archives of BI@K

CSS: default alternative
(要cookie)

toppage memoranda

(ここはbewaad institute@kasumigasekiの過去ログ倉庫です。コメント等は仕様上受付けを停止しておりませんが、こちらではご遠慮いただければ幸いです。何かございましたら、現行サイトにお願いいたします。)

2005|01|02|03|04|05|06|07|08|09|10|11|12|
2006|01|02|03|04|05|06|07|08|09|10|11|12|
2007|01|02|

2006-12-04

[economy][book]門倉貴史「統計数字を疑う」

これまで何度か当サイトでも言及してきましたが、改めて取り上げてみます。といっても、既に多くの方が取り上げられており、高い評価を受けていることをご存知の向きも少なからずいらっしゃるでしょう。単一の統計としてはもっとも紙幅を割かれて紹介されている(pp172-206)CPIの上方バイアス(ボスキンバイアス)については、当サイトでも何度となく論じておりますし、出産の高齢化の出生率に与える影響(第1章末)についても、最近あれこれ書いたところです。えっ、何が言いたいんだって? webmasterが当サイトで書いていることはそれほどデタラメではないのですよ、と(笑)。

多くの統計が取り上げられている本書ですが、一般論としての統計にまつわる諸々の指摘もさることながら、シンクタンクのエコノミストである著者の強みが生かされている各種経済効果試算の内幕(第3章)、及び著者の先行研究の系譜に連なるBRICsに関する言及(第4章後半)や地下経済に関する考察(第5章)にこそ特長があるといえましょう。それらについては、著者のサイトのBRICs経済のページ地下経済のページで関連する話題をフォローすることができるのもうれしいところです。

webmasterに固有の事情を申し上げれば、先に触れたCPIの話や輸入デフレ論の批判的検討(第2章末)、戦後最長を謳われる今般の景気回復の弱さの検証(第4章冒頭)といった部分は、自説(といってもあくまで借り物ですが)の補強としてうれしい限りです。多くの人が本書を読み、メディアでの経済関連記事へのリテラシが高まって、経済を巡る議論の風向きが変わることを願って止みません。リフレ政策を脇に置くとしても、刑務所の存在が社会保障の貧困を補っているのではという仮説(pp68-74)や、サービス残業の削減が経済全体にもたらす好影響の分析(pp81-88)については、こういうことこそ経済財政諮問会議で議論されるべきだと強く思います。

といって手放しで褒めるだけでは、自説に有利な不当を埠頭に持ち上げているのではと受け止められるのも不本意ですから、webmasterが気付いた難点も指摘しておきましょう。ニューヨークの治安回復の説明として用いられる割れ窓理論‐{{'<q>街にある建物の窓ガラスを一枚でも割れた状態で放置しておくと、外部からその建物は監視が行き届いていないとみなされ、次々に窓ガラスが割られていくというもの。/(略)/この理論に従えば、万引きや違法駐車など小さな犯罪の放置は、将来的に凶悪犯罪の多発を招き、治安を大幅に悪化させることになるので、厳しく取り締まらなくてはならない</q><cite>(p60)</cite>‐について、筆者は批判的検討を加えています。

その結果、ニューヨークの治安回復の要因としては、割れ窓理論に基づく治安対策よりも景気の好転や少子化の影響が大きいのではないかとの結論を導いていますが(p64)、「ヤバイ経済学」を読んだ後では、食い足りないとの感が否めません。「ヤバイ経済学」では景気ではないとの論証がなされていますし、少子化に目をつけたならばもう一歩進めて・・・って、後は同書をお読みいただくとして。本書の出版が後であることを考えると、なおさら残念な気がします。

そういえばもうひとつ、世界全体の経常収支は赤字であること(pp165-167)の理由としては、クルーグマンの名を挙げていることもあり、宇宙への貿易赤字仮説を取り上げてほしかったですねぇ(笑)。

本日のツッコミ(全2件) [ツッコミを入れる]
通りすがり (2006-12-04 23:53)

2日付のコメント欄でGDP統計の限界に言及した通りすがりです。
門倉氏の著作についてはあいにく読んでいないのでコメント出来ませんが、どんな統計にも限界があることをこれらの本で平易に教えてくれるようになったことは喜ばしいことです。ご紹介ありがとうございました。今度読んでみたいと思います。

bewaad (2006-12-05 05:42)

>通りすがりさん
幸いにして新書で手軽ですから(価格も、語り口も)、ぜひとも読んでいただければと思います。自信を持ってお薦めできます。


トップ «前の日記(2006-12-03) 最新 次の日記(2006-12-05)» 編集