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2005-09-09
■ [economy]文科系人間には大した問題だとは認識できない郵便貯金
以前にも構造改革について論じたテキストを取り上げさせていただいたsatoshiさんが、さらに「理科系人間にも分かる郵便貯金の問題点」と題して郵便貯金について論じていらっしゃいます。メディアなどで郵便貯金の問題点として語られる事象が簡潔にまとめられていますので、再度取り上げさせていただくことにより、「問題点」を検証してみたいと思います。
我々日本人の貴重な財産のうち、320兆円という巨額なお金が郵便貯金という形で郵便局に預けられている。なぜ多くの人々が郵便貯金を選ぶかというと、(1)出し入れが自由なわりに金利は低くない、(2)「政府が保障してくれる」という安心感がある、からである。「安心で、便利で、金利も悪くない」のであれば当然である。
日銀の資金循環統計からここ6年間の預金残高の動向を抜き出すと次のとおりです(断りのない限り単位兆円)。
| 年度 | 全預金(A) | うち民間預金(B) | うち郵便貯金(C) | C/A | C/B |
| 1999 | 1,091.7 | 830.0 | 261.7 | 24.0% | 31.5% |
| 2000 | 1,102.1 | 850.8 | 251.2 | 22.8% | 29.5% |
| 2001 | 1,106.0 | 864.8 | 241.2 | 21.8% | 27.9% |
| 2002 | 1,106.8 | 869.1 | 237.7 | 21.5% | 27.4% |
| 2003 | 1,125.1 | 893.3 | 231.7 | 20.6% | 25.9% |
| 2004(P) | 1,120.3 | 901.0 | 219.3 | 19.6% | 24.3% |
「ここ6年」とは1999年度が郵貯残高のピークなのでそれ以降ということですが、近年明らかに郵便貯金は民間預金に対して競争力がなく漸減傾向となっています。これは一時的な傾向というわけではなく、公社スタートのときの資金量233兆円については、1期4年の終わる平成18年度末は208兆円になり、10年後の平成25年には約150兆円になる、というシミュレーションをしている。公社のスタッフのシミュレーションは、過去相当の確度をもって当たってきている。したがって、資金量を徐々に健全スリム化にしていくというのは、まさにその流れの中で今順調に推移している、というふうに理解していただいていい
と郵政公社の生田総裁も発言しているとおり、構造的にそのような傾向となっています。
satoshiさんご指摘の特徴は定額貯金を念頭に置いたものかと存じますが、このご指摘は1992年の定額貯金金利設定ルールの変更前においてのみ妥当するもので、最近のこの動きはルール変更後10年(=定額貯金の最長預入期間)を経て不当な有利性は存在しなくなったことの証拠といえます(1999年度がピークであるのは、バブル期に集中的に預け入れられた高金利定額貯金が満期を迎えたためです)。
変更後のルールにおいて定額貯金の金利(3年超に一律適用の部分)は、順イールド時には民間の3年定期預金金利よりも、逆イールド時には国債の10年金利よりも低い水準に設定されることとなっています。つまり、「金利は低くない」ということはありません。また、政府保証については、預入限度額が1000万円である以上、預金保険制度が適用される民間預金と実質的に差はありません。
残る「出し入れが自由」ですが、世の中の金融商品で満期前に引き出したところで刑務所に放り込まれるようなものはありません(笑)ので、俗に言われる定額貯金が出し入れ自由とは、満期前の引出しに当たって生じるべき損が回避可能であるということを指します。「生じるべき損」とは簿価と時価との差額で、例えば1%(単利)の10年国債を購入し、発行後5年経過時に5年国債が5%(単利)だから乗り換えようと10年国債を売却する際には、額面の17%程度の売却損が生じる(=残存5年間の利子と満期償還金を年5%で割り引いた現在価値は額面の約83%)ことになります。
定額貯金は満期前に引き出しても適用金利が変わらないことから「出し入れ自由」と言われるのですが、例えば東京三菱銀行、三井住友銀行、UFJ銀行の定期預金がそうであるように、民間預金であっても適用金利が引き下げられこそすれ、債券のように元本を割り込むことはありません。その限りにおいて民間預金も債券に比べればよほど「出し入れ自由」であり、定額貯金との差は程度問題です。
理論的には、これらは金利上昇に当たって生じるはずの時価下落をプットオプションでヘッジしているのと同じで、部分ヘッジ(元本のみヘッジ)の民間預金とフルヘッジの定額貯金のオプションプレミアム格差が上記の金利設定ルールにおける官民金利格差(定額貯金が制度的に民間定期預金よりも低金利商品と位置づけられている)に相当します。郵貯の残高の漸減は、このプレミアム格差は預金市場において定額貯金はむしろ不利な商品性として預金者から評価されていることの表れ以外の何物でもありません。
したがって、なぜ、「出し入れが自由なわりに金利は低くない」なんていう魔法のようなことが出来るかというと、郵便局には、一般の銀行に課せられたさまざまな義務(税金、保証金、従業員のための年金の負担など)から免除されているからである
とのご指摘は、以上のとおりそもそも前提において「魔法のようなこと」ではないのですが、後段についても、税金がない代わりに国庫納付制度が設けられている、保証金(=預金保険料?)がない代わりに特例的に一般会計に5年間で1兆円も上納させられる等の資金負担があり得る、年金に至っては民間並の事業者負担分のみならず国営ということで基礎年金の国庫負担分まで事業収入から捻出しておりむしろ民間より不利である、といった点を見ない片手落ちのご指摘といわざるを得ないでしょう。
#その他にも、ユニバーサルサービス提供のための不採算郵便局の維持等のコストも負担しています。
しかし、政府の機関である郵便貯金は、市場原理を無視して国債、地方債、財投、財投機関債、などの政府自身、もしくは政府が作った特殊法人の発行する債券を買う、という形で運用されてきたのだ。この市場原理を無視した郵便貯金の運用のために、政府や特殊法人が経営努力をろくにしなくとも、不当に低い金利で資金を調達できる、という状態が長年続いて来たのである。
前回satoshiさんのエントリを取り上げた際にも論じましたが、民間貯蓄の運用先は民間、政府、海外のいずれかの資金調達の原資となる以外に選択肢はありません。仮に郵便貯金が存在せず銀行等の民間預金取扱金融機関に資金が流れていたところで、結局は同額の政府資金調達に振り向けるより運用先はなく、現状は「不当に低い金利」ではないのです。
銀行等なら民間資金調達に運用できた? 銀行等が「不当に低い金利」である国債にあれほど運用して貸出を減らし続けていることからわかるように、借りる側に資金需要がなければ、いくら貸したくても貸せるものではありません。銀行等なら海外資金調達に運用できた? 海外への資金運用の純額を増加させるためには、モノやサービスを販売して得た債権=経常収支を増やすよりほかなく、銀行等の資金仲介部門がどうこうできる話ではありません。結果は大差ないのです。
ちなみに郵貯の資金運用における国債購入は(財投債の経過措置引受を除き)市場でなされており、その限りにおいて市場原理を無視しているわけではなく、市場で形成された条件に従っていますし、市場での売買は民間投資家と全く同じ立場でおこなっています。ちなみに、1999年度の数字ですが、アメリカでは有利子国債約5.6兆ドルのうち、2兆ドル弱(約35%)は連邦政府が非市場性証券のかたちで保有しており(公的年金の運用として)、これらは市場で売買されることはありません。市場原理によりそぐわないのはどちらでしょうか?
これだけでも、とても先進国で起こっている話とは信じ難い話だが、もっと恐ろしいのは、この「経営努力をろくにしていない特殊法人に低金利で貸し出しているお金」のどのくらいが既に不良債権化してしまっているか(=特殊法人の事業が経営破綻状態にあり、借金を返せる状態に無いか)を誰もきちんと把握出来ていない、と言う状況である。郵政を民営化して、郵貯の運用先をきちんと把握して不良債権を処理したら、実は100兆円が焦げ付いていた(つまり、100兆円を税金で補填しなければならない)、という可能性も十分ありうるのである。
財投機関に由来する将来における広義の国民負担見通し(補助金等の投入に加え、政府出資の機会費用等を含むもの)の割引現在価値は政策コストとして毎年政府が公表しており、平成17年度で5兆円強とされています。別に政府試算が絶対だと主張するつもりはなく、その内容についての議論は大いに歓迎すべきことだとwebmasterは思いますが、根拠のない決め付けはいかがなものでしょうか。
そもそも論をいえば、財投債ではなく全額を建設国債や赤字国債に運用すればそれらすべては税金から償還される(リフレ派のくせに通貨発行益を無視するのか、といったツッコミはなしで(笑))わけで、償還原資が何かのみに議論を収斂させることには疑問がないわけではありませんが。保有主体が郵貯か民間投資家かで変わる話でもありませんし。
#ちなみにこの財投の不良債権が100兆円にもなり得るという話、ネットでよく見かけるのですが、どのあたりが情報元なんでしょうか・・・。
財投不良債権100兆円の話は、このへんじゃないでしょうかね。
http://www.election.ne.jp/10008/archives/0001526.html
定額貯金の評価が馬車馬さんとは随分と違う印象なんですが、
それがどのへんの解釈の違いから生じているものか、素人には
読み取れませんでした。
私のようなしろうとのうんちくに丁寧に答えていただいて、大変感謝しております。私としては、決め付ける気もないのですが、どの政党も実際のデータに基づいた政策の議論をしてくれないので、しかたなく自分で集めた情報に基づいて「私なりの解釈」をするしかない、と考えました。私としては、ここでしているような突っ込んだ議論こそ、自民党と民社党の間でするべきと期待しているのですが、全くしてくれないのが残念です。多くの政治家は相変わらず「我々は国民の生活を良くします」「弱者を守ります」なんていう優等生的なキャッチフレーズだけを連呼していますが、私としてはそんなイメージ作りの台詞より、もっと具体的な政策の話が聞きたいですね。
9/6の朝日朝刊1面に「民営化により経済活性化(資金が官から民へ)というのはウソなので、自民党も選挙戦ではそれに触れなくなった」というストーリーが載っています。
選挙前はあれだけテレビでキャンペーンしときながらねえ。
朝日新聞にまで見抜かれるとは! 笑
でも朝日にもすぐれた経済記者いますよ、何人か若い人で。取材うけたときに周到な準備と受け答えに驚いた経験ありますから。某掲示板みてませんか? と聞き返したかったくらい (^^)
政治部主導なんでなかなか構造改革主義打破、とはいえないのかもなあ。
私はどちらかというと、理科系人間のはずなんですが...以下省略w
でも、経済学は理科系人間にもわかりやすい学問ですよね。
>cloudyさん
>「民営化により経済活性化(資金が官から民へ)というのはウソなので、自民党も選挙戦ではそれに触れなくなった」というストーリー
嘘でも本当でも関係ないんじゃないですか(笑)。経済学的に正しいかどうかなんて証明しても一般大衆には馬の耳に念仏だと思います。最近ますますその確信が強くなってきました。都市の無党派は野次馬根性で日和見的に行動するだけだし、地方の伝統的保守層は何だかんだ言ってもうちは先祖代々自民党だから今度も、という感じでしょう。小泉さんの戦略はどちらも取り込むことに成功しています。彼が絶対に自民党を割らなかったのはそうした読みがあったのでしょう。(エントリから脱線気味ですがご容赦・・・。)
http://www.asahi.com/politics/update/0910/001.html
> 細田官房長官は4日、松江市での講演で「公共事業や社会保
> 障の積極財政論者は郵政法案に反対した人とかなり一致する。> それを(選挙で)大掃除する」と語った。
そうか!郵政民営化を選挙の争点にするのは、実は潜在成長率
も達成していない中で公共事業費や社会保障費の削減を狙って
いたからだったんだ!
と、陰謀論を言ってみるテスト。
あくまで冗談ですがw
>J2さん
ご教示ありがとうございます。与党大幹部自らですか・・・内閣改造で入閣もささやかれていますが、「昔大臣は財投の不良債権が・・・」なんて質問に答えを書く担当者の苦労が思いやられます(笑)。
馬車馬さんとの違いですが、基本的にほとんど違いはなく、ただ一点、オプションプレミアムの評価にかかっています。馬車馬さんは住宅公庫ローン(ちなみにこちらはコールオプション)の分析結果から不当な商品性ではないかと類推されていますが、こちらは残高減である以上、相対的には民間商品に劣っているはず、という論旨です。
>satoshiさん
こちらこそ、問題提起をいただきありがとうございました。経済学者の肩書きを持つ人の中にもいいかげんな議論をする人がいてこまりものなのですが、こうしたやりとりが少しでも世の議論に貢献できればと思います。
>cloudyさん
その記事は読んでないのですが、だから真の改革でなくいかさま改革で、とかいったスタンスじゃありませんでしたか?(メディアにサポートされるのに慣れてないので(笑))
>韓流好きなリフレ派さん
こちらはあまりそういう取材は受けたことないですねぇ・・・って、霞が関番に経済部はいないか、いても少数派なんでしょう。
>kumakuma1967さん
理系から経済学に転身する研究者も少なくありませんし。ちなみにミクロは理学に、マクロは工学に近しいのかな、と勝手に思ってます。
>すなふきんさん
そうあきらめるのは早いのかな、というのがこうしたサイトを運営している原動力なんですが・・・。
>j++さん
公共事業費も社会保障費も公然と削減が叫ばれているからちっとも陰謀論ではないでしょう、と答えてみるテスト(笑)。
最新の情報を参照しなさいって。ちょっと調べりゃわかることなんだから……
>特例的に一般会計に5年間で1兆円も上納させられる
平成14年までの時間制限付きじゃない。今はどうなのよ。
#ミスリーディング狙い?
http://www.japanpost.jp/top/disclosure/index-j.html
http://www.japanpost.jp/ir/pdf/disclo-05k/07.pdf
平成14年以降の会計報告はここですな。
P.122の貸借対照表(公社全体)を見ると2005年度は純利益+1,237,893百万(1.2兆)だから、2,000億/年の負担はそんなにおかしくないとおもうけど。
そもそもこの中には入ってなさそうだけどね……
さて、他の銀行の場合は……
SMBC ttp://www.smfg.co.jp/financial_ir/financial/latest_statement/index.html
http://www.smfg.co.jp/financial_ir/library/disclosure/h1707_c_disc_pdf/h1707c_00.pdf
のP.142ですな。
平成16年度 純利益 △176,695百万(△0.2兆)、税金70,131百万(700億)
平成15年度 純利益 + 356,304百万(+ 0.4兆)、税金14,263百万(142億)
#調整額のせいで利益と税金のバランスが取れていませんが……
一瞬ネット環境に復帰できましたので一言。
定額貯金の問題点ですが、根本的には「ヘッジになってない」ということが問題です。3年金利でキャップをかけているということは、10年金利−3年金利のスプレッドがオプションの価格(権利の価値)であると定義していることになりますが、実際のオプションの価値は金利水準(低金利であるほど価値が上がる)とボラティリティ(金利のぶれ幅)で決まります。この2つに相関があるとは思えない、というか、むしろ逆相関している可能性がありますよね。こんなデタラメはありえないわけです。
(ついでに書くと、半年以降は自由に引き出せるのに、3年で金利がキャップがかかっているということは、3年満期として捉えた場合には昔も今もオプションがタダでついてきます。これも論外です)
更に、このオプションはアメリカンなのでヘッジがかなり難しい(デルタカーブの形状が特殊)のですが、そういう複雑なリスクを150兆円も自前で抱え込んでいるというのもありえないわけです。最近新生銀行も全く別種のデリバティブつき預金商品を発売しましたが、これのリスクは確かGSあたりにケツをもたせていたはずです。これが預金銀行としてはごく当然の態度です。そういう複雑なリスクで遊びたければ投資銀行業務でもやれや、と。自分が何のビジネスをしているのかを忘れてはいけません。
というわけで、定額貯金というのはそれ自体がクレージーな商品であるという結論に至るわけです。それを150兆円とは、その度胸はさすが親方日の丸、というわけで、やっぱり民営化しなきゃダメだよ、という流れになるわけですね。
こういう話をエントリーに載せたかったのですが、時間切れで断念しました。
>なんかなあ……(SMBC)さん
年2,000億と書かずに5年で1兆と書いたのは時限的な特例措置という含意だったのですが、ミスリードでしたら申し訳ありません。
また、原則は利益の50%納付が義務付けられているところ、現在は特例期間として国庫納付が免除されているので、民間銀行に比べて負担が少ないのはそれによるところが多いと認識しています。
>馬車馬さん
実際には3年定期に掛け目(記憶では0.9)でキャップをはめてますので、もう少しプレミアムは見込んでます。
これは些細な話なので以下本論ですが、エントリにも書いたとおり、定期預金にしても定額貯金と同種のリスクは抱えているわけで、定額貯金だけをことさらにリスキーだとするのはいかがなものでしょう。
また、定額貯金の商品性が問題であるなら、それを改善するか、いっそのこと個人向け国債窓販に特化させてもよいわけで、それに対する処方箋として一足飛びに民営化が出てくるのも不自然ではないでしょうか。
やっとネット環境に復帰しました。もう今更という気もしますが。まず上でJ2さんとのやりとりがありましたが、プットのプレミアムをコールで代用することにはそれほど問題はありません。少なくとも、at the moneyであれば(金利デリバティブの場合、確率分布が非対称なので色々とややこしいですが・・・)。
で、定期預金との違いですが、定期預金の途中解約でどの程度のペナルティが取られるのか良く分かりませんが、もし同種のリスクを抱えているのであれば、金利上昇時の借換が発生して定額も定期も同時期に大量満期を迎えるはずです。実際にはいわゆる「郵貯の2000年問題」の際にもおたおたしていたのは郵貯だけであり、定期預金のリスクは無視できるほど小さいと考えてよいでしょう(理論的には、定期預金は時価を持って解約されるが、元本は割らないようにフロアオプションがあらかじめ設定されており、その分国債利回りよりも若干金利が低くなっていると考えるべきでしょう。実際にそういう計算をしているとは思いませんが。というより、クレジットの観点からは定期預金利回りは国債よりも本来高くなければいけないわけで)。
蛇足ですが、別のエントリーでご指摘の98年前後の郵貯の赤字は、このプレミアムが集中的に顕在化したものと言えます。そういうことがBS,PLに明示的に表れないというのも論外です。
民営化の是非はもう少しエントリーで細かくやりたかったのですが時間がありませんでした。結局、官営であることがこの種の問題を生んだと仮定したとき、対処法は2種類です。民営化するか、さらに規制を強化するか。郵貯の廃止、国債窓販への特化、定額貯金の廃止、全て後者です。原則論としては、まず民営化が検討され、それが困難な場合にのみ更なる規制強化が検討されるべきでしょう。効率の観点からも、規制強化が予想外の更なる「ゆがみ」を生じさせてしまうリスクがあるという点からも。
それでも郵貯は民営化にはそぐわないと考えるだけの特殊要因が郵貯にあるという前提であれば、民営化しない方策も大いに議論されるべきだと思いますが、そうでない限りはまず原則論にしたがって対処すべきだと思います。
>馬車馬さん
○集中満期の原因
郵貯残高の推移を見れば、預け替えよりも新規の資金流入の効果であると思うのですがいかがでしょう。89年末に株価がピークアウトしたので、預金商品がより選好されたという面もあるでしょうし、前回(90年)の集中満期の際には限度額の引き上げがあったので、今回のように純減につながらなかったという面もあるでしょう。
ちなみに銀行預金で集中満期問題がおきなかったのは、当時はまだ長短分離政策により長期の定期預金が認められていなかったことが最大の原因だと思っています。民間でも「長」である長信銀や信託銀はワイドやビッグで90年代半ばに集中満期問題に直面しましたし。
○民営化すべきかどうか
「廃止」が「民営化」より規制強化かどうかには疑念もありますが、とまれ、ユニバーサルサービス提供が社会政策として必要だという前提で議論しています(最初のころに明言したと思いますが、正確にいつだったかは自分でも覚えてません(笑))。ユニバーサルサービス提供が不要だときちんと判断がなされたのであれば、廃止でも民営化でも一向に構わないと思います。「暗黙の政府保証」的なきわめて不透明なユニバーサルサービス提供を謳いつつの政府の民営化案はいかがわしいとは何度か批判しましたし、ユニバーサルサービス不要という前提を示した上での民営化論に反対するものではありません。
コメントが遅れてごめんなさい。
集中満期の件ですが、自分自身が昔「過去の例を引いて現状評価をするのは難しい」みたいなことを書いていながら、自分でそれをやってしまいました(楽なんですよね)。反省です。結局、過去話は相当丁寧に行わないと「どの要素がクリティカルか」が説明しきれないんですよね(長短分離政策は知りませんでした。そういうことがあったのなら、確かにそれでも説明できそうな感じですね)。
で、懺悔も兼ねて銀行の定期預金のペナルティをちょっとだけ調べて見たんですが、BoTMは「約定利率−(基準利率−約定利率)×(約定日数−預入日数)÷預入日数」で解約利率を計算となっており(http://www.btm.co.jp/tameru/yen/jiyu/)、ざっと見た感じほぼ時価評価をトレースできているような気がします。この計算式だと当然元本割れもありえるわけですが、その場合どうなるかの記述はありませんでした。一方で地銀は金利×10%〜80%で解約利率を計算する(預入期間が長いほど掛け目が増えます)ケースが多く、しかも銀行によってまちまちです。こちらはダメダメですね。
どちらにせよ、ゼロ金利という特殊な状況では、元本割れ回避用のフロアオプションが実質的にプットオプションと同等の効果を持ちえます。問題に気がついていないと見える銀行はとっとと条項を書き換えた方がいいよ、と(まぁ、信金とかだと「それでも解約しないでください」って営業が頼んで回りそうですが)。これを問題とするかどうかはフロアオプションのプレミアムがどの程度、どのような形で定期預金金利に織り込まれているかに依存しますが、地銀とかはダメそうですね。というかマジメに仕事しろ、と。ちなみに、新生銀行は「なにが起こっても定期預金の途中解約は認められません」って明記してありました(笑)。
どちらにせよ、都銀(BoTMしか調べてませんが)の定期預金と比べても、定額貯金がはるかにデタラメな商品であるという結論には変化はないと思います。地銀は・・・掛け目がついているだけ定額貯金よりは随分ましですが、どちらかというとデタラメに分類したくなりますね。ゼロ金利でなければデタラメには分類されなかったでしょうが。まぁ、金額が少ないのが救いです。
民営化についてですが、ユニバーサルサービスのための公営維持、という議論にはふたつの問題点があると思います。まず、私もエントリーで書きましたが、もしユニバーサルサービスが維持されないのであればその部分のみ公営で行えばよく、全国サービスを公営とする理由にはなりにくいということ。もう一つは、JRのケースと異なり、郵便や送金サービスは「全国どこへでも送ることが出来る」ということそれ自体がコマーシャルバリューを持つわけであり、個別の郵便局が赤字かどうかはあまり問題にならないということです(ユニバーサルサービスを維持するインセンティブが企業自身にある)。また、鉄道などと比べてユニバーサルサービスを維持するコストが(恐らくは圧倒的に)小さいといえます。極端な話、店舗を構えなくても郵便・郵貯のサービスは成立しますし、ムラに一つしかない売店に郵便業務を委託してもいいでしょう。鉄道など、サービス維持に莫大な固定費を必要とする業態とは根本的に事情が異なるように思います。
それから、「「廃止」が「民営化」より規制強化かどうか」と言うのは以下のロジックによります。
定額貯金の預入限度額を700万円に減らすのを規制強化と定義できるなら、同様に普通預金や定期預金にも限度額を設定し、それを減らすのも規制強化と定義できるはずです。そして、この700万円をゼロまで減らしていくのも同様に規制強化です。全ての預金の預入限度額がゼロになれば郵貯は廃止されますので、規制強化の極限に郵貯廃止がある、というロジックが成り立つというわけです。
○東京三菱の解約利率
直接問い合わせたわけではないので間違っているかもしれませんが、「満期日前に解約する場合は、以下の期限前解約利率により計算したお利息とともに払い戻しいたします」という文言で元本われ(=マイナス金利の払い戻し)はなく、ゼロ金利でフロアが設定されているような気はします。
○ユニバーサルサービス
以前竹中大臣の発言を紹介しましたが、ご指摘のような形式でのユニバーサルサービス維持は郵便においても可能と考えられますが、それは世界的に独占分野(リザーブドエリア)の超過利潤が財源になっていることを考えるとどうかな、とは思います。
なお、外部委託は現在でも可能(簡易郵便局)ですが、それはそれで運用上問題があるとは以前書かせていただいたとおりです。
○規制強化の概念
既述のとおり特殊法人が行う業務は国の業務と同種のもので、行うべき必要があれば法により授権がなされて行うもので(つまり、法がなければ行えない)、本来自由である民間の活動を制約する規制(つまり、法がなければなんでもできる)とは異なるものではないかと思います(が、これは政府の中にいるからこそ思うことなのかもしれません)。