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2006-12-02
■ [economy][BOJ]2005年度GDP統計下方修正
内閣府が1日発表した05年度国内総生産(GDP)確報によると、物価変動の影響を除いた実質GDPは前年度比2.4%増で、従来の公表値の3.3%増から0.9ポイント大幅に下方修正した。名目GDPも1.8%増から1.0%増に、0.8ポイントの下方修正をした。
工業統計表など最新の基礎資料を取り入れて再計算した結果、個人消費は飲料などの消費が少なかったことが分かり、2.6%増から1・9%増に下方修正された。設備投資も産業機械などが伸び悩んだため7.3%増から5.8%増に、大幅に下方修正された。
05年度は従来、実質GDPの成長率がバブル崩壊後に初めて3%を超えた「力強い成長」とされた。しかし、1年もたたないうちに、確報値では、消費税率が5%に引き上げられる直前の好況期(96年度)の成長率(2.9%)も下回った。
GDPが下方修正されたことから、日本経済全体の需要と供給力の差を示すGDPギャップ(需給ギャップ)が、「最近もマイナス圏にあるのではないか」という見方も浮上している。新家義貴・第一生命経済研究所副主任エコノミストは「GDPギャップがマイナスで供給過剰の状態なら、最近の賃金や物価の上昇が鈍いことの説明になる」と話している。【尾村洋介】
だからいわんこっちゃない、ということですねぇ。ちなみに尾村記者がGDPギャップに言及しているのは、次のような記事を11/20に書いているからでしょう。
内閣府は20日、日本経済全体の需要と供給力の差を示すGDPギャップ(需給ギャップ)が7〜9月期に0.4%になったと発表した。3四半期連続のプラスで、プラス幅は4〜6月期の0.3%から0.1ポイント拡大。デフレ脱却に向けた国内経済の改善が続いていることを示した。GDPギャップは、実質のGDPと潜在的な成長力の差を示す。プラスならば、供給過剰・需要不足が解消され、物価が上がりやすい環境になったことを示す。
GDPギャップはバブル崩壊後、消費税率引き上げ前の駆け込み需要があった96年10〜12月期と97年1〜3月期を除き、マイナス基調が続いたが、05年10〜12月期に0%、06年1〜3月期からプラスとなった。【尾村洋介】
2006年に入ってからどう変化しているかは明らかではありませんが、2005年度の下方修正での減額分と同じだけその後のGDPが低かったとすると、505.12兆円から503.37兆円で▲1.75兆円、その修正前GDPに対する割合が0.35%ということになりますので、潜在GDP成長率についての内閣府の推計を前提にするとしても、本年7〜9月期にようやくプラスに転じたということになります。
#webmasterの主張する潜在GDP成長率(2%台半ば〜3%)が正しいのであれば、当然ながらまだマイナスです。
GDPギャップといえば、本年行われたとある政策判断の際にも言及されていました。
【問】
本日の金融政策決定会合での議論と量的緩和政策解除に至った経緯について、ご説明を頂きたい。【答】
本日の決定会合では、大きく分けて2つのことを決定した。1つ目は量的緩和政策の枠組みを解除した。つまり、金融市場調節方針を変更したということである。もう1つは、今後、いわゆる金利を軸とした金融政策を行っていくにあたって、新たな金融政策運営の枠組みを導入した。すなわち、透明性確保を意識しながら、新たな枠組みを導入した。(略)
物価面では、生鮮食品を除く消費者物価指数の前年比はプラスに転じている。経済全体の需給ギャップが緩やかに改善を続けており、ユニット・レーバー・コスト(単位当たり労働コスト)の動きを見ても、下押し圧力は基調として減少している。加えて、企業や家計の物価の先行き見通しも上振れてきている。このもとで、消費者物価指数の前年比は先行きプラス基調が定着していくとみている。こうしたことを踏まえて、「消費者物価指数(全国、除く生鮮食品)の前年比上昇率が安定的にゼロ%以上となるまで量的緩和政策を継続する」というかねてからの約束の条件は満たされたと判断した。
総裁定例記者会見(3月9日)要旨(webmaster注:強調はwebmasterによります)
(問) 消費者物価指数が7か月連続でプラスになっていることが今回の解除の1つの大きな要素になったと思いますが、そこには原油の高騰もかなり反映されています。その消費者物価指数そのものが、来月に基準が見直されると今の水準より少し下がるだろうという見方ですが、今後デフレに戻る危険性、可能性はもう消えたと言い切って良いのかどうか、お考えを聞かせて下さい。(略)
(答) 消費者物価指数は安定的にプラス基調でこのところ推移してきています。この先も、おそらくプラス基調を維持するだろうというのが私どもの基本認識です。その判断の最も大きな根拠は、経済情勢判断について景気は回復の段階を過ぎて拡大の過程に入ったことです。判断は、上方修正したわけではなく、局面の変化、つまりマイナスの需給ギャップをほぼ解消して需要超過の経済に入ってきているという判断ですので、経済がマクロ的に見て需要超過の経済に入ってくれば、それだけ物価の上昇圧力は少しずつ増してくる、ということです。もう1つはコスト要因で、いわゆるユニット・レーバー・コスト(単位当たり労働コスト)がまだマイナスを続けていますが、雇用・賃金の回復が続く中、これが物価を引き下げる力はだんだん減衰してきています。この両面から見て物価の基盤は刻々と強くなってきていると思っていますので、物価が下落し再び景気がどんどん不況の方向に向かうという意味でのデフレに経済が逆戻りするリスクは、ほぼ解消しているのではないかと思います。8月に消費者物価指数の基準改訂があり、おそらく表面的な物価上昇率は一旦下方に修正されると思いますが、物価の動きのトレンドそのものを見る限りでは、今申し上げたような感じで動くのではないかと思います。(後略)
総裁定例記者会見(7月14日)要旨(webmaster注:強調はwebmasterによります)
CPI下方改訂に続いて、またもや金融引締めへの転換の根拠として主張されたことが覆されたわけです。日銀の失政が、またひとつ明らかになったということで。
■ [economy]「真の失業率」推計最新版(2006-10現在)
年月 完全 真の 高齢化等 15歳以上 就業者数 完全 真の 高齢化等 失業率 失業率 補正後 人口 失業者数 失業者数 補正後 1990 2.1% 3.2% 10,089 6,249 134 204 1991 2.1% 2.4% 10,199 6,369 136 155 1992 2.2% 2.2% 10,283 6,436 142 142 1993 2.5% 2.8% 10,370 6,450 166 183 1994 2.9% 3.4% 10,444 6,453 192 228 1995 3.2% 4.0% 10,510 6,457 210 266 1996 3.4% 4.1% 10,571 6,486 225 276 1997 3.4% 3.8% 10,661 6,557 230 262 1998 4.1% 5.1% 10,728 6,514 279 348 1999 4.7% 6.3% 10,783 6,462 317 435 2000 4.7% 7.0% 10,836 6,446 320 485 2001 5.0% 7.9% 10,886 6,412 340 551 2002 5.4% 9.4% 10,927 6,330 359 660 2003 5.3% 10.0% 10,962 6,316 350 700 2004 4.7% 10.0% 10,990 6,329 313 705 2005 4.4% 9.8% 11,007 6,356 294 688 2005/Q3 4.3% 8.9% 11,008 6,417 286 628 2005/Q4 4.3% 9.8% 11,015 6,356 287 694 2006/Q1 4.4% 10.9% 11,014 6,283 286 766 2006/Q2 4.2% 9.0% 11,014 6,418 280 631 2006/Q3 4.1% 8.9% 11,021 6,426 273 627 年月 完全 真の 高齢化等 15歳以上 就業者数 完全 真の 高齢化等 失業率 失業率 補正後 人口 失業者数 失業者数 補正後 2005/11 4.4% 10.0% 11,016 6,344 292 706 2005/12 4.0% 10.4% 11,012 6,315 265 733 2006/1 4.5% 11.1% 11,013 6,269 292 779 2006/2 4.2% 11.0% 11,006 6,272 277 772 2006/3 4.4% 10.6% 11,021 6,308 289 745 2006/4 4.3% 9.6% 11,002 6,368 284 673 2006/5 4.1% 8.5% 11,015 6,448 277 602 2006/6 4.1% 8.8% 6.5% 11,025 6,438 278 618 449 2006/7 4.0% 9.0% 6.6% 11,020 6,421 288 632 454 2006/8 4.1% 8.9% 6.4% 11,019 6,427 272 625 443 2006/9 4.2% 8.8% 6.5% 11,024 6,431 280 624 446 2006/10 4.2% 8.8% 6.3% 11,030 6,437 281 622 434 2005/10 4.5% 9.1% 11,016 6,409 304 641 2004/10 4.7% 9.7% 10,997 6,352 311 686 2003/10 5.1% 9.8% 10,979 6,337 343 690 2002/10 5.4% 9.3% 10,952 6,355 362 654 2001/10 5.2% 8.2% 10,907 6,405 352 575 2000/10 4.6% 6.3% 10,855 6,508 314 439 C/(B+C) D/(B+D) A B C D=Ax0.64-B (直近月次ボトム) 5.8% 11.6% -- 6,193 385 818 (03/3,4)(04/2,05/2) (03/2) (03/4) (05/2) (注) ・単位は、%を付したものを除き、万人。 ・ソースは総務省統計局の「労働力調査」(http://www.stat.go.jp/data/roudou/2.htm)。 ・月次データは原数値を用いている(季節未調整)。 ・「真の」値は労働力人口比率が0.64(直近ピーク(1992年))であると仮定した場合の値。 ・「高齢化等補正」についてはhttp://bewaad.com/20060729.html#p02を参照のこと。
#過去の計数は以下のとおりです。
現在、潜在GDPと呼ばれているものは、政府日銀の説明を読めば分かるのですが、実は「平均GDP」と言った方が宜しい物でして、日本の資源を適正に利用して実現できるというフツーのイメージに対応したものではありません。ですから低成長が続けば潜在成長率は下がり、高成長が続けば上がる。しかも、低成長期の後に少し高めの成長が実現するとたちまち超過需要モドキが出現するのです。さらに不思議なことに(って実は当然だけどw)、そんな状態が続くと潜在GDPも成長率も高くなり、いつの間にか超過需要は消滅するというおまけ付き(藁)要するに、株屋の好きな移動平均チャートと本質的に変わらないしろもの。こんなもんで超過需要があるから、デフレだけど利上げだなんて、なにを寝ぼけてるんでしょうな(南無
まあそもそもGDP統計自体、2年後の確報に至る間に計数がどんどん動いていくものだし、GDP統計では補足出来ない取引だって結構あるものだし、QEで使われる家計調査を引き合いに出すまでもなくいろいろと問題がある指標なので、一喜一憂してもしょうがないかと。ちなみに俺が学生時代に受けた経済統計担当の教授曰く「統計はアート」なんだそうだ(笑)
といってしまうと、潜在成長率導出の議論自体がナンセンスになりかねないけど、まあそこはそれとして。
だから、エネルギー食料抜きのCPIでレンジプラスマイナス1%幅くらいのインフレターゲット(目標2.5で1.5から3.5幅)で良いだろうと100万回(以下略
日銀も以前は文字通りの意味で潜在GDPを計測してたはずなんですが、いつのまにやら平均の意味の方で計算するようになったんですよね。
前者だと論理的にはGDPギャップがプラスになることが無いんで、世間へのイメージの悪さを嫌ったんでしょうか?
これはOECDとかに合わせてるんですな。確かに自然失業率の変動が現実の失業率の大部分を占めてることを認めざるを得ないような大陸欧州の話にはこっちが安全でしょう。下手に自然失業率を決め打ちすると結局過度のインフレを招くから。
でも、その場合もインタゲ汁でおわりなんですな。要するに、インタゲとかマッカラムルールの強みは名目変数しか見ない点。実質変数に下手な目標立てると、(GDPなら)過大推定でインフレを招いたり、過小推定ではせっかくのイノベーションの成果を実現できなかったりしちゃう。
上げ潮も「名目上げ潮」なら賛成なんですが、「実質上げ潮」はナンセンスなんですなぁ。政治家や役人がイノベーションを推進できるはずがないわけで・・・
>銅鑼さま
なんでオークン法則からの推計とか、そっちの方が無視されるのかなぁと疑問だったのですが、OECD標準とは知りませんでした。それこそこういう点でこそ、某総裁が言ったように、「おーべーのけいざいがくはわがくににはただちにてきようできない」とか言ってほしいもので。
なあんてことだと、胡散臭げに見られてしまうからこそのインタゲでありマッカラムルールなんだなぁと改めて思いました。
>通りすがりさん
デフレは解消しないし、失業率の改善は微々たる水準ですし、といったあたりで公式潜在成長率推計を疑うべきなんだと思うのですけれどもねぇ。本当にGDPギャップが解消しているなら、このような徴候が見られるはずもなく。
>unknownさん
前者でも理論的にはプラスになることはあり得るのではないでしょうか。完全雇用=全員雇用ではないわけですし。
>bewaadさん
クルッグマンやバーナンキの日本の分析を読んで味噌。本文には出てないが脚注に「OECDとかIMFの推計を信ずるべからず」とはっきり書いてあるよ。そもそも総需要政策が有効なほど完全雇用から下方に乖離したら、ああいった推計は意味ないんですけど、まあ国際機関も要は官僚機構であり(大藁
>bewaadさん
あー、俺の書き方じゃ誤解されちゃったかな(汗)
俺がいいたかったのは単に「GDP統計自体、技術的にみて結構いいかげんな統計なのよー」ってことだけで。ま、500兆円もの取引を数え上げる訳にもいくまいて(笑)
ただ、そう断言しちゃうと、次に「じゃ、そのGDP統計を使って分析する潜在成長率の分析ってナンセンスなの?」っていう問いを出すことが出来ちゃう。
#もちろん公式であろうとなかろうとそんなのおかまいなく、ソースとしてのGDP統計の信頼性という意味でね。
でもそこまでいうのもヤポってもんでしょ。限界を知りつつ使えばいいだけってものでね。
俺は別に潜在成長率の議論自体は有効なものだと思っている。ただGDPに限らず経済統計は全て何らかの問題を抱えている。その限界は限界として知っておいた上で話をするべきだというだけのこと。
#ま、そんな経済統計の授業の1時間目で出てきそうな話をしたかっただけ。
>銅鑼さま
誤解を招く書き方で失礼しました。「平均」だということは知っていたのですが、大陸欧州を前提にすればそれなりに合理的だ、というところに思いが至っていませんでした、ということです。なんで問題があまり指摘されないのかと不思議だったのですが、大陸欧州では問題ではない、英米ではそもそも潜在成長率が政策運営に当たって重要な意味を持つような状況にない、ということなんだなぁ、と蒙を啓かれた思いです。
>通りすがりさん
こちらも誤解を招く書き方だったような気がorz。
GDP統計の問題や、さらには潜在成長率推計の問題があるからこそ、物価やら失業率やらといったほかの指標を合わせ見ていかなければ間違いやすいということが申し上げたかったわけで、つまりは同じことを違うように表現していたのかな、と。
bewaadさん>
まさに仰る通りかと。
でもって様々なひとびとが様々な角度から丹念に指標を精査・分析していく作業、これこそが本当の経済分析につながる、と恩師が教えてくれた日々を懐かしく思い出します。
>通りすがりさん
わたくしなんぞまったくの素人ですから、できることは限られてはいますが、せめて姿勢だけでもきちんとしたいと思います。