archives of BI@K

CSS: default alternative
(要cookie)

toppage memoranda

(ここはbewaad institute@kasumigasekiの過去ログ倉庫です。コメント等は仕様上受付けを停止しておりませんが、こちらではご遠慮いただければ幸いです。何かございましたら、現行サイトにお願いいたします。)

2005|01|02|03|04|05|06|07|08|09|10|11|12|
2006|01|02|03|04|05|06|07|08|09|10|11|12|
2007|01|02|

2006-09-15

[law]金融庁と旧内務省との接点?‐続・「貸金業法」という名称

#これまでの関連エントリについては、グレーゾーン金利撤廃(出資法上限金利引下げ)問題indexをご覧ください。

貸金業法という法の名称をめぐり、先日branchさんのテキストを題材に論じましたが、それを受けてbranchさんから詳細な論考をいただきました。現行法のみを対象として検討を加えたwebmasterに対し、廃止法をも渉猟したbranchさんのご努力には頭が下がります。

さはさりながら、ご主張にはなお素直に頷けないなぁ、ということであれこれ。まずは「規制」から。

まず、御指摘の1点目。

業法はすべて何らかの規制を含むものですから、「規制」の語の有無でそれほど意味は変わらないのではないか…(中略)…感覚的な話ではありますが、職業に貴賤あり、といった雰囲気を感じさせる名称であるということではないでしょうか。

これはまったくそのとおりだと考えます。業法である以上は規制を当然に含むわけですが、「規制」の語が含まれている場合には、立法者意思として業の育成よりも規制に重点を置くという姿勢を特に明らかにしているものと考えます。そういう意味で、金融庁としては育成にシフトしたのかなぁ…と考えるに至った次第です。 (もちろん規制によって適正な運営を図ることが育成につながるのであり、両者は必ずしも対立するものではありませんが。)

続・航海日誌(9/11付)(webmaster注:引用部末尾の括弧書きは、原文ではフォントが小さくなっています)

最初に申し上げるべきは、引用いただいたwebmasterの文章について、その意を明確にしなかったがゆえに、誤解を招いてしまったのかな、ということです。改めて書くなら、

「業法はすべて何らかの規制を含むものですから、「規制」の語の有無でそれほど意味は変わらないのではないか」
意味が変わらない語を付加するのは、その語に法的な意味がなく単に冗長さ(英語でredundantという方がしっくりきますが)を増すだけなので、回避するのが原則であるとwebmasterは考えます。
「感覚的な話ではありますが、職業に貴賤あり、といった雰囲気を感じさせる名称であるということではないでしょうか」
「職業に貴賤あり」との価値観は批判されるべきものであり、上記のように本来付加すべきでない語をそのような価値観に基づき付加するのは、理屈を枉げてその時々のマスヒステリーに迎合したということであり問題だとwebmasterは考えます。

ということになります。以上については、先の引用に続く部分が傍証となるのではないでしょうか。

この点、国会会議録を検索していたら、こういう質疑(抜粋)がありました。

○山本弥之助委員

警備業法、題名から見ますと、どうも何か……。遡切なことばがなかったと思うのですが、これを見て、私は、どういう法律の名称が妥当であるかということをいろいろ検討してみたのですけれども、どうも適切なことばは出てこないのです。何か、これは機動隊の下請業者のよう印象を受けますね。それで、いかにもものものしい感じがするのです。そのことが法案をきわめてあいまいなものにしておる。先ほどの中村さんの言ではないが。これは育成するのか、取り締まりをするのか。取り締まりということになれば、確かに、警察の担当しておる風俗営業等取締法。これは風俗営業の犯罪の温床になるということで、それを取り締まっていこうということで取り締まる法なんですね。これは取り締まりの要素があると同時に、教育に力を入れろというような条文があるわけですよ。

○政府委員(本庄務 警察庁刑事局保安部長)

ちょっと話が飛びますが、先ほどの名称の点につきまして、警備業法という名称は、必ずしも私たちも最善と思っておるわけではございません。たとえばガードマン営業法というようなことも考えたこともございますが、ガードマンと申しますと、先ほどお話もございましたテレビに出てくるガードマンのイメージが一般国民にございますので、あのテレビに出てくるいわゆるプライベートポリス的なガードマンでは、日本のガードマンはない。そういう意味で、そういう名称も避けたい。したがいまして、非常に平凡な、無難な名称をとったということでございます。ちょっと話がわき道にそれましたが、それならば、警備営業取締法あるいは警備営業を規制する法律というのが最も正確な表現であろうかと思いますが、しかし、ほかの法律を見ましても、倉庫業法とか、何々業法とか、そういった例も多分にございますので、一応平凡な名称を採用したというわけでございます。

--- 昭和47年5月12日 衆・地方行政委員会

このやり取りの直前の政府委員の答弁にあるように 「他の省庁のような、いわゆる育成、保護助成といったような要素は今回の警備業法にはほとんど入っておらない」 ので、題名に「規制」の語が含まれていてもおかしくなく、むしろ含んでいるほうが正確な表現であるけれども、他の例を見てあえて平凡な名称を採用した、と。ここには、育成的な内容は含まれていないけれども、業界をただ規制するのではなくゆくゆくは育成していきたいなぁ、という警察庁の警備業に対するスタンスが表れているように感じられるのは、うがった見方なのでしょうか(笑)。 (なお、警察白書では業法制定後もしばらくはまったく警備業について言及していなかった(←これもひどい話)が、 平成4年 からは「警備業等の健全育成」という項目を設けている。)

続・航海日誌(9/11付)(webmaster注:引用部末尾の括弧書きは、原文ではフォントが小さくなっています)

ここで引用されている保安部長答弁の、「警備営業取締法あるいは警備営業を規制する法律というのが最も正確な表現であろうかと思いますが、しかし、ほかの法律を見ましても、倉庫業法とか、何々業法とか、そういった例も多分にございますので、一応平凡な名称を採用したというわけでございます」ですが、webmasterはbranchさんのような育成のスタンスを見るのではなく、法制局で倒れたのではないかという別のうがち方をしてしまいます。

というのも、ここでわざわざ「最も正確な表現であろうかと思います」などと言えば、一般の国会対応の常識からすれば、わざわざ法案修正の口実を与えるだけであり、好んでそのようなことをするはずがないのです‐質問者の山本委員は野党(日本社会党(当時))議員なので、なおさら。それをあえて言ったのは、警察庁官僚が本心からかく思い、そのように名付けたかったことの表れに見えてなりません。

これは完全にwebmasterの憶測でしかありませんが、警備業法案策定時に、警察庁担当者は、「警備業法だと育成のニュアンスがでるが、警備業を育成したいなどとは考えていないのでそのような名称は不適当。よって、法律名は警備営業取締法あるいは警備営業を規制する法律としたい」と法制局で説明したのではないでしょうか。それに対して法制局の参事官から、

  • 「○○業法」には育成のニュアンスなどない。
  • 「○○業を規制する法律」は「規制する」と規定することに法的な意味がなく(=「○○業法」でも同じこと)認められない。

との指摘を受け泣く泣く断念したと(「警備営業取締法」については後述)。上記の答弁には、かく法制局に押し切られた警察庁の無念、ことによっては議員修正で直して欲しいという下心(笑)の臭いをwebmasterは感じるのです。

続いて「取締」です。

次に、御指摘の2点目。

「○○業」を位置づけてその合法的運営を前提とするのであれば、取締法と冠することと語義矛盾をきたすのではないか

こちらについては、そうではないと考えています。廃止法令や現行法令でも既に題名が改められているものですが、ざくっと検索したところ、過去には次のような「業+取締法」が存在しました。(丁寧に探せばもう少しありそうな気がします。どうでしょうか?>検索のえらいひと)

(略)

すなわち、パターン化すれば

  1. ○○業取締法 → ○○業法    : 業者を悪者扱いしないとの姿勢を示す
  2. ○○業取締法 → ○○取締法    : 取締りの対象を業者以外にも広げる
  3. ○○業取締法 → ○○業規制法    : 単に取り締まるだけでなく自主的な健全化を促す姿勢を示す

ということで、「取締り」とは、典型的には例えば「犯罪の取締り」と言うように非合法なものを客体としつつも、それだけでなく、(1)及び(3)から読み取れるように、是正すべき"悪者"(違法・不当であるもの又はともすれば違法・不当にわたるおそれがあるもの)について所要の措置を講ずる、といった概念であるように思われます。したがって、「取締り」と「規制」は作用においてはおおむね重複するが、前者は対象をより悪性の強いものと見てこれを抑圧するという強い姿勢を示すとのニュアンスを帯びている、というのが、当面の私の解釈です。(霞が関のどこかに存在するであろう考え方ペーパーには違うことが書いてある可能性は高いですが、(゜ε゜)キニシナイ!!)

続・航海日誌(9/11付)

法制局での整理を知るわけではないのであくまで管見ですが、事実として「業+取締法」が現存していないということは、かつてであれば問題ないとされていたこの種の名称は、現時点では(webmasterの認識と同じ理由によるものかはさておき)問題であるというように受容されるようになっていったのではないでしょうか。言い換えるなら、branchさんが1から3として整理されたような理由があって変わったのではなく、変えた原因そのものは「業+取締法」はなるべく避けるべしとの方針転換であり、ではどう変えたらよいのかという考察の結果が当該整理ということではないでしょうか。

議論の整理として、branchさんの枠組みとは異なる次のような形を考えてみます。

性質/対象態様によらない全て業としての行われるもののみ
(一定のルールに則ることが求められるが)存在には肯定的(a) ○○法(b) ○○業法
存在そのものに否定的(c) ○○取締法(d) ○○業取締法

#法の名称にはヴァリエイションがあります。あくまで典型例ということで。

理念的には「業としての行われるもののみ」が「存在そのものに否定的」という行為があるなら、そこに網をかける法律は(d)に位置して「業+取締法」足り得るということになりますが、問題は、現にそのようなものが存在するのでしょうか、ということになります。一般に「業として」は反復継続性(一回限り、あるいは何回か行っても偶然の結果であれば業にはなりません)・行為主体にとっての主要な目的たる性質(反復継続してごみ捨てをしても「ごみ捨て業」にはなりません)で判断されますが、一般には少なくとも否定されるべきでなくても、そうした性質を持つ場合にのみには好ましくないという行為は、あるとしてもどのようなものなのでしょうか?

このwebmasterの整理で言えば、かつては「業+取締法」とされていたものについて、突き詰めて考えればそれは(d)のみにしかふさわしくないにもかかわらず、実際には(d)でない、あるいは(d)として継続すべきでないものに付されていたため、本旨にふさわしい名称へと変化していったということになります。branchさんの整理をこの観点から再整理するなら、2は(c)として、1と3は(b)として再定義されたということになります。

なぜ1と3という複数の項目が(b)という一項目に収斂されるのか。それは既述のとおり、そもそも3、つまり単に業法とせず業に関する規制法とするのは、おそらくは法制局の採らざる整理であると考えられるからです。「業+規制法」とする立法例は、webmasterが調べた限りでは議員立法である貸金業規制法が初出(風営法改正で同法が「業+取締法」から「業+規制法」へと変わったのは昭和59年改正によりますが、貸金業規制法は昭和58年の制定です)ですが、これは議員立法により初めてそのようなネイミングが採用され、以後は閣法においてもそれが先例となったので例外的に用いられることになったことの傍証ではないでしょうか。

#なお、前回のエントリを書く際には見逃していた「業+規制法」として、特定債権等に係る事業の規制に関する法律(H4-77、廃止済)と食鳥処理の事業の規制及び食鳥検査に関する法律(H2-70)の2法がありました。

ここまで来たら毒を喰らわば皿までで、これまで以上に根拠レスなことを無責任に書いてみましょう。実は、「業+規制法」「業+取締法」は、次に掲げるとおり3つの省庁(旧憲法下の「業+取締規則」を加えれば4つ)に特有のものです。

金融庁(旧大蔵省)
貸金業規制法、投資顧問業規制法、商品取引業規制法(、有価証券業取締法、保険募集の取締りに関する法律、特定債権業規制法)
警察庁(旧内務省)
風営法(、古物商取締法、質屋取締法、旧風営法)
厚生労働省(旧厚生省(旧内務省))
食鳥処理の事業の規制及び食鳥検査に関する法律(、毒物劇物営業取締法、採血及び供血あつせん業取締法、按摩術営業取締規則、鍼術灸術営業取締規則、柔道整復術営業取締規則)
農林水産省
(家畜商取締規則)

#括弧書きは廃止済のものです。

有価証券業取締法、保険募集の取締りに関する法律、家畜商取締規則という3つの例外があることに留保は必要ですが、以上を見てwebmasterの頭の中には、単に「業法」ではなく「業+規制法」「業+取締法」とするのは、

  • 議員立法である貸金業規制法以後の金融関係法律
  • 旧内務省系の法律

に特有の思想であり、その背景にはbranchさんがお書きになられているような、「業」には育成すべきものと必要悪としてなるべく抑制すべきものという二分法的な世界観があるのではないか、という妄想が沸き起こらざるを得ないのです。逆に言えば、それら以外においては、法制局を筆頭にそのような法律名を付けることを不自然だと思う方が霞が関の多数派なのかな、と。国会議員からすれば、そのような小役人の屁理屈など知ったことかということなのでしょうし、旧内務省からすれば、他の経済官庁はそもそも育成すべき「業」しか所管していないではないかということなのでしょう。


トップ «前の日記(2006-09-14) 最新 次の日記(2006-09-16)» 編集