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(ここはbewaad institute@kasumigasekiの過去ログ倉庫です。コメント等は仕様上受付けを停止しておりませんが、こちらではご遠慮いただければ幸いです。何かございましたら、現行サイトにお願いいたします。)

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2005-11-26

[economy]財政も金融も構造改革も‐中国の行方にあるべきもの

kaikajiさんが「「日本病」と中国版「リフレ派vs.構造改革派」?」と題して今後の中国経済政策について次の選択をめぐる論争があるとご紹介されています。

  1. 内陸部・農村開発による内需の拡大
  2. 引き締め政策の持続による高金利・元高誘導

webmasterのように人民元のフロート化は金融政策のフリーハンド確保のためのものと認識する人間にとって、2番の政策はいかがなものかと見えます。従来の元安のために金融政策を縛っていた状態から元高のために金融政策を縛る状態に代わるだけということになってしまうからです。やはり金融政策は最優先目標を物価安定に、それに次ぐ目標を景気安定化に置くべきでしょう。逆に言えば、それらの実現に向けて金融政策は活躍してもらう必要があります。

#kaikajiさんはこれら論争の対象である「日本病」(と中国で呼ばれるもの)を円高シンドロームとご覧になっていますが、2番は元高シンドロームそのものなわけで、ご紹介の記事(日本語のものしか読んでいませんが)のとおり内需主導経済への転換を迫られる状態が「日本病」と認識されていると解すべきではないでしょうか。

では1番がよいかということですが、これについてのkaikajiさんの評価は次のようなものです。

この内、1.の主張は、近年の元高圧力は、農村や内陸部の経済が疲弊しているため内需が伸び悩んでいることに起因するものであり、都市化の推進や内陸部へのインフラ建設を通じて内需の拡大を図ることによって、貿易不均衡およびアメリカの政治的圧力は緩和されるだろう、というものだ。「アメリカの圧力をかわすため内需を拡大しましょう」というのはいかにも前川レポートの既視感ただようもので、同じ問題の「先輩」である日本人としては「大丈夫かいな?」と思ってしまうのだが、こういった主張にはむしろ、中国は国内が発展途上なので内需はこれからもどんどん拡大するよ、現在の貿易黒字は一時的なものだよ、だから80年代の日本とは違うよ、という含みがあるようだ。

「「日本病」と中国版「リフレ派vs.構造改革派」?」(@梶ピエールのカリフォルニア日記。11/25付)

この見立てを論ずるため、まず前川レポートを見てみましょう。もっとも関係深い点は次の部分ではないかとwebmasterは思います。

財政政策の運営に当たっては,赤字国債依存体質からの早期脱却という財政改革の基本路線は維持すべきであるが,財源の効率的・重点的配分,民間活力の活用,規制緩和等の工夫を図り,中長期的に,バランスのとれた経済社会を目指し機動的な対応を図る必要がある。

(略)

金融政策の運営に当たっては内外通貨価値の安定を確保しつつ,内需主導型経済の実現に向け,機動的に運営することが必要である。

「国際協調のための経済構造調整研究会報告書」(いわゆる前川レポート)(@データベース『世界と日本』/戦後日本政治・国際関係データベース/東京大学東洋文化研究所 田中明彦研究室)

結局ここで財政政策でなく金融政策主導で内需拡大を図ったことがバブルの一因となったわけです。その意味でデフレ脱却を金融政策のみに頼ればバブルの再発を招きかねないという主張にも一理はあるとも言えます(その手の主張をする者が財政政策について概ね緊縮を求めることにはゼロ理しかありませんが(笑))。

となると、1番の主張は実は日本の失敗をよく学習したものだと言えます。巨額の貿易黒字の原因となる貯蓄超過を財政赤字で吸収し対外摩擦を回避しつつ内需拡大を図るというのは、本来バブル前に日本がとるべきだったにもかかわらず財政再建が優先されて達せらなかったもの。中国も日本同様人口爆発世代が現役世代の中核を担うようになる一方で少子化が進み貯蓄余力が世代人口・一人当たりのダブルで増加する状態で、貯蓄超過はそれこそ構造問題ですから、ここはあきらめて財政赤字の累積に努めざるを得ないでしょう。

問題があるとするなら割に合う投資先が十分にあるかどうかというもの。この巨額の超過貯蓄は来るべき超高齢化社会・中国への備えとなる米びつですから、いざ食べようという際に米が腐っているようでは困ります。つまり、投資先が中国経済の生産性を十分に引上げるものでなければ、高齢化人口を担うには力不足の経済にとどまっているということになってしまいます。

ですからここで構造改革という次の政策の出番が回ってきます。インフラ整備と同時に円滑な経済活動のための環境も向上を図るなら‐kaikajiさんご指摘のように私的財産権の保護や法治主義の徹底といったものが特に求められるでしょう‐、整備されたインフラを活用しての経済活動も活性化し、結果として公的投資が割に合ってきます。それこそ中国にはそうした部分で先進国にキャッチアップする余地はいくらでもあるわけで、いわば構造改革の入れ食い状態(笑)です。小難しいことを考えず多少の失敗はおそれずどんどん制度を輸入すればよいのです。

と結論付けると、kaikajiさんに引いていただいたあちらを立てればこちらが立たず、やっぱりwebmasterは彼の国の官僚でなくてよかったとしみじみ思います(笑)というかつてのwebmasterの台詞と矛盾するのではという疑問があるでしょう。しかしながら、以上はあくまで方向を指し示すだけで実施が容易であることを論ずるものではありませんし、あくまで経済に限った話ですから、その過程で数多く生じるであろう政治的・社会的問題は別途解決される必要があるので、やはりあこがれの職業(笑)にはなり得ないのです。

本日のツッコミ(全8件) [ツッコミを入れる]
Baatarism (2005-11-26 18:33)

今、「エコノミスト、南の貧困と闘う」という本を読んでいるのですが、中国が内陸部・農村開発による内需の拡大を行おうというのは、この本に書かれているような発展途上国への経済援助を、中国が自分の国内で行っているようなものだと思います。
そして発展途上国への援助というのは失敗例がたくさんありますが、中国がこれらの失敗例から学んで、適切な政策を行うことができるかが問題となるでしょう。

梶ピエール (2005-11-26 18:34)

bewaadさん、ツッコミありがとうございます。特に前川リポートに関するご指摘はとても参考になりました。考えをまとめていたら長くなりましたので新たにエントリを立てました。ところで、「あこがれの職業」についてですが、もし将来「東アジア共同体」なるものが現実のものとなった場合、bewaadさんのような優秀な経済官僚の方はかの国(たち)とわが国の金融政策すり合わせための戦力としてかりだされる可能性なきにしもあらずだと思いますが、そのときはどうか(嫌にならないで)頑張ってください(笑)。

yama (2005-11-26 20:52)

>bewaadさん
今回は大変読み応えがありました。頑張ってください。

bewaad (2005-11-27 12:33)

>Baatarismさん
trackbackいただいたkaikaji(梶ピエール)さんの新しいエントリでも論じられていますが、人口移動圧力が大きく、それを押しとどめる労力も先進国・発展途上国間でのそれとは大差があるので、援助で現地においてというよりは、ルイスモデル的に都市部への人口移動をいかに軋轢を少なく行わせるかが鍵のような気がします。といっても、その結果は史上最大規模の都市圏形成でしょうから、それが都市政策としてうまくいくかは悩ましいところだと思いますが。

bewaad (2005-11-27 12:35)

>梶ピエールさん
こちらも本日(27日)付で新エントリを立ててみました。

東アジア共同体は、自分が生きている間には形成されないでしょうから、次代に任せたいと思います(笑)。

bewaad (2005-11-27 12:36)

>yamaさん
ありがとうございます。

今後も納得行かない点があればご指摘いただければ幸いです。過去エントリでいくつも例がありますが、過ちを改めるに憚りなくやろうという方針ですので、よろしくお願いいたします。

nuller (2005-11-29 22:28)

>>やっぱりwebmasterは彼の国の官僚でなくてよかったとしみじみ思います(笑)
そんな弱気な事言わずに!GO!!(笑)

bewaad (2005-11-30 05:12)

>nullerさん
え〜っ、亡命っすか(笑)。

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昔、湛山、今、山形。

昨日のエントリに関して、bewaadさんから大変参考になる[http://bewaad.com/20051126.html#p01:title=ツッコミ]をいただいた。論点を乱暴に一言でまとめてしまうと、僕が「中国においても構造改革路線とリフレ政策や財政出動を重視する路線は対立するのではないか」と述..


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