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2006-03-18
■ [law]ロースクール問題の分析
内容は、まあロースクールの先生・客員研究員・学生、他にもしかしたら他学部の先生が対象ということで、法学教育改革(具体的には法科大学院制度の創設)について、なんで改革が必要とされたかを含めて全体的に解説したあと、で、いまこんな状態になっていますという報告をするものです。一言で要約すれば「愚痴」ですな。問題は、で何故そんな状態になってしまったかという点についての明確な結論を私自身も持っていないことです。いくつか仮説は提示できるので、あとは議論に任せましょうかね。しかし"Don't be late for the bus" mentalityが原因なんて話するのも恥ずかしいなあ。
「愚痴を言う。」(@おおやにき3/9付)(webmaster注:強調は原文によります)
デブリを拝見するに狙った場所で笑いを取れた
とのことですので、「バスに乗り遅れるな」という我が国の醇風美俗(笑)をきっちり紹介されたのではと思うのですが、それはさておき現場から見た「こんな状態」というのはどのようなものなのでしょうか。とりあえず端から見た「こんな状態」とは、その経緯を含めご紹介するなら次のとおりです。
- 現在は司法試験の敷居が高すぎ受験者が予備校に走るので、基礎的な法学教育がおろそかになると同時に、受験テクニックに走った合格者が増えている。
- そこでロースクール(法科大学院)制度を導入し、医学部教育のようにそこに入ればよっぽどひどい学生以外は皆法曹になれるようにすれば、ロースクールで基礎的な法学教育を仕込み、かつ、予備校に時間をとられることもなくなる、はずだった。
- ところがロースクール修了者に対する司法試験合格者数は相対的に限定されたまま(確か2〜3割だったように記憶しています)。
- したがって、ロースクール在学者はやっぱり予備校に走り、当初の狙いが果たされていない。
「こんな状態」がこれであるとするなら、なぜ「バスに乗り遅れるな」が原因であるかはお察しいただけるかと思います。つまりは当初の構想ではもっと少ししかロースクールの設置を認めないはずだったのに、そうした風潮から絞込みを十分にすることができず(あまり知られていませんが、全半分超の都道府県にあるほどですから)、結果的に司法試験合格者数を相当程度上回る数の定員となるだけのロースクール設置を認めてしまったため、ということです。
#3/19に訂正しました。
しかし考えてみれば、法学部を持つ大学にとって、ロースクールの有無は大学受験者へのアピールに対してかなりの影響を及ぼすでしょうから、我も我もと設置を願うのも当然といえます。また、地元の政治家や財界が応援団としてそれを後押しするのも無理はありません。見通しの甘さには問題があるかもしれませんが、「バスに乗り遅れるな」と思うことそのものは、それほど責められるべきことではないでしょう。
問題はむしろ、大学やその応援団と、ロースクール設置を認める文科省とのパワーバランスの違いにあります。全体としてどの程度の数が適正かという意識がありながら、その数に至るまで減らせなかった相対的な文科省の力のなさ、及び政府・与党の関係者によるサポート不足が「何故そんな状態になってしまったか」という疑問に対するwebmasterの考えです。
さらには、司法試験合格者数を増やせなかったことについても問題はあると言えます。しょせんはロースクール定員と司法試験合格者数との関係に依存する問題ですから、前者を十分に少なくできなければ、後者を十分に多くすることで問題は回避可能です。こちらの担当は法務省ということになりますが、法務省は法曹を代弁して‐というより、法務省は国家公務員I種でなく司法試験出身者が主流を占める役所ですから、代弁するまでもなく半ば以上当事者として‐、司法修習所のキャパシティその他により合格者の質を維持したままの司法試験合格者数の拡大にはおのずと制約があるとの立場です。
いずれの主張にもそれなりの理があるわけですが、だからといって両立し得ないものを放置していては問題が生じるだけです。その意味でこの問題はロースクール制度の導入を決定したときから予定されていたようなもので、その決定に最終的には責任があるといえましょう。どうせ文科省に実現を迫った方々は、このような問題が生じたとしても文科省を責めはしてもその先にある現実に向きあいなどしてくれはしないでしょうし(笑)。
ちなみに派生する問題として、上記の当然の帰結ではありますが人気のないロースクールが早速出始め、将来的には潰れるものが出てくるのでは、なんてものもあります。そうして淘汰されればおのずと司法試験合格者数に見合った定員まで減るでしょうから、競争原理を通じた最適化ということになりますが、当事者には抵抗感があるでしょう。
他にもロースクールの講師に相当程度のヤメ検が入ってきていて、実はロースクール導入の隠れた目的は検察の天下り先の確保だったなんtうわなにをするやめr
御説同感ですが1点だけ。
ローが全都道府県にあるなんてうそを言っちゃあいけません。
どうせ滋賀県なんか数のうちに入っていないんでしょうねぇ・・・・。
ロースクールに限らず90年代から続く大学の粗製濫造は、「大学利権」を連想させるものがあります。20年前から少子化は予測されているにもかかわらず異常な増加ぶりです。利権の獲得先が、国鉄→道路公団→大学、空港、へと移ってきているのでしょうか?
最近、国史・国文・アジア関連(古典・歴史・思想)は後任不補充が続いてます。どういう事が起きてるかというと「日本史は知らない。日本文化は知らない。」という学生が大量発生。いったいどこの国の大学を卒業したのか謎な学生大量輩出です。基礎的な学問分野って、金は儲からん、補助も減らされるでじり貧。さて、あと10年もすると、日本の文化や歴史について全く知らなくても大学は卒業できそうです。中学高校の日本文化・歴史関係の授業はえらいことになってますから、大学で補充できないと、更に凄くなります。
ロー発足の大学側の動機は、「増えすぎたオーバードクターの処理」にあった考えます。
つまり、ロー設置基準を満たすため、多くの法学部教授が大学院教授に成り上がりました。
その結果、教授の席が空き、助教授→教授、講師→助教授、オーバードクター→講師という心太方式で押し込んだ、と。
http://www.jp-lawschool.com/data/school/all.htm
によれば、法科大学院のない県は
青森・秋田・岩手・山形・福島・茨城・群馬・富山・福井・岐阜・三重・滋賀・和歌山・奈良・鳥取・山口・徳島・高知・愛媛・佐賀・長崎・大分・宮崎
のようですね。今後開校する計画があるのも岩手・愛媛・山口だけのようです。
そのうち青森・岩手・山形・福島・福井・滋賀・和歌山・鳥取・山口・徳島・高知・佐賀・長崎・大分には
4年制の法学部が(福井・鳥取・高知・大分は学科としても)ないようです。
常々Bewaadさんが主張されてるように、高等教育の(進学率4割、短大・専門まで入れると7割という現状では学部段階は事実上後期中等教育ですが)大都市への偏在はひどいものがありますねぇ…。
まあ、少なくとも社会科学に関しては、実社会=実際のビジネスや政治・行政の現場=大都市で学んだほうが、企業であれ役人であれ法曹であれあとあと「役に立つ」人材になるのは確かなんでしょうが。
>koge様
そのページで「香川大法科大学院」になっているのは、香川大=愛媛大の連合大学院ですので(なので、四国ロースクールと呼んであげて下さい)、一応、愛媛にもあることにして良いかもしれません。
>naitoさん
(私が)ここで問題にしているのは学ぶ場所の地理的分布ですから、愛媛県で通常の授業がまったくない以上(というか、一般の大学院ならともかく専門職の(試験勉強込み)詰め込みカリキュラムで週1日だけ愛媛行けといわれても困る)、愛媛大が香川県にキャンパスを置いているものといったほうが妥当でしょう。
ちなみに筑波大学も法科大学院を持っていますが、授業は全部茗荷谷で行うそうなので、東京都所在とみなしています。
>nonさん、かめのこだわしさん、kogeさん、naitoさん
非常に恥ずかしい間違いをしてしまい申し訳ありませんでした。訂正いたしました。どこかで全部にあるといったことを聞いたような記憶があり、ろくに裏も取らずに書いてしまった軽率さゆえです。ご指摘等ありがとうございました。
>如何様さん
大学の需要は、少子化のみならず学歴の向上も考慮に入れる必要がありますし、他方で少子化の見通しは年金をはじめ各所ではずしまくっていますから、文科省(及び前身の文部省)は責められないでしょう。政府として厚労省(厚生省)が採用する少子化見通し以外のものは、研究等でないと使いづらいのは間違いありません。
>iori3さん
人文系において顕著ということはあるかもしれませんが、根っこには教養課程の置かれた環境という問題があるのではないでしょうか。教養課程全体に逆風が吹く中、専門の露払いとなるような科目が相対的に重視されれば、それ以外の科目には二重にしわ寄せがいくということになります。
>あははさん
あの程度のオーバードクターでここまでやったとしたら、理系などどのような対策をしなければならないのやら・・・。
あまりその業界には詳しくないのですが、東大が研究者を養成しすぎ、ということなのでしょうか? かつては東大で養成した研究者を各地の新設大学に押し込んでいて(自前分だけは助手で確保(笑))、それはそれで需給バランスが均衡していたのでしょうけれど、押し込み先でもそれなりに自ら養成しだすようになるなら、押し込みを織り込んで自前の需要以上に養成していた分は削減しないとマクロで見れば供給過剰になってしまう、と。
>kogeさん
といいますか、その手のものは集中による相乗効果が大きい一方、面積による制約をほぼ考える必要がありませんから、集中させてしまった方が遥かに効率的だということになります。
ですから、そうした産業集積的な部分は市場にまかせ、都市においては大いに高付加価値産業に特化してもらって結構なのですが、その上がりをそうでない部分に再分配する(その観点として地方で見るより所得で見るべきというご指摘には十分頷けるものがあります)仕組みをきちんと用意すべきですし、それをあまりに恩着せがましくするのもいかがなものか、と。少なくとも日本という国を単位とした何らかのコミュニティ性を(それが幻想であっても)是とするのであれば。
>bewaadさま
コメント&訂正ありがとうごいます。
ところで、理系でも薬学部とかだと最近学部の新設ラッシュ&学部課程の6年化が顕著に進行していますが、これも「オーバードクター対策」なのかもしれないという気がしますが、いかがでしょうか。
>かめのこだわしさん
学部の新設ラッシュはよくわかりませんが、学部課程の6年化は、(薬学部ではありませんが)大学の同期を見ても理系は得てして就職するにしても修士をとってからという人間が多かったことを考えても、そもそも今の専門領域を考えると4年では短すぎるという問題意識があるのではないでしょうか。東大法学部でも、ロースクールに先立って専修コースという研究者養成を目的としない修士コースが設けられましたが、それと同じような問題意識なのかな、と。
ども。講演本体の質疑では「LSの講義で合格率の問題はプレッシャーになっているか」「学習範囲の幅を広げるという目的はどうなっているのか」「三振博士の就職先問題にLSとしてコミットするような動きはあるのか」というような、現状の正確な認識を試みる質問が中心で、「しかしなぜ」までは話が行きませんでした。
そのあとディナーの際に数人の先生とそういう話になったのですが、私としては第一に事前審査から事後の第三者評価中心にシステムが変わったという制度的要因と、第二に誰も責任を取りたくないのではないかという心理的要因の疑いを指摘しておきました。
Don't be late for the bus.というのはそういう意味でもあって、つまり一部に非常に積極的な人がいると周囲のやや消極的程度の人が止められない。今回は各大学にやりたがる人がいるところまではご指摘の通り当然ですが、難易度や教員争奪戦まで含めた各大学の体力の差を考えると競争に参加するのが明らかに賢明でない(そんな資源があれば別のニッチに特化した方がいい)ところまで参入していて、つまり「これは無茶だから私の責任で止める」と言った人は(いくつかの大学を除いて)おらず、大学側で「止めてくれないかな〜」と期待していたかもしれない文科省サイドも「どうせ止めたら批判されるの俺たちなんだろ?」という感じでやんなっちゃってて止めてくれない、どうせ放っておけば市場原理がトドメをさすだろうと、そんな感じになってるんじゃないかという邪推です。
というわけで、すでに兆候が現れているとおり今後数年間に市場原理に基づく緩やかな調整過程が発生するか、あるいは「三振博士」問題などがクローズアップされてラディカルな再改革が行なわれるか、というのが講演の結論でした。はい。
>大屋先生
度重なるご出張、それにPSEがらみのあれこれお疲れさまです。
>文科省サイドも「どうせ止めたら批判されるの俺たちなんだろ?」という感じでやんなっちゃって
絶対そういう会話が部内の議論であったと思います(笑)。
>すでに兆候が現れているとおり今後数年間に市場原理に基づく緩やかな調整過程が発生するか、あるいは「三振博士」問題などがクローズアップされてラディカルな再改革が行なわれるか
ラディカルな再改革は改革推進者の面子にかかわるので、小手先の対応があれこれ模索されつつ調整が進むということになるのかな、と部外者の無責任な推測。