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2005-08-07
■ [politics]郵政政局の枠組み
明日の参議院本会議における郵政民営化法案採決の行方ですが、自民党内の反対派の数が18を超えていることは間違いないわけで、そのうち何人が賛成票を投じるかによって決まることとなります。
反対派にとって郵政民営化が望ましくないことは当然ですから、執行部の説得手法はいきおい郵政民営化関連法案が否決された際には、郵政民営化を阻止できることを上回る損が生じるから賛成してくれ、つまりは否決の場合には解散・総選挙により自民党は野党に転落するということです。
他方で、平沼赳夫議員らが法案が可決された場合であっても総理は解散するとの見方を示すのは、当然ながら賛成しても反対しても解散だということとなれば、解散がいやだから賛成という人間を反対にとどめておくためであって、本当にそうなる可能性があるかどうかは二の次です。
以上をわかりやすくまとめれば、下記において1が2を上回るなら賛成、逆なら反対というのが単純化した反対派の行動原理となります。
- 法案を可決した場合のメリデメの合計
- メリット:与党でいられる(+)
- デメリット:郵政が民営化される(−)
- 法案を否決した場合のメリデメの合計
- メリット:郵政民営化を阻止できる(+)
- デメリット:野党に転落する(−)
この整理に基づけば、雪斎さんが観測するようにこの週末は賛成派・反対派ともにさまざまな裏工作をするのでしょうけれど、それらの行動は次のように整理可能です。まず賛成派ですが、これは表に出てくるものなのでわかりやすいと言えます。
- 森前総理の否決時の解散回避の説得断念
- 反対派としては否決の上解散回避というのがベストシナリオですが、この森前総理の動きにより、否決の場合の解散回避があり得ないことを改めて示し、2.2の絶対値を増やす(2を減少させる)効果があります。
- 自民党・公明党の選挙準備着手
- これまた上と同様に、否決時の解散回避可能性を否定することにより、2.2の絶対値を増やす効果があります。
- 5日の委員会決議における付帯決議
- 郵政民営化をしても反対派の懸念はそれなりに解消されるという説得材料となり、1.2の絶対値を減らす(1を増加させる)効果があります。
かたや反対派は「ステルス作戦」「カメレオン作戦」として言動があまり表に出てこないので察する限りです。
- 「自民党としては与党でいられるかもしれないが、自分たちは党内野党として野党転落と同じ目にあう」路線の説得
- 賛成派に転じた場合には、といろいろ甘言があるのでしょうけれど、冷や飯を食わされ続けた身としては信じられないといったところでしょうか。1.1の絶対値を減らす(1を減少させる)効果があります。
- 「大差で否決すれば解散はできない」路線の説得
- webmasterはそんなことはない(=どれだけ大差であろうと否決されれば小泉総理は躊躇なく解散する)と思いますが、とまれ、2.2の絶対値を減らす(2を増加させる)効果があります。
こうしたそろばん勘定以外としては、かんべえさんが8/5付で指摘している(webmaster注:リンク先から消えている場合には2005/8のアーカイヴに移動しているかと存じます)ように、やはり永岡議員の自殺が大きかったようです。郵政法案に反対していた亀井派の議員たちにとって、「ひょっとすると、自分たちは仲間を死なせたかもしれない」ということは、絶対に認められないことでしょう。これが結果的に彼らの退路を断った
という要素が大きいように思います。客観的には裏切り者扱いが彼を追い込んだ可能性の方が高いと思いますが、おそらくは反対派もそれをうすうす察しているが故に、かたくなに自らの正しさを言い聞かせ、悪かったのは執行部だと罪の意識からの逃避を図らざるを得ません。
といいつつも、かんべえさんのように否決と読んでいるわけではなく、青木参院議員会長・片山参院幹事長のコンビは絶対に解散を回避したいでしょうし、反対派を心変わりは無理でも棄権に回らせるぐらいの力はあると思いますので(わざわざ反対も棄権も同じことだと言い放って反対票を増やした武部幹事長とは器が違うでしょう)、ぎりぎり可決ではないかというのがwebmasterの見立てなのですが。
トラックバックをありがとうございます。
この件の帰趨は、正直にいえば、「判らない」と呼ぶほかはありません。国会の中で、このようなチキン・レースが行われていた事例は、過去にあったのかと思います。
否決後に和解して、(メンツのために)解散はするけど選挙は自民党が分裂せずに戦い、結局そのまま政権党に戻って小泉続投、ということはないんでしょうかね。
郵政問題の民営化を実現するという(小泉さんの一番の目的であり且公約でもあった)ことができなければ、より懸案事項として一般的にとらえられている多くの問題を解決するのはほぼ不可能ではないか?要するに、ピンポイント的に目標としてとらえ、紆余曲折あったにせよ、ここまでこぎつけてきたことさえも実現できないのであれば、いくらリーダーシップをとろうとも「無理なものは無理」で伸ばされていってしまう懸念を感じざるを得ません。自民党の内輪揉めが日本全体の問題を解決するための壁になっている感じをうけるのですが、どうでしょうか?
政治に疎い田中です。笑。例えば、衆院で自民が野党に陥落しても参院自民の力が衆院自民よりも強まる(価値が大きくなる)ことで参院自民の方々の法案反対のインセンティブもあるのではないですかね?
>雪斎さん
あと10時間もすれば結果が出るわけですが、小泉総理以外であればもっと妥協するかあきらめるかのいずれかでしょうから、リアルタイムで体験したものではこのようなチキンレースはなかったように思います(角福戦争のころはよくわかっていないので比較できないのですが)。
>一国民さん
小泉総理は自分に逆らった人間を許すような人間ではありませんし、それは反対派もよくわかっている(帰順したところで今まで以上に冷や飯を食わされる)でしょうから、そのシナリオは考えづらいように思います。
>匿名希望さん
そのご指摘が成立するためには、郵政民営化が真に有益な改革であるか、そのやり方が妥当なものであったかである必要があると思います。現段階では政府部内の人間として言いづらくはありますが、どちらもそれほど高い点数がつけられるものではないように思います。
>韓流好きなリフレ派さん
パイの取り分が増えても、パイそのものの大きさが与野党では全く違いますから、あまりそのインセンティブはないと思います。参院自民党だけで参院過半数を占めているなら若干違うかもしれませんけれども。
民営化しようがしまいが今の経済状況では郵貯・簡保は国債で運用するでしょうから、郵政民営化は経済的にはあまり意味があるとは思えないけど、政治的には逆鱗だったみたいですね。
何故これほどの逆鱗だったのかを考えると、やはり特定郵便局長というのがものすごいロビー団体だったのかなという気がします。
郵貯・簡保の運用問題とか、過疎地の郵便局維持とかからは、これほどの政治的エネルギーは出てこないでしょうから。
郵政民営化そのものはあまり意味があるとは思えませんが、特定郵便局長を政治から排除できるという点では、大きな改革なのかもしれませんね。w
集団行動あるところかならず利益集団あり。特定郵便局長をこわして旧橋本派をこわしても、それで日本の政治が利権フリーにならないんでしょうね。もしかりにすべての集団行動に既存の利益集団がなくなったら、その瞬間に新たな利益集団が膨大な利益を得ることになるんでしょうね。
ところで否決されましたので、ブログで勘のみで可決を予想していた僕とbewaadさんの政治予測屋としての真贋が問われましたね。もっともテレビみたらハマコー以外はかなり読みはずしていたようですけども 笑
ほとんど冗談に近いですが、
郵政法案を「可決」した衆議院が「解散」というのは、何か不思議なような気もします。解散を避けるために、衆議院議員は何をすればよかったのかしらん、と。
>韓流好きなリフレ派さん
確かに利益集団の存在は避けられないかもしれませんが、ずっと同じ集団が利益を得るよりは、時々利益集団が入れ替わる方が、ずっと良いと思います。
小泉首相が利益集団を作ることは性格からしてなさそうですが、この先誰がどんな利益集団を作っていくか、興味深いですね。
利益集団周流説ですね(^^)。そこが一般化するのが難しいような気がします。既存の利益集団はレントの最大化をしているでしょうから、彼らを排除して仮に違った利益集団が生まれるとすると場合によっては従来の最大レント値よりも大きな利益をあげる可能性さえでてくるでしょう。以下はスティグリッツの『世界を不幸にしたグローバリズムの正体』からの引用です。
「おそらく民営化にともなう最も深刻な心配は、実際にあちこちで頻発している腐敗だろう。市場原理主義者は、民営化によってエコノミストの言う「レント追求」が減るという決まり文句を口にする。役人が政府事業の収益を掠め取ったり、自分の友人に契約や仕事を斡旋したりすることができなくなるというのである。
しかし、その言い分とは反対に、民営化は事態をいっそう深刻にしてきた。今日、多くの国では、民営化は「収賄化」だと揶揄されているほどである。政府が腐敗しているからといって、民営化すればその問題が解決できるという証拠はほとんどない・結局は、会社を私物化していたのと同じ腐敗した政府が、民営化の舵を握るのだ。あちこちの国で、政府の役人は気づき始めている。民営化をすれば、もう年一回だけ収益を掠め取るだけで満足する必要はないのだ。政府事業を市場価格より安く売れば、資産価値のかなりの部分を次の役人に残さず、自分のものにしておける。実質的に、彼らは未来の政治家はかすめとる分の大半を、いまのうちに盗んでしまえるのである」(邦訳93-4頁)。
例えば民営化された道路公団では、公団職員がファミリー企業に「横滑り」し、そこで長期的契約を結んでもこれを排除することは私企業であるかぎり困難ではないでしょうか?
国営であれば直接規制できますが。
民営化されているなら「公団職員」ではなく「民営化会社職員」ですね。スマソ。
それと民営化がやはり汚職解決に役立つという研究もありますので念のため。
>韓流好きなリフレ派さん
利益集団が交代すると、従来より大きな利益を上げる場合も小さい利益しか上げられない場合もあるでしょう。
そして、民営化の過程で従来の利益集団が弱体化して新たな利益集団が生まれるとして、どちらの利益が大きくなるかは、民営化のやり方次第だと思います。
日本で過去に行われた民営化(JRやNTTなど)を見ると、民営化後には民営化以前ほど大きな利益集団は生まれていないと思います。
だから、日本政府の民営化の手腕は、スティグリッツの本にあるような酷いものではないと思いますよ。
そんなに酷くはないかどうかはまだわかりませんよ。スティグリッツの話を応用すれば、例えば旧国鉄債務処理の問題も関わりますから。いいかえると国民が一方で負担を負い続け、他方で民営化会社が利益を得続けているとも解釈することが可能です。このときJRの利害関係者すべてが利益集団でしょうか? NTTについてはよくわかりません、すみません。道路公団民営化も民営化スキーム自体は新直轄方式とこみこみですから、後者をみれば利益集団は現状維持ではないでしょうか?
それと今回の郵政法案廃案では、最大の利益集団ならぬ利益個人の小泉氏を生み出しかねないというのがオチなんですが 爆
民営化のやり方次第であるというのは基本的に賛成です。
否決キター!
各個撃破が怖いので二、三の生贄を除いて新党とか分裂はないでしょう。冷や飯でも食えないよりはましと・・・。
>韓流好きなリフレ派さん
旧国鉄債務があれほどの規模になったのは、旧国鉄の経営のまずさだけではなく、政治家の我田引鉄による部分も大きいでしょう。
そんな政治家を選んだのは国民ですから、債務の相当部分を国民負担とするのも、無理な理屈ではないと思います。
このケースではJRの利害関係者が利権を得たとは言えないでしょう。
スティグリッツの引用をよくよんでください。以上です。
それとその我田引水をした政治家を選んでいない私(そのとき選挙権ないです)などは負担しなくてもいいということになりますが、それではまずいでしょ?
民営化するときには、潜在的な国民負担の問題は生じているようですよ、JRもそうですが、郵政民営化廃案スキームでも旧会計問題、道路公団でも二階建て部分問題などがありました。まっさらなバランスシートの民営化会社をつくるときにはかならずそれに伴って潜在的・顕在的な国民負担の問題がありますよ。これを民営化会社の「利権」と表現することも可能ですし、民営化して株式売却したいまでは、将来にわたって国民は旧債務を払ってもそれに見合った資産はないです。事実上、JRに払うレントになっていると思いますよ。
スティグリッツの引用をよくよんでください。以上です。>
は誤送信です。あまりにこれではなんだな、と削除しようと思ったらenterおしちゃつた。すまそ
>Baatarismさん、韓流好きなリフレ派さん
充実した議論ありがとうございます。コメントのレベルがエントリのそれを追い抜いていくのは実にblogger冥利につきます(笑)。
圧力団体論についてちょっと思うところを申し上げるなら、特定郵便局長の政治力は今ではそうたいしたことはないのではないでしょうか。2ちゃんでコピペもされていますが、高祖元議員の選挙違反で締め上げられ、前回参院選では荒井・長谷川両議員の得票数を合計しても竹中大臣のそれに遠く及びませんでした。
国鉄民営化や道路公団民営化の事例を見るに、小泉総理の路線に乗っかった旧郵政本省の役人が、特定局長や組合が反対している間に、民営化後の土俵をちゃっかり自分に有利に整えつつあるような気もします(もちろん昨日の否決があり、選挙結果によってはこの旧郵政本省の賭けは裏目に出たことになるのですが)。
>山下さん
解散回避は、参院本会議での可決のみによってしかなされ得なかっただろうと思います。
>一国民さん
反対派は公認せず、しかも対立候補を立てるとのことですから、その選択は小泉総理側から断ち切りましたね。ま、彼は絶対に敵対者を許さないと思います。
書いたとたんに公認なし報道でちゃいましたよ。
でも反対派の方々は、とりあえず否決にしたわけだから、後はいかにうまく自民党に戻るか、を考えているのではないかと思うのです。
それが反対派のどうしようもない甘さだと思います。絶対に反乱を許さないのが彼のキャラですが、今回の選挙で負けない限り彼が総理を退任した後においても隠然たる影響力を有するのは間違いないわけで、彼が現役である間はおろか退いた後だって、無条件降伏でもしなければ復帰などできるはずもありません。その点を見抜いて危険視した野中広務の爪の垢でも煎じて飲めと。