toppage memoranda
(ここはbewaad institute@kasumigasekiの過去ログ倉庫です。コメント等は仕様上受付けを停止しておりませんが、こちらではご遠慮いただければ幸いです。何かございましたら、現行サイトにお願いいたします。)
2006-03-08
■ [economy]半日庵さんへのリジョインダー
先日のエントリに対して半日庵さんから反論をいただきましたので、それについて論じます。
ずいぶんと話が行き違ってしまっているので、webmasterと半日庵さんとでの本件の捉え方の違いを改めて整理してみます。
- webmaster
- 中村正三郎さんの経済学に対する根拠のない侮蔑・誹謗・言いがかりが本質的問題で、経済学が科学でないというのはいわばそうした経済学観の1つの表れでしかありません。中村さんの経済学観が改まるのであればそれで反論の目的は達せられ(できれば撤回していただきたいとは思いますが)、経済学が科学であるかどうかは枝葉に過ぎないと考えています。
- 半日庵さん
- 経済学が科学であるかどうかが本質的問題で、中村さんの挙げる事象にいくら反論しても、それは経済学が科学であることの論証にならない的外れな議論であると考えていらっしゃいます。
これで話は終わったようなものですが、以下はあえて半日庵さんの土俵に乗ってみます。
具体的または論理的な反証をあげて反論できていないという私の主張に対してbewaadさんは具体的な反論はしているととのことですが、私の文章能力がないために、何に対する反証なのかが、十分に伝わっていないようです。つまり、「経済学は科学ではない」という中村氏の主張に対する「具体的または論理的な反証」は、私の読んだ範囲では目ぼしいものは有りませんでした。その後出てきているかもしれませんけどね。
残念ながら、具体的な反証とよべるものは、中村氏があげた人や著作に関するものばかりです。(略)
「経済学は科学か?への反論をもらいました」(@半日庵のつぶやき3/6付)
前の半日庵さんのエントリでは次のように記載されていたので反論をしたと申し上げたまでですので、文章能力のなさと逃げていただくのはいかがなものでしょう。
経済学擁護派の反論が、あまり科学的な反論になっていないというのが面白い。つまり中村氏の上げた理由に対して、具体的または論理的な反証をあげて反論できていないのだ。(略)
「経済学は科学か?」(@半日庵のつぶやき2/27付)(webmaster注:強調はwebmasterによります)
文章構造がよく整理されておらず複数の解釈を許容する場合に異なる解釈をされたのであれば文章能力の問題と自認されても結構ですが、ご覧のとおりそうではありません。「理由」への反論の有無を問うておきながら、それが有ると示したら「主張」への反論がなく有るのは「理由」へのものばかり、と言われても困ります。
#なぜ「理由」に反論したかは冒頭で整理したとおりです。
残念ながら、具体的な反証とよべるものは、中村氏があげた人や著作に関するものばかりです。そのような反論の仕方をするのは、ブログやそのコメント欄では比較的一般的です。でもそれでは、「経済学は科学ではない」という中村氏の主張に対する反論にはならないのです。ただ、氏の上げた証拠をつぶしているだけです。証拠を全部つぶしても、結論は「中村氏の主張には根拠がない」です。それでは、「経済学は科学である」という主張にはなりません。このあたり、中村氏の術中にはまっていると感じるわけです。
科学的な論証の方法として、ガリレオが打ち立てたとされる方法論が、「仮説をたてて、その仮説が正しいとする証拠を、観測や実験からそろえる」というものです。中村氏は、「経済学は科学ではない」という仮説をたてて、その証拠と考えるものを述べています。もちろんその証拠が全て否定されれば、中村氏の主張は根拠無しです。しかし、ここで勘違いしてはいけないのは仮説はそのまま残るということです。「経済学は科学ではない=根拠なし」となっても「経済学は科学である」ということにはなりません。
「経済学は科学である」という仮説を主張するには、その仮説を証明するための根拠を挙げなくてはいけません。残念ながらそのような考えに基づいて中村氏に反論していると思われるものを、私は読んでいません。
「経済学は科学か?への反論をもらいました」(@半日庵のつぶやき3/6付)
仮に「経済学は科学である」という仮説と「経済学は科学ではない」という仮説の確からしさが同程度であれば、あるいはいずれにもそれなりの「観測や実験」の積み重ねがない状態であれば、半日庵さんのおっしゃるとおり「経済学は科学ではない」を否定できたからといって「経済学は科学である」とはいえないでしょう。問題は実際にそうなのか、ということです。
経済学は通常社会科学の一分野として認識されているわけですから、つまりは科学の範疇に入るというのが通説になります。social sciencesという呼称があるように、これは日本に限った話ではありません。次のwikipedia(英語版)の記述が示すように、中村さんがなさったような指摘を受けての議論を経て、科学性は一般に認められているわけで、つまりは「経済学は科学である」仮説にはそれなりの「観測や実験」の積み重ねがあります。
The social sciences are sometimes criticized as being "less scientific" than the natural sciences, in that they are seen as being less rigorous or empirical in their methods. This claim is most commonly made when comparing social sciences to fields such as physics, chemistry or biology in which direct experimentation and falsification of results is generally carried out in a more direct fashion. Social scientists refute such claims by pointing to the use of a rich variety of scientific processes, mathematical proofs, and other methods in their professional literature. Others, however argue that the social world is much too complex to be studied as one would study static molecules. The actions or reactions of a molecule or chemical substance are always the same when placed in certain situations. Humans, on the other hand, are much too complex for these traditional scientific methodologies. Humans and society do not have certain rules that always have the same outcome and they cannot guarantee to react the same way to certain situations.
(webmaster試訳:社会科学は、より厳密でないとか実証的でないと見られる点において、時として自然科学に比べ「より科学的でない」と批判され
まする。こうした主張はほとんどの場合、一般により直接的な方法で真偽の検証が可能な物理学、化学、生物学等と社会科学とを比較する際に見られる。社会科学者はこうした主張に対して、専門レヴェルでの多様な科学的プロセス、数学的検証その他の手法の実例を示して反論している。他にも、社会は複雑であり安定した分子と同様には検証できないという議論がある。分子その他の化学物質の動き・反応は一定の状況においては常に同じものとなる。他方でヒトは、そのような伝統的な科学的方法論で扱うには複雑すぎる。ヒトや社会は常に同一の結果をもたらす確たる法則を持たず、一定の状況で同一の反応を示すと保証はできない。)
#ちなみにWikipediaの同じ項目においては、The social sciences are a group of academic disciplines that study the human aspects of the world. They diverge from the arts and humanities in that the social sciences emphasize the use of the scientific method and rigorous standards of evidence in the study of humanity, including quantitative and qualitative methods.
(webmaster試訳:社会科学とはこの世のヒトに関する事柄を研究する学問分野である。社会科学はヒトの研究において定量的・定性的手法を含む科学的手法や厳密な実証基準を用いることを強調する点で、人文教養とは区分される。)とされています。
別に通説だから正しいと言いたい訳ではありませんが、「経済学は科学ではない」仮説を支える論拠が否定されれば「経済学は科学である」仮説はそれなりに確からしいと考えることには十分に合理性があるということになります。両仮説があたかも同等であるとの見方は、夜郎自大であるといわざるを得ないでしょう。
で、以上が一般論になるわけですが、科学の定義というと人文系の科学もあるから広いけれど、ぼくの中では、「飽くなき真理の探究」が一番広い意味の科学ですね。/今回の文脈でいえば、数学を使って精密な議論をし、精密な観測や精密な実験で検証し、その結果からまた数学を使って精密な議論をするということを繰り返して、上昇スパイラルで真理を探究し続ける行為
と中村さんはおっしゃっているわけですから、本件固有の文脈においては、webmasterが示したような数学を用いた議論及びその実証という形で研究がなされた実例を挙げれば「経済学は科学である」仮説は成り立つということになります。一例としてブランチャード、フィッシャーを紹介しましたが、買えというのもなんですので(webmaster自身買ってませんし(笑))、ネット上のリソースとして一夢庵さんによるその覚書を改めて紹介しておきます。
経済学者でも文学者でも、論理的な主張をできる人はいます。そのことは否定しません。問題は、経済学者ではそのような人が少ないということです。そのような状態をみると、経済学のコミュニティでは論理的な主張ができなくても学者として通用しているのではないかという疑念を払拭できないことです。そのことを中村氏は経済学は科学ではない論拠の一つにしているように私には感じられます。
「経済学は科学か?への反論をもらいました」(@半日庵のつぶやき3/6付)
「科学的な論証の方法として、ガリレオが打ち立てたとされる方法論が、『仮説をたてて、その仮説が正しいとする証拠を、観測や実験からそろえる』というものです。『経済学者では論理的な主張をできる人が少ない』という仮説を主張するには、その仮説を証明するための根拠を挙げなくてはいけません。残念ながらそのような考えに基づいて実証的根拠を示しつつ建設的な批判をしていると思われるものを、こと本件においてはwebmasterは読んでいません。」
中村氏が、コンピュータ業界の人ということで、コンピュータ業界、後、物理学の分野などで、中村氏の上げた経済学が科学ではない例と似たものを探してきて、どうだと言っている例が多く見受けられます。これなどまさに中村氏の術中にはまった例ですね。そんな例をいくらあげても、経済学が科学であるという論拠にはなりません。その上に議論としても建設的なものにならないのです。このような基本的なことは、建設的かつ論理的な議論を十分にしたことのある人は、知っています。つまり、反論者自体が、中村氏の主張の証拠になってしまっているのです。
「経済学は科学か?への反論をもらいました」(@半日庵のつぶやき3/6付)
ちょっと前の民主党と同じですねぇ。メールはガセかもしれないけれど、それと疑惑の真偽は別だと。メールがガセかどうかの議論はちっとも建設的でないことには間違いありませんが、議論がそうなってしまうのもガセを持ち出した側の責任でしょう。
#このエントリは、以下の一連のエントリの続編です。
法学が科学かどうかはおいときますが(笑)、法律を学んだことのある人間にとっては、命題の設定の仕方や順番によって同じ事象に対する評価が全く異なり得るという状況はなじみが深いんですが、真理はどちらからアプローチしても一つのはずという世界の人たちにとっては、気持ち悪いのかも知れませんね(でも、これって極めて数学的(アローの投票のパラドックスとか)な発想なんだと思いますけど)。
色々と見ていて、何となく、そんな気が・・・(これもまた、見た範囲のものだけで、理系とか自然科学を語るという意味においてバイアスがかかっているわけですが)。
>47thさん
というか「科学」かどうかというのがそれほど大事かと思うわけです。議論の厳密さですとか客観的検証を尊ぶのはもちろん重要ですが、科学というカテゴリに属するかどうかは二の次でしょう。
数学でやってるナントカ予想ってあれは科学なんだチューかね。証明されれば科学だけど、はずれると非科学? 競馬の予想は・・・・。
サムエルソンが傲然と述べた(彼はいつもそうだけどw)有名な台
詞に「経済学とは経済学者のやっていることだ」というのがありま
す。ですから、高校で理数科にいて、大学で理学部・工学部にい
て、大学院でも理学研究科?にいた人がやっているのを「科学」と
定義して、そうじゃない経済学を「科学ではない」と言ってるだけ
なんですから気にしないで良いでしょう。いわれたら「はい、自然
科学ではありません」とだけ言っておけば吉かと(和良
「科学とはなにか」という考察・思考は、科学でなく哲学である、
という話もありますね。
そもそも数学は科学ではないから、科学の道具になる、
なんて話もあったような。
中村さんは明らかに工学の人でしょ。科学の理解の仕方が工学系っぽいもの。
いつも楽しく見てます。
高校で理数科にいて、大学で理学部にいて、大学院でも理学研究科にいてw、素粒子実験物理の研究者・教官やってますけど、経済学は理系的センスで見ておもしろいですし、方法論も精度も現代科学ですよ。
ただ、科学は数学を使ってどうのこうのとか、実験ができるできないがどうのこうの、っていうのは、まあ、ガンダムとウルトラマンのどっちが強いかレベルの、素人さんのアホで低俗な議論です。環境学者さんのときみたいに、誰かに掲示板で晒されてチョン、でよろしいんじゃないでしょうか。確かに経済学部教授でメディアに出没されてる方の多くは、経済学のその分野がわかってないんだろうな、と思える人が多いですけど、中央銀行総裁・審議委員ですらそうですからしょうがない。
全く内容と関係ないのですが、
>webmaster試訳:社会科学は、より厳密でないとか実証的でないと見られる点において、時として自然科学に比べ「より科学的でない」と批判されます。
この部分だけ敬語なのが気になります。横レス失礼致しました。
うーん、おつかれさまです・・・。
誤解を解く活動って、「よき誤解者」にめぐまれないとあまり生産的にならないですね・・・。
>ねずみ王様さん、MUTIさん
数学は科学ではないという主張は根強く主張されていますよね。実験だの観察だのはあり得ませんし。科学哲学には詳しくないのであまり踏み込まないよう自制しますが(笑)。
>銅鑼さま
そんなサミュエルソンも、傲然さではさらに上を行く(笑)フォン・ノイマンに「(教科書の)『経済学』は物理学でいえばニュートン以前だ」とか言われちゃってますよね(笑)。その手のことをノイマンに言われて言い返そうという気になる人もまずいないでしょうし、まあ彼から言われるならあきらめもつくというもの(笑)。
で、ノイマンの時代から経済学が進歩してないって思われているんでしょうかねぇ(笑)。
>kumakuma1967さん
中村さんではなく半日庵さんですが、板倉雄一郎さんや木村剛さんを評価するあたり、現場の技術者気質っぽい気もします。
>TOEさん
緊張してしまいます。今後ともよろしくお願いします。ところで、
>中央銀行総裁・審議委員ですらそうですからしょうがない。
これが事実を言い当てているのが悲しいです。政府の人選が悪いわけですから日銀だけに責めを負わせるのは不当でしょうけれど、その影響を考えれば総理大臣と同じぐらい重要な人選なわけで、それがそんなレヴェルでは・・・。
>BontaMk3さん
訂正いたしました。ご指摘ありがとうございました。
>gachapinfanさん
いえいえ、愛・蔵太さんとJonahさんやApemanさんのアレやホテルルワンダパンフについてのアレに関するgachapinfanさんご自身の整理に比べればどうってことありません(笑)。
「経済学は科学ではない」という主張の論拠に対する反証を認めない上に、何が満たされればその命題が証明されるのかも明らかにしないまま経済学は科学だとポジティブに証明しろ、と言い出すそのあまりもの科学的姿勢に涙が出ます。やはり時間の無駄です。
誤読失礼いたしました。
「私の知る経済学者の態度は科学的でない」と主張すべき所を「経済学は科学ではない」と書き違えているので、相手の土俵で議論しても生産性がないような気がしていましたが、「経済学とは経済学者のやっていることだ」という命題を示されてしまうと、「経済学は科学でなくてもいいのだ」と読めて逆に興味深いです。経世済民の実学であれば科学でなくてもいいような気がしてますのでそうであっても私は別にかまわないのですが。
実学であるところの工学も科学でなくてもいい分野だと思ってます。(彼らが科学的なのは、その方が実用的だからだと思ってます。)
>kumakuma1967さん
いや「経世済民」=経済というのは、モラルハザードとか、political
economyだからもともと経済学は政治経済学だ(本来の意味は国民経済)
というのと同じで、ちょっとヤバイです(笑)別に役に立たなくても
人の幸せに貢献できなくても、「完全な中央集権ではない分権的で
異常に複雑なシステムが、曲がりなりにも200年以上も破綻せず
維持されていることの不思議さ」に驚き、そのメカニズムを少しで
も良いから理解したいと思う人を経済学者というのであって、そう
いう人が研究しているのが経済学であれば良いでしょう。もちろん
そういう知識がなければ、経世済民も不可能ですが、それは別の話
なわけでして。
>アルベルトさん
まあこちらは乗りかかった船ですので、妙な方向にずれなければ続けるつもりです。
>kumakuma1967さん
今度は「経済学者は科学者じゃない」というものに入れ替わるだけだったりして(笑)。
別にアメリカの分類が全てというつもりはありませんが、あちらで実学というと法学や経営学、医学(それぞれ院がロースクール、ビジネススクール、メディカルスクール)が典型ということになるでしょう。工学もCaltechやMITがuniversityでなくinstituteなわけですし。
>銅鑼さま
>「完全な中央集権ではない分権的で異常に複雑なシステムが、曲がりなりにも200年以上も破綻せず維持されていることの不思議さ」
「2000年以上」ではないでしょうか?