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(ここはbewaad institute@kasumigasekiの過去ログ倉庫です。コメント等は仕様上受付けを停止しておりませんが、こちらではご遠慮いただければ幸いです。何かございましたら、現行サイトにお願いいたします。)
2005-12-16
■ [economy][law]みずほ証券誤発注に伴う利益についての考え方
一昨日のエントリのツッコミにおいて、webmasterは次のように書きました。
みずほ証券の誤発注に乗じて設けた証券会社への批判的な雰囲気もそれと共通するものがあると思います。法に触れるわけじゃなし、なんであれが望ましくないやり口であるかのように語られなければならないのか、さっぱりわかりません。
これに直接応じていただいたわけではありませんが(時系列でいえばwebmasterの書き込みの方が後です)、47thさんが同じテーマについて次のように論じていらっしゃいます。
今回の件は、単なる誤発注、しかも、相当明かな誤発注であって、今回の取引自体から生み出されたプラスの価値は何もないく、どんな処理をしても、最終的には、せいぜいみずほ証券(売主)から買主への富の移転がもたらされるだけで、社会的な効率性には何ら寄与しませんよね。
・・・じゃあ、何故、この取引がenforceされなきゃいけないんでしょうね?
(略)
また、「このローエコかぶれの弁護士め!」と石を投げられると困るんですが、何で「取引安全」が大事かといえば、ひとつの理由は、問題となっているその取引自体は社会的な厚生を直接に高めなくても、その取引を保護することで、将来の同種の取引における取引費用を削減するところにあるということができるんじゃないかと。
(略)
・・・でも、そこには、自ずから限界があるはずです。つまり、「この取引を無効にしても、誰も将来の取引に際して困らないよね」という場合には、「将来の同種取引に際しての取引費用の削減」なんてことを考える必要はなく、その取引自体のコストとか効率性を直接に問題とすればいいはずです。
そこで、私の中にわき起こる疑問は、今回の取引を守ることが事前の(ex ante)効率性をもたらすことになるのか?という点です。
今回の件でwind fallを得た投資家の取引完了への「期待」を保護することは、事前の効率性をもたらすんでしょうか?
少なくとも、事前の効率性への「悪影響」は2つほど考えられます。
ひとつは、こうした市場関係者の誰にとっても一見明白なエラーによる富の移転をもarbitrageすることの動機付けを与えるということです。例えば、今回、みずほの誤注文を知っても買い注文を入れなかった証券会社や大口投資家も、今回の取引が保護されることを見れば、「次は絶対に遠慮しないぞ!」ということになり、次回、同じような一見明白なエラーがあった場合には、更に機会主義的行動が加速されることになるんじゃないでしょうか?これって、「事前」の効率性なんでしょうか?
もうひとつは、こうして一見明白なエラーによる機会主義的行動についても、そのトリガーを引いた者が全ての責任をとる形になると、そのエラーを避けるために、多額のコストが投下されることです。よく、アメリカのPL法と懲罰的賠償を揶揄する例に、(ちょっと正確でないかも知れませんが)ぬれた猫を渇かそうと電子レンジに入れた買主が、電子レンジメーカーから億単位の賠償金をせしめたので、以後電子レンジメーカーは、およそあり得ないような用法についてまで「これをやってはいけない」という注意書きをしなければならないようになった、というような話がありますが、これと今回の件は似てませんか?
(略)
Just印象だけですが、今回の単純エラーの損害を拡大したのは、プロの市場プレイヤーの機会主義的な行動=誤発注であることを知って行われた行動が間に介在していると考えることもできるんじゃないでしょうか?
こういう場合には、機会主義的行動によって損害を拡大させた者にも、一定の損害の負担を求めること(具体的には、思ったような利益は得させないことと、取引が空振りに終わったことによる費用程度ですが)で、今後、こういう「一見明白なエラー」が起きたときに、それを拡大させないような事前のインセンティブを与える解決の方が、トータルでみたときに「証券市場の公正と信頼」を守ることにつながるような気がするんですけど・・・どうでしょう?
「証券市場の公正と信頼?」(@ふぉーりん・あとにーの憂鬱12/13付)
議論の前に「今回の件は・・・社会的な効率性には何ら寄与しませんよね」の含意について補足させていただきます。売買等の取引が社会的な効率性に寄与するのは、お互いに(相対的に)いらないものをいるものと交換できるからです。手元の使いでのないものを相手に渡してその代わりに使いでのあるものを受け取る、そしてそれは相手にとっても同じです。取引により交換される財は売買当事者のそれぞれにおいて取引がなかったときよりも有効活用されることになり、ひいては社会全体にとっても有益だということになります。ところが本件においてはそのような効果はありませんよね、と。
議論としてはwebmasterは47thさんに反対の立場です。理由は次の4つとなります。
- 取引を成立させないことが誤ったインセンティブを与えること
- 取引を成立させないことにより市場の価格形成機能が損なわれかねないこと
- 一律に処理することにより情報の非対称性が緩和されること
- 今回の「損害」には外部性がないこと
最初の2点については、本石町日記での次のエントリ及びそこでの馬車馬さんのコメントがそれぞれに的確な指摘をなさっています。
さらに気になるのは、モラルハザードの懸念だ。今回のミスはオペレーショナルリスクが極大に顕現化した典型例と受け止められ、多くの金融機関が教訓にすべき事例。ところが、相当額が救済されるなら、リスク管理を真剣にやるインセンティブは薄れる。金融庁・日銀はそれでもきちっとやれと言うのだろうが、少なくともマーケット取引に関しては大失敗ほど救済される悪しき事例が残る。取引ミスは日常茶飯事であろう。個人が取引ミスで破たんした場合、普通は誰も救わない。銀行が困るぐらい金を借りた企業が救済(債権放棄)され、小額借りた零細・個人が追い込まれた不良債権処理と同じ構図が透ける。
Commented by 馬車馬 at 2005-12-15 08:28 x
(略)
まさか「明らかなミスプライスは黙って見過ごすべき」とか、そういうこと言い出さないだろうなぁ。そんなの日常茶飯事ですし(特にOTCマーケットでは。オプションの計算間違いとか、結構ありますよね)、そこでお馬鹿さんを叩くから市場価格が安定するわけで。
「入力ミスの儲けを返却!?=敵失の馬鹿勝ちがNOなら…」(@本石町日記12/14付)
重要な部分は以上で尽きていますが、これらは47thさんのエントリを念頭に書かれたものではありません。若干付けたします。
第1点については、オペレーショナルリスクを極小化しようとする措置の存在とコストのバランスをどう考えるかが問題となります。いくらのコストが必要かがwebmasterにはわからないので定性的な記述になりますが、47thさんは追加コストのみを考えていて見落としがあります。それは、現に講じられているこの手のミスを防止するための措置を止めてしまうことが合理的になってしまうということです。リスク対策の程度を考察するなら、これをも考慮しなければならないのではないでしょうか。
第2点は第3点と密接な関係があります。今回の取引において非難されているのは証券会社で、彼(女)らからすればこれがミスであることは当然にわかるだろうということが前提です。他方、市場においては板に売買・気配の情報が集約され、それを見れば情報において無差別であるはずということになります。果たしてこれらは両立可能なのでしょうか。
いみじくも47thさんは証券会社のみならず(機関)投資家も同様にとされていますが、これは板以外の情報のパスの存在を前提とした議論です。証券会社・機関投資家とそれ以外を分かつメルクマールは、このパスへのアクセスの有無ということになります。したがってこの議論は、
- 板とそれ以外の情報パスを前提にある種の二重市場を観念しそれぞれに適用される規範も違うものであるとするか、
- 究極的には板に帰着すると割り切って統一規範を適用することとするか、
のいずれかの選択となります。
webmasterが思うに、47thさんのように損害を問題視するのであれば、ここで善意悪意(私法上の用語として、善意=事情を知っているらない、悪意=事情を知らないっている、の意味で使っています)を問うても仕方がないのではないかと思います。みずほ証券にとって同業者に油揚げをさらわれるのと個人投資家に油揚げをさらわれるのでは悔しさの程度は違うかもしれませんが、結局はそうした気持ちにとどまるもので損害額が変わるわけではありません。
#善意・悪意の意味を訂正しました。(12/17追記)
#まして今回は実際に悪意であるかどうかより、悪意であり得るかどうかですし。
であるなら後者でいいのではないかと。具体的な悪用法が念頭にあるわけではありませんが、前者なら証券会社には「表」「裏」の双方の市場を認識できる一方で、一般投資家には「表」市場しか見えないわけで、別の不適切なarbitrageの原因になりかねないのではないかという気がするのです。
第4点は、47thさんが損害の「拡大」を問題視されていることに関連します。ここでの問題とは、ある程度の損害が生じるのは致し方ないものの、その規模が大きすぎたからという趣旨と解されます。つまり、事柄の性質として損害が生じることそのものが問題というわけではなくなります。
このロジックに基づき、一定以上の規模の損害については何らかの措置が講じられるとするなら、それはシステミックリスクなど市場そのものの存在に危機を及ぼすようなものでなければならないのではないでしょうか。この場合、損害には外部性があり、単に損害をこうむった者のみならず第三者にも連鎖的な損害が及びかねないのでどこかでストップしなければということになります。
しかし本件は幸いにしてみずほ証券一社の問題にとどまっています。であるなら、規模を理由に扱いを変える合理性には乏しいのではないかというのがwebmasterの考えです。
なお、参考までに申し上げますと、本エントリは先に引用した47thさんのエントリの次エントリでの次の記述を踏まえております。
私が昨日言いたかったのは、こんな特殊なケースで、個別具体的な当事者の状況をや法的な解釈論をぎりぎりまでつめることを「取引安全」の旗印の下に放棄してしまうことは、証券市場の公正や信頼を高めることにはならずに、却って、証券市場というフィルターを通せば、どんな機会主義的行動も許されるというメッセージを送るということになってしまうんじゃないの?ということでした。
ところが、今回のケースでは、ろじゃあさんが仰っているように、「取引としては有効」というラベル付けをいったん行ったわけです。この「有効な取引」から得た収益を返還する理由が、どこにあるんでしょう?
当局の圧力?・・・今回の件では、一見妥当な結論に見えても、当局の判断や常識が誤っている可能性は常にありますし、そうした行政による権力の濫用を防ぐ枠組が憲法であり、法律です。
もし、「今回の件では処分できないけど、他の件でペナルティを課す」ということを、本当に考えているとすれば、そのこと自体が、今回の誤発注問題よりもはるかに深刻な別の問題を提起することになるような気がします。
更にいえば、こういう「行政がルールの枠外のことをしてくるかも知れないので、その損害を避ける」というのは、100億規模の利益をあきらめる根拠として十分かという疑問も生じてきます。
「結果よければ全てよし」(@ふぉーりん・あとにーの憂鬱12/14付)
ここでいう「法的な解釈論をぎりぎりまでつめること」の一助となればという趣旨で、本エントリもまた議論の材料にしていただければ幸いと思う次第です。また、結局講じられた日証協による返還要請を疑問視されている47thさんの見解については、そのとおりだと考えています。
最後に余談ですが、紹介させていただいた本石町日記のエントリには、次のようなオチがついています。
知り合いの日銀関係者に聞いた。「解除に失敗したら、政策委の過半数の委員に『投票ミスだった。解除に反対だったのに間違えて賛成しちゃった。錯誤である』と言わせたら」と。アホか、というような感想だった。さすがに与謝野大臣も「(日銀の判断ミスに付け込むのは)美しくない」と政府・与党の方々には言えないだろうなあ。
「入力ミスの儲けを返却!?=敵失の馬鹿勝ちがNOなら…」(@本石町日記12/14付)
冗談だとすればセンスが悪いし、本気でそう考えているとしたら・・・いやいや、そんなことはないはず、と信じます。
■ [economy][politics]自民党金融調査会・金融政策に関する小委員会第1回会合
標記会合が昨日15日に開催され、インフレターゲット等について議論が行われたとのことです。その報道振りのニュアンスの違いがなかなか味わい深いです。
自民党の金融政策小委員会は15日に初会合を開いた。委員会発足にあたり山本幸三委員長は、中川政調会長から、小委員会では政策目標を日銀と共有し、できれば政府・日銀でアコード策定に持っていきたいので、取りまとめを行って欲しい、との指示を受けたことを明らかにした。政策目標について中川政調会長は、インフレ目標ではなく、名目成長率を基本と考えたい意向を示しているという。
山本委員長は、会議終了後記者団に対し、日銀の独立性は政策手段であって、政策目標は政府と共有すべきだとし「デフレ脱却に向けての政府・日銀一体の目標、できればアコードに持っていきたい。そういうマンデート(指示)だ」と述べ、委員会発足に当たっての中川政調会長からの指示を明らかにした。
また、共通の政策目標については、「インフレ目標というとアレルギーが出る。名目成長率目標を基本として考えてやってもらいたい」という指示があったことも明らかにした。
<日銀に対し厳しい意見>
(略)
日銀は、量的緩和解除にあたって、消費者物価(除く生鮮、CPI)が安定的にゼロ%以上になるという条件を示しているが、これをもってデフレ克服とは判断しておらず、「デフレ脱却に向けた通過点」と説明。
これに対し、出席した議員からは、「デフレ脱却でもないのに量的緩和を解除して、何をやろうとしているのか分からない」、「長期金利への影響をどのように考えるのか」、「金融政策を逆方向に動かすのはマイナス」などの厳しい意見が出された。(以下略)
朝日(ロイター)「政府・日銀が政策目標でアコードを=自民党金融政策小委」
自民党は15日、望ましい物価上昇率を掲げて金融政策を運営するインフレ・ターゲット(目標)の導入を政府・日銀に近く求める方針を固めた。
中川政調会長が指示したもので、同日午前の党金融調査会「金融政策に関する小委員会」(山本幸三小委員長)で物価上昇率の具体的な数値目標を早急にまとめる方向で議論を開始した。
中川氏は15日、「(インフレ目標は)欧州でも導入されており、検討すべきだ。海外では政府と中央銀行が政策協定の形でやる手法もあり、それも参考に議論したい」と記者団に述べた。中川氏は、日本経済はデフレ状況を脱していないとの認識を前提に、インフレ目標の設定により、〈1〉デフレ脱却〈2〉過剰なインフレ(ハイパーインフレ)の抑制――の両方を実現したいとしている。
山本氏は小委員会後、「政府と日銀は政策目標を共有する必要がある」と記者団に語り、名目成長率を目標にすることも含め、幅広く議論する考えを示した。
インフレ目標については、日本銀行の武藤敏郎副総裁が2日、「透明性確保の手段の一つ」と述べ、過剰な物価上昇の防止策として前向きな考えを示している。
自民党は15日、「金融調査会・金融政策に関する小委員会」(山本幸三小委員長)の初会合を開き、日銀から幹部を招いてデフレ克服の定義などを議論した。
(略)
自民党からは「量的緩和の解除をもってデフレ克服といえるのか」との声も出た。日銀側は「消費者物価の安定的なプラスはデフレ脱却の通過点」と述べ、量的金融緩和策を解除した後も非常に低い短期金利にすることで、景気を支える方針を説明した。
山本委員長は「政府と日銀で政策目標を決め、具体的な手段を日銀に任せるのがよい」と述べ、両者の間で望ましい名目経済成長率を掲げることが重要との認識を示した。次回の会合は21日に開かれる予定。
日経「自民と日銀、デフレ克服の定義にズレ・金融政策で初会合」
もっとも詳細に、かつきちんとポイントを押さえているのが朝日の報道です。ソースはロイターなので朝日が褒められるべきというものでもないのですが(笑)。とまれ、中川政調会長の狙いは次のようなものだということになります。
- 日銀の独立性を政策手段のそれと限定
- 金融政策目標は政府・日銀間でのアコードで設定
- 目標指標は「インフレ」への拒否感を踏まえ名目(GDP)成長率
読売は若干ポイントを外していて、インフレターゲット導入という頭があってそれに記事内容が誘導されているからではないかと思われます。客観報道の観点からは疑問が残るといえば残ります。何より中川政調会長のいう「過剰なインフレ」をハイパーインフレとしているのはいかがなものかと(笑)。ハイパーインフレとは年率13,000%以上のインフレのことで、当然中川政調会長はもっと手前でのインフレ抑制(現在の日本では下手すると年率3%でも「過剰」とされかねませんが)を狙っていることでしょう。
日経は親日銀スタンスが読売とは逆方向に客観性を損なっています。これを読んだだけでは中川政調会長の意図はほとんど伝わらず、淡々と意見交換を行ったかのように受け止めてしまうでしょう。インフレターゲットという言葉を肯定的に紙面に載せるのはいやなんでしょうねぇ(笑)。
この話題はもうやめておこうと思ったんですが、bewaadさんから「//bewaad.com/20051216.html#p01">みずほ証券誤発注に伴う利益についての考え方」というTBを頂いたので、ちょこっとだけ、ミクロの世界・・・というか、ローエコの世界の住人として、今回のみずほ証券の救..
私も釈然としない。が、理由は正反対だ。 ゼニの人間学 青木雄二 本石町日記 みずほ証券の入力ミスで利益を得た金融機関はそれを返却しそうな方向だ。大手業者同士がそれぞれ納得して、「武士の情」をかけたように見えるが、どうも釈然としない。道義性はと....
まずは経済関連。
1.「ジェイコム株 単純ミスで大損失 東証「安全装置」なく」
今日はちょっと雲の上の人と話す機会があったのですが、彼曰く、「茶番だ」、そうで
善意と悪意とが入れ替わっていませんか?
ゼロ金利で金融市場の規律付けが失われひいては長期的な国民経済
に対する深刻な不効率性の発生が懸念されると主張する審議員に
おかせられては、この際に強力かつ適切なご発言があってしかるべ
きでしょうな。さもないと、日ごろの主張はコール市場参加者保護
にための主張との誤解が生じますが(笑)
私の2日前のエントリは47thさんの文章は知らずに書きましたが、半分は47thさんに同意です。
モラルハザードについてはwebmasterご指摘の通りで、利益のみずほへの「返却」の必要はないと思います。間違って損した、それは補償する必要は全くない。この点が「半分」不同意。
しかし、こうした取引から多額の利益を得られるという前例はそれはそれで誤ったインセンティヴを与えることになると私は考えます。理由は「ミスプライス」と「明らかな錯誤」は(確かにグレーゾーンはあるでしょうが)今回のようなケースでは明白に区別可能で、こうした価格を「拾える」ことが当該証券会社の生産性、効率性を適切に反映しているとはとても思えない、したがって市場の効率性にも寄与しないと考えるからです。
もう少し言えば、それが本当のミスプライスであるならば、「どの程度のミスプライスか」を正確に判断することが当該投資家の利益に反映されるわけですが、こうした誤発注の場合、「1円で61万株」も「16円で61万株」(電通株におけるUBSの誤発注のケース)も同じただのミスであるのに対して、それを拾う側の利益機会が全く異なるわけです。以上から、発注側→「誤発注でも救済されない」(モラルハザード防止)、拾う側→「こんなんで利益出しても回収される」(明らかな誤発注は無視して粛々と適切な価格形成に励んで頂く)、というのが然るべきインセンティヴの与え方ではないかと考えます。
もっとも、私は法律は全くの素人ですので、制度的にこうしたことをどう手当すればいいのかはno ideaですが・・・
こんな失敗を救済すべきというなら、「暗証番号が書いてあるキャッシュカード」が盗まれ預金が引き出されたケースでも預金全額補償してくれないとね。>みずほ
そもそもなぜ「望ましくない」のかといえば、日本の文化、日本人の多くが持っている価値観に反する、ということに尽きるのでは。報道では日証協が利益返上(→日本投資者保護基金への資金供出)を各社に要請した理由は「業界のイメージ悪化を防ぐ」ため、とのこと。経済学的に云々という話ではなくて、日本で商売するからには国民感情を無視できない、という話ではないでしょうか。
> cloudy さん
みずほは救済を求めていませんし、みずほの損がチャラになるわけでもありません。みずほを揶揄するのはお門違いでしょう。
しかし、もし明らかな発注ミスでは利益を生み出せないと知っていれ
ば、次回以降は売買は成立しません。つまり、発注ミスを起こしても
損失は発生しません。単に無かったことになるだけ。ということで、
切った張ったのマーケットでありながら東証端末のデータ入力は、
「ま、いいかw」で済んじゃうわけですけど。これでまともな価格
形成できますかね?
センス悪い冗談でした。申し訳ありません。金利機能封殺、預金金利引き上げで所得増強→消費拡大、政治的圧力でインフレリスク増大etc、といった論議に巻き込まれ、頭の調子がイマイチなのか、今後はセンス良くいくよう努める次第です。
>銅鑼衣紋さん
誤発注と思しきものがあった場合、東証の判断で一旦取引を停止した上で発注元に確認し、
注文取消→結構な額の課徴金を課す(固定額ということで合理的に予測可能な損失だが、誤発注をしないようにするインセンティヴは働く)
取消なし→取引再開で他の投資家も鞘取り可能
というようにしてはいかがでしょうか。要は、証券市場の本来の強みであるはずの「瞬間芸」的な渦の中にこうした誤発注を投げ込むと非効率的な取引が発生する可能性がある、ということだと思いますので。
>アルベルトさん
東証が会員会社からお金を集めて監視を強化するんですか・・・
懸賞金付きでほっておけば、鵜の目鷹の目の市場参加者が
死ぬほど厳しいペナルティーを課してくれるんですけど、
民のできることは民にまかせるんじゃ駄目でしょうかね?
>銅鑼衣紋さん
「民のできることは民に」というご指摘の趣旨をやや狭く捉えますと、上記はあくまでもこうしたらいいんじゃないかという私見ですので上場企業(機関投資家に限らず、ですね)の多くが「例え誤発注で自分の会社の株価がぐちゃぐちゃになるリスクはあっても、東証は余計なことはしてくれるな」という意見なのであればそれに対して「自分の方が正しい」とまで強弁するつもりはありません。また、東証は純粋な民ではないにしても、官でもないと思います。ですので、この事態に対して何かすることが(民に対する意味での)官の介入だとは思いません。
もう少し広く捉えて申しますと、時代錯誤的かもしれませんが私は「市場メカニズム」の信奉者(ヒトはインセンティヴに反応してその集計として資源配分が達成されるという意味で)ではありますが、「市場」の信奉者(制度的に介入は少なければ少ないほどいいという意味で)ではないので、介入結構好きです(笑)。あと、金融業界で働いたことがあり、ここはかなり規制が効いているからこそ健全な競争が行われていると思っています(規制業種なのに失敗している例:建設業界)
>47thさんは追加コストのみを考えていて見落としがあります。それは、現に講じられているこの手のミスを防止するための措置を止めてしまうことが合理的になってしまうということです。
なりませんよ。
誤発注が魔法のように何のお咎めもなく瞬時に取引相手からリカバリされるんであれば別ですけどね。
じっさいには、明確に算出できる損害がゼロであっても、いえ、プラス=結果オーライであろうと、注文を正確に通すことに比べればはるかに、誤注文をリカバリするのは、プレイヤーにとって面倒で避けたいことですから。
やれ始末書、稟議書、顧客へのまわりくどい説明、関係部署への連絡、上司への謝罪、莫大な手間なんです。
インセンティブといえば、証券業者にとって最も強いインセンティブは、なによりスムーズに注文が通ることにあって、それは簡単に薄まるものでもないでしょう。それにより生じる利益の、また、利益機会の増大を考えれば。
つまり、証券会社にとって何がもっとも合理的な状態かといえば、注文が正確にかつスピーディに大量に通る状態であって、それを阻害する誤注文をなくすためのコストを削ろうなんて思いは、いつだってこれっぽっちも浮かばないでしょう。
みずほに進んで返却することのなかに、自分が失敗したときもヨロしくなんて思いがゼロでないとはいえませんが、それがたんなる思いではなく現実のモラルハザードにつながるような、自分で自分の首をしめるようなことをするほど、証券会社はアホじゃないですよ。
余計な心配ご無用。
ご紹介ありがとうございます。
いや、bewaadさんのような論客に理路整然とつっこまれると怖いものですね。とはいえ、非常に勉強になります。
モラル・ハザード問題については、TBで少し述べさせていただきましたが、若干補足いたしますと、追加コストのみを問題としているわけではなく、絶対的な事前の投資水準を問題として、過剰投資となるのではないかという懸念を申し上げたつもりでした。(磯崎さんの問題意識と近いかと)
2点目は証券市場は、原則は匿名性が維持されるわけですが、非常事態における匿名性が剥奪されることが否定されるわけではありません。典型的なのはインサイダー取引ですが、こうした市場の公正性に悪影響をもたらす取引をトラックするために、(直接の)市場参加者には一定の規制がなされているのではないかと思います。アルベルトさんの、「市場メカニズム」は信奉することと「市場」を信奉することとは別の立場という考えには、法律家としては強い共感を覚えます。
最後の損害の問題については、舌足らずだったかも知れませんが、私としては額そのものを問題としているのではなく、損害の拡大の経路(機会主義的行動の介入)を問題としたつもりでした。この場合に、機会主義的行動による損害拡大についても、当初のトリガーを引いた者に「全ての責任」を負わせることは、みずほ証券のみならず、市場参加者と市場運営者に過剰投資のインセンティブや必要以上のリスク回避的行動をもたらす可能性があるという意味で「事前の」非効率性をもたらすのではないかという類のお話です。その意味で、私の枠組の中では、今回の処理のコストはみずほ証券という当事者のみではなく、(投資家にも手数料率の上昇や非金銭的な取引コストの上昇という形で)市場参加者全体と市場運営者(官庁による事前介入の増加も含むんでしょうね)に非効率性をもたらすのではないかと思っております。
コメント欄にながながと書き込んでしまい、申し訳ありません<(_ _)>
>amさん
ご指摘のとおりです。早速訂正いたしました。恥ずかしい限りです。
#偽装学歴疑惑浮上でしょうか(笑)。
>銅鑼さま
日銀ネットにはそんなミスは生じておらず同列に論じるな! ということではないかと(笑)。
>アルベルトさん
疑問の根本は、証券会社や大手機関投資家と個人投資家その他の投資家を分けて論じる理由がわからないというものです。原因がミスであろうがそうでなかろうが、提示された価格につけこめる余地は両者に平等に開かれてい(て適用も平等であ)るにもかかわらず、その原因の推測がつくかどうかで差をつけるべきとは思えないのです。今回のものがけしからんというなら、今年前半に話題となった時間外取引の方がよほどけしからんのではないかと思うのですが、どうでしょうか?
>cloudyさん
みずほという当事者に限れば徳保さんのご指摘のとおりかと存じますが、最近の奥田発言にあるような「マネーゲーム」批判に連なるもので釈然としないです。
>徳保隆夫さん
自分が「国民感情」をきちんとフォローしているという自信もないのですが、政治家の発言は平均的なものを代表しているというよりは偏った部分を代表しているように個人的には見えます。個人投資家等より安く買えたというわけではありませんし。
>本石町日記さん
いや、てっきり本当に日銀職員が言ったのかと信じていました。もし本石町日記さんの作ということでしたら、センスが悪いどころか素晴らしいセンスだと思います。さすがです。
>ASHITAさん
ご指摘のとおりだとすると、
・主観的に認識するリスク量の増減に対してリスク対応コストは中立
・上記リスク量が減ってもコストは減らない一方、増える場合はコストも増えるという非対称性
のいずれかを観念する必要があるのではないでしょうか。
前者であれば47thさんの議論の否定となりますし、後者ですと何らかの特殊な要因を観念しないと成り立たないと思うのですが、いかがでしょう。
>47thさん
こちらこそ手仕舞いにかかっていたところをロールオーバーさせてしまい恐縮です。
第1点目はエントリでも書いたとおり定性的にしか論じる能力がないのですが、とりあえずご指摘のようなアップサイドのみを見るのは片手落ちかなと考えた次第です。過剰になるかもという懸念を根拠なしとするものではありません。
第2点目は、アルベルトさんに対してのコメントでも書きましたが、証券会社等と一般投資家を分けるかどうかが鍵だと思いますが、事実上一般投資家まで射程に入れることは難しいのではないでしょうか。とすれば、証券会社等だけを特別に取り扱う理由は善意・悪意の蓋然性ぐらいしか考えられませんが、善意・悪意で分けることには合理性がないと思います。
#ちなみに、私も一応法律家のはしくれだったりします(笑)。
第3点目として、本件において買い手にとっての機会主義とはひとえにpriceとquantityのみに依存するのではないでしょうか。第2点とも関連しますが、悪意(の蓋然性)によっては収益機会に差が生じないわけですし、となると47thさんのエントリの言葉をお借りすれば結局はgreedyであることに非難の根拠が帰着してしまうように思います。
あ、すいません。「今回の件に関しての見方」と「今後どうすべきか」をごっちゃにして書いてしまっていました。
もちろん、今回の件、プロであれ素人であれ一部投資家が莫大な利益を上げたことは倫理的にも効率性の観点からも望ましくないとは思っていますが、取引が無効だなどと言っているわけではありません。ですので、今回に関する限り、利益の返上は単なる主観として妥当なとこかなと思うまでで強制できるものではありませんし、個人まで追いかけるのは現実的じゃないだろうな程度の話です。
一方、「今後どうするか」の提案の方は、私としては取引無効は個人も含め、と思っています。最初のコメントで「プロ」という表現を使ったのは、誤発注を見た瞬間に大量の買いを入れられるのはそれがすぐに誤発注だとわかるくらいこの世界に精通した人間だけだろうというような抽象的な意味で、「法人としての証券会社」と「個人投資家」を区別する概念というつもりはなかったのですが今読み返すとそうは読めないですね。失礼しました。
> bewaad さん
証券業界としては個人投資家をたくさん集めたいので、「株は怖い」「どうせ一部の腹黒い人間だけが儲けているんだろう」といったイメージを持たれたくないでしょう。私の周りではみずほのミスに「つけこんで」儲けた証券会社について、「結局、株で儲けるのはこういう汚い連中だけ」「素人が手を出すものじゃないよ」という意見が多かった。庶民には火事場泥棒のように見えた。証券業界が「イメージの悪化」を心配したのは当然だと思いました。
個人投資家と証券会社を区別する意見は私の周りでは聞かれませんでした。証言会社は評判を気にしますが、個人は気にしない。政治家は株価を上げたいので個人投資家を増やしたい。そのあたりが、証券業界が利益を自主返上し、政治家がその判断を歓迎する動機であり、逆に個人で儲けた人が論議の種とならない理由だと思います。ところで、社内でもインテリが心配したのは、利益を返上する証券会社が株主に訴えられること。庶民との文化の違いを感じました。
>アルベルトさん
今後について、無効・取消系はつらいのではないかと思います。例えばその日のうちに売り抜けて利確してしまえば、一般私法的に言えば善意無過失第三者効はないはずで、結局は有効にせざるを得ません。
あまり詰めた考えではないですが、迅速な売買停止こそ求められるべきで、それ以前に成立してしまった取引はそのままにしておくというのが妥当ではないかという気がします。
>徳保隆夫さん
貴重な情報ありがとうございます。偏った業界(笑)にいますので、法的にどうかとか経済学的にどうかといった面に傾斜しがちでして。
ちなみに素人が株に手を出すのは、特に短期売買ではやっぱりよくないと思います。それは本業としてやるべきで、他の仕事と同様真正面から向き合わなければということです。素人というなら基本は投信、個別株がというなら長期保有ではないかと。
取引は有効だ!って投資家から訴えられたらしんどいかなぁと思ってましたがやはりそうですか。ならそういう風にせざるを得ないでしょうね>迅速に売買停止し、成立してしまった分は有効
今日のFT紙にこの話が載っていて、ルース・ベネディクトの「恥の文化」の話から始まった時はどうしようかと思いましたが、要は日本は暗黙の合意と倫理ベースの社会から明示的なルールベースの社会への移行途上で、倫理的な観点から利益出した証券会社を批判するのは筋違いだけど、発注取消ルールのなかった東証はアフォ、何とかしろ、というような論調でした。
横レスになってしまいますが、誤発注の売主をA買主をB、更にBから買った者をCとした場合、問題はA→B間の取引が取消又は無効とされるかどうか、更に言えば決済がなされるかどうかですよね。なので、Cまで実際に株券がいった場合に、Cから株券の返還を求めるのでない限り、Cの善意悪意を問題とする必要はないのではないでしょうか?
元々、決済には一定のタイムラグがあるので、Bが利確の売りを決済前にやるとすれば、現物入手のリスクをとった上での空売りに過ぎません。更に現実的に考えれば、現実に入手不可能な株式数以上の株を自ら売りに出すことは、デフォルトのリスクを自らも抱える上に、逆に市場暴落のきっかけともなるので、実際には流通数量を遙かに超えた株式を発注した「悪意」の方々は利確の売りというのはできないのではないかとも思われます。
そこまで考えれば、無効取消という選択肢は非現実的ではないのではないかと。実際にNASDAQでは、取消をやったようですし。
>アルベルトさん、47thさん
NASDAQの例は存じませんで(47thさんのエントリも拝見しました)、取消・無効があり得ないとするのは早計だったなと思います。
いまや47thさんが錯誤無効について改めてエントリを起こされていますのでそれを熟読させていただきたいと思いますが、クリアリングの法的性質が鍵になるのでしょうね。あくまで取引所での売買は履行請求権の取引であってクリアリング=売買の履行と観念するか、それとも取引所での売買で所有権は移転していてクリアリング=占有改定となるのか。直感的には前者だろうと思いますが、市場での実感は後者に近い、なんてことはないのかな?
こちらもきちんとしたコンメンタール等を眺めての記述ではないので、とんでもない勘違いだったらごめんなさい。