toppage memoranda
(ここはbewaad institute@kasumigasekiの過去ログ倉庫です。コメント等は仕様上受付けを停止しておりませんが、こちらではご遠慮いただければ幸いです。何かございましたら、現行サイトにお願いいたします。)
2006-11-19
■ [economy][pseudos]トンデモ#18:名称より「経済」の語を外すべし
昨日取り上げたようにフリードマンがこの世を去ったわけですが、それを受けて信じられないようなテキストが。
小泉政権は緊縮財政、規制緩和、郵政民営化と新自由主義的な政策をとり、一部とはいえ成功した。
バーナンキ米連邦準備理事会(FRB)議長はフリードマン氏を尊敬しているが、まだその考え方を採用していない。同氏は本丸の金融政策理論の正否を完全には検証できぬまま鬼籍に入ったが、皮肉にもその他の分野で大きく貢献した。安倍政権への良い“教科書”ともなろう。
#フリードマンに関する他の日経の記事についても、kumakuma1967さんがツッコミを入れていらっしゃいます。
小泉前総理の方がバーナンキ議長よりもフリードマンの衣鉢を継いでいるだなんて、そんな世迷言を吐くのは世界広しと言えどもこの世に日本経済新聞社説ただひとつでしょう。Bryan Caplanのエントリを引きます。
Here's what my teacher Ben Bernanke told Milton Friedman on his 90th birthday:
Let me end my talk by abusing slightly my status as an official representative of the Federal Reserve. I would like to say to Milton and Anna: Regarding the Great Depression. You're right, we did it. We're very sorry. But thanks to you, we won't do it again.
(webmaster試訳:連銀を代表してここにいる立場を若干濫用させていただいて、私の話の結びといたします。ミルトンとアンナに次のように申し上げたい。大恐慌に関して、あなた方が正しく、我々は過ちを犯してしまいました。大変申し訳なく思います。しかしあなた方のおかげで、我々は二度と過ちを犯さないでしょう。)
"Bernanke to Friedman"(@EconLog11/17付)
90歳記念に招待され講演するぐらいですから、両者の関係の深さは察せられます。フリードマンの死を受けてバーナンキが何を言っているか(次エントリ参照)、どうせ読んでもいないのでしょう。フリードマンにもバーナンキにも大変失礼な社説を恥ずかしげもなく掲載する日経が最大の経済紙でございと大きな顔をしてのさばっていられる社会だからこそ、アメリカと違って日本では二度目の過ちが繰り返され、さらに今後も繰り返してしまうに違いありません。
■ [economy][BOJ]フリードマンと中央銀行
さて、トンデモな輩の妄言はさておき、この偉大な学者の死に対して、その業績をこの世でもっとも重く受け止めるべき存在たちはどのような発言をしているか、見てみましょう。
Among economic scholars, Milton Friedman had no peer. The direct and indirect influences of his thinking on contemporary monetary economics would be difficult to overstate. Just as important, in his humane and engaging way, Milton conveyed to millions an understanding of the economic benefits of free, competitive markets, as well as the close connection that economic freedoms bear to other types of liberty. He will be sorely missed.
FRB: Press Release--Statement by Chairman Bernanke on the passing of Milton Friedman
日銀の福井俊彦総裁は17日、フリードマン氏の死去について「市場経済の原点のようなところを理論づけした偉大な学者。すべての人々に恩恵をもたらした」と功績をたたえた。訪問先のオーストラリア・メルボルンで記者団に語った。
フリードマン氏は1982年から86年まで日銀の金融研究所の初代顧問に就いていた。福井総裁は「私自身も非常に尊敬していたし、(顧問として)特別の指導を頂いた。改めてお礼を申し上げないといけない」と話し、哀悼の意を表した。(メルボルン=飯山順)
日経「「すべての人に恩恵」・フリードマン氏の功績で日銀総裁」
報道がすべてかどうかはわからないので飯山記者のバイアスかもしれませんが、バーナンキ議長が真っ先に言及している金融経済について福井総裁が何ら触れていないのは、フリードマンの業績をないがしろにしているとしか表現しようのない金融政策運営をしている後ろめたさゆえでしょうか(笑)。彼が金融研究所の顧問であった時代は、日銀は世界でもっとも優秀な中央銀行との評価を受けており、さぞかし指導のし甲斐もあったというものでしょう。
それが今となっては(以前紹介しましたが)次のようなことを言われる始末。お礼を言われたところで、「君らは破門だ。もう私とは無関係ということで」とでも草葉の陰から返されてしまうんじゃないでしょうかねぇ(笑)。
(インタビュアー)私たちは今日もまだ大恐慌という戦争と戦っているのですか。
(フリードマン)そうです。ある意味で私たちは未だに大恐慌という戦争と戦っているのです。新たな大恐慌が起きること、これは誰もが一番心配していることです。さらに私たちは歴史から学んでいます。ただ、日本で今日起きていることを考えると、これはちょっと疑わしいですが(笑)。
>小泉前総理の方がバーナンキ議長よりもフリードマンの衣鉢を継いでいる
ここ受けましたw。
でもこれが左右問わずメディアの共通認識だとは情けない限り・・・。
小泉前総理とパーナンキ議長については、webmasterさんのおっしゃるとおりだと思います。ただ、それにつづく、「同氏は本丸の金融政策理論の正否を完全には検証できぬまま鬼籍に入ったが」という部分には、私は100%日経新聞に同意します。
いうまでもなく、昨日から申し上げているように、「通貨の流通速度」についてです。さらに付け加えるならば、マネーとは何なのか、どういうマネーを対象として政策を進めていくべきなのか、という点についても、あいまいとしたまま世を去られたと私は思っています。
この2点の回答さえあれば、金融政策に関する議論も明確化され、ひいてはwebmasterさんが、リフレに関し強く主張する必要もなく、淡々と政策が実行されたでしょうに残念ですね。
また、大恐慌に関するフリードマン教授の著作についてですが、大恐慌の原因の決定版とする評価もある一方で、通貨の流れがいわば「止まった」大恐慌時には、金融政策は主戦略とはなんりえなかった、少なくとも金融政策だけでは、その回復は不充分だった、との見方もありますよね。先日同様にご高齢で亡くなられたガルブレイス教授とか。
TBありがとうございました。素人の上、bewaadさんと違って、ろくに勉強してないので、並べてみられると恥ずかしい気がします。(別途:経済学については高校程度の知見しかないとも白状してますのでお許しください。)とりあえず、このブログとそこにつらなっている様々な言説に感謝です。
某新聞社については、ひたすらに自己と小泉政権の正当化をしたいがために偉大な経済学者の死を利用しようとしているようにしか見えませんでした。彼の書いたものやそこから派生した言説を目にして、彼の偉大さをわかった人間なら、追悼文を自己正当化のために出すなんてできません。このような行動の影にあるのが学者への敬意と自己正当化の欲求だとすると、フリードマンは素人でもわかるほど偉大な学者ですから、それだけ自己正当化のインセンティブが強いという事です。ひょっとしたら某新聞社はすでに追いつめられているのではないでしょうか。
儒教にしろキリスト教にしろ、海外のイデオロギーを輸入するのは
熱心だけど、なぜか、いつの間にか、中身がなんか全然別物になって
しまい、どれもみんな日本教になっちゃうという自称ユダヤ人の説が
ありましたけど、経済学も同じですなぁ(笑)フリードマンの主たる
業績はマネタリズム以外にありなんて、常人では思いもつかないし、
福井さんと某中銀が常日頃フリードマンを尊敬してご指導いただい
ていたなんて、噴飯物というか脱糞ものというか・・・
同じことはケインズやシュムペーターにも言える気がします。
確かに大学のテストは、ケインズ=総需要政策、シュムペーター=創造的破壊、フリードマン=マネタリズム・選択の自由、とだけ覚えていれば単位くれたような覚えもありますが。
>すなふきんさん
金融政策を見落としている(したがって小泉前総理とバーナンキ議長を比較しようとも思わない)のが大半では(笑)。どちらにしても救いのない話ですが。
>元経済学部生さん
ご指摘の点はそのとおりかと存じます。
他方、まさにそうした不備を受けフリードマンの議論を承継・発展させてきたのがバーナンキら(k%ルールからインタゲへ、大恐慌時の国際比較)ということで、今後とも同様に研究が積み重ねられ、そのうち乗り越えられる壁だということではないでしょうか。
>kumakuma1967さん
某新聞社が追い詰められているという自覚があればいいのですが、単に便乗した、という以上のものではないのだと私は考えています。現に世の風潮はまだまだ日経的(あっ、いっちゃった(笑))なものの見方が大多数でしょうし、裏返しでのケインズへの乱暴な否定的評価にしても、意図があってというより単に無知なだけなんだろうなぁ、と。
>銅鑼さま
フリードマンがノーベル賞をいかなる理由で受賞したのか、追悼記事を書くぐらいならチェックせえといいたいですよね(笑)。某総裁&某中銀については、まったくもっておっしゃるとおりなのですが、なんでそういうところだけ世界中の他の中央銀行とあえて違う道を選ぶのか、70年代後半からの10年間を見るに、国民性ではないと信じたいところではありますが・・・。
追記
フリードマンのノーベル賞受賞の際のコメント、参考までに掲載いたします。
The Sveriges Riksbank Prize in Economic Sciences in Memory of Alfred Nobel 1976
"for his achievements in the fields of consumption analysis, monetary history and theory and for his demonstration of the complexity of stabilization policy"
Milton Friedman
http://nobelprize.org/nobel_prizes/economics/laureates/1976/index.html
>ばたーかっぷさん
ケインズは総需要政策、というだけまだ大学はマシなのでしょう。世間的には、公共事業ですからねぇ・・・。
>bewaadさん
>某総裁&某中銀については、まったくもっておっしゃるとおりなの
>ですが、なんでそういうところだけ世界中の他の中央銀行とあえて
>違う道を選ぶのか
いやいやw、アメリカの財政黒転とかユーロ加盟の赤字3%条件と
かで必死にバスに乗り遅れまいと、事実上のデフレの最中に不良債
権を見て見ぬ振りをして増税・歳出削減に走った某官庁も負けては
いません。なのにインタゲは嫌いらしい(理由が金利上昇でプライ
マリバランスがどーしたこーしたという算数できない情けなさw)
>We're very sorry.
>大変申し訳なく思います。
「残念なことです」というニュアンスかと思います。
>銅鑼さま
ぐはっ。そういう例もありましたねぇorz。
いい例を探すなら、こと貿易障壁の除去については、一部に問題はあるにせよ、総じて他の先進国よりもよくやっていると思うのですが・・・。
>読者さん
その前の"we did it."を考えると、エントリのようなニュアンスかなと思いました。これが"I'm very sorry."であれば、「残念なことです」という当事者の立場から一歩身を引いた趣旨かなとは思うのですが、どうでしょうか。