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2005-08-19

[politics][economy]郵政民営化と解散を考える・その3の2:郵政非民営化改革私案(考え方)

昨日示した制度の概要について、なぜそのようなものとしたかについての考え方を述べます。

郵便

実は金融(貯金・保険)よりもこちらをどうするかずいぶんと迷いました‐信書のみに業務範囲を縮小すべきか、それとも現状維持とするかで。小包は民間宅配便の普及を考えれば、国営事業として行わなくともかまわないのではないかという気がするからです。最終的には万国郵便条約等においては小包も郵便物としてユニバーサルサービス提供義務の対象としているので現状維持がいいかと思うに至りましたが、例えばヤマト運輸が訴えているように、それこそ「民でできること」に官が割り込んでいくのはいかがなものかと思います。

#その他にもヤマトは、クール宅急便など彼(女)らが開発した商品を公社が取り扱う必要はない等のことを主張していますが、もっともなことだと思います。

こうした制度の下ではジリ貧ではないか、Eメールの発達等により信書は先細りではないかとの指摘がよくなされますが、では東谷暁さんが指摘するアメリカでは近年においても取扱郵便物数が増えているという実態をどう考えるべきなのでしょうか。そもそも日本の国民一人当たりの差出郵便物数は世界16位にとどまっていて、トップのアメリカの1/3以下ですから、もちろん小切手を郵送して決済するという習慣の有無等による差もあるでしょうけれど、まだ市場開拓の余地があることはほぼ間違いないでしょう。

#ほかにも東谷さんは有力な説として金融経済が拡大すると郵便物が増加するという議論があるとしていますが、これが正しいなら、デフレ放置の構造改革路線はマッチポンプということになります。まあ「景気が回復したら改革する気がなくなる」という発言があるのですから当然といえば当然ですが(笑)。

ジリ貧論の延長線上にあるものとして、国際物流への進出が民営化後の輝かしい未来として称揚されるわけですが、そんなノウハウもなければ既存リソースの転用・活用も覚束ない新規事業を国策会社である民営化郵便会社にやらせてどうしようというのでしょう。ミクロ介入大好きな現政権の特徴をよく表しているともいえますが、そんなものはそれこそ日本通運などの民間企業に完全に任せて、割に合わないと判断して進出しないのであれば放置しておけばよいのです。

#ミクロ介入政策としても、上記のように愚かしいものだと思いますが。仮に国際物流に日の丸企業が必要で政府が関与すべきだというなら、日本通運にJALや日本郵船を政府介入で合併させる方がまだ成功する確率が高いでしょう。

郵便貯金等

簡易保険にも共通することですが、現在その運用の過半を国債等で行っている郵便貯金は金融仲介においてリスクをとっているわけですが、国営を維持する場合、このリスクテイクにはまったく合理的理由はありません。昨日も申し上げたように、多くの郵政民営化反対派が主張する金融のユニバーサルサービス提供とはすなわち全国で決済・貯蓄が行えることを意味するのであって、その運用を求めるものではない一方で、最終的には郵便貯金に預けられた資金の多くが国の資金調達に用いられているのですから、郵便貯金の金融仲介をスキップして国が直接調達すればこのリスクはまったく負う必要がないからです。

この整理に基づけば、定額貯金等の貯蓄性貯金を個人向け国債で代替するのは当然の帰結となります。もう少し商品性の多様化が図られれば、利用者から見れば従来と同様の利便性が確保される(限度額がない点では従来以上の利便性となります)こととなる一方で、国が抱えるリスクの総量は減じるわけですから、誰にも文句はないでしょう。

決済性預金は多少状況が複雑になります。その中でも郵便振替については、預金保険制度においても全額が青天井で保護される決済用預金と商品性が同じですから、引き続き政府保証付・限度額なしという現行制度を維持するというシンプルな解で問題ないのではないかとwebmasterは思います。預金保険料を払わないことが見えない国民負担だというなら、相当額を政府が保証料として徴収すればいいだけの話です。

他方で通常貯金は、あれこれ考えた結果MRFスキームとしたわけですが、ここには議論があると思います。webmasterのコンセプトは、通常貯金も決済に用いるものなので郵便振替と一括して事務処理ができるよう郵便貯金自身の債務とする(=代理店としての民間銀行等の預金の代理取扱いとはしない)ことが適当と考えたのですが、他方で預金受入れは信用がダイレクトに反映しますから、国営事業としての郵便貯金を維持し、その商品性を現在と同様とした場合において、国の信用分だけ不必要に資金を集めてしまうおそれがないわけでもありません。現在のようなデフレ下においてはたいした歪みになるとは思いませんが、恒久制度としての妥当性には疑問が残ります。

そこでMRF、つまり元本保証なし(当然政府保証なし)の商品とすれば、国の債務ではあってもその信用故に資金が集まりすぎる可能性は相当減るだろう、というのがwebmasterの結論です。元本保証なしなら限度額を撤廃してもよいかな、とは思いましたが、資金が集まりすぎる可能性を減らすに越したことはありませんし、一定額以上の貯蓄をする者が全額を流動性の高い資産につぎ込むというのも想定しづらい状況ですから、限度額は設定しておくに如くはなしと考えています。

現行の通常貯金に比べれば元本割れの可能性が少ないとはいえ生じるのでその分利用者利便は下がりますが、ナショナルミニマムとしての決済手段提供としてはそのぐらいの利便性低下はやむを得ないのではないでしょうか。といっても、ここはナショナルミニマムとして妥当な水準を政策としてどう判断するかという点なので、要すれば国民の多くが妥当と判断すればそれが正解になるわけですから、現行の商品性でよいということであれば私案にこだわるつもりはありません。

ちなみに郵便同様、今後の経営は苦しいのではないかとの指摘があるところですが、その理由として挙げられるのは将来のあり得べき金利上昇に伴うスプレッドの減少ですから、これまで国としてリスク総量が減ると繰り返しているように、以上の新郵便貯金のようにそのリスクをオフバランス化することで回避されることになります。定額貯金の預け替えにしても、既往の契約のみを維持して新規受入れはしないわけですから、預け替え=既往契約の解約となり、金利リスクに対する経営の安定性はむしろ改善されるのです(流動性リスクはもちろんきちんと管理する必要がありますが)。

#民営化でも国のリスク総量は減るではないかというご指摘もあるかと思いますが、常識的に考えて民営化郵便貯金はtoo big to failであり、つまりは国のリスク総量は必ずしも減るものではないと思います。

若干蛇足ですが、金融のユニバーサルサービスが真に必要かどうかについて、それをナショナルミニマムと政策判断されるなら経済合理性は必ずしも求められないとは思いますが、ユニバーサルサービスの提供を確保することで、タンス預金として死蔵される資金が減るという点はマクロ経済的にも有利な部分であることを申し添えておきます。

簡易保険

現在の保有契約高を見るに年金保険と養老保険という貯蓄性保険で過半を占めているので、全部(多様化された)個人向け国債で代替してしまいそれで議論終了、とするのが楽でよい(笑)のですが、これもナショナルミニマムとして保障性保険が求められないとも限りませんので、その場合に用いるべきスキームとして編み出したのが民間生保の共同引受保険の窓販です。

これは新通常貯金(MRF)とは異なり、あくまで民間生保の資金となるもので、郵便局はあくまで資金の導管に過ぎませんから、資金集中を回避する観点からの限度額の設定は不要ではないかとwebmasterは思います(当然政府保証はなく、民間生保商品同様に保険契約者保護機構による保護を受けるのみとなります)。ただし、例として挙げた住宅金融公庫融資に係る団体信用保険は貸付額が限度額ですし、同様に政府が関与する特別の保険である自賠責(スキームは相当異なりますが)も限度額が決まっているものですから、競争政策の観点から限度額を設定するのも一案であると思います。

#リスクやユニバーサルサービスについての議論は郵便貯金と同じですので繰り返しません。

本日のツッコミ(全2件) [ツッコミを入れる]
INOSAN (2005-08-23 22:46)

>bewaad様、
いつも蒙を啓かせられるエントリありがとうございます。
遅きに失っしますが、今回のエントリは、これまでの郵政民営化に関連するところ最も得心の行く代案でありました。ただし留保条件付ではありますが郵貯のユニバーサルサービスとしての意義を述べられている所、タンス預金との関連を考慮するならば、よりそういうサービスを必要とする地域とそこでの預金量との関連を調べる必要があるのではないかと考えます。
ご紹介の文献を読ませて頂いた上でなお、地銀、第2地銀の利用の程度を考慮しますとやはり、代替が利くのではないかと感じております。簡単な感想で申し訳ありませんが、ご意見頂けたら幸いです。

bewaad (2005-08-24 05:17)

ナショナルミニマムかどうかは経済的利害のみで論じられるわけではないと思います、と逃げ道(笑)を用意した上で申し上げますと、現時点で計量データは見つけてませんが、多分たいした量はないと思います(ただし競合先は、地銀・第二地銀よりは信金・信組・農林系統だと思いますが)。

ちょっとさがしてみますが・・・。

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