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(ここはbewaad institute@kasumigasekiの過去ログ倉庫です。コメント等は仕様上受付けを停止しておりませんが、こちらではご遠慮いただければ幸いです。何かございましたら、現行サイトにお願いいたします。)

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2005-11-16

[notice]軍板との一件についていただいたコメントについて・後編

#このエントリに関連するエントリは、「2ちゃん軍板の方々へ」(11/8付)「続・2ちゃん軍板の方々へ」(11/9付)「一昨日来のエントリにつきまして」(11/10付)「軍板との一件についていただいたコメントについて・前編」(11/14付)及び、「軍板との一件についていただいたコメントについて・中編」(11/15付)です。

本日はリフレ政策の内容についていただいたご意見・ご質問への回答です。

実現可能性について

「言ってることはわかった、でもできるのソレ?」これが軍事板の人たちの疑問なんだと思いますよ。

だから必死に理論を説明しても意味が無いと思います。むしろそれはもうやらなくてよくて、替わりに言うべきは「こうすれば実行できる」という方法論なのではないでしょうか。しかしそれは経済学というより、政治の話になってしまうわけで……

名無しさんのコメント(11/8付エントリ)

いつもリフレ派の意見を聞いて思うんですけど、ここまで理論的に完璧ならなんで実践しないんでしょうか?ネットワークを活用し、権力のある人(またはそれに連なる人)をこの理論で説得すればいいんじゃないのでしょうか?2chやブログを利用すれば初期の人数(伝道者として)をある程度確保できるでしょうし、説得した人が新たに別の人を説得すれば鼠算式に同調者は増えていきますよね(完璧な理論だし)。そうすれば世論の形成?ということになり日銀も動かざるを得ないんじゃないんでしょうか?なんでやらないのかいまいちよくわからないので、もしよろしければ教えてください。

aaaさんのコメント(11/8付エントリ)

いずれにせよ、

  • では、その素晴らしい正論が時の政府に採用されず、時の有権者に支持されないのはなぜ?(=>プレゼンの不徹底/方法の失敗)
  • 採用/支持されるように働きかけることに失敗しているのはなぜ?(=>プレゼン能力の欠如)
  • 経済板的正論を主張する人のプレゼンがまずい、能力がないのはなぜ?(=>「自分だけが真実を知っている」と考えがちな選民意識への執着)

という諸問題に行き着くように思われます。

経済理論としての正しさと、それを採用/啓蒙に持っていく能力とは正比例しません。立脚点や重要視するスタンスが異なる相手に、自説への賛同を求めるなら、もう少しプレゼン能力と選民思想をどうにかすべきなのではないかと思った次第です。

yさんのコメント(11/9付エントリ)

悲しいながら「こうすれば実行できる」というのは、形式的には日銀の金融政策決定会合で過半数の審議委員が賛成すればできるということで条件は明らかなのですが、ではどうやったらその賛成が得られるのかという実質論については、まったくもって目途が立っていません。そもそも日銀などの中央銀行に独立性が一般に要請されているのは、通常の民主的政策決定過程は金融政策の決定には不向きであって、限られた専門家が国民の多数の意向に逆らってでも経済学により導き出される「正しい」政策を実施すべきと考えられているからこそ、中央銀行の独立性は多くの国において認められているわけです。

#死んだ赤子の歳を数えても仕方がないのですが、審議委員時代から積極的にデフレの害を説きリフレ政策の導入を主張していた中原伸之前審議委員は、2003年初の速水日銀総裁(当時)の任期切れによる後任総裁選定の際、現在の福井総裁の有力な対抗馬として取り上げられていまして、その際に中原総裁が誕生していれば終わっていた話ではあります。

とはいっても現に独立性のある中央銀行が失敗したらどうするのよ、というのが今の日本の直面する状況でして、中央銀行の独立性を損なうというコストとデフレが継続するコストを比較して後者が大きいと判断するなら、中央銀行の独立性もしょせんは法律事項で国会の過半数議決で変えられるものですから、それを目指すことが唯一の解となるでしょう。ただ悩ましいのが、確率論的に独立した中央銀行が行う政策決定が民主的過程による政策決定よりも「正解」を数多く導き出すというなら、一回の失敗を取り上げて民主的政策決定を通じて中央銀行に圧力をかけて政策を変更させようというのはあまりに近視眼的であり、そうした逡巡が潜在的にはリフレ派にはあるのかもしれません。

とまれ、多数派形成により中央銀行に圧力をかけることが必要だと割り切るにせよ、基本的にデフレの害が中短期的には「狭く深く」(失業者などの限られた者が多大なダメージをこうむる)である一方インフレの害は「広く薄く」であるので、裏返せば徳保さんが喝破されたように例えば、なぜリフレ政策で失業率が下がるのか。竹森先生の「月刊現代」の連載を読んで、ようやくスッキリ納得したのですが、その答えを聞いて驚くなかれ、「賃金の上昇は物価高と雇用増に遅れるから」だという。つまり給与の高止まりが失業増の原因だから、物価に対し賃金を切り下げれば雇用が回復するのです。「俺の給料は安過ぎる」と思っている一般国民が支持できる内容でないことは明白ということになり、その道もまた険しいというのが現状です。

この道を進む以上、最終的にはaaaさんがおっしゃるようにある程度の数の理解を得ていくということしかなく、そのため岩田(規)先生や野口旭先生、田中(秀)先生に代表されるような多くの方々が様々な切り口からデフレの問題とそれへの処方箋としてのリフレ政策を語っていらっしゃる(最近リニューしていないので最新作はフォローしていませんが、関連著作をまとめたページがあるので一例としてご覧下さい)のだと思います。webmasterのようにリフレ派になった人間がさらに勉強させていただくだけでなく、少しずつかもしれませんが新たにリフレ政策への理解をいただく方々を増やしていると思います。

そうしたご努力に比べwebmasterのしていることがどうかと考えれば忸怩たるものはあるのですが、少なくともwebmasterがもっとやり方を改善しないことには、yさんのような受け止めからリフレ派全体に悪印象をもたらすことになってしまいます。もっと自らのテキストを客観視し、どういう難点があるのかを見逃さないようにして少しずつであっても改善していきたいと思います。

以上のように、これらのご指摘にはwebmasterとしても答えられる段階にはなく、どうすればいいのか日々考えているというのが正直なところです。

インフレとデフレの影響の非対称性について

わたし良くわかっていなくてすみませんが、インフレかデフレは(どちらもマイルドなもんであるかぎり)単に所得移転がどちら方向に動くかだけの話のような気がするのですが。右のポケットのお金を左に動かすだけのようなことで経済が良くなったりするのでしょうか?

  • 賃金の硬直性に関しては所得の企業から家計への移転ですが、インフレ時には逆にこの硬直性で家計から企業に所得が移転されるだけでは?
  • 借金に関しては借り手から貸し手への所得の移転で、これもインフレ時には逆になるだけでは?
  • 減価償却に関しては、これは単に会計上の話ですから、少なくとも経済学的な話をするのであればリアルベースでのキャッシュフローで見るべきだとおもうのですが?実質上は黒字会社だと税効果でかえって会社側に有利ということもあり得るかもしれません(違うかもしれません)。そうしたところで、単に企業と政府の間の所得移転だと思われるのですが。これは経済の話としてはすこし頂けないような気がいたします。

ただのひとさんのコメント(11/8付エントリ)

まず、そもそも名目ベースでのパイが膨らんでいく状況かそれとも縮んでいく状況かという前提についての論点があり、デフレによる消費・投資抑制効果でそれは後者であるということがそもそもの問題の始まりになります。

さらにその問題を増幅させるものとして取り上げていただいた部分があり、一般に市場を通じた資源配分は価格の変動を通じて行われるものですが、その変動に差があれば資源配分に問題が生じてしまうことになります。賃金や金利については下方硬直性により資源配分に歪みが生じるというもので、賃金はゆっくりと調整されるので時間の問題、金利はゼロ以下にはなり得ないので本質的な問題として資源配分が歪みます(=失業増加や信用収縮)。

もちろん上方にもスピードの差があり、賃金は遅行しますし、金利も既存の債権債務には(変動金利であるものを除き)影響が及ばないので遅行はしますが、下方硬直に比べれば上方遅行は程度として軽いので歪みはより少ないものとなると考えています。

なお減価償却については確かにミスリードでした。設備が生産するアウトプットの量が想定どおりでも価格が下落すれば名目ベースでの投資資金回収ができないという方が正確です。実質ベースでということなら、投資せずに現金で置いておけば目減りはしないわけで、つまりは機会費用が増加するということになります。

現状の景気回復について

質問ですが、景気が良くなればかなりの問題が解決できるのは理解できますが、インタゲじゃ無いとそれは達成されないものなのでしょうか?株価だけ見ていると景気は回復しているんじゃないかなぁと思いますが、どうなんでしょうか?

774さんのコメント(11/8付エントリ)

あのー、日本だけが経済不振・・・っていつの時代の話ですか。とりあえず現在はまるっきりその逆のようですが。

くまごろんさんのコメント(11/8付エントリ)

インフレターゲット設定その他のリフレ政策はあくまで需要喚起の手段ですので、別の政策手段等により需要喚起ができればそれでも景気回復は可能ですし、そもそもデフレであっても景気循環がなくなるのではなくその平均値が下がるというものですから、循環的な景気回復もあります。webmasterは循環的な景気回復と海外需要増加(=輸出増加)が今の景気回復の原因だと考えていますが、逆に言えばそれらが安定的に確保されない限り景気循環の平均値は上がりません。そのためには民間需要の安定的な上昇が必要でしょうし、そのためのリフレ政策でもあります。

また景気回復の水準ですが、実質ベースで2%台後半(名目ベースで5%強)程度が日本経済の実力を十分に発揮した状態、つまり好不況を平均してその程度であってしかるべきと考えていますので、今の景気回復は期間こそ長いですが十分なものとは考えていません。もともと80点とる実力のある学生が30点にまで成績が落ちたとき、その後50点とれるようになれば最悪期から見れば回復ですが、まだまだ十分とはいえないようなものです。

なお、くまごろんさんの続きのコメントにて「式が合っていれば結果が間違っていても気にしないのが経済学者。結果が合っていれば式が間違っていても気にしないのがエコノミスト」というかんべえさんのコメントが引かれていますが、そもそもa economistというのは経済学者をも含む概念で、それがカタカナになるとなぜか経済学者が除かれるというのはグローバルスタンダードに反するわけで(笑)。

真面目な話をしますと、リフレ派の経済学者の方々はそのマクロモデルにミクロ的基礎付けがないということで「エコノミスト」的だと批判されていまして(かつてあった「ザモデル」論争というのがその典型です)、少なくともリフレ政策についてその言葉をもっての批判は当たらないのではないかと思います。

インフレ期待の形成可能性について

>この「断固として」というのがポイントなのは嘘のような本当の話で、

ええと……私はこの「断固として」という点に非常に懐疑的でして……たとえ金融政策担当者が「インフレ率は絶対この範囲に収めてみせる!」と断固たる決意を表明しても、人というのは必ずそれを自分の都合のいいように解釈するというか、「そんなこと言ってても絶対ヤツはどこかで折れるだろう」と予感を抱くもので……

例えば、先の郵政解散が例として挙げられますね。小泉首相はことあるごとに「郵政民営化は絶対やる」公言し、「死んでもいい」とまで述べたことさえありました。彼の後見人である森氏も「法案が可決されなきゃ小泉は解散する」とまわりに対して釘を指しました。しかしこのように彼らが「断固たる」態度を示しても、反対派は郵政民営化法案に反対票を投じ、結果として解散選挙で辛酸をなめたわけです。人が本当に合理的に行動するなら、郵政解散っていうのはありえなかったわけですよ。

リフレ派の方々は、小泉首相以上に「ブレない・断固たる」と世間から評価を受ける人物を用意できるのですか?

名無しさんのコメント(11/9付エントリ)

思考実験としてインフレターゲットの有無のみが異なり他は全く同じ経済・中央銀行での金融政策を考えた場合、ターゲットがない方が期待インフレ率がぶれやすいのではないでしょうか。目標とする一定の範囲があってなお折れる中央銀行であれば、目標がなければなおさら上下動は大きいものとの予想が成り立つでしょう。実態としても、インフレターゲットを導入した諸国はそうでない諸国に比べてインフレ率の上下動が小さなものとなっています。

郵政解散の例については、プレイヤーにとって自ら操作可能かどうかという条件が違うので同列には論じられないでしょう。亀井議員その他は自ら解散を阻止できると考え、でもそれが叶わなかったわけですが、一般の企業や家計は自らインフレを招く・抑止するとは通常考えないわけです。郵政民営化反対派が本来操作可能でないものを操作可能と誤解して行動を誤ったということであれば、逆に言えば操作可能でないと正しく認識していればご指摘のような合理的行動を取っていたはずで、その例を援用するならまさしくインフレターゲットについては、個々の経済主体がインフレ率を操作可能と考えているとのデータは寡聞にしてwebmasterは知りませんで、つまりはインフレ目標を所与のものとして行動すると考えられることになります。

景気回復と財政再建との優先順位について

すみませんが、現在小泉首相が進めている政策は『財政の健全化』であって、インフレターゲットであろうとリフレだろうと必要なことだと思うのですが。

無駄に使われているお金をストップして毎年膨大な量になる財政赤字を減らすことを最優先することが間違いと言い切るのは無理がありますし、景気を回復させれば税収が増えると言うのは確かですが、それと財政の健全化は別の話だと思います。私が小泉首相を支持している理由の一つがそこです。私は景気回復を首相に求めていません。国庫の健全化を期待しています。

ツィツィミトル星人さんのコメント(11/8付エントリ)

かつて経済財政諮問会議の民間議員ペーパー(つまりどちらかといえばリフレ派でない人々の主張です)を取り上げて論じましたが、日本の80年代の財政再建を見ても国際比較をしても景気回復なくして財政再建に成功した例はありません。また、同じ資料をご覧いただければおわかりかと思いますが、「無駄に使われているお金」として人件費や公共事業費をゼロにしたところで財政赤字は止まりません。

なお、日本の財政事情は実はそれほど深刻でないという論文を以前紹介し、また、リフレ政策で財政赤字の対GDP比は安定的に抑制できるとの試算をしたこともありますので、よろしければご覧下さい。

物価上昇のスピードの差について

とりあえずインタゲが「理論的には」不景気を克服できるのは理解できるんだけどな。ただ、「物価はあがるが給料はあがらない(あがりにくい)」層への手当てはどう考えているのかな。公務員もそこに含まれているけど(笑)。

ここをクリアしないと庶民の共感は得にくいな。

Lieutenantさんのコメント(11/9付エントリ)

ただ、こういう直感的な問いに大衆を納得させる回答を示せないなら、政治家は動かないと思うよ。「全体としてはうまくいきます」と言われても、「で、俺の権益はどうなるの?」というとき、「損します」というのでは、実行は難しいでしょ。特に政治家の場合。

2〜3%のマイルドインフレを達成という場合、物価の上昇、賃金の上昇、実質の金利の低下をどうバランスよく(不公平感なく)進行させるかという処方箋こそがインタゲの王道じゃないの?

Lieutenantさんのコメント(11/9付エントリ)

うーむ(苦笑)。その辺(理論的主張の部分ね)は理解した上で、「不公平感」をどう取り除くのか、という話を聞きたかったのだが。別に計画経済的な介入をやれとは言わんけど、「金融の量的緩和」だけでは、そのインフレは歪なものになる気がするし。例えば、投機的な財のみが暴騰して、いわゆるヒルズ族みたいな層だけが恩恵をこうむるみたいな。「防御反応」というのは、インフレ期待に反応して、消費性向を高めるということを指していると思うが、それは「物価の上昇、賃金の上昇、実質の金利の低下」がバランスよく起きた場合の反応じゃないかな。

なんか上手く表現できないが、別にインタゲを否定するわけではない。ただ、カタログスペックと運用は別物じゃないかということ。実際の運用で生じる問題にどんな対策を打てるかというのが知りたいね。

Lieutenantさんのコメント(11/9付エントリ)

最後に引用したコメントを受けての銅鑼衣紋さんのコメントが丁寧に解説していますが、まず基本は現状もリスク調整(失業リスクや政策変更リスク(障害者自立支援法などが典型例でしょう))をすれば期待できる所得水準はかえって低くなるということを説明し理解を求めていくということかと存じます。実際に何らかの歪みが生じて対応が必要という事態になれば、ティンバーゲン流の政策割り当て(1つの政策で二兎を追うのは不適当で、目的の数だけそれに合った政策を用意すべきというもの)にしたがって規制の改廃や財政政策で対応ということになるかと思います。

資産価格等への影響について

今の構造改革が「上に厚く下に薄い」というのは、その通りだと思う。だから、現状が景気回復に移行しつつあると言っても、それは「雇用なき」や「賃上げなき」好景気になる可能性が高いという認識でいる。

インタゲが総需要を増大させ、税収増・消費拡大につなげようと思えば、「上に厚く下に薄い」傾向を抑える仕組みを設けた方が効果的ではないのかな? 例えば、マネーサプライが増大したとして。それが株価や地価の上昇に「しか」反映しないという状況があれば、インタゲ派が主張する効用(需要の拡大等)は起きないと思うが如何?

Lieutenantさんのコメント(11/9付エントリ)

投資雑誌なんかを見ると「将来のインフレに備えて金を買え」みたいな記事が出ていますが、もしこのような行動が主流であるならば、通貨が円から金になるだけで市場に対するデフレ構造は変わらないのではないでしょうか。

つまり、インフレになったとき金持ちは金を買い貧乏人は物を買えなくなれば(貴金属をのぞく)消費が減少しますよね。結果として企業業績悪化、株安・税収減、国債利払いパンク、通貨暴落ハイパーインフレと雑誌の煽り文句がちらつくのですが…

とさんのコメント(11/9付エントリ)

ご迷惑ついでにお願いですが、もしよろしければ簡単な産業別影響予測のようなものを拝見したいのですが。

例えば、製薬業界にとっては、保険財政が厳しく薬価の伸びが期待できないうえに開発期間が長いため、インフレがリスク要因になりえますよね(素人考えですが)。

とさんのコメント(11/14付エントリ)

一般に資産価格は、そこから得られるキャッシュフローをCとし、金利をrとすればC/rで得られ(例えば毎年1,000円の利払い・配当などがある資産は金利が5%なら20,000円の価値があるということになります)、Cがgの割合で毎年増えていくのであればC/(r-g)で得られます(先の資産のCが毎年3%ずつ増えていくなら50,000円の価値があるということになります)。

この例で言えばCがインフレ率と同じだけ増加だと考えれば、インフレ率が0%から3%に上昇することで資産価格は2.5倍になるわけで(実際には金利もインフレ率上昇に伴い上がっていくのでその影響も考慮する必要があります。具体的には"r-g"が効いてくるので、インフレによるCの伸び率の上昇がrのそれより大きければ、要すれば実質金利(名目金利−インフレ率)が下がれば資産価格は全体としては上がります)、資産価格の上昇率は一般にはインフレ率を上回ります。というのも、この算式は将来にわたるキャッシュフローを念頭においているので、その全体の上昇が今の価格に反映されれば、1年分のみの上昇であるインフレ率よりも高くなるからです。

というわけで資産価格のある程度の上昇は不可避ということになりますが、他方で価格上昇=高くても買う経済主体の登場は、経済全体としては望ましい効果をもたらします。高くても買う経済主体はそれだけその資産を有効活用できるからで、土地が典型ですが例えばデフレ期には金利負担なく取得した者(相続など)にとっては固定資産税に見合う程度の収入しかなくても金利を負担して買おうとする者の値段では見合いませんが、インフレ期には買い手がペイする値段でも魅力的な値段設定が可能となります。土地を売って儲けることの評判が悪かったとしても、より生産性の高い用途に転用される可能性が高くなるので、どんどん取引が成立した方がよいのです。

以上を前提に個別のご指摘にお答えするなら、まずLieutenantさんに対しては、例えば増税なら消費税増税ではなく累進強化や相続税増税、法人税にしても全体を中立にするとしても損金計上可能経費の拡大と税率引上げの組み合わせ、固定資産税の上物非課税化・見合いとしての対土地税率の引上げといった「構造改革」をあわせ行うことが望ましいのではないかとお答えしたいと思います。とりあえずこれまで行われてきた所得税のフラット化を元に戻すとか、消費税率引上げの中止といったことだけでも。

とさんの1つ目のご質問ですが、もともと金持ちの消費増というのはそれほど期待できず、相対的貧困層の消費増が期待されるわけですが、万が一そうした階層の賃金が上昇しなかったとしても、上記のように実質金利が引き下げられれば(=インフレ気味になっても急には金融を引き締めない)貯蓄の妙味がその分だけ少なくなるので消費は増加します。また、賃金が一定でも就業者数が増えれば、全体としての消費はその分だけ増えるので、全体として消費が減少する可能性は極めて低いと考えられます。

2つ目のご質問ですが、産業別の事情には詳しくないのであくまで一般論ですが、デフレである現状とは逆の構造が有利となります。デフレに有利な構造とは売り上げが落ちればその分費用も落ちればダメージは少なく、かつ下方硬直性のある生産資源は少ないに越したことはないのですから、つまりは固定費の割合が小さく変動費のそれが大きい構造が一般的には有利です(だからリストラはそれを指向するわけで)。インフレ期にはこれが逆となり、固定費の割合が大きく変動費のそれが小さい構造が一般的には有利となります。

本日のツッコミ(全4件) [ツッコミを入れる]
(2005-11-16 08:13)

>bewaadさん

お忙しい中をありがとうございます。参考にさせていただきます。

すでにお気づきかと思いますが、bewaadさんの官僚道にあるように「国民」などというものはなく、「自分たちの業界」がとにかくこの国の懸案事項になるわけです。本四連絡橋を例に取れば、経済効果などというのは守りの理論であり、それ自体には政策の推進力などなかったわけです(故後藤田さん辺りはあるけれど、結局はKゲフンゲフンが真の推進力でしょう)。とすれば、まず業界を敵と見方(改革勢力と抵抗勢力(笑)に切り分けることからはじめないと、リフレ論は高度な経済的議論を戦わしているという守りの理論(政治家の言い訳)で終わるのではないかと思うわけです(政治家は何もせずに神風待ち)。まあ、素人考えですけどね。
でも、こんなの↓はいかがなものかと思います(^^;
http://www.gdgd.jp/modules/icontent2/index.php?page=12

何れにせよ、頑張って下さい。

nervenarzt (2005-11-16 22:49)

いまだかつて2ちゃんのコメントにこれほどきっちり誠意をもって答えた高級官僚がいただろうか
まあ白旗挙げたわけではなくて戦略的撤退で本土決戦に持ち込んで逆転するぞということで単なる負けず嫌いと理解する事もできるのだろうか
決してこれは誉め殺しではないのだがそれにしてもBewaad氏は本業は大丈夫なのだろうか

bewaad (2005-11-17 06:21)

>とさん
昔と今とで政治家に質の差があるとは思ってませんで、高度経済成長政策などのマクロ的な指向が今ではなし得ないというわけではないでしょう。今の「構造改革」にしても、アメリカの意向だの云々というのではなく、前川レポートに代表されるような70年代以降の集大成であるわけで、それが必要なものだと受け入れられているのだと思います。となるとリフレ政策の実現にはある種のパラダイムシフトの普及が必要ということになるわけで、よりハードルは高いのですが・・・。

本四架橋について管見を申し上げるなら、もちろん利益誘導的な要素がなかったといえば嘘なのでしょうけれど、宇高連絡船事故が契機になったように、それだけでは動かなかったはずです。馴れ合いに見られてしまうかもしれませんが、間近に見る政治家の先生方は基本的にメディアなどでの語られ方よりはるかにまじめに純粋に地元のことを考えていると思います(そのインセンティブ構造の是非はさておき)。

bewaad (2005-11-17 06:22)

>nervenarztさん
本業は本業で問題なくやっている、はずです(笑)。


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