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2005-08-17
■ [politics]選挙提言に見る構造改革原理主義の一例
21世紀臨調が「総選挙に向けての緊急提言」を出し、佐々木毅先生らが記者会見を行ったということですが、正直申し上げるなら、ずいぶんと先生の業績に似合わないいいかげんなものではありませんか、という気がwebmasterはしてなりません。
例えば、次の部分などを見るに、今回の郵政民営化関連法案における否決のような事態があってはならないとのお考えであるように見受けられます。
前回の総選挙において政権公約選挙を提唱した我々の立場からすれば、今回の総選挙は「政権公約実質化選挙」である。今度の解散総選挙が政権公約の意味や役割についての政権党内の共通了解の曖昧さや不徹底に起因することは明白である。そして、「政治の構造改革」なしには構造改革も不可能なことが改めて明らかになったといわざるを得ない。こうした事態が繰り返されないよう、自民党、民主党は政権公約の内容においてもその実現性についても重大な覚悟をもってこの選挙に臨むべきである。
言うまでもなく、両党の政権公約はその政策内容において包括性、体系性を持つことが求められる。また、他党と広範な選挙協力を行う場合には内政・外交を含む「連立政権公約」を事前に有権者に示さなければならない。その実現の具体的な方途が示されない限り、政権公約は画餅に帰すことは正に今度の事態が物語っている。政権公約を遵守することが当該の政党の候補者であるために必須の条件であることは当然として、官僚制との関係においてどう政権を運営し、国民との約束を実現するかも明らかにすべきである。
(略)
1. 有権者が政権を選択するために
1) 総選挙は政権の選択を有権者に迫る選挙であるから、政権の掌握を目指そうとする政党は「首相候補」「政権公約」「政権の枠組み」をセットで示す必要がある。また、新人候補を含むすべての公認候補者に対して、政権公約の実現に関し「連帯して責任を負うこと」を誓約させるべきである。
すべての公認候補が政権公約の実現を誓約しているわけですから、今回のようなケースは誓約違反ということになるので防止されると。
しかし21世紀臨調は、平成13年に出された「首相主導を支える政治構造改革に関する提言」と題した文書において、次のような指摘をしています。
さらに、与党によるこのような事前審査が国会審議を空洞化させ、国会の「法案処理機関化」に拍車をかけていることも忘れてはならない。与党議員からすれば、法案の実質的な審議や政治的調整は国会審議に入る以前の与党審査の段階で事実上終了しているため、国会審議は法案を、できるだけ修正なしに速やかに成立させるための儀式でしかない。
えーっと、与党議員がすべて政権公約の実現を誓約している場合においては、国会の「法案処理機関化」が一段と進むような気がするのはwebmasterだけでしょうか?(笑)
この政治構造改革に関する提言、その冒頭は次のようなものです。
今日、日本は危機的状況にある。政治、経済、社会の国際的な変化にたいし日本型といわれてきたシステムは明らかに機能不全を起こしている。この危機的状況を乗り切るには抜本的な構造改革が必要なことは誰の目にも明らかであり、それにたいする処方箋もすでに数多く提示されている。しかし、問題が表面化して以来、長い歳月を経たにもかかわらず、必要な改革は遅々として進んでいない。
「聖域なき構造改革」をスローガンに登場した小泉内閣は国民の圧倒的な支持を背景に、この問題に正面から取り組もうとしている。しかしそのためには、首相を中心とする内閣の力強いリーダーシップの確立が不可欠であることは誰の目にも明らかであるにもかかわらず、現実の政策決定の仕組みはあまりにも多くの問題を抱えており、それ自体が、構造改革の最大の阻害要因になりかねないことが憂慮されている。
ここで示されている現状認識が、先の緊急提言のそれと同じものであることは一目瞭然です。各パーツにおいてはそれなりに理論武装をしているものの、結局は彼(女)らが必須だと考えている構造改革の実現を妨げているように見えるものを否定しているだけなので、全体としては非整合的なものになってしまうのではないでしょうか。
いくらこうした中で単一争点的な選挙が行われることは、諸課題が山積している現状を考えると事実上の「白紙委任」につながり、後に新たな混乱状態を残すことになる
と少しは良識の残っているところを見せたところで、アメリカのファストトラックよろしく政策パッケージ全体を一括して選挙で帰趨を定めてしまうわけですから、例えば郵政民営化は賛成だけど年金は反対だとか、外交政策は賛成だけど農業政策は反対だとか、そういった個別の問題の賛否は無に帰して選挙に勝ったという事実だけが残ります。安直に政権公約を国民との約束だなどと呼んでいますが、平均点において優れていることを示しているに過ぎない選挙結果が満点であるのと同じ効果をもたらす乖離を不可避的に含まざるを得ないにもかかわらず、そうしたイメージに流れる言葉で正当化してほしくはありません。
ま、政権公約のうち彼(女)らが反対するものについて実行に移された場合にどのように評するか見ものではあります。自らそうした世の中を望んだのだから必要なコストとして受け入れるのか、それともその政策が評価されて選挙に勝ったわけではない、それよりも公約中の別の政策を実現すべきとでも曳かれ者の小唄を口ずさむのか。前者なら整合性は評価しますがずいぶんと役人的(笑)だと思いますし、後者なら正直な人間性に好感は覚えますが知識人としての信頼性はないものと評価せざるを得ないでしょう。
簡単に整理すると、この手の人たちは
(あ)日本の停滞とか危機的な財政赤字の発散とかは、構造問題が原因。
(い)そしてこれに加えて(あるいは加えなくても)将来の少子高齢化による高負担(構造問題)が日本を「危機」に。
そういう考えをもった人が扇情的二元対立という中で大挙露出してきたんでしょうね。2001年の春先ごろとなんらかわらないですね。苦笑。ところで(い)が現実だったらスウェーデンやいまのユーロ圏の多くの国はとっくに国家破綻か、街を歩く人は高負担で顔面真っ青ですが 笑。
北欧と違って日本には抵抗勢力がいるので、高負担低福祉(中間で「搾取」がある)になってしまうから破綻するというロジックではないかと思っています。
最高税率を下げる一方消費税を作って税率を上げたり、はては稼働できない障害者に負担を求めるなど、負担能力のある者の負担を減らす一方で負担能力のない者から毛をむしるような"構造改革"やってる日本。
危機の源である構造の問題って、この手の構造改革の成果とちゃうんか? (^_^;)
>>BUNTENさん
「有能な高所得者層」を優遇すればそれだけ社会全体のやる気が引き出され生産性がアップするって話でしょ。頑張ったご褒美がもらえるってことで。しかしバスケットのゴールがほどほどの高さにあるから頑張れるけど、100メートル上空にあったら・・・という話がありましたが、格差が大きすぎる社会ではモラール低下のデメリットの方が大きいと考えられます。現にそれが顕在化してきてるふしがあるのでは。
>BUNTENさん
最近の高い若年失業率や若年労働者のパート化はNAIRUを引き上げる効果があると指摘されてますよね。実際、どれだけかという計量的な分析はなされていないようですが。
>すなふきんさん
私の誤読だったら大変失礼なのですが、BUNTENさんはあくまで小泉政権の政策を皮肉っているのであって、すなふきんさんと同様の問題意識をお持ちです。「構造改革」の結果、日本経済に中長期的に悪影響を与え得る構造問題が生じつつあるのではないか、と。