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(ここはbewaad institute@kasumigasekiの過去ログ倉庫です。コメント等は仕様上受付けを停止しておりませんが、こちらではご遠慮いただければ幸いです。何かございましたら、現行サイトにお願いいたします。)

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2005-12-21

[economy]クルーグマンの微妙なニュアンス

EconlogにてArnold Klingが紹介するに、ウォルマートが栄えると競争に敗れた同業者が出てくるので雇用が減るとのクルーグマンの言をGeorge Reismanが批判しているとのこと。続いてKlingは、かつてクルーグマンは貿易により失業が増えるとの議論に対して、技術革新と同様に効率性を向上させるものでむしろ職を作り出し生活水準を向上させると説いたことを紹介し、ウォルマートも同じことだとします。で、クルーグマンも当然それを知っているだろうと。

最終的にKlingはReismanがクルーグマンの議論をどこまできちんと紹介しているかわからないとして評価を避けています。しかし、そのコメント欄で、Reismanが言及したNYTのコラムが転載されているページが紹介されています。それを読めば実際にクルーグマンが何を書いたかがわかります。

・・・微妙だなぁ。

Klingが書いたようにかつてクルーグマンが何を言っていたかを知っていると、Reismanによるまとめのようなことを彼が言うはずもないというバイアスがかかってしまいます。そういうバイアスを通せば、ウォルマートが雇用創出をしていると主張していることに対してクルーグマンは単にそれはグロスであってネットで見ればそうでないだろと指摘しているように見えます。要すれば誇大広告に対する批判です。

しかし、クルーグマンがNeumark et al "The Effects of Wal-Mart on Local Labor Markets"の、あるカウンティにウォルマートが進出した場合に雇用が全体として増えるか減るかはわからないけれども平均賃金は下がるという分析結果を紹介した上で、ウォルマートが批判に対して雇用創出をもって対抗するぐらいなら賃金を上げた方がよいとしているあたりを見ると、本当に上記の解釈でよいのか迷います。

日本でもイオンやイトーヨーカドー等の進出により昔ながらの駅前商店街が寂れるといった議論があります。じゃあ駅前商店街を維持するためにそうした大型店の出店を制限したほうが良いか‐つまりはかつての大店法が良いか‐といえば、冒頭に紹介した貿易論と同じでそうではありません。安く多様な商品販売が行われることは、一義的には歓迎されるべきだからです。

#仕入れでの競争条件がどうかといった問題はとりあえず別のものとしておきます。

つまりは平均賃金が下がろうとも、ウォルマートの進出は基本的には歓迎されるべきで、それにより消費者は得をするわけです。仮にウォルマートが平均賃金を引き上げてそれにより販売価格が上昇すれば、消費者の得は減じます。クルーグマンが平均賃金引上げを単なる面当てとして言うのではなく本当にそうすべきだと考えているとしたら、それは違うのではといわざるを得ません。

webmasterの英語能力ではいずれを言わんとしているのかを見分けることができないわけですが、どっちなのかなぁ・・・。

本日のツッコミ(全38件) [ツッコミを入れる]
cloudy (2005-12-21 06:26)

生産性上昇による利得を、お客と従業員と株主の三者で適切に分配せよということでは?
Costco Wal-Mart で検索するといろいろ出てきますが、Wal-Martは従業員を低賃金でこき使うひどい企業、Costcoは給料もよく福利厚生もよい企業ということのようです。つまり、Wal-martは利得を客と株主にしか分けてないということでしょうね。
[emacs w3mからの投稿テスト中]

すなふきん (2005-12-21 07:56)

すくなくともマクロの経済が完全雇用水準であれば、低賃金労働から労働力は流出するので、労働力囲い込みのために賃金が上がらざるを得ないと思うのですが。現に最近日本でも賃上げ論争がまた起きてますよね。しかしポリー・トインビーの「ハードワーク」で論じられていたのは、そうした流動が起こらないで低賃金が低賃金で据え置かれる状況だったと思うのですが、事実そういう状況はありうるのか、なぜそうなるのか、というところがよくわからないところがあります。このあたりの議論は少し自信がないのですが、つまり経済格差の拡大(分配の偏り)はマクロ状況に関わらず進行しているという事実を認めざるを得ないのではないかということと、日本のシャッター通りを見てもわかるとおり、小売業界などの寡占化は紛れもなく進んでいて、このへんもすっきり説明できないのですがどうしようもない現実があると思うんですが。独立自営の減少と被雇用者の増加といった大きな流れと関係が深いのではないでしょうか。はっきり言って夫婦で営むような個人商店の出る幕はほとんどなくなったと言ってもいいかと。社会全体としての効用水準とはまた別の話でしょうね、これは。

Tomoko (2005-12-21 10:48)

 いつも楽しみにbewaadさんのサイトを見させていただいてます。(私には難しくて、とても全部わかりませんが)

 私の考えなんですが、クルーグマン教授はブッシュ大統領が大嫌いで、思いっきり感情的になっています。ブッシュ政権に対する憎悪により、知的正直さはどっかに飛んでしまい、教授はアメリカ経済の粗探しばかりしていると思います。(そういう私も、何の根拠もなく、感じたことだけを言っているだけですが)

sok (2005-12-21 13:16)

>批判に対して雇用創出をもって対抗するぐらいなら
>賃金を上げた方がよいとしているあたり

のところは,
「雇用云々という突っ込み所のあるお粗末な議論しかできないなら,
広報戦略的にダメダメで,イメージ・商売ともにひどいダメージを
うけるでしょう。賃金上げて「許してーっ」とでも言ったほうが,
結局ウォルマートにとって安上がりだった,なんて羽目になるかもよ」
と読んだのですが,どうでしょう?

47th (2005-12-21 13:41)

どうしても私が見るとミクロから見てしまうのですが、ご案内のとおり、Monopolyと同様にMonopsonyもいわゆるdeadweight lossを創出してしまいますし、労働力のようなFactor Marketでも同様のMonopsonyは生じ得ます。どの程度のMonopsony Powerが得られるかは、労働力の弾力性によりますが、Wal-Martの進出と全体的な平均賃金の低下に本当に相関性が見られるのであれば、ひとつのMonopsony Powerの証拠にはなり得るような気がします。とすれば、クルーグマンの批判は、Wal-MartによるMonopsony Powerの行使とDWLの発生を非難していると読めないこともないような気もします。
クルーグマンが、どの程度反トラスト法にコミットしているのかは恥ずかしながら存じ上げないのですが、反トラスト法の世界ではWal-MartをはじめとしたStrong Purchasing Powerの登場を手放しに受け入れるべきかは、現在非常に注目を集めている分野のひとつですので、その文脈から見ると、クルーグマンの批判も分かるような気もします。
もう一点は、古典的な公正性の問題として、今のアメリカの所得分配政策が機能不全していないのではないかという疑いはあって、その原因のひとつが大企業による資金力に物を言わせたロビーイングにあるという辺りの苛立ちもあるのかも知れませんが、この辺りは、全然門外漢なので印象までということで。

sweetfish (2005-12-21 23:53)

 はじめまして。いつも読ませていただきます。
 労働関係の場合は、賃下げは生活水準の問題ですが、失業の方は生存、社会不安にかかわり、深刻の度合いが違うので、これは純粋に彼の皮肉かと。
 エンクロージャー以来、この手の議論はあるかと思いますが、直感的には、クルーグマンの憤りだけを感じます。
 なお、貿易の場合はアメリカの経常赤字のGDPへの寄与度はせいぜいマイナス3%くらいで、実際のところ大したショックということもないのでしょうが、出店対象の郡の場合は、所得(≒需要)一定のところに一気にウォルマートの独占状態となって、他の小売は市場退出となってしますから、条件が異なるかと思います。
 

bewaad (2005-12-22 05:16)

>cloudyさん
そこは労働市場で均衡しないのかな、と思います。ウォルマートの業務フローにおいて労働生産性の占める部分が小さく低生産性でも全体の生産性が落ちないなら低賃金でかまわないということでしょうし、あれだけ順調に企業を成長させているということはそのビジネスモデルは現時点では間違っていないということかな、と。

bewaad (2005-12-22 05:25)

>すなふきんさん
そのあたり、日本なら労働の流動性が低い/地域間流動性が低いといったことが考えられるのですが、アメリカだと少なくとも前者は日本よりましなはずで、それでもうまくいかないのかな、と。後者が実は日本並みでカウンティレベルでは、ということかなという気はするのですが、実態がわからないこともあり・・・。

bewaad (2005-12-22 05:28)

>Tomokoさん
私もそのような危惧をしてこのエントリを書いた次第です。クルーグマンに限ってというのが贔屓目ではないかとの疑念が拭えませんで。

bewaad (2005-12-22 05:29)

>sokさん
そういうことでしたら私も安心です。

bewaad (2005-12-22 05:34)

>47thさん
ご指摘のようなmonopsony問題が生じるとすれば、地域独占に加えて(すなふきんさんに対するコメントで書いたような)地域間流動性の欠如が前提になると思います。地域間流動性が十分にあれば、ある種のcontestable marketになり問題は解消されるように思うのですが、いかがでしょうか?

bewaad (2005-12-22 05:39)

>sweetfishさん
皮肉ということですと、わが身の読解力のなさが身にしみます(笑)。

地域独占については、上記の地域間流動性の要素を合わせ考える必要があるのかな、と思います。

47th (2005-12-22 06:54)

地域間流動性がある場合には、Monopsony Powerは得られない(労働力のシフトが起こってしまうため)ので、件の実証研究は地域間流動性が乏しいことを示唆しているのかも知れません。
元を見ていないので何とも言えませんが、Monopoly Powerの認定では、当該企業の進出が、隣接地域への価格の影響をもたらさずに当該地域の価格上昇をもたらしているという実証データは非常に有力な証拠となります。ちなみにmonopolyの文脈(従って消費者行動の文脈)になりますが、郊外における大型スーパーの顧客にとっての代替選択肢は8マイル(約10キロ)内とも言われるようです(レンタルビデオ店については3マイルというデータもあります)。労働力については、もう少し広がると思いますが、車社会なので地域代替性は高いような印象もあるのですが、意外とそうでもないようです。

アルベルト (2005-12-22 08:32)

経済学の本ではありませんが、最近ちょうどBarbara Ehrenreichの『Nickel and Dimed』という本を読みました。有名なジャーナリストが自らアメリカ各地の低賃金労働の現場で働いたルポですが、地域間流動性は非常に低いという印象を受けます。どうしてなのかはよくわかりませんが、直感的には情報の不完全性(低賃金労働者はどこにどのような雇用機会があるか知らない)のように思います。

また、アメリカの低賃金労働者は相当貧しい(資産がない・信用市場へのアクセスがない)ですので、流動性制約が利いているということも見逃せません。一時的であれ、失業等に伴う所得の減少はすぐに消費に影響しますので、彼らは一度得た職を手放すことを非常に嫌がります。元来が非正規雇用ではありますが、日本の終身雇用みたいな極端な感覚と比べて「雇用の流動性」というのをあまり安易に仮定しない方がいいように思います。

Walmartという個別事例に戻りますと、ご存知の通り彼らは労働組合の結成を厳しく禁じています。労働市場が完全であれば生産性の少しでも高い労働者は退出するだけでしょうが、上記のような不完全性を仮定すると、交渉力は極めて非対称になり、生産性未満の賃金しか支払われてない非効率性が発生している可能性はありますし、それであればこそ、彼らが雇用を「拡大」できることも説明できるような気がします。

アルベルト (2005-12-22 13:28)

なんか改行で変に空いちゃってすいません・・・

Krugmania (2005-12-22 20:22)

Brad Delongもこの話題を取り上げて、以下のようにコメントしています。
"I suggest a convergence on a simple position: efficient production and distribution, good; using local monopoly power to sleaze and cheat your own workers, bad!"
http://delong.typepad.com/sdj/2005/12/julian_sanchez_.html
あと、Krugmanが最近はブッシュ批判と並んで格差拡大を問題視していることも、こうした発言の背景の文脈として見逃すべきではないと思います。
http://www.truthout.org/docs_2005/061005G.shtml
http://www.truthout.org/docs_2005/101705M.shtml
http://www.truthout.org/docs_2005/120505K.shtml

cloudy (2005-12-22 21:17)

ウォルマート問題の理解のために以下の記事は参考になりました。これを書いた人はウォルマート擁護の立場ですが。
http://premium.nikkeibp.co.jp/retail/column/suzuki2/01/index.shtml

>Tomokoさん
絶対的に正しいかどうかは置いて、クルーグマンがブッシュ憎さのあまり過去の自分とは違うことを言っている、というのであればそれは違います。分配問題が彼にとって大きなテーマなのは彼の「経済入門」でも明らかで、今回のウォルマート問題についての発言はその延長に過ぎないと思います。
このコラムの少しあと、Money Talksというコーナーで読者からの質問に答えており、そこでは「賃金もそっと上げたほうが結局得になる」という意見を表明しています。(以下に一部略されてますが転載があります)
http://economistsview.typepad.com/economistsview/2005/12/paul_krugman_co.html

Tomoko (2005-12-22 21:47)

>bewaadさん

 わざわざ私の意見(意見と言うより直感で書いた駄文ですが)なんかにコメントありがとうございます。寒いので風邪に気をつけてくださいね。

>cloudyさん

 貴重な情報ありがとうございます。

sweetfish (2005-12-23 02:34)

>bewaadさん
 朝早くから(というより夜遅くまでですか?)お疲れさまです。
 cloudyさんのご指摘が的確かと思います。ということで、当方こそ読解力不足でした…。

bewaad (2005-12-23 05:06)

>47thさん
情報提供ありがとうございます。日米に差があるのでは、となんとなく思っていたのですが、そうでもないのですね。私も意外な気がします。

bewaad (2005-12-23 05:15)

>アルベルトさん
「ハードワーク」と同じような状況なわけですね。あちらでも、最低賃金規制を導入しても単純なモデルが想定するような雇用量減少は起きなかったという例が紹介されていましたが、それと相通じるものを感じます。

bewaad (2005-12-23 05:18)

>Krugmaniaさん、cloudyさん
どうやらご教示あった趣旨というのがFAのようですね。ありがとうございました。

bewaad (2005-12-23 05:21)

>Tomokoさん
私も同じようなことを考えていましたので。今後ともよろしくお願いいたします。

bewaad (2005-12-23 05:23)

>sweetfishさん
いえいえ、あのクルーグマンのことですから、そうしたニュアンスもあったのだろうと思います。

アルベルト (2005-12-23 10:52)

ちょうどこんなニュースが出ていました。
『「昼休み抜き」で賠償命令・米ウォルマートに200億円』
http://www.nikkei.co.jp/news/main/20051223STXKF003823122005.html

ディンブラ (2005-12-23 11:36)

はじめまして。アメリカで経済の院生してます(へっぽこ大)。ちょうど貿易論を習って「クルーグマン最高!!!」って思っているところなので、ひとこと。

>安く多様な商品販売が行われることは、一義的には歓迎されるべきだからです。

とのことですが、いまいちぴんと来ません。価格が下がれば消費者余剰は増えますが、生産者余剰が減るので総余剰がどうなるかは曖昧です。確かに独占力の低下による価格低下や、技術革新による価格低下、貿易の開始による価格低下もいいことですが、どうもwalmartの場合はそうでもないように思えます。賃金を買い手独占で均衡水準より下げることによって価格を下げると、最適点に比べて過剰供給になり、総余剰が減少するように思います。

蛇足ですが、僕の住んでいる田舎町にも、30分車で走った東西南北の隣町にも、その隣にも、walmartがあります。monopsony power持ってそうです。貧乏学生としてはそんなの気にせず毎週のように通ってますが・・・。

Krugmania (2005-12-23 14:39)

そういえばKrugmanが労働市場の均衡についてかつてこんな論文を書いていたことを思い出しました。
http://web.mit.edu/krugman/www/EXOTIC.pdf
ここでは複数均衡の可能性を追求しています。
The basic idea is that the labor market might, over some range of conditions, be
characterized by multiple locally stable equilibria, some more egalitarian than others. If that is the
case, unequalizing shocks of modest size - shocks that could originate either in changing trade
opportunities or in changing technology, or for that matter in both - could push the economy out
of an egalitarian equilibrium and thus set in motion a cumulative process of growing inequality.
この論文で提示された情報モデル自体の当否はともかく(本人もやや自信なさげ)、賃金格差拡大がさらなる不平等を招いて労働市場が低位均衡に陥ってしまうというモデルが、おそらくは彼の考えの背景の一つにあるだろうということは注目しても良いように思われます。

すなふきん (2005-12-23 17:18)

>ディンブラさん
私も同じような感想持ってます。消費者余剰と生産者余剰が最終的には相殺するとすれば、たしかに社会全体ではゼロサム(?)かもしれませんが、労働の流動性の制約は想像以上に大きいのではないかと思えるのですが。するとしわ寄せが労働者に行きやすい可能性は否定できません。たとえば廃業した高齢の個人商店主がいきなりどこかへ転職することは難しいようにも思えます。それとも、プラスの経済成長を前提にするならその問題は別のルートで解消され得るのか、そのへんは少し難しくてよくわからないところがあるんですが。
>Krugmaniaさん
出来れば英語は要旨を翻訳していただきたいなと。英語力ディバイドもばかにならないと思うのですけど。マスター差し置いて差し出がましいようですが。

bewaad (2005-12-24 02:05)

>アルベルトさん
ウォルマートが労働法制には違反していないという前提で考えていたのですが(って、木村建設みたいな言い分ですね(笑))、そういうことをしているとなるとレピュテーショナルリスクとか、いろいろと偶発債務が出てきてしまうことになりますから、もう少し考えた方がよいのは明らかですね。

bewaad (2005-12-24 02:19)

>ディンブラさん
こちらの理解不足だとしたら恐縮なのですが、
>賃金を買い手独占で均衡水準より下げることによって価格を下げると、最適点に比べて過剰供給になり、総余剰が減少するように思います。

労働サービスの供給をする労働者と買い手である雇用者という関係でいえば、買い手独占による価格下落は供給過少をもたらすのではないでしょうか?

余剰分析的に考えると、労働市場については地域間流動性が極めて低いという仮定をおけば労働供給曲線はかなりフラットであると考えられるので、賃金が低下することによる生産者(=労働者)余剰の減少は少ないのでは、という気がします。

さらに、ウォルマートが進出すれば競合他社に勝つという以上は競合他社よりも当然低価格で販売しているわけで、その分いくばくかは進出地の一般物価は下落するはずです。雇用減少がなければという条件付ではありますが、ウォルマート進出による実質賃金上昇という可能性もないわけではないのかな、というようにも思います。

bewaad (2005-12-24 02:27)

>Krugmaniaさん
ご教示ありがとうございます。

2000年の論文ということは、日本の金融政策を論じるのとほぼ並行してのものということになりますね。さすがは多芸多才ですねぇ・・・。複数均衡を取り扱うという部分できちんと関係付けられているのかもしれませんが。

bewaad (2005-12-24 02:30)

>すなふきんさん
そのあたりは一般の社会保障政策でカバーした方が効率的な場合も多いのではないでしょうか。それこそラッダイト運動は正しかった、なんてことにもなりかねないように思いますし。

koge (2005-12-24 05:27)

>さらに、ウォルマートが進出すれば競合他社に勝つという以上は競合他社よりも当然低価格で販売しているわけで、その分いくばくかは進出地の一般物価は下落するはずです。雇用減少がなければという条件付ではありますが、ウォルマート進出による実質賃金上昇という可能性もないわけではないのかな、というようにも思います

http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4004309603/
岩波新書の「大型店とまちづくり(矢作弘)」に、L.フェザーストンのこのような文が紹介されています。
"ウォルマートの平均的顧客像は、(1)その23%が年収25,000ドル以下の貧困層、(2)20%は貧しいために、銀行口座を持っていない(小切手社会の米国では銀行口座を持っていないと暮らしがきわめて困難になる)、(3)20%が失業者か、年金暮らしの高齢者
(略)
このビジネスモデルの問題点は、いかに持続的に貧困層を拡大できるか、にある。
「フォードのビジネスモデルとは逆の戦略が必要であった」とフェザーストンは解説している。ヘンリー・フォードは労働者にできる限り豊かな賃金を払い、それをフォード車の販売につなげる戦略をとった。しかしウォルマートは逆に、低賃金・低福利厚生制度に徹し、労働者に「毎日、安売り」のウォルマートで買い物する以上の余裕を与えない、という「貧乏の持続政策」をとってきた。そのためには労働組合をつくらせない。(略)
ウォルマートの競争相手も、対抗して賃金・福利厚生の引き下げに動く。したがってそこで働く労働者も、苦々しく思いながらもいずれはウォルマートの顧客となって生活を切り詰めることになる。当然、競争に敗れて失業した労働者もウォルマートのお得意先となる。こうして「ウォルマートの「貧乏を持続的に拡大するビジネスモデル」が完結する」とフェザーストンは書いている。「米国社会を第三世界化するビジネスモデル」とも表現している。”

この通りだとすると、ウォルマート(と競合スーパー)で売っている商品に関しては値下げにより実質賃金向上はありえますが、むしろ直接競合しない高級品市場のほうが実質値上げにより崩壊するのでは?

#フォーディズムを「1企業がおこしたリフレ策」とすれば、ウォルマートのビジネスモデルは「1企業が起こしたデフレ」になり少なくとも「リフレ派」が擁護すべきものではないのでは?

cloudy (2005-12-24 16:12)

従業員に厚遇の企業代表コストコですが、この記事は
http://laborresearch.org/print.php?id=391
(以下C=Costco, W=Wal-mart/Sam's Club)
・高い給料を払うことによって高生産性が得られる(単位面積あたりの売上が$795(C)対$516(W)
・従業員一人あたり利益も$13,647(C)対$11,039(W)
・売上げに対する賃金+間接費の割合は9.8%(C)対17%(W)
・離職率も24%(C)対50%(W)と低いので、従業員教育コストも安くすむ
と、結局は得になるということを述べています。
かつての日本型とアメリカ型の企業経営の比較みたいですね。

ディンブラ (2005-12-25 05:35)

>bewaadさん

>労働サービスの供給をする労働者と買い手である雇用者という関係でいえば、買い手独占による価格下落は供給過少をもたらすのではないでしょうか?

  あ、それは普通そうですね。でも、『「昼休み抜き」で賠償命令』されているような企業が労働供給を過小にしているのは、どうも気持ちが悪いので、すこし標準モデルから逸脱してみます。
  「低賃金で長時間労働をしてね。嫌ならクビ」と労働者に言えて、クビになったら再就職が難しいような状態を考えます。(労働市場での交渉力は、100%ウォルマートが持っており、しかも独占に近い状態。ウォルマートって労働組合の力が弱いんですよね?)。この場合、「クビよりマシ」ならば、労働供給曲線より下の点、つまり低賃金で長時間労働をさせることが可能です。労働法制も守ってないようですし。
  自分でも後出しの議論のような気がします。産業組織論の道具を使うと、独占企業って仮定次第で何でもできますし。ご参考までに。

 
>ウォルマート進出による実質賃金上昇

あり得る話だと思います。実際にどうなるかは独占力の行使による労働者のマイナスと、ウォルマートの高い生産性&価格競争の激化によるプラスのバランスで決まるのでしょう。実質賃金がどうなるかは貿易論でも相当微妙な話で、細かい仮定次第でころころ変わります。

bewaad (2005-12-25 16:55)

>kogeさん
アメリカの貧困層の存在とウォルマートのいずれが鶏でいずれが卵かと考えれば、やはり相当程度の貧困層があるからこそウォルマートのビジネスモデルが競争力を持ったと考えた方がいいのかなと思います。

ウォルマートのやり方にも何かと問題が多そうだというのはこれまでのさまざまなコメントでご教示いただいたので、それが問題ないという趣旨ではありません。ただその是正はマクロの観点から社会・労働政策的なものとして行われるべきなのかな、と(最低賃金とか「組合禁止」の禁止ですとか)。

bewaad (2005-12-25 16:57)

>cloudyさん
あくまでも思いつきですが、コストコが有利になるようなマクロ環境があれば競争を通じてウォルマートはビジネスモデルを変えざるを得ないわけで、となるとウォルマートのやり方を改めさせるには実は貧困層の縮小がもっとも効果的ではないか、というように見えます。

bewaad (2005-12-25 17:08)

>ディンブラさん
こちらもあれこれ考えてみると、次のような経路で供給が増加するモデルもあり得るのかな、と。

○前提
アメリカには多くの貧困層がいて、通常の労働条件を前提に労働市場を考えると買い手(雇用者)が想定する最低労働条件は貧困労働者層から見ると「贅沢」に過ぎ、需要過少。したがって超過供給状態で、実効性のある供給量は需要制約により低迷。

○ウォルマートの効果
企業全体での人件費負担が多少下がっても単価をそれ以上切り下げることで需要数量は逆に増加。したがって実効性のある供給量も増加。

○対策
国全体で貧困層が少なくなれば、労働市場がより「贅沢」なもので代替されるので、ウォルマートのビジネスモデルでは質量ともに使用可能な労働力が低下し、労働条件を上げざるを得なくなる。


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