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(ここはbewaad institute@kasumigasekiの過去ログ倉庫です。コメント等は仕様上受付けを停止しておりませんが、こちらではご遠慮いただければ幸いです。何かございましたら、現行サイトにお願いいたします。)
2005-09-10
■ [politics]「アナウンスメント効果」と一口に言うけれど
与党優勢との選挙報道を受け、与党支持の人間が「自分が投票しなくても与党は勝つだろうから投票しなくてもいいだろう」と受け止めることにより実際の得票が支持者の数よりも減少する可能性が指摘され、それは一般にアナウンスメント効果とメディアでは呼ばれています。しかしそれって大学の政治学の講義で聞いた話と違うなぁ、ということを書いてみます。
アナウンスメント=告知と訳されることが多いのですが、つまりはある情報を知ることにより行動が変化することがアナウンスメント効果ということになります。他の分野でもアナウンスメント効果という言葉が使われることがありますが、それはこの意味で用いられているもので、例えば企業買収が発表されると被買収企業の株価が上がるとか(買収側が現在の株価を割安と判断しているからこそ買収するわけで、現在の株価より買収価格は高くなり得る、という連想)、中央銀行の政策変更は操作により実現される金利変動以上に実体経済に影響を及ぼすとか(引き締め/緩和が必要と当局が判断しているということは、しばらくの間はその方向で政策運営がなされる可能性が高いはず、という連想)、そういった使われ方もあります。
選挙報道と投票行動が冒頭に紹介したようにしか関係しないのであれば、アナウンスメントの効果は1つしかないのでそれをアナウンスメント効果と呼んで一向に差し支えありません。しかし投票行動はそう単純ではなく、その用法では切り捨てられてしまう部分があります。
冒頭に紹介したような影響の及ぼし方は、大学ではバッファ効果と教えられました。この場合、優勢と伝えられた側に当該報道が不利に働きますが、別のメカニズムでも同様の効果がもたらされる部分があり、そちらはアンダードッグ効果と呼びます。つまりは判官びいきというやつで、劣勢と聞いたからこそ応援したくなるというロジックです。
他方で優勢との報道が有利に働く場合、こちらはバンドワゴン効果と呼びます。単に付和雷同というケースもありますが、もっとも自分の考えに近い候補者に全く当選する可能性がない場合、その候補者への投票はせず、当選する可能性のある中から自分の考えに近い候補者を選ぶというケースもあります。
これらは(バンドワゴン効果の付和雷同タイプを除き)合理的選択の結果であるとの説明が可能です。バッファ効果の場合、投票しなくても自分の応援する候補が当選する、すなわち自らが一票を投じることの効用は限りなく小さいと判断するわけですから、棄権してより効用の高い行動、つまりは他の余暇の過ごし方を選ぶということになります。仮に自分が投票しなければ落選するかもと思えば、自らの一票に価値が出てきてその候補者を当選させる効果がある=自らにとって高い効用が実現されるということになりますから、この場合は遊びに行くのをやめて投票するか、という気になるわけです。
アンダードッグ効果の場合、劣勢候補者が自分の投票により善戦できたことをもって、自分の投票にはそれなりの価値があったと信じることができるという効用があるということになります。ただし、誰に票を投ずるか決めかねていた者が劣勢であることを理由に投票対象を決めた場合、優勢に転じてもなお自らの投票により予定調和を壊すことができたという満足が得られるので、態度決定後の報道による影響は少ないと言えますが、本来は優勢候補を支持しつつ、部分的批判の実現やバッファ効果的な投票抑制により劣勢候補に肩入れしたような場合には、その劣勢候補が優勢に転じるようであれば、本来支持する候補者への揺り戻しもあります。
バンドワゴン効果の場合、モデルでシンプルに表すことができるのでそれを示してみます。ある選挙区において候補者A、候補者B、候補者Cがいて、ある選挙権者にとっての本来の政策の親和性と当選確率の積で期待政策実現率をはじき出す場合、下表のような結果となります。
| 候補者 | 政策の親和性(A) | 当選確率(B) | 期待政策実現率(AxB) |
| A | 1 | 0 | 0 |
| B | 0.6 | 0.4 | 0.24 |
| C | 0.1 | 0.6 | 0.06 |
こうした判断・観測をする選挙権者にとって、候補者Aが当選することが文句なくベストなのですが、どうせ候補者Aに投票しても死票になるだけで意味がないので、それぐらいなら候補者Bに投票した方が部分的にでも自らの望む政策が実現される可能性があるので候補者Bに投票することがより効用が高いという結論に至るわけです。
実は実証研究ではアナウンスメント効果があるとの確かな証拠は見つかっていないのですが、つまりはこれらの諸効果が相殺しあっているのではないか、と考えられています(もちろん投票行動を決定する他の要素の影響を除去しきれず観測が難しいということもあります)。メディアで「アナウンスメント効果」という言葉を見かけた際には、ちょっとご用心を、ということで。
■ [politics]何のために反対したのやら
同法案については、反対票組の鴻池祥肇・元防災相が9日、国会内で青木参院議員会長と会談し、「民意に従うのが政治家の筋だ」などとして、衆院選で与党が過半数を得れば法案に賛成する意向を伝えた。「反対した人たちの気持ちを考えれば、一か月前に出てきたのと同じものでは賛成しにくい」として、何らかの修正が必要との認識を示しつつも、反対から賛成に転じた。
さらに真鍋賢二・元環境庁長官、二之湯智参院議員も同日、読売新聞の取材に対し、衆院選で与党が勝利すれば法案に賛成する考えを示唆した。
(略)
反対票組の多くも、衆院選で与党が堅調な戦いを進め、小泉首相の自民党総裁任期延長論も出る中、賛成に回る大義とタイミングを探っている。
鴻池氏は、青木氏との会談後の記者会見で「民意」という言葉を7回も口にした。衆院選で与党が過半数を獲得すれば、有権者の意思は「民営化に賛成」と判断できるというわけだ。
ただ、反対票組が賛成に転じる理由はそれだけではない。首相や党執行部が、特別国会で法案に賛成すれば、処分の先送りを示唆していることも大きい。
さらに、首相の任期延長論が浮上していることが、「造反を続けたら次期参院選で公認を得られない」との危機感をあおっている面もあるようだ。
士道不覚悟ですなぁ。「身を捨ててこそ浮かぶ瀬もあれ」といいますが、進んで身を捨てることができた小泉総理とそれができなかった造反組との間には、戦いに臨む気合において懸隔の差があるようです。かつて反対派への締め付けをもって千慮の一失と評したwebmasterはそのあたりの機微についてよく飲み込めていないようで、読み違いを素直に認めざるを得ません。やはり小泉総理は稀代の政局の天才でございます。
それにつけても造反組は最悪の選択をしたのではないでしょうか。かつて何かの小説で、金で転んだ人間はそれ以上自分を安売りすることがないが、脅しで転んだ人間はいくらでも自分を安売りするようになる、といった台詞を読んだことがありますが、彼(女)らのプレゼンスは今後下がる一方でしょう。その程度の覚悟しかないなら、最初から造反などしなければよかったのに・・・。
以前に郵政事業の民営化ができないのに、もっと大きな改革などできる訳がないといった趣旨の書込みをした者です。
外部から政局を見て思うことなのですが、小泉さんは戦略と戦術を持ちつつ、タイミングを見計らって手を打っていると感じていますが、一方でそれに反対している人達は、置かれている状況に気がついた時には既に身動きが取れない場所にいるように感じます。こうした小泉さんの動きを影で支えているのは、はやり霞ヶ関の試験で入った官僚さん達なのですか?
あくまで私見ですが、あれは小泉総理の個人的センスがほとんどで、他者で貢献するとすれば飯島秘書官(政務)ぐらいではないでしょうか。官僚がそのあたりにかかわっているということは、正直申し上げて想像しがたくあります。
誰も当選すると思ってない人にわざわざ投票して、「あっ、3000票も入ってる!」とか言って喜ぶ「祭り効果」とか・・・。
選挙って不思議。
お返事ありがとうございます。確かに小泉さんの気持ちや行動は高度に(極めて)政治的だと思います。官僚(行政)が得意とする手続き的整合性は、小泉さんの行動に後付けされ、それらが一体となっていると考えれば、政治主導の時代を感じます。私自身、とても新しい時代の息吹を感じますが、bewaadさんは、ある意味において現場にいる立場として、率直にどう感じますか?
島左近大谷刑部後藤又兵衛真田幸村はおらんのかと>造反組
小泉首相本人が独裁者かどうかよりも、独裁者になろうとすれば簡単になれそうのが問題な気がしてきました。あまりに反対組が情けなし。
>bewaadさん
造反者への世論の反感については、ひとたび世論の承認を得られず排除される側=マイノリティに回ると、声高に叫べば叫ぶほどますます叩かれるといったメカニズムが働いてるように思えます。小泉氏の刺客作戦が行き過ぎだと思う人も結構いるようですが、それを容認してしまう背景には、学校や職場でのいじめの現場でいじめられる側に味方することがいかに難しいかという問題とも通じるものがあると感じます。むしろいじめられる側にも問題があるんだとして納得してしまう心理。しかし小泉陣営もそこまで深読みしてたんでしょうか?
独裁だの、馬鹿馬鹿しい議論は止めましょう
>一国民さん
そういう輩は地獄の火の中に投げ込まれることでしょう(笑)。
>通りすがり(再)さん
現政権の方向性が正しいと思っていれば最近のようなエントリは書かないわけで(笑)、デフレを退治してから好き勝手にやって欲しいものだと考えてます。「ジリ貧を恐れてドカ貧」(by山本五十六)な構造改革は、好景気であればそれこそ民間の自助努力で相当程度進むはずなのですが、そうした方向性についてはほとんど議論がなされていませんし・・・。
>たれこみさん
一般論として強大な権力は強大な仮想敵があってこそ認められるもので、それだけ「抵抗勢力」が強いと考えられているのでしょう。
>すなふきんさん
深読みというより、少なくとも小泉総理自身は、自らの正しさに全く疑問を持っていないのではないかと思います。可能性は低いですがもし選挙に負けたら、師匠の「天の声にも変な声はある」的なことを言うような気がします。