀」の解釈ですが、webmasterの浅薄な理解では、判例理論としては暴力団に代表される組織犯罪において、明示的なコミットをしたわけではない暴力団幹部を黒幕として捕まえたり、準備・実行・事後処理(逃走や証拠隠滅等)といった犯罪の一連のプロセスを横の綿密な打ち合わせなくして行ったそれぞれの担当者を捕まえたり、といったケースの積み重ねで発展してきたものだと思います。それがお示しのようなケースにおいて適用され得るのかどうか疑問です。

端的には、[e]はまだ犯罪行為が実行に移される前だからこそ共謀罪の議論なわけですが、実際にセーブデータ改変が行われた際に、「UGでパラメータデータの改造についての情報交換が行われていることを知りながらこれを容認していたメンバー」が共謀共同正犯となるかどうかは現在の判例理論上の議論です。既述のとおり共謀罪の「共謀」は共謀共同正犯の「共謀」と同じものであるとの見解が示されているわけですから、お示しのようなケースにおいて共謀共同正犯が認定された事例を出さないことには説得力に欠けるのではないでしょうか。

webmasterの勝手な感想ではありますが、小倉弁護士お示しのケースや、崎山さんがお示しのファイル交換ソフト企業秘密漏洩、税関での猥褻物の取扱いといったケースについては、共謀罪云々の前に、それらを犯罪とすることの違和感があるのではないでしょうか。その違和感には同意する点も多いのですが、それを共謀罪の是非に関する議論と混在させてしまってはミスリードではないかと思います。最終的にそれらに対する共謀罪の適用が社会的副作用を伴うものであり望ましくないという結論に至るとしても、まずは分離して検討するところから始めるべきではないでしょうか。

本日のツッコミ(全20件) [ツッコミを入れる]
小倉秀夫 (2005-07-14 08:47)

共謀共同正犯とかは、刑法の教科書に書いてあることと、実際の適用というか運用というかの感覚とが大いに齟齬しているということを、弁護士は実体験として知っているので、与党議員でも、弁護士出身議員は、共謀罪については冷ややかなのではないかと思われます(「その文言で裁判所でどこまで解釈が拡張するか」ということをまず考えるところです。)。
 PCJapanは概ね2000字しか枠があたえられていないので、書ききれなかった面もあるのですが

小僧 (2005-07-14 23:09)

>小倉様
大変失礼なお願いではありますが、

> 共謀共同正犯とかは、刑法の教科書に書いてあることと、実際の適用というか運用というかの感覚とが大いに齟齬しているということを、弁護士は実体験として知っているので、
>「その文言で裁判所でどこまで解釈が拡張するか」

これらの実感を補強するような案件があれば URI だけでも構わないのでご教示頂けると非常に助かります。

また「専門家に委託する部分が多ければ多い程、一般の人は専門知を信じないのではないか」という仮説が法律でも成立していると思われるので、 http://www.denpa.org/~go/denpa/200507/from11.html#14_1 で書かれているように、非専門家向けで
> そのことの利点(柔軟に運用された例)と欠点(悪用された例)とかってなんか例示つきでうまく解説してるよーな本とかサイト

があれば猶良いのですが。
#有斐閣アルマなどであれば

小倉秀夫 (2005-07-15 00:35)

たぶん、刑事事件のお仕事が多い落合先生や、人権派の増田先生の方が文献とかはお持ちだと思うので(私の事務所は数えるほどしか刑事弁護をやらないので、季刊刑事弁護とかとってないので、弁護士会の図書館に行ったりしないとみれないのです)>小僧さん

崎山伸夫 (2005-07-15 03:22)

最後のパラグラフですが、既遂の場合の違和感、というのを否定するわけではないのですが、問題はそこではなくて、実施を前にして中止した場合でも共謀罪は成立する(7月12日答弁)ことから、違法性を認識して中止してもそれはすでに手遅れ、ということになるのが問題だろうということです。

殺人や強盗であれば、それが犯罪だ、ということはわりと自明ですが、きちんとした検討や専門家の助言抜きには判断できない領域があるものについて、中止してもその手前で共謀が成り立って犯罪ということになってしまう、というところにフォーカスを当てています(今後、知財関連の罰則はますます厳罰化がすすみますから、仮に「長期4年」というボーダーを引き上げても、問題は解決しません)。

共謀共同正犯というと、安田好弘弁護士が訴えられたのがそういえばそうですね。地裁無罪(検察側控訴中)で、かつ事実関係に関してもフレームアップだったという感じで。強制執行妨害(2年以下)についてという話だったので共謀罪とは無関係ですが。

崎山伸夫 (2005-07-15 04:59)

私が出した具体例についての共謀共同正犯が適用された事例、ということになると、具体例が新しすぎてない場合はあります。営業秘密はとくにそういう部類で、そもそも正当取得した営業秘密の不正使用・開示についての刑事罰は、これまでは役員・従業者のみが対象で退職者は対象になっていませんでしたから(ただし、民事で損害賠償の対象にはもともとなっています)。また、営業秘密を不正競争防止法で保護する以前は、情報の持ち出しが有体物でなされている場合には窃盗罪や業務上横領罪が適用されてきていて、そこでは共謀共同正犯が認められているという経緯があるようです(そもそも、営業秘密使用開示の違法化の理由が、メディアの持ち込みや通信による情報の持ち出しが既存の法律でカバーできない、というところにあったという事情がある)。
本間教授のサイト
http://tadhomma.ld.infoseek.co.jp/TS1.htm
や、岡村弁護士のプレゼンPDF
http://www.nic.ad.jp/ja/materials/iw/2003/proceedings/T21.pdf
(10頁あたり)に具体的な話が出ています。

bewaad (2005-07-15 05:50)

>皆様
そこまで運用依存ということになりますと、無謀なテーマに手を出してしまったのでは、という気が・・・。あれこれ探してみたいと思います。

>崎山さん
具体的に同じ罪の例というより(ぴったり同じものがないということは十分ありえることですから)、サークル的なつながりにおいて黙示の共謀が認められた事例ですとか、そういったものがあると説得されてしまうなぁ、という感じです。

any (2005-07-15 09:28)

これって政治家側にも同様の話が言える気が。MLとかでうかつに献金の話とかをMLで回して、誰かがそのMLを公開したりしたら(キンタマで放流とか十分あり得る)全員暗黙の了解を行っていたという事で全員お縄になるかも。まぁ政治犯罪は何故か刑罰が異常に軽いので共謀罪に含まれないかもしれないですが

ペコ (2005-07-15 14:22)

インターネットでそのような形になるのなら・・・
テレビ放送局がどう見ても・・・ヤラセや、仕込みを使ったことを
容認しながらも・・・黙ってみている視聴者全ても・・・
「黙示の共謀」となり・・・また、官僚が・・・公的な団体が
談合していたのを知っていながら・・・見て見ぬフリをした場合も
「黙示の共謀」にして欲しいですね・

しがない憲法研究家 (2005-07-15 16:33)

初めて書き込ませていただきます。共謀罪について、というよりも刑法について不勉強なので、勉強してからと思っていたのですが、一言だけ書き込ませていただきます。

>小僧さんへ
 小倉さんが言われる「教科書」と「実務」の距離というのは、なんとなく想像はつきます。ただ、どの教科書かによって距離の差がありそうですね。
 共謀共同正犯の利点と欠点となる事例をまとめた簡単な文献というのは私が不勉強なので現段階で情報提供できませんが、「有斐閣アルマ」という文字に反応してしまいました。
 有斐閣アルマといえば、浅田和茂ほか『現代刑法入門〔第2版〕』(有斐閣、2004年)をあげることができます。共謀罪(7頁)、共謀共同正犯(126-7頁)、破防法(264-5頁)とか、どうでしょうか。簡潔に書かれすぎている気もしないでもないですが。
 まあ、私の勉強不足もありますので、Bewaadさんのお知り合いの学部生・院生の回答待ちということで(笑)。

an_accused (2005-07-16 02:10)

 まったくの門外漢から失礼します。
 下記URL事件など、詐欺罪の成立につきかなり幅広く「黙示的な共謀」の存在を認めているように思われるのですが、いかがでしょう?組織犯罪の問題ではなく、あくまでも「黙示の共謀」成立の問題としてですが。

http://courtdomino2.courts.go.jp/Kshanrei.nsf/webview/7EF4D8DFAA81B14749256EED00288930/?OpenDocument

若隠居 (2005-07-16 04:01)

わたしからもちょっと失礼します。

「団体の活動として、当該行為を実行するための組織により」という部分がポイントになりそうなので、実際のところどうなのか参考になるんじゃないかと考えて組対法の判例を探しているのですが、なかなか見つかりません。せめて、ここの文言が、どのように運用されているか、ロジックだけでも知りたいんです。。。

bewaad (2005-07-16 14:08)

>皆様
結局キーになるのは、
・「黙示の共謀」がどれほど一般化して用いられているのか、
・「団体の活動」「組織により」といった文言の解釈はどの程度固まっているのか、
の2点ではないかと思います。それぞれ、共謀罪ではじめてでてくるものではないのですけれども、小倉弁護士ご指摘のように理論と実務に乖離があるようですと、とても素人の手に負えるものではないのかな、と若干しり込みも(笑)。

>an_accusedさん
判例のご紹介ありがとうござました。最近、学生時代よりもきちんと判例を読む機会が多い(笑。むかしはネットで原文にアクセスなどできませんでしたし・・・)のですが、きちんと解読できているのかなと不安になったりもしています。

ペコ (2005-07-16 14:46)

私も「黙示の共謀」と言うの法律があるのをこの場所で
知りました・・・
で・・・その法律をインターネットに照らし合わせて・・・
なんとがUGを排除できないか?と言う意図が見えましたので
それが一般的なUGサイトに何度もアクセスしている・・・
一般人に対する規制のつもりで・・・
一般人に触れ込むのなら・・・それなら・・・同じような事で
インターネット以外で起きていることも・・・
適用されるべきだと思います。
(余程・・・酷い場合限り適用されるのなら良いですが・・・
一般化して・・・UGに対するアクセス規制になり・・・
そのような判決が出た場合に・・・
インターネット以外の事でも色々と適用されるべき物だと
思います)

jimi (2005-07-16 15:52)

初めてレスさせて頂きます。
組織犯罪に関して,手元に実務本の「Q&A組織的犯罪対策三法 八澤健三郎・加藤俊治著 立花書房」があり,いま出ている問題に関連する記載もありますので,ちょっと内容を一部紹介します(著者は2人とも検事ですが,組織的犯罪対策三法の立案に関与した担当者であると「はしがき」に書かれています)。
なお,法律の実務本には,裁判官向けのもの,弁護士向けのものとかいろいろあって,当然カラーも違うわけですが,これは警察官・検察官向けに書かれたものです。
したがって若干捜査機関側に傾いた記載にはなっていますが,現場の捜査官で本書を参考に適法・不適法を判断する人たちもいるでしょうから,実務の運用がどうなっているかの一応の参考にはなると思います。

まず,「会社や暴力団は,組織犯罪処罰法の『団体』に当たりますか」との質問(Q9)に対する回答では,「団体」の要件を
「(1)共同の目的を有する多数人の継続的結合体であること,(2)その目的又は意思を実現する行為の全部又は一部が組織により反復して行われること」
とした上で
「この定義からもわかるように,一定の組織性を有する暴力団や会社等は,通常『団体』に該当するといえますし,それ以外にも,一定の目的で継続的に活動する相当規模の組織化された集団は,『団体』に該当します。」
「『多数人』というのは,理論的には2人以上であれば該当することがありますが,実際上の問題としては,2〜3人といった少数の構成員からなる集団は,上に述べたような意味で組織化されているとはいえないものが多いと思われます」
と書かれています。ただ
「『集会』のように,共同の目的を有する多数人の集合体であるが一時的な集団に過ぎないものや,『群衆』のように,共同の目的が欠けていて構成員が相互に結合していないものは「団体」には当たりません。」
と,「団体」に該当しない例も書かれています。

次に「どのような行為であれば『団体の活動として』行ったことになるのですか」という質問(Q11)に対しては,「団体の意思決定に基づく行為であって,その効果又はこれによる利益が当該団体に帰属するもの」という3条1項の文言を挙げた上で
「『団体の意思決定に基づく行為』に該当するか否かは,犯罪の実行に向けての意思決定という性質上,本来の意思決定権限を有する機関が適法な手続を踏んで行ったか否かという観点ではなく,当該団体の意思決定手続の実状に照らしてこれによっているかどうかという観点から個別に判断することになります」
との回答がされ,例として
『暴力団のような団体においては,組長が何らかの意思決定をして組員に告げれば,即団体としての意思決定なることもあり得ます」
「また積極的な決定手続が行われていなくてもその行為をすることが当該団体の意思決定機関において黙認されていたような場合もこれに当たり得ます。」
と書かれています。

また「その効果又はこれによる利益」の定義については
「法律上の効果・利益には限られず,広く事実上の効果・利益を含む」
ものだとされています。
さらに,その利益・効果が「当該団体に帰属する」とは
「効果・利益が法律的に団体に帰属する場合に限らず,事実上の効果・利益を当該団体が享受する場合も含むものです」
とされ
「ある会社がライバル会社の業務を妨害して業績を上げるような場合も含みます。」
という例が書かれています。

その他,「既存の組織を使って犯罪を実行した場合には,『罪に当たる行為を実行するための組織により行われたとはいえないのですか。」との質問(Q12)に対しては
「既存の組織であっても,それがある罪に該当する行為を実行する組織として転用された場合は,これに該当する場合があります。」
として,部や課のような本来の業務のための組織を有する会社が,倒産の危機に瀕したことを契機として,会社ぐるみで詐欺を行うようになり,そのための組織として既存の部や課を用いた場合には,これらの部や課の組織は「罪に当たる行為を実行するための組織」に当たり得るという例が挙げられています。

長すぎてすいません。いったん切ります

jimi (2005-07-16 15:55)

「組織犯罪処罰法第3条の罪は,『団体』の構成員でない者についても成立しますか」との質問(Q10)に対しては,「その者が団体の構成員であることは要件とされていません」と明言されています。
条文上,「団体の活動として」「当該行為を実行するための組織により行われるもの」との文言は,「行為」の語にかかるもので,「者」の語にかかるものではない,すなわち主体には制限がないと解釈されるようです。
まあ確かにそういう文言になっています。
この点は共謀罪も同じ文言になっているので,共謀罪での解釈も同様になると思われます。要するに,団体の構成員でなくても,組織的犯罪の共謀に加われば足りると。

もっとも,現行の組織的犯罪処罰法は,行為者が刑法上の一定の犯罪を犯した場合に,その犯罪が組織的犯罪であってかつそのことを行為者が認識して犯罪を犯していた場合に,刑を加重するというものです。つまり,あくまでもとになる犯罪によって有罪であることが立証されることを前提に,その刑を重くする規定なのです。
もちろんその場合でも刑罰法規の明確性は要求されますが,犯罪の成否そのものというよりは,犯罪が成立した後の「量刑」の問題に近く,量刑判断については現状でも裁判所の裁量がかなり広いこともあって,適用範囲が多少広くてもイイかなと思えなくもないです。

しかしながら,共謀罪は,もとになる犯罪の「成立」までは前提とせず,その成立以前に独自の犯罪の成立を認めるものであり,従来の単なる加重規定とは質的な差があると思います。
そもそも犯罪の成否に関わる問題である以上,従来の加重規定と同様なあいまいさでは許されず,より明確かつ厳格な絞りが必要だろうと私は思います。少なくとも,組織犯罪処罰法と同じ要件ではまずいのではないかなと。

jimi (2005-07-16 15:59)

あと,黙示の共謀に関連して。

日本は,全ての裁判の結果が公表されるのではなく,重要な判示を含む一部だけが判例として公刊物に載るという方式なので,その他膨大な件数が存在する,犯罪の成立はまったく争わずに軽い量刑や執行猶予だけ求めてるような事案は,ほとんど判例集に載らず,一般の目にも触れません。
私も,暴力団関係事件でなくても黙示の共謀を認めてる事件はいくらでもあると思うのですが,そういうのはあまり表にでないのです。それが実務家との認識の差になるのでしょう。

逆に言うと,共謀の有無について実際に「判例」になってるケースというのは,裁判所があえて説明をしなくてはいけないようなよほど微妙なものを除いては,被告人が共謀の成立を否認し,裁判所がそれについて判示したものだけだろうと思います。

そして,物証なり他の共犯者の供述なりから,「明示の共謀」というか,共犯者間の明示の意思疎通が認定できる場合であれば,比較的すんなり共謀が認められるんでしょうが,明示のそれがない場合は,裁判所としては,ありうべき行為の不作為とか,実際の犯行場面における被告人の役割とか,事後の分け前の分け方とかの間接事実から共謀を認定するしかなくて,それでも共謀関係は充分認定できるんだ,という場合が「黙示の共謀」いうことになっているんじゃないかと想像します。

「黙示の共謀」という意思疎通形態そのものが定義されているわけではないというか。

若隠居 (2005-07-16 21:20)

ちょっと失礼します。
>jimiさん
はじめまして。若隠居と申します。
jimiさんの書き込み、大変興味深く拝見させていただきました。

二点だけ気になっていることがありまして、それは「組織」そのものについてと、「組織」と「団体」の関係についてです。

組織について、組対法第二条に「指揮命令に基づき、あらかじめ定められた任務の分担に従って構成員が一体として行動する人の結合体」とあって、それが実際にどの程度のものを指すのかはっきりしないんです。

また、「団体」と「組織」の関係についてですが、たとえば「オウム真理教(団体)」と「サリン散布班(組織)」みたいな事になるのではないかと考えています。実際のところは、「団体」と「組織」の差が限りなく小さくなったり大きくなったりすることもあるんだろうと思いますが、とにかく「団体」と「組織」の関係について。

お時間がよろしければ、お手数ですけれども、本を参考にお教えくださいませんか?

小僧 (2005-07-16 22:30)

御所存の判例かはわかりませんが、組対法の下級審判決として
http://courtdomino2.courts.go.jp/kshanrei.nsf/webview/D5B798CE67BCDE5C49256F8E001A8557/
があるようです(暴力団関連ですが)

http://courtdomino2.courts.go.jp/kshanrei.nsf/webview/$SearchForm?SearchView
で "組織的な犯罪の処罰" によりたどり着くことが出来ます。

若隠居 (2005-07-16 23:25)

>小僧さん
ありがとうございます。
検索してみると9件でてきました。どこまで読み取れるか分かりませんが、チャレンジしてみます。

bewaad (2005-07-17 04:55)

>皆様
貴重な情報提供ありがとうございます。blog主の手を離れて議論が進歩するというのは非常にうれしいものです。いただいた情報をもとに再度エントリを起こして、少しなりともご恩返しをしたいと思います。

本日のTrackBacks(全3件) [TrackBack URL: http://bewaad.sakura.ne.jp/tb.rb/20050714]

ド素人ながら、組対法関連の判決を読んでみました。 一番面白かったのは、H14. 1.16 東京高裁 平成13年う931の判決でした。 被告人は7名(判決文では、リーダーのAを筆頭に、B・C・D・E・F・Gとなっています)。彼らは、右翼団体や同和団体を電話で恐喝・詐..

<転送歓迎> 【このビデオは必視聴】→衆議院TV平成17年10月26日法務委委員会4時間05分 . 画面左サイドバーのカレンダーから10月26日をクリック→画面から法務委員会を選択. 説明・質疑者等のリストがある.時間があれば,をクリックして全編を視聴する...

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