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(ここはbewaad institute@kasumigasekiの過去ログ倉庫です。コメント等は仕様上受付けを停止しておりませんが、こちらではご遠慮いただければ幸いです。何かございましたら、現行サイトにお願いいたします。)
2006-04-06
■ [economy][book]野口旭「エコノミストたちの歪んだ水晶玉」
Hotwiredでの「ケイザイを斬る!」を第II部に、その後の状況変化を踏まえた総括を第I部に配置する一冊ですが、第II部を読み返すと日銀総裁の選任に代表される様々なことが思い出されて懐かしく思います(まだ数年しか経っていないんですねぇ)。著者自身が本書は、デフレ不況がその深刻さを最もきわめていた2002年末から現在までにいたる、日本経済、日本の経済政策動向、そして日本の経済論壇についての、いわば「観察記録」である
「はじめに」と簡潔にまとめていらっしゃるとおりの特徴です。素直な感想を書くとこのまま賛辞で埋まりそうなので、あえて異議を申し上げれば2点ほど。
本書で目立つ意見として、福井体制の日銀に対する評価が甘いのですが(webmasterとはこの点で意見を異にします)、それは著者が常識人だからなのであって、webmasterの方が所属する業界の性質ゆえにもう少し世間の汚さというものに慣れているからでしょう(笑)。福井日銀は君子豹変したとしていますが(第9章)、今般の量的緩和解除で証明されたように本質は全く変わっておらず、ただ愚直な速水日銀とは異なりプレゼンがうまかったに過ぎないわけです。webmasterの予測としては、日銀が本当に変われるとしたらそれはバブル崩壊時の引締めとゼロ金利解除を失敗であると認めることができたときで、それができない福井日銀の限界はおのずと明らかでしょう。
著者が豹変の証拠としている財務省の大規模外為介入と並行しての当預残高引上げは、日銀自身が何度となく説明しているようにプルーデンスの観点からのものだと解すべきでしょう。失敗をおおっぴらには認めがたいので別の理屈をつけたわけでなく、本心からそう考えてのものだとwebmasterは思います。
本書の‐というより著者が常に唱える‐もう1つの主要な柱は、世間知と専門知の違いです。単純に対立構造をまとめるなら過てる世間知に対する理解されがたい専門知という構図だとwebmasterは理解しました。しかし、いみじくもケインズが「知的影響から自由なつもりの実務屋は、たいがいどっかのトンデモ経済学者の奴隷だ」と語ったように(山形さんの要約から引用)、実は世間知とは専門知をもって対立する者のそれとは異なる専門知に依存しているのではないでしょうか。
本書で取り上げられた例を見ても、例えば木村剛さんのキャピタルフライト論は、いかにも世間知受けしそうではありますが、今ではほとんど見る影もありません。サポートする専門家を得られなかったことが大きいのではないでしょうか。また、TFP低迷論についても、結局は専門家同士の議論で少なくともデフレ不況をそれだけで説明するには問題が多いことが明らかになったため、世間的には普及していないのでしょう。さらにはデフレは良いものではないのだとの認識が広まったことも。
この観点からは、本書において世間知的なデフレの原因=貸し渋り仮説のみが批判されているのはいただけません(本書においても、実は、この種の単純な「貸し渋り」仮説の信奉者は、アカデミックな専門家の中にはほとんど存在していない
(p53)とされています)。確かに貸し渋り仮説には専門家の支持者は少ないのですが、追い貸し仮説には支持者は少なくありません。
不良債権問題の解消は小泉構造改革の主要な喧伝材料の1つですし、道路公団や郵政公社の民営化等について不十分だと小泉政権を批判する構造改革強硬派でも不良債権問題については評価する人が多々います。その帰結として、著者の観察とは異なり不良債権がなくなったから景気が回復したのだと考える人は決して少ないわけではありません。そうした世間知を支えているのは追い貸し仮説という専門知であり、まずはそこで決着をつけない限りは、世間知をいくら批判したところで浜の真砂は、ということになってしまうのではないでしょうか。
#十分条件ではなく必要条件なのかもしれませんが。
最後に、本書を受けてリフレ政策支持者=「声の出るゴキブリ」命名者の某アナリストがあれこれ書いています。コメント欄には飯田先生と田中先生(韓リフさん)が登場してやりとりもあるのですが、まだご覧になっていらっしゃらない方はぜひとも。言い訳の手本として使えますよ(笑)。
>山崎元氏
向こうのブログに書くと飯田先生や田中先生の議論の邪魔になりそうなのでこっちに書きますが、山崎氏が政府の非効率性や政府と民間の癒着、「フェアネス」の問題を理由に需要追加に否定的ということならば、「じゃあ消費税減税すればいいじゃん。」という意見にはどう答えるんでしょうね?w
山崎元氏のとこの議論にぜひ銅鑼氏の参戦きぼんぬしたいですね。
ご無沙汰をしておりました。福井日銀に対するbewaadさんの評価に全面賛成であります。某国会議員曰く、「福井さんは口のうまい速水さんだな」。言いえて妙でありました。
就任直後の福井総裁の評価について、あえて野口氏を弁護してみますと、たとえ(推測しかできない)本心がどうであろうと、(客観的な)行動自体がマシになれば、ほめるのはある意味当然ではないでしょうか。
行動が変化してもけなしつづけるのでは、「政府のやることは何でも反対」のどっかの政党みたいですし...
また反リフレ派の人たちが意見を改めても「オマエは昔バカなことを言ってたじゃないか」といつまでも責めるのでは、意見を改めるという行動へのインセンティブを大きく損なう(むしろ、間違っていると気づいた後も反リフレを叫びつづけるインセンティブになる)と思います。
(だから竹中氏もとりあえずほめてやるべきなのだと思います(笑)。)
もちろん、最近の福井総裁については、いかなる点からみても批判して当然と思います。
>Baatarismさん
直間比率あたりを持ち出すでしょうから、所得税や法人税なら減税に賛成するのではないか、という気がします。国際競争力厨っぽいですし。
>イムジン河さん
いちごでこき下ろしまくってます(笑)ので、そちらをご覧いただければ。対話の相手とは認めていないからあちらには顔を出さないのでは、と勝手に思ってます。
>本石町日記さん
「三〇兆円高地」、読み応えがありました。インスピレーションを受けたのでちょっとひねってみようかなとは思ってますが、アイデアがうまくつながらなかったらなかったことにさせてください(笑)。
>lukeさん
上の本石町日記さんのインスピレーションの種明かしなのですが、福井日銀の実績=当預残高の引上げは壮大な目くらまし、ミスディレクションだったのではという気がしています。速水日銀時代は当預残高の引上げペースこそ遅々たるものでしたが、長期国債買切オペ額の引上げを伴っていました。他方、福井日銀は当預残高こそ積極的に引上げますが、その影で長期国債買切オペ額には手をつけていないわけで、つまりは彼(女)らから見て相対的に重要でないポイントで華々しく花火を打ち上げて、相対的に重要なものを守ったと。速水路線が続いて当預残高はそれほど伸びなかったけれどもオペ額も相応には増加していたとすれば、速水総裁の交代というレジーム転換(笑)効果をとりあえず捨象すると、実はもっと緩和になっていたはずだったのに、というように思うのです。FBのマネタイズはアナウンスメント効果以上のものはないに等しいですが、長期国債ならそんなことはありませんので。
ちなみにリフレ政策支持者の中では、福井総裁には一番点が辛い一方で、高橋洋一さんの次ぐらいに竹中大臣には点が甘いと自認してます(笑)。