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2006-08-19

[science][misc]ホルスト・組曲「惑星」と冥王星、その他

太陽系の惑星は9つであるとの従来の見方が覆されるかも、という話はすでにご存知の方も多いと思います。

太陽系の惑星がこれまでの9個から一気に3個増え、12個になる可能性がでてきた。チェコ・プラハで開催中の国際天文学連合(IAU)総会で16日、惑星の新定義が提案されたためだ。太陽系で惑星と認定されたのは1930年発見の冥王星までの9個だが、近年、新天体の発見が相次ぐなどしたため、定義の見直しを迫られていた。新定義の採決は現地時間24日午後の予定で、承認されれば、世界中の教科書が書き換えられることになる。

これまで太陽系の惑星は、歴史的経緯から地球や金星、土星、冥王星などの9個とされてきた。

IAU総会に提案された惑星の新定義は(1)天体が自ら球状の形を維持できる重力をもつ(2)太陽のような恒星を周回している天体で、恒星や、惑星の衛星ではない――の2条件を満たす天体。これには、質量が月の約150分の1、直径では月の約4分の1にあたる800キロの天体まで含まれる可能性がある。

新定義が承認された場合、米観測チームが昨夏に冥王星よりも大きく、「第10惑星」として発表した「2003UB313」のほか、火星と木星の間にある小惑星の中では最大の「セレス(ケレス)」、冥王星の衛星とされていた「カロン」の三つが加わる。冥王星とカロンは、惑星と衛星の関係ではなく、二つの惑星が互いを周回しあう「二重惑星」とみなすことになる。

朝日「太陽系の惑星、一気に3個増か 国際天文学連合が新定義」

しかし、ここでいう惑星とは、英語で言うa planetだけではなく、つまりはIAU総会で今般の提案が承認されても、だからといって太陽系には12 planetsが属することになるわけではありません。

そこで国際天文学連合では、惑星の定義を天文学的に定めるべく、これまで慎重に議論をすすめてきました。そして、8月16日、総会参加の天文学者に「惑星」の定義の原案が下記のように示されました(一部、日本語訳が定まっていないため、英語表記としています)。

(1)惑星とは、(a)十分な質量を持つために自己重力が固体としての力よりも勝る結果、重力平衡(ほとんど球状)の形を持ち、(b)恒星の周りを回る天体で、恒星でも、また衛星でもないものとする。

(2)黄道面上で、ほぼ円軌道を持つ、1900年以前に発見された8つのClassical Planetsと、それ以外の太陽系の天体を区別する。後者は、すべて水星より小さい。また、セレスは上記(1)の定義から惑星であるが、歴史的理由により、他のClassical Planetsと区別するため、Dwarf Planetと呼ぶことを推奨する。

(3)冥王星や、最近発見された1つまたは複数のトランス・ネプチュニアン天体は、上記(1)の定義から、惑星である。Classical Planetsと対比して、これらは典型的に大きく傾いた軌道傾斜と歪んだ楕円軌道を持ち、軌道周期は200年を超えている。われわれは、冥王星が典型例となるこれらの天体群を、新しいカテゴリーとして、Plutonsと呼ぶ。

AstroArts「「惑星」の定義の原案、公開へ」

以下、冥王星その他のPlutonsが惑星(Planets)に含まれないとの誤解に基づきあれこれ書いております。少々の手直しで文意が通るようになるような代物ではございませんので、当初に書いたそのままで放置いたしますが、根本的な知識の欠如を含む妄言としてご笑覧いただきますようお願いいたします。(8/20追記)

整理すれば次のとおりです。

惑星
Planets
Classical Planets
水星、金星、地球、火星、木星、土星、天王星、海王星
Dwarf Planets
セレス
(その他)
(太陽系以外の恒星系に属するもの)
Plutons
冥王星、2003UB313、カロン

さて、以上は長い前振りでようやく本題ですが、クラシック音楽の世界で惑星といえばホルストの組曲「惑星」です。原題は"The Planets"ですから一般名詞としての惑星ではなく太陽系の惑星が題材なのですが、構成する各曲は火星、金星、水星、木星、土星、天王星、海王星(順序は地球に近い順)の7つで、冥王星は含まれていません。

といっても今回の件を予言していた、なんてことがあるはずもなく、1910年代に作曲(1920年初演)された「惑星」に1930年発見の冥王星が含まれようもない、というのが見もふたもない事実であります。たいがいのライナーノートではこれに触れられてはいるのですが、いかにも言い訳がましいとの感なしともできず、あたかものどの奥に刺さった魚の小骨のように、クラシックファンに落ち着かない思いをさせてもきました。

コリン・マシューズ[1946− ]がケント・ナガノに委嘱されてホルストの《惑星》につけ加えた《冥王星》は、2000年のナガノによる初演後、同年のプロムスで大評判となり、昨年、日本初演も行われたのは記憶に新しいところです。ありがちなトンデモ作品で終わることなく、今後、《惑星》と不可分の存在になることすら予感させる成功作との評価がすでに確立しつつあり、その最初の録音であるエルダー指揮ハレ管のレコーディングも話題になりましたが、今回は、2度目の録音として、NAXOSからデイヴィッド・ロイド=ジョーンズ指揮スコティッシュ・ナショナル管弦楽団の演奏が登場。

(略)

20世紀最後の年に近づいてから、ホルストの息女イモージェンと共にホルストの忘れられた作品の整理をしたことがあるマシューズが、ケント・ナガノの依頼でホルストの《惑星》につけ加えるため、《冥王星》を作曲したことは、当初無謀な挑戦と受け取られましたが、ナガノの後、サカリ・オラモ、オスモ・ヴァンスカ、大友直人といった指揮者が取り上げ、クラシックの《続編もの》としては最も成功した作品の一つとなりました。マシューズが自信を持って故イモージェンに捧げたのも納得できる出来栄えです。

「『惑星』(マシューズ作曲『冥王星』付き) ロイド=ジョーンズ&ロイヤル・スコティッシュ・ナショナル管」のHMVサイトでの紹介

それがためにこのような試みもなされてきたわけですが、しかし今回の提案はクラシックファンにとってなんたる福音でしょうか。冥王星がPlutonsであってPlanetsではないというのであれば、"The Planets"には冥王星は入らなくて正解ということになるからです。わざわざ作曲をしたコリン・マシューズがどのように受け止めるかをあれこれ勘繰るのも、また楽しくもあり。

・・・で、セレスはどうしましょう(笑)。

#「惑星」は各星の占星術のイメージから着想を得ているので、作曲をしようにも、セレスの占星術上のイメージがはっきりしない間はどうしようもないのですが。

本日のツッコミ(全13件) [ツッコミを入れる]
電算機専門官 (2006-08-19 23:01)

上記分類だと、「水金地火木土天海冥」と習ってきた惑星にも
微妙にあわなくなるわけですがどうなんでしょう。
また、一部では「セーラームーン」とのからみで物議をかもしているようです。私は、永遠の17歳声優がゲストキャラ(シリーズキャラというべきか)だった回しか見てませんが。

bewaad (2006-08-19 23:55)

>電算機専門官さん
そのあたりが教科書会社を悩ませているようですね。「水金地火木土天海冥」も、「・・・冥海」に変わる混乱がなくってよい、とは考えられるかも(笑)。

セーラームーンは守備範囲外なので、議論の存在は知りつつも、傍観者と化しております・・・。

鍋象 (2006-08-20 01:01)

表中のPlutonsのうち、冥王星・カロン・2003UB313は惑星でもあるのですよね。PlutonにしてPlanetという天体になるのかなと。

この記事だけでは良くわからないのが、Plutonsとカイパーベルト天体の関係。さらに、bewaadさんも日本語訳を避けておられますが、Plutino(カイパーベルト天体の中の冥王星族)とPlutonsの日本語での使い分けがどうなるのか。小惑星の名称廃止との事ですが、Asteroid beltはどないしましょ。ってな、主に翻訳上の問題に気づきました。しばらくはNewtonとかでも混乱しそうですね。

全体的に起源毎に分類をしようという意図が感じられて好ましいのですが、それならClassical Planet/Dwarf Planetなんて分類止めて、地球型惑星・木星型惑星にしてセレスを地球型に入れてしまえと思うんだけど、やっぱりClassicalなのは重みが違うんでしょうね。

bewaad (2006-08-20 09:01)

>鍋象さん
自分で
>冥王星や、最近発見された1つまたは複数のトランス・ネプチュニアン天体は、上記(1)の定義から、惑星である。
と引用しておきながら、お恥ずかしい限りです。ご指摘ありがとうございました。

ひろ (2006-08-20 14:47)

セレスは冥王星よりも発見が古いですし、
(1800年代なので、「惑星」の発表よりも古くから発見されている)
最近の占星術では考慮対象として他の4大小惑星同様組み込む派閥もありますんで、
まあ、今後無理矢理作るとなればその辺のイメージが入るかもしれませんね。

bewaad (2006-08-21 12:47)

>ひろさん
ケント・ナガノのような指揮者が未来にもいれば、約100年後に22世紀を記念して作曲されることになるかもしれませんね。私はそれまで生きてはいないでしょうけれど。

おのり (2006-08-22 22:47)

セレスにはもうラトルが委嘱して曲がついているようです。

http://www.classicajapan.com/wn/archives/001198.html
http://www.hmv.co.jp/product/detail.asp?sku=1273701

ラトルは何か動物的勘でも働いたのでしょうかね?爬虫類みたいな顔してますし。

bewaad (2006-08-23 12:51)

>おのりさん
さすがはラトル。でも、爬虫類顔ですか(笑)。いわれてみれば納得ですけれど。

電算機専門官 (2006-08-23 19:40)

報道によると、反対続出で否決の模様ですね。

宮嶋陽人 (2006-08-23 22:40)

ばかりか冥王星が惑星から外れるとのことで、
マシューズを糞味噌に貶したホルスト原理主義者からすれば
マシューズm9(^Д^)プギャー!!
というところでしょうか。
実際、続編ものとして評価は様々でありますし。

結局のところ、冥王星を外さない限り、EKBOから続々と新惑星が登場するのは不可避の状況なわけで、最終的には科学者が科学者らしく理性的な判断に落ち着いたことを個人的には嬉しく思うのですが。
実際のところ、巷間噂された「トンボーの名誉を守らんがためだけのアメリカの感情的抵抗」なるものが本当にあったのかどうか、アメリカという国の面白く興味深いところです。

鍋象 (2006-08-23 23:27)

ここ数年は科学雑誌でも冥王星には注記で「惑星じゃないという意見もある」とつくようになっていまして、海王星の共鳴天体(TNO)という呼称もできていまして冥王星はそこに分類されていました。
というわけで、総会の前の時点では8惑星案が出るというのがもっぱらの評判でした。そもそも、今回の定義問題が盛り上がった発端は、2003UB313やセドナの発見、カロンなど、天体観測の進歩でEKBO(エッジワースカイパーベルト天体)がどんどん見つかって、このままだと惑星が何個増えるのかわからない事から、ここらで定義をきちんとしておかないと、何かみつかるたびに第10惑星発見という事になりかねないというのがありました。過去には、セレスみたいな話(惑星だと思ったら小惑星帯が見つかってしまった)もありましたし。

そういう状態で12惑星案が出たので「冥王星を外したくないアメリカ(アメリカが発見した惑星は冥王星だけ)のごり押しか?それとも政治的配慮か?」とかの、学者の良識みたいな話になって紛糾していた面もあろうかと思います。

http://www.astroarts.co.jp/news/2006/08/22micheal_brown/index-j.shtml

この記事が参考になります。

bewaad (2006-08-24 07:59)

>電算機専門官さん、宮嶋陽人さん
私も本日(8/24)のエントリでとりあげさせていただきましたが、これもホルスト原理主義者(笑)の怨念のなせる業だったのかもしれません。

bewaad (2006-08-24 08:00)

>鍋象さん
お示しのリンク、最後のパラグラフがうまいオチになってますねぇ。


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