archives of BI@K

CSS: default alternative
(要cookie)

toppage memoranda

(ここはbewaad institute@kasumigasekiの過去ログ倉庫です。コメント等は仕様上受付けを停止しておりませんが、こちらではご遠慮いただければ幸いです。何かございましたら、現行サイトにお願いいたします。)

2005|01|02|03|04|05|06|07|08|09|10|11|12|
2006|01|02|03|04|05|06|07|08|09|10|11|12|
2007|01|02|

2006-01-21

[economy]東証は営利企業です

昨日に同じくinspired by 木走さんのエントリなのですが、確かに東証のシステムはNYSE(ニューヨーク証券取引所)に比べてしょぼいのでしょう。しかし、それって東証には弁護の余地はないのでしょうか?

webmasterの記憶頼りなので間違っていたらごめんなさいですが、バブル期には東証も積極的にシステム投資を繰り返しずいぶんと能力を向上させました。ところがやってきたのがバブル崩壊。取引高も相当程度落ち込んで(当時から見れば)過剰投資の後始末に苦労したという記憶があるわけです。

まして、

  • 東証は2001年11月に株式会社化し、営利企業となりました。想定取引高を多めに見積もった結果過剰投資となることはそれまで以上に避けなければなりません。
  • 東証は事実上独占に近い状態にありますから、想定取引高を低めに見積もってシステム上問題が生じても(つまりは今回のような状況になっても)、それによりライバルに顧客が逃げるという事態はそれほど心配する必要がありません。
  • システム投資は一朝一夕に結果が出るものではありません。バブル崩壊以後、ITバブルの一時を除けば株式取引は低調であり、長きに渡りシステム投資を抑制してコスト削減に努める経営が東証にとっては合理的でした。最近になって取引が活性化したからといって投資を増やそうと考えたとしても、その結果が出るにはそれなりの時間がかかります。

という事情がありました。

今になって東証の投資判断の誤りを糺すことは簡単ではありますが、ではバブル後もバブル期のような投資判断を維持していた場合(これであれば、今回のようなトラブルは避けられたでしょうけれど、その際のコスト負担はどうなっていたでしょう? 東証大赤字で公的資金投入、甘い業績見通しによる過剰投資、楽観的な経営陣によるリストラの遅れが破綻原因、なんていう事態になっていた可能性だって否定できません。

思い出していただきたいのですが、投資を抑制してコスト削減に努めるというのは、ここ10年以上経営者に求められてきた経営判断です。それを行った経営者は聖域なきリストラに取り組んだ改革者として賞賛され、行わなかった経営者はいつまでも右肩上がりが続くと思って道を誤った旧世代人として非難されてきたのが現実です。今回のトラブルも、そうした時代の流れが関係なかったといえば嘘になるはずです。

読者の方々には食傷気味かもしれませんが(笑)、デフレに民営化を重ね合わせればこのような事態になる可能性は上記のように大きくならざるを得ません。デフレを速やかに脱却して平均的にはポジティブな投資判断が継続するようにするか、それとも公的関与を強めて採算を度外視してでもシステムには万全を期せとするか、いずれも採らないのであれば今回のようなトラブルが東証に限らずいろいろなところで生じることは受け入れないことには、都合がよすぎるということではないでしょうか。

本日のツッコミ(全27件) [ツッコミを入れる]
kumakuma1967 (2006-01-21 23:29)

僕の誤解かもしれないけれど、今回処理能力が足りなくなったのは市場システムではなく、清算決済システムだと理解しています。だから、前提となっている読売新聞の記事がミスリーディングな気がします。
読売が数字を出しているのはNY市場の約定能力で、東証の問題は市場が引けたあとの清算決済能力(約定した後の問題)ではないでしょうか。
http://www.tssx.co.jp/recruit_seisan.html
でも、今回のシステム能力不足は株式会社東京証券取引所の問題なんでしょうか?決済システムを利用するのは株式会社日本証券クリアリング機構、システム開発と運用は株式会社東証システムで、一応別法人の営利企業って気がします。

民間 (2006-01-21 23:51)

確かに、競争相手のない営利企業だな

大阪人 (2006-01-22 01:33)

では、独占禁止法を適用して株式会社大阪証券取引所が
株式会社東京証券取引所と競争が成り立つように
(当然片方がダウンしたら取って代われるように)
支援すればよかったのでしょうかねぇ?

akira (2006-01-22 01:38)

確かにそう言うインセンティブ構造になってるというのは、ありそうな話です。でも、それは単に今後の対応を考えるときに、独占的な事業を行う企業の経営形態として民営が適切かという観点から問題になるだけであって、今回の問題に対する正当な弁護にはなり得ないような気がします。

民営化した趣旨がよく分からないと言う点には同意するのですが。

sweetfish (2006-01-22 02:49)

所有者が国のままだったら、この事態は絶対ありえなかったかというと?です。

一連の問題は、東証の判断が単に甘かったためで、それは独占(本当は大証も含めた寡占でしょうが、日経平均先物の遅延を見る限りでは…)状態だったことも外部環境としてあったと思います。

だとすれ違いなので、敢えて言えば、
「今回のミスも甘受すべし」です。

当方は民営化推進論者の立場からになります。

民営化のメリットの中で、「経営自主権が得られて効率的な経営計画作成可能となること」や「責任が明確になりガバナンスが向上すること」があります。

東証プロパーは、(本音はともかく)NYをはじめとする他の証券所との勝負のために経営自由度を欲して、民営化した(はず)でしょうし、今回のミスの結果、前社長は辞めて一定の責任を果たしています。これが仮に天下りのトップだったら、単なる顔役なので責任が曖昧になりますし、辞めても次の顔が来るだけでしょう。

民営化推進者にとっての誤算は、Aクラス特殊法人だった東証が、民営化前に想定されているほど完璧ではなかったということです。しかし今回の事件は東証が逃げ道のない状況でやってしまったことですので、逆説的に東証のレベルアップが期待できます。

民営化は当然万能薬ではなく、今回のような副作用もあります。また、世界には公的企業でありながらも、非常に効率な企業もあることも、一応当方は認識しております。

あともう一つのデフレ。言うまでもなく脱却してほしいです。
こちらも(本音はともかく)健全な運営のための独立性を確保した組織があり、しかも日本経済に対する影響力も東証より遥かに大きいです。しかし、既に長文なので、この辺で。

アルベルト (2006-01-22 03:58)

「弁護」という表現を使うと規範的というか正しい、正しくないの話になるのでakiraさんご指摘のように違和感があります。要は、現状のインセンティヴ構造の下では東証にとってそれが「合理的」だったということに尽きるのではないでしょうか。

で、民営化が妥当なのかどうかは、今回の一件だけではよくわからないというのが私の考えです。財務健全性とかではなく純粋に提供されるサービスの質の話になると、競争環境や組織文化等によって民営化による影響は異なる気がします。例えば、国鉄の民営化で(財務は言わずもがな)乗客への対応とかは改善されたと思いますが、ダイヤの正確性なんかは「国営」時代から定評があったわけでさしたる影響があったとは言えない気がしますし。

匿名希望 (2006-01-22 10:30)

竹中さんだったら、「よし、問題は競争が無いことだ。外国資本に大証を買収してもらえば万事解決!」と喜びそうです。

平家 (2006-01-22 10:50)

はて、営利企業になる前の東証は国営だったでしょうか?特殊法人だったでしょうか?証券会社を会員とする社団法人だったような気がしますが。営利かどうかの差だけでは?

今回の事態は、ある意味で大証にとってチャンスだったと思うのですが、なぜ、取引時間を延長しなかったのでしょう?
システム上できなかったのか、他の理由で見送ったのか、考えなかったのか?システムの問題ならいざという場合に備えて、整備してほしいものです。

koge (2006-01-22 14:38)

もうひとつ言えば、仮に東証に十分な資本があったとしても、NYSEのような大規模システムの構築が日本のITベンダーで可能なのかという問題がありそうですね。富士通とか富士通とか。
営利企業化の本当の理由は、IBMなど海外企業からの導入に文句が出ないようにするためだったりして(笑)

bewaad (2006-01-22 14:57)

>kumakuma1967さん
正直申し上げてシステムの細かい話まではきちんと詰めていないのですが、両社とも東証の子会社ですから、連結ベースでの意思決定を考えれば法的に別法人であることにはそれほど大きな意味はないのではないでしょうか。

kumakuma1967 (2006-01-22 15:03)

どうやら市場システムから送られた約定データが入る空き容量が決済システムのディスクにないので市場全体を止めるということだったようですね。が、約定一件あたり1キロバイトのデータ量として450万件って4.5ギガバイトなんですが.......計算間違えてるかなぁ。

bewaad (2006-01-22 15:03)

>民間さん
そうなんですよねぇ・・・。

bewaad (2006-01-22 15:08)

>大阪人さん
大証でも東証上場株の売買はできるので、その意味では競争が排除されているわけではありません。ただ流動性等の観点から上場市場には収穫逓増性があるので、自然独占が形成されやすい環境にあるといえるのだと理解しています。

bewaad (2006-01-22 15:11)

>akiraさん
インセンティブ構造を考えてみたというのがエントリの趣旨でして、弁護という言葉遣いにはそれほど深い意味はないです(笑)。単に批判するだけでは状態は変わらないでしょうね、ということを言ってみたかったものですから。

bewaad (2006-01-22 15:19)

>sweetfishさん
民間企業として営利目的で事業運営を行ってもらうともっとも都合の悪いのは外部効果を無視されるということで、今回もまさにそのパターンだったのかなと思っています(エントリを書いた時点では思い至っていませんでしたが)。であるなら、外部効果を内部化するような公的コミットメントが必要なのでしょう。

ちなみに、株式会社化しなければよかったという趣旨ではありません。過剰投資というあり得た別の結論を書きましたが、株式会社になっていなかった場合のあり得るバッドエンドも当然あると思います。

bewaad (2006-01-22 15:22)

>アルベルトさん
弁護という言葉にそれほど高尚さを感じないのは同級生の弁護士をよく見ているからでしょうか(笑)。罪は認めるけど情状酌量の余地があるのでは、というのも弁護戦術の一つですし。

これまでのコメントでも書きましたが、株式会社化がダメだったというつもりはまったくありません。ただ、本件についてはその影響が大きかったのではないかということで、全体の是非を言うには個別問題をおのおの論じるだけでなく総合判断が必要でしょう。

bewaad (2006-01-22 15:24)

>匿名希望さん
彼も経済学者という肩書きの身ですから、自然独占性は否定しないと思います・・・しないでほしいなぁ(笑)。

bewaad (2006-01-22 15:26)

>平家さん
営利かどうかがインセンティブには決定的な違いを与えるので、少なくとも本件の文脈では、そこが最重要だと思います(法的には以前も特殊法人/認可法人ではなかったはずです)。

大証の対応はよくわかりませんが、「いざという場合に備え」ての整備は遊休設備への過剰投資になりますから、やはり期待できないでしょう。それをさせたいなら補助金なりなんなりの支援が必要かと思います。

bewaad (2006-01-22 15:28)

>kogeさん
日本IBMであれば官公庁からはいろいろ受注しているので排除されているということはないはずです。やはり日本語という非関税障壁の存在は大きいので、あれぐらい日本企業化しないことには外資はなかなか参入しづらいと思いますが。

bewaad (2006-01-22 15:30)

>kumakuma1967さん(http://bewaad.com/20060121.html#c12
ディスク容量の問題なら継ぎ足せばいいのではと思うのですが、この場合そうではないのでしょうか? FAT16時代のWindowsのようにちょうどソフトでの管理限界にハードが近づいてしまったとか?

kumakuma1967 (2006-01-22 16:11)

容量の壁を越える技術は昔からあるので、継ぎ足すためには処理方式に手を入れないといけないという事だと思います。汎用機のHDDの容量の最大が5GBとかの時代のシステムなんでしょう。
 処理方式を変えて支障がないかどうかは読めない。先端技術的な「開発が追いつかない」というよりテストが追いつかないということかと。
 「ディスク容量のような問題で壁に突き当たるという事は、よくできたシステムを10年以上前に作った事を誇るべきなんだ」とおっしゃる方もいますね。

cloudy (2006-01-22 18:21)

東証で使われているのは富士通のPRIMEQUEST、IA64のLinuxサーバのようですよ。
http://itpro.nikkeibp.co.jp/free/NC/TOKU2/20050801/1/

なお世界の証券取引の80%はHPのnonstopシリーズだそうです。

Baatarism (2006-01-22 20:37)

>cloudyさん
>2007年後半の稼働開始を目標に開発を進めている
と書いてあるので、今はまだメインフレームではないでしょうか?

cloudy (2006-01-22 20:44)

失礼。まだ日立のメインフレームのようですね。
はて、すると去年の誤発注騒動のときの富士通うんぬんは何?

kumakuma1967 (2006-01-22 22:27)

去年のは市場システムの誤動作、今回のは決済システムのディスク容量不足みたいです。

ryozo18 (2006-01-23 00:49)

聞いた話ですが、東証のシステムは十数社のベンダーが入り乱れているスパゲッティシステムらしいです。市場系、市場報道系、約定系、決済系、情報系、人事系、その他もろもろでベンダーが入り乱れているやに聞いております。

bewaad (2006-01-23 03:34)

>皆様
いろいろ情報提供ありがとうございます。

ちなみにryozo18さんのスパゲッティの話は、公的機関ゆえの競争入札が原因ではないかと思います。もちろんだから悪いというわけでなく、どんなものにもメリデメがあるよ、ということです。為念。

本日のTrackBacks(全2件) [TrackBack URL: http://bewaad.sakura.ne.jp/tb.rb/20060121]

「均衡モデルは、統制経済をモデル化したもの」と書いた。その根拠は、供給曲線が市場経済ではごく限られた条件下でしか成り立たないからである。 サービスにおいて成り立たない供給曲線 「東証(東京証券取引所)は営利企業」であり、株式取引の場を供給しているサービス..

「かんべえの不規則発言」でホリエモン問題が取り上げられています。ご参考まで。 かんべえの不規則発言 - <1月24日>(火) 「誰がホリえもんを作ったか?」 http://tameike.net/comments.htm#new http://tameike.net/diary/jan06.htm ○BNPパリバのチーフストラテジス..


トップ «前の日記(2006-01-20) 最新 次の日記(2006-01-22)» 編集