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(ここはbewaad institute@kasumigasekiの過去ログ倉庫です。コメント等は仕様上受付けを停止しておりませんが、こちらではご遠慮いただければ幸いです。何かございましたら、現行サイトにお願いいたします。)
2006-01-18
■ [notice]サイト内検索の文字化け修正
一昨日の徳保さんのご指摘を受け、ページ右上のサイト内検索の文字化けを解消しました。ご活用ください。
#検索結果のページのカラー設定がサイト立ち上げ時のそれであったりとか、まだあれこれやるべきことはあるのですが。
■ [economy]「格差」を考える 第1回:競争が「格差」を作るのか(前編)
毎日新聞で連載され先日第1部が完結した「縦並び社会」は次のように始まりました。
「一億総中流」時代は終わり、格差が広がりつつあります。効率追求の競争はますます激しく、会社も人も「勝ち組」「負け組」にはっきり分かれようとしています。自殺は毎年3万人以上、生活保護は100万世帯を超すという現実が私たちの眼前にあります。これが「頑張れば報われる」新しい社会像なのか。それともセーフティーネット重視の相互扶助型の社会を選ぶのか−−。海外にも目を向け、日本の目指すべき針路を読者とともに考えます。
「縦並び社会・格差の現場から:アンケートと連携の新連載 29日夜開始」
#構造改革の旗をあれだけ振ってきた毎日新聞が何を今さら、というのが正直な感想ではありますが(笑)。
因果関係を厳密に記述する文章ではありませんが、ここでは激しくなった効率追求の競争が格差を広げているのだと言っていると解して問題ないでしょう。この見解は毎日新聞に限られるものでなく人口に膾炙しています。この連載を元ネタに今の日本における「格差」を語るに当たって、まずはこの因果関係の適否を取っ掛かりとしてみます。
といって最初に結論を書くなら定義によるという身も蓋もないものなのですが(笑)。なぜ定義の問題なのか、2つの切り口から論じてみます。1つめは偏差値。
偏差値? そう、あの受験で使われる偏差値です。テストにより観測される学力は正規分布しているというのが偏差値の前提です。仮に、
- 競争を所得が能力に正しく伴うものだと定義し(この場合、能力の低い者が能力の高い者より高い所得を得ていたり、そこまでいかなくとも能力の差ほどに所得の差がつかない/能力の差以上に所得の差がつく場合には競争状態にないということになります)、
- 偏差値が正しく能力を表さないとしても、集団内での能力の分布は正しく表している、
という2つの前提をおくと、競争状態にあるかどうかは収入が正規分布を示すかどうかで判断することが可能です。
では実際の所得の分布はどうか。孫引きで恐縮ですが、高安秀樹「経済物理学の発見」によると、給与所得者の年収分布は低額の正規分布と高額のベキ分布に分かれているとのことです。となると、この分布が競争の結果だとするなら、あり得る結論は次の2つになります。
- 結論1
- 前提1が誤り。つまり、競争とは能力と所得とが序数的に対応していればよく、基数的に対応している必要はないので、ベキ分布に従う突出した高額所得者が存在する現状もまた競争の定義に適う。
- 結論2
- 前提2が誤り。つまり、能力とは正規分布が効く分野とベキ分布が効く分野の二重構造となっており、所得における2種類の分布は現状が正しく競争状態にあることを示している。
他方、前提はいずれも正しいとするなら結論は次のとおりです。
- 結論3
- 所得が正規分布でないのは現状が「勝ち組」が能力以上の所得を得ている=競争状態にはないことを示している。
#以上は分布の形状のみを問題にしており必要条件の議論でしかないのですが、分布内での順序と能力の対応関係はよくわからないので、十分条件に踏み込んだ議論は省略させていただきます。
ここで競争の定義に関わる問題としては結論1と結論3のいずれかであるのはご覧のとおりです。といっても前提2が誤りであればこの定義問題は無意味ではないか、との疑問があるでしょうが、それはもっともな疑問です。しかし前提2が仮に誤りだとしても(webmasterには正誤を判断する材料がありません)やはり定義問題だ、というのがもう1つの切り口の示すところです。
その切り口とは何か。次回に引っ張りますが(笑)、ヒントは独禁法の名称です。略称独禁法(独占禁止法)ですが、その正式名称は・・・。
と思って、くりろぐを久しぶりにみたら……。
1月14日のクリステル先生の下の写真まじ、やばいって……オレ田中。
http://funapon.info/chri/
また、自分が書いてしまいすいません。
給与所得者の分布を元々のソースである国税庁のHP http://www.nta.go.jp/category/toukei/tokei/menu/minkan/h15/pdf/1.pdf で見たところ、H15年で900<3.0%≦1000万円で次が1000<5.7%≦1500でした。
1000万円から上のコーホートは500単位で取ってので、高安氏が言うベキ分布は成立しないかと。
>sweetfishさん
情報提供ありがとうございます。読まずにあれこれいうのもなんですので、まずは高安本を読んでみたいと思います(先に読めよ、と我ながら思いますが(笑))。
個人所得の分布のうち高額所得者の分布がベキ分布になっている、との記述は『経済物理学の発見』p188〜191にあり、図も載っています。この所得ですが、本で述べられている対象は利息など全ての所得を含むもので、給与所得に限っていません。
日本に限らず各国で見られる現象で、経済学者のパレートが発見したもの、と書かれています。経済学以外でも有名になったパレート法則のことです。
ちなみに、ベキ分布になる高額所得者とはどれくらいの水準かというと、上位1%くらいだそうです。金額にすれば2000〜3000万円/年以上。
ところでこの本には経済学を攻撃する記述が幾つかあるのですが、そこにはかなり違和感を覚えました。高安氏は仮定の存在を認識していないんじゃないか?と思うような部分が幾つか。面白い本でしたが、忙しい方にお薦めしたい本ではありませんでした。
>高安本所有者さん
情報提供ありがとうございます。
正直申し上げて今までそれほど食指が動かなかったのですが、取り上げる以上はきちんと読まないと、と思ってます。まだ買ってませんが(笑)。
僕も『経済物理学の発見』は読みましたが、きちんと既存の経済学を勉強した上でああいうアプローチを取ってくれれば、もっと良い本になったのではないかと思いました。
>Baatarismさん
そういう場合の安直な対応としては共著にするってのがあるわけですが、そういうお仲間はいないんでしょうかねぇ・・・。