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(ここはbewaad institute@kasumigasekiの過去ログ倉庫です。コメント等は仕様上受付けを停止しておりませんが、こちらではご遠慮いただければ幸いです。何かございましたら、現行サイトにお願いいたします。)

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2006-02-27

[economy]ゼロインフレが問題である理由

標記については、次の点がよく言われます。

  • ボスキンバイアスの存在によりCPIは少し高めに出る(ので、CPIを政策指標とするならゼロCPI=デフレとなり高めにしておく方が安全)から
  • マイルドインフレの方が価格調整がやりやすい(価格の下方硬直性がある財についても価格調整が可能)から
  • デフレになりそうなら十分に金利を引き下げなければならないので、その余裕を確保する必要があるから

それに加えて当サイトにコメントをよくお寄せいただく銅鑼衣紋さんがこの第3点の発展系として次のような説明をいちご経済板でされていました。なるほどと思ったので転載するとともに、webmasterの勉強を兼ねて若干の解説をさせていただきます。

492: 銅鑼衣紋   2006/02/26(Sun) 13:40 [ va4qsJNk0c ]

(略)

で、「ああいえばこういう」と言われるだろうが、ゼロ+がまずいのには、こんな理由もあるという話は、

1)長期的にはPPPが成り立つことを認めると、世界インフレ率特にアメリカと欧州が2%とか3%なのに日本だけゼロ+だと、名目為替レートの趨勢は2%〜3%の円高ということになる。

2)これまた長期の金利裁定の成立を認めると、この名目為替レートの上昇とバランスをとるには、日本の金利は世界金利より2%〜3%は低くなければならない。

3)で、世界金利を米国の長期金利で近似可能と仮定すると、5%とか6%位になるのではないか?すると、日本の長期金利は2%から3%位になってしまう。

4)で、ゼロ金利下でも日本の長期金利は1.5%から2%位はある。つまり、現状より日本の長期金利は0.5%から1%引き上げるのが限度かもしれない。

5)長短金利差が無理に小さくなっている現状を前提にしても、この長期金利の上げ幅に対応する短期金利の引き上げ余地はやはり0.5%とか1%でしかない。

6)となると、原因がなんにしろ、下向きショックが発生したとき、ゼロ金利にならずにそれを吸収できるだけの十分な利下げ余地があるのかが疑問。

7)つまり、インフレ目標の下限をゼロ+にすると、日本の金融政策は依然として必要な自由度を確保できない可能性が高い。

いちご経済板「経済ニュース 6」スレ・レス492

  1. 1)について
    1. PPPとはPurchasing Power Parityの略で購買力平価を指します。各国の物価により為替水準が定まるという考えで、わかりやすい例はビッグマック指数(各国のビッグマック価格で為替レイトを計算したもの。今なら日本の250円に対してアメリカでは2.9ドル(なのかどうか公式サイトではわからないので間違っていたらごめんなさい)なので1ドル≒86円となります)です。実際には物価の絶対水準ではあまりきちんと成立せず(ビッグマック指数が実際のレイトと乖離していることが典型例です)、インフレ率の相対水準が当てはまりやすいです。例えばインフレ率3%の通貨と5%の通貨では、前者が2%強くなるといった具合に(それぞれ年%の前提)。
  2. 2)について
    1. 長期の金利裁定ですが、まず裁定(取引)とは無リスクの鞘抜きのことです。例えば大阪証券取引所の日経平均先物が17,000円でSIMEX(シンガポール国際金融取引所)のそれが16,500円の場合、SIMEXで買って大証で売るだけで500円の儲けになります。皆がこの裁定取引を行えばSIMEXの日経平均先物は買われて値段が上がり、大証のそれは売られて値段が下がり、一定の価格に収斂することになります。
    2. 世界金利とは為替レイトの変動等を織り込んだ上で中長期的に成立するものと想定する金利のことです。国境を超えて考えると、もっとも有利な市場で資金調達や運用を行うことができるので、つまりは世界金利はいかなる通貨の金利と比べても実質的に一番低い調達金利であり、一番高い運用金利となります(絶対水準は世界全体での資本効率性に依存します)。資本取引規制の存在や低い流動性(この場合、ある通貨が国際市場でどれだけ取引が容易かということ。流動性が高いといつでも他の通貨に換えられ、低いと換えそこなうリスクが高くなります。取引規模が大きければたいがいは流動性も高くなります)のような取引障壁があれば、その通貨においてはそれだけ世界金利から乖離した高い金利での調達・低い金利での運用にならざるを得ません。
    3. 為替レイトと世界金利の関係について裁定の考えを当てはめますと、1)により円は他の通貨に対して年2〜3%上昇するので、仮に日本の国内金利と世界金利が同一であれば円貨上昇のキャピタルゲイン分だけ円貨は実質的に高利回りとなります(=名目金利収入に円貨評価益が上乗せされます)。となると円貨での資金調達は減り、他方で円貨での資金運用は増えるので、円貨の金利は下がることとなり、実質的な利回りが世界金利と同一になったところで下げ止まることになります。
  3. 3)について
    1. 世界金利は既述のような性格のものですから、世界でもっとも取引高が多く、いかなる通貨ともほぼ交換可能な米ドルの金利は世界金利とはそれほど差がないと考えるのは合理的でしょう。
  4. 4)について
    1. PPPと長期の金利裁定が働く世界において円貨のインフレ率をゼロ近傍に維持すると仮定すれば、これ以上金利を引上げようとしても上がらない(無理に上げても2.3のメカニズムで下がってしまう)ということです。
  5. 5)について
    1. 長短金利差は文字通り長期金利と短期金利の差ですが、長期金利は細分化した各期間の金利見通しに基本的に依存します。ずっと金利が同じと考えれば長短金利差はゼロになり、将来金利が上がると考えればプラスの差、下がると考えればマイナスの差(短期金利が長期金利よりも高い)になります。実際には将来の見通しにはリスクがあるのでその分だけプレミアムが乗り、同じと考えれば微増、上がると考えると激増、下がると考えても短期から中期にかけてはマイナス差が生じても中長期ゾーンではやっぱり微増(=プラス差)、という形になることがほとんどです。
    2. 現在の日本の長短金利差は歴史的に見ても小さいのですが、これが大きくならないとしても、というのが銅鑼衣紋さんの議論です。仮に将来の金利上昇が見込まれ長短金利差が拡大するのであれば、長期金利が2〜3%になっても短期金利はゼロ金利ということになってしまうので、よりシナリオは悲観的なものに・・・。
  6. 6)及び7)について
    1. 中央銀行が直接操作可能なのは短期金利のみであり、長期金利はその行動から市場の期待を介して間接的に影響を受けるのみ、というのが基本的な前提です。
    2. インフレになりそうであれば中央銀行が操作する政策金利は市場で形成される金利よりも十分に高く、デフレになりそうであれば十分に低く設定する、というのが経験則が教える金融政策の勘所です。
    3. 5)で見たように、楽観的に見ても市場が形成する短期金利はたかだか1%です。となるとデフレになりそうな場合(=下向きショックの発生)に金融政策で金利を下げようとしても、ゼロ未満にはできないので絶対値として1%しか下げる余地がありません。それが「十分に低く」と言い得る水準であればよいのですが、下向きショックが大きい場合には・・・。
    4. したがって、万が一のために十分に短期金利を下げられる余地を確保しようとすれば、短期金利は2%なり3%なりであることが望ましく、であるならインフレ率はゼロ近傍ではなく1%なり2%(長短金利差が大きい場合にはより高い水準)であった方が金融政策の自由度を高める結果となります。

[comic]現在官僚系もふ・第42話

そもそも係員の勝手な行動など門前払いが当然なのですが、そこを見逃すとしても予算執行調査は組織でやっているんだから監督不行き届きで上司が責められるんだってば。というか「予算執行調査の結果」(webmaster注:強調はwebmasterによります)というからにはもう終わりじゃないのかと(笑)。これは霞が関の慣行云々ではなく日本語の常識問題なんですが・・・。

ところで225ページのホワイトボードのカレンダーなのですが、左端であることを考えると「日」とは1/2で、ハイライトされた「火」の記載とは1/4のものということになるのですけれど、それが「担当者とのアポの予定」、つまり作品上過去の事象ではないのですから、「外務省・チャイナスクール編」はまだ始まってから半日ぐらいしか経っていないのですね(笑)。

本日のツッコミ(全3件) [ツッコミを入れる]
ディンブラ (2006-02-28 05:33)

ビッグマック指数は、一月一四日付けのエコノミストだと、ビックマックは$3.15になってます。だから$1.00=\79.4ですね。たぶん地域でビックマックの価格が違うのでウェブサイトには載せられないのでしょう。

実証研究を見てみました。
>長期的にはPPPが成り立つ
・超長期(100年とか)で相対水準の話だと、強く成り立つ
・超長期でも絶対水準では成り立たない
・1973以降の変動相場制導入後に区切っても成り立ちそうだが、データが足りなくてあまり強い結論はだせない。乱暴に言うと、だいたい3−5年くらいで誤差が半分になる。
ソース:
http://www.ssc.wisc.edu/%7Emchinn/taylor%26taylor_PPP_JEP.pdf

>長期の金利裁定の成立
手頃なサーベイが見つからなかったので、適当に選び出してアブストラクトを眺めてみました。「実質金利が等しくなる」という命題を棄却していない論文が8つ、棄却している論文が3つです。最新の論文が棄却しているのが気になりますが・・・。

bewaad (2006-03-01 04:56)

>ディンブラさん
補足いただきありがとうございました。為替レイトがどう決まるかは難しい問題ですよね。昔受けた講義でもuncovered interest parityはdisparityだなどとちゃかされてました(笑)。

bewaad (2006-03-01 05:01)

↑だけだと、と書き終わってから今さらながら。

超長期・相対水準でのPPPが成立するなら、短中期での上下動には追随しなくても、超長期でのトレンドとしては金利裁定は大まかにいって成立するような気がします。なんら実証の裏づけがないのはご覧いただければ一目瞭然でしょうけれど・・・。


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