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(ここはbewaad institute@kasumigasekiの過去ログ倉庫です。コメント等は仕様上受付けを停止しておりませんが、こちらではご遠慮いただければ幸いです。何かございましたら、現行サイトにお願いいたします。)
2005-12-05
■ [economy]素人が答えていいのでしょうか?(回答を伺う前に答えてしまいますが)
本田先生が「経済学ド素人の、ド素人による、ド素人のための愚鈍な疑問+α」と題して出題されています。コメント欄にてすでに議論が深められているのですが、包括的にと独自性を一応主張して以下。
a.一国単位の金融政策は、グローバル経済の圧力に対して有効でありうるのか。
リフレやインタゲとは国内の物価を上昇させ、国内の賃金を相対的に低下させることによって雇用の拡大を図るもののようだが、それは国外において国内とは比較にならないほど安価な労働力とそれに基づく安価な製品が存在する場合に、その国の経済の国際競争力をいっそう低下させるものとはならないのか。
国際競争力なんて飾りです。偉い人にはそれがわからんのですよ。以上。
・・・ではあまりにも不親切なので。リフレが実現した環境下において実質賃金の切下げがあるといっても、それによって生産品の原価を引き下げて輸出振興に資するからよしとしているわけではありません。本田先生のイメージでは貿易財が高付加価値財と低付加価値財の2財からなるときに、リフレ政策が前者から後者へ生産のシフトをもたらすということに見えますが(で、後者において他国と競争しても勝てない、と)、リフレ政策は一義的には内需拡大施策でして、日本国内での需要が増えればそのための生産も増える効果を見込んでいるものです(一部は輸入で賄われるでしょうけれども)。
乱暴に言い換えれば、現在の生産を基本的に維持した上で、さらに増加した需要に見合う生産が行われることを想定しています。需要が増加した一部が発展途上国産の安価な製品に充てられたとしても、国内で生み出される財・サービスに充てられる部分がある以上、それだけ国内生産は増加することになります。この場合、日本と日本に低付加価値財を輸出している国とは共存共栄の関係に立つわけです。
ちなみに国と国とは(少なくとも経済において)競争しているわけではありません。A国においてイノヴェーションが起きB国においては起きなかった時、B国が「先にイノヴェーションができていればA国が今占めている地位を自国が占めていたのに」と思っていたとしても、B国もまたA国のイノヴェーションの利益を受けているわけです(自国で作るより安いand/or高品質な製品を購入できるので)。当該財・サービスの供給はA国にまかせて比較優位な分野で、というのがB国の賢明な選択であり、そこでA国に追いつけ追い越せと考えるのは資源の無駄遣いです。そもそも競争していないのですから、国と国の(国際)競争力なんて飾りなのです。
#もちろんB国内の個別企業がそうしたイノヴェーションにいそしむのは望ましいことです。
b.景気循環と長期的変化の関係は?
景気循環を政策的に調整する努力が払われたとしても、たとえばサービス経済化や製造業における製品寿命と生産サイクルの短期化などの長期的・構造的・不可逆的な変化が非典型労働力への需要を不可避的にもたらしているとすれば、非典型雇用の規模は一定以下には減少せず、かつ非典型労働力は典型労働力のプールとして低水準の処遇のままに置かれるのではないか(制度的に均等待遇の導入がなされない限り)。その際に景気浮上とは水に漬かったボールの全体が持ち上がって水に濡れる部分が減るような状態ではなく、ボールが餅のようにみょーんと伸びて水に漬かった部分の大きさはあまり変わらないままに上部が上に持ち上がる状態をもたらすにすぎないのではないか。
非典型雇用の規模が一定以下には減少しないとの前提を受け入れたとしても、典型雇用・非典型雇用間の流動性が確保されていれば、「非典型労働力は典型労働力のプールとして低水準の処遇のままに置かれる」ことは不可能です。制度的に均等待遇の導入がなされなくとも。というのも、典型雇用において需要過剰(「売り手市場」な状態)で賃金が上昇している場合において、典型雇用者が典型労働者よりも安い賃金で非典型労働者を典型雇用することを禁ずることはできないからです。そうした典型雇用から非典型雇用へのトリックルダウン効果にはタイムラグがあり得ますから、ひっぱられたボールが若干上下に伸びることは考えられますが、どこまでも伸びるわけではなく追って水面から離れる部分が増えることでしょう。
「流動性が確保されていれば」と条件付けたようにスキル等に差がある二階層が形成され、非典型労働者が典型労働者にはなり得ないとするなら、トリックルダウン効果は相当減殺されます。よってそのような階層分離を防止する施策(貧困層への教育機会の確保等)は果敢に講じられるべきですが、実際には景気対策はそうした施策として見ても非常に優れています。というのも、
- 「猫の手も借りたい」雇用者は結局は労働者の頭数の確保に走りますし、そこでスキル等が不十分ということなら、そろばん勘定に基づきOJTなり企業内研修なりで身に付けさせようとします。
- 景気回復によりマクロ的に見た労働者数が増加すれば、当該者の教育支出等にも余裕ができ、その分だけスキル等の不足により典型雇用市場に参入できない者の絶対数が減少します。
c.消費者の流動性選好(貨幣愛)は制度的原因に基づくものではないのか。
消費者の「財布の紐が固くなる」ことによる需要の冷え込みは、たとえば年金制度などの制度の機能不全から来る将来への不安を主要な原因としており、そうした制度を改革しない限り金融政策によって流動性選好をコントロールすることは難しいのではないか。
ご指摘の要因の有無にかかわらず、リフレ下で生じると想定される実質金利低下時には流動性選好はデフレ期より小さなものとなります。というのも、実質金利が高くなればなるほど貨幣退蔵は不利な選択肢となるからです。程度はともかく流動性選好を下げることを「コントロール」というなら、難しいということはあり得ません。現在の日本がご指摘の状態にあり年金改革等により流動性選好を下げ得る状態にあるとしても、リフレ政策を採らない理由にはならないのです。
d.(1)「日本的企業社会礼賛論」、(2)「構造改革主義」≒「市場原理主義」、(3)「左翼」、(4)景気優先主義、の関係について。
(1)への批判と「弱肉強食」的市場観という点で(3)が(2)と共通点をもつとしても、(2)が個人の生活に対する「保護」なき市場競争を奨励し(1)と(3)は何らかの「保護」((1)は個々の企業による内部メンバーの保護、(3)は企業外の普遍的かつ最低生活保障的な保護)を支持するという点で(3)と(2)の相違もまた明らかであり、同時に(4)と(2)は市場への信頼(シビアな見方=「弱肉強食」か楽観的な見方=「共存共栄」の違いはあれ)を共通点とする点でやはり(4)は「保護」に関して否定的であることになるが、「共存共栄」的市場の実現・維持が保障されない限り「保護」はやはり必要なのであり、結局は(3)が現実的な選択となるのではないのか。あるいは(3)と(4)は「公共財」への支持((3)は生活保障、(4)は景気という違いはあれ)という点で共通性をもつので手を携えて進みうるということなのか。それとも(4)にとって(3)は障害になるのか。
もともと「景気優先主義」と括られる意見の持ち主の中には、(1)から(3)までのいずれもいるわけです。食事に例えていうなら、(1)から(3)までの違いは好みの味についての対立である一方、(4)は栄養状態についてのスタンスとなります。栄養失調(不完全雇用)を脱してからなら甘辛苦どんな味の食事を選ぼうと(ミクロ政策においてどのようなスタンスに立とうと)かまわないけれど、まずは栄養を十分に摂ろうよ(完全雇用を達成しよう)と。
したがって、実は(1)から(3)まではそれぞれ(1-1)(1-2)、・・・と分けられ、仮に(x-1)が景気後回し主義で(x-2)が景気優先主義だとすれば、(4)とは(1-2)から(3-2)という項目横断的な分類で、対立概念は(1-1)から(3-1)までの景気後回し主義になります。(4)は(1)から(3)までとは切り口が違うのです。
■ [BOJ][economy]日銀の孤立化?
一紙のみでの報道のようですので、即断は禁物ではありますが。
【ロンドン=納富優香】先進七カ国財務相・中央銀行総裁会議(G7)では、原油高などを反映して一九九八年以来、七年半ぶりに「インフレ懸念」が議題に取り上げられた。共同声明は各国の協調と対話の必要性を強く打ち出しており、日本にはデフレ脱却を優先させた政策的行動が一段と求められた。日銀は量的緩和策の解除時期を探っているが、利上げ局面に移った欧米との金融政策の違いが鮮明となり、ジレンマを抱えながらのかじ取りを迫られた格好だ。
会議で日銀の福井俊彦総裁は「消費者物価指数が安定的にゼロ%以上になったことが確認できれば、約束に従って量的緩和策を解除する」との基本姿勢を示したという。
しかし、日本の金融政策について「各国の反応は鈍かった」(国際金融筋)という。消費者物価指数は年内にもプラス転換する見通しで、来春にも解除時期を迎える−という日銀が描くシナリオに対し、参加国の理解と支持が得られたと解釈するには早急だといえる。
むしろ、スノー米財務長官が「日本と欧州の内需の伸びが不十分だ」と名指しで指摘したように、日本に対しては引き続き構造改革推進と財政再建の両立に期待を示されたようだ。
(略)
日本の成長促進に追い風ともなる円安ドル高の進展も、現状の水準が容認された。ただ、量的緩和をめぐっては、早期解除に意欲を示す日銀と、解除に慎重な政府・与党との溝が深まっている。
「各国との協調」という事実上の圧力も受けながら、政府・日銀には金融政策に対する議論の集約が迫られそうだ。
産経「G7閉幕 日銀シナリオ、反応鈍く 各国、デフレ脱却求める」
アメリカが金融引締めによるソフトランディングを図っている中、日本がまたデフレの下景況を悪化させることは避けたいという極めて常識的(だけど日銀にとっては非常識(笑))な議論が行われたようです。現状の円安も容認とのことですが、容認されざる水準がどの程度かというのがリスク要因でしょう。遠ければ遠いほどよいのは当然ながら、130円の声を聞かないうちにということであれば、協調利上げといった話も出てきかねません。
なお、貴重な情報をいただいておいて申し上げるのもなんですが、納富記者は非常に日銀に同情的ですね。それに加えて、内需の伸びが不十分という指摘を「引き続き構造改革推進と財政再建の両立に期待を示された」と脳内変換するロジックは・・・(笑)。
#納富記者の記述をいざなうような表現がスノー長官の発言中にはあります(詳しくは翌日のエントリをご覧下さい)。発言内容は当たらないとwebmasterは考えますが、「脳内変換」は不当な表現でした。お詫びいたします。(12/6追記)
■ [law][government]立場が変わればもちろん言うことは変わるでしょう(笑)
ストーカー規正制(branchさんご指摘ありがとうございました。a要素は内容にa要素を含むことができないので、文中の語順を変更しました(12/8追記))法の運用変更についてのbranchさんによる紹介を受けてですが、行政府は無力ですから、と。ご紹介あったのはストーカー規正制法立案時には謙抑的な解釈が想定され、それを当時役所で是とした連中が最高裁判事になった今では逆向きの判決を出しやがって、ということですが(大意)、結局行政府は立法権を持っていないという点が鍵になるでしょう。
他方で司法府は判決により法解釈を確定することができるのですから、基となる成文法の制定は立法府の権限だとしても、それを立法府が想定していた趣旨とは全く異なるものとして活用できるという点においては広義の立法権を有しているわけです。典型的には判例を想定したとき、行政府は既往の判例に沿って物を考えざるを得ませんが、司法府は判例変更が可能です。内閣法制局長官といえど許される解釈の幅は司法府のそれより格段に狭いわけで、許される範囲が拡大したために解釈を変更したということではないでしょうか。
#じゃあそういう条文を立案すればよかったじゃないか、というのは言わないお約束で(笑)。
[http://bewaad.com/:title]がマウスホイールでスクロールできるようになったこと。
いまさらながら(bewaadさんがもう答えてしまってますが……) a. 拡張的金融政策が有効であるのは国内労働市場が不均衡状態にあるためです.つまりは現行の実質賃金では労働供給に比べて労働需要が少なすぎる.これを一致させるためには実質賃金が低下する必要がありま..
もふの原作者が片山さつき議員だったんだよ!(AA略)
と脊髄反射で陰謀論を唱えてみるテスト。
まず需要供給の話からやらないとどうしようもないけれどもね。あまり難しい話で奇抜なことに返事しても、また勝手な解釈で話が無限ループするだけだから。
本田さんに1冊読むのをすすめるとしたら何が良いですかね?
・稲葉さんの「経済学という教養」
・「クルーグマン教授の経済入門」
・飯田さんの「経済学思考の技術」
・スティグリッツ「入門経済学」
・岩田さんの「日本経済を学ぶ」
あたりが思いうかびますが、「これ一冊でOK」というとなかなかむずかしい。Eye-Openerという考えでいくと稲葉さんのがいいのかな。
クルーグマンなら「経済政策を売り歩く人々」のほうがいいかもしれませんね。
本田さんは拙著をお読みになっており、あれらの問いは拙著への疑問であると思われます(ならおまえが応えろ、というのはおいといて)。
そしてブログを見る限りでは若田部さんの『改革の経済学』は読んでいるはずです。
となれば次は開巻早々で若田部さんが進めている飯田本、それから小田中『ライブ』でしょう。どうもあの方は人見知りが激しいようで、比較的心を開いてるとおぼしき小田中君の言うことならよく聞くような気がしますし、飯田君にも好感を持っていると思われます。
人見知りが激しくて悪かったっすね!
あ、こんなところにも出現 笑
本田さん、新著、さきほど群馬にて無事拝受いたしました。
この謎の官僚の公共広場を借りましてありがとうございます。
m( ) m
それにしても帯の文句、メガ最高ッス!!
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20051204-00000883-reu-bus_all
スノー長官のコメントのロイター発表版です。引っかかったのは次の点でして、
また、欧州と日本に関しては、「残念なことに、日本と欧州の内需の伸び率は依然として必要とされる水準を下回っており、生産性の伸びと労働力参加率が最大潜在能力に達するための改革が実行される必要性を裏付けている」と述べた。
前半は需要の不足が問題点だと言っているのに、後半ではその是正にはサプライサイド強化が不可欠と言っているのは何だかチンプンカンプンな感じです。スノー長官が本当にこんなことを言ったのかは知りませんが、ロイターの中の人も産経の中の人も構造改革という結論が先にあるので違和感を覚えることはないのでしょうね。
> 本田さんに1冊読むのをすすめるとしたら何が良いですかね?
野口旭先生の「経済対立は誰が起こすのか」と「クルーグマン教授の経済入門」がいいと思いまふ……って二冊になってますね……。
>fhvbwxさん
ま、さすがにそれはないでしょうねぇ(笑)。
>韓流好きなリフレ派さん
あの論争は指をくわえてみているだけだったので、何かできなかったかなぁと思っていたところでしたので。素人が書いた方が、という効果も期待しつつ書いてみました。とりあえず読んでいただけたようで、書いた意味もあったのかなと思ってます。
>cloudyさん、でぶさん、英-Ranさん
クルーグマン「良い経済学 悪い経済学」はどうでしょう?
>稲葉先生
dの設問に「教養」の影を感じましたが、やはりそうでしたか。
ところで他ならぬ稲葉先生にこそ心をお開きであるように見えるのは気のせいでしょうか(笑)。
>本田先生
わざわざ拙文にお目通しいただきありがとうございます。
個人的経験では、疑問を隠さずぶつけていただけるのはとてもありがたいことだと思っていまして(最近(8〜9月ごろ)では徳保さんにもお付き合いいただきました)、適任ではないと承知ででしゃばりました。今後ともよろしくお願いいたします。
>dqn猫さん
ご紹介ありがとうございました。確認したところ、本日(12/6)のエントリで取り上げましたが、実際に"reform"と言っていました。
では僕も1冊。
「エコノミスト 南の貧困と闘う」ウィリアム イースタリー
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4492443045/hatena-22/ref%3Dnosim/249-4759573-3965954
発展途上国への援助が何故うまく行かないのかを論じた本ですが、先進国において弱者をどうすれば助けられるかという問題についても、この本の考え方は役に立つと思います。
本よりも経済学カウンセラーじゃないの? 私では
力不足ですので、誰か出撃キボン。bewaadさんかな ニヤリ
敗者からのアドバイスとしては、「論理よりやさひいことぱ」。
>Baatarismさん
確かにイースタリー本はいいですね。見落としてました。
>韓流好きなリフレ派さん
こちらもあちこちで敗戦続きで(笑)。
しかしあのメール貼り付けは・・・うーん。いっそのことハイエクの価格による情報伝播の話あたりからがよいのでしょうか?