「華麗なる一族」の粗漏なる脚本
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民放ドラマらしからぬ重厚な雰囲気(テーマ曲をクラシックにするなど、明らかにNHK大河ドラマを意識していますよね)といい、主役級おっさん俳優(北大路欣也、津川雅彦、西田敏行、武田鉄也、笑福亭鶴瓶ら)を贅沢にもずらり並べた配役といい、なかなか見ごたえのあるドラマなのですが、webmasterには不満な点があります。「花より男子2」に抜かれたという視聴率・・・にはあまり関係がなくて、むしろwebmasterが満足するような脚本だとかえって視聴率が下がるかもしれませんが(笑)。
実のところ、webmasterは原作を読んでいないので、ことは脚本の問題ではなく、原作に内在するものなのかもしれません。しかし、そうであったとしても、本ドラマにおいては万俵大介(北大路欣也)ではなく万俵鉄平(木村拓哉)を主役に据えたことから‐そして、万俵鉄平を父親の野望の単なる犠牲者ではなく、ある種のライヴァルとして描いたことから‐、この問題は物語の面白さそのものに大きく関わるものへと変わってしまったといわざるを得ないでしょう。
その問題とは、万俵鉄平が万俵大介にとって脅威に感じられるほどの経営者としては描かれていない、ということです。
万俵大介にとっては万俵鉄平は阪神銀行よりも大切ではないという理由だけでつぶされていくなら、万俵鉄平の経営者の能力は極端に言えばどうでもいい問題といえます。世の中の一般的な価値観として、自分の仕事のために息子を犠牲にするなんてひどいよね、というものがあり、それは血が繋がっていないからなのか、という「納得」の材料を読者なり視聴者なりに提供できるなら、作品としては上出来だといえましょう。
ところが、既述のように万俵鉄平を中心に据え、さらにはその父親とのライヴァル関係を描くのであれば、万俵鉄平が極めて有能な経営者であり、その点にこそ万俵大介が万俵敬介の血を見出して嫉妬する、ということでない限り、話のスケールがあまりに矮小化されてしまいます‐はっきり言えば、親子(万俵敬介・万俵大介)の痴話げんかになってしまいます。
万俵大介から万表鉄平を見たときに、万俵鉄平の顔がいくら万俵敬介に似ていようとも、万俵鉄平が手を叩くと万俵敬介がそうしたときにのみ反応した錦鯉が反応しようとも、万表鉄平が自らの不道徳な関係にことさらに異議を唱えても、経営者としては自分が勝っているという自信があるのであれば、それらはみな取るに足らないことばかりでなければならないはずです。そのような「敬介らしさ」を漂わせる人間が自らの足元にも及ばないということで、かえって優越感の材料として描くべきなのかもしれません。
でなければ、そのような経営者としては無視できる要素に拘泥して必要以上に万俵鉄平に関心を示す万俵大介とは、しょせんは器の小さな経営者だということになってしまいます。阪神銀行がどうのこうのといっても、それはあくまで建前であって、本音は妻を寝取られたことに復讐したいだけなんでしょ、と。
万俵大介を私怨‐発端はさておき、今となっては明らかに彼は万俵鉄平個人を敵視するようになってしまっています‐を最優先する人間として描いて、かつ万俵鉄平の敵役として十分に大きな存在とするのであれば、その私怨を彼自身の自我の根本に結び付けるより他ありません。つまりは、自らが父親(万俵敬介)を経営者として凌駕したのだ、という心の平安を脅かすのが万表鉄平であるという設定です。
自我の根本を考えるに、万俵大介は、万俵敬介がそれほど重要視してはいなかった阪神銀行を財閥の中核に位置づけ、その経営に全力を注ぐことで万俵財閥を拡大したことによって、万俵敬介よりも自分は男として上なのだと証明する人生を歩んできたわけです。自分の妻を寝取られたことにしても、そのように自分が「格上」なのだと認識することで、それに比べれば瑣末な問題だと整理をつけていたはずです。
にもかかわらず、万俵敬介の血を直接引く万表鉄平が、よりにもよって万俵敬介が執心した阪神特殊製鋼に拠って、経営者として自らよりも上なのではという気にさせる‐したがって、やっぱり自分は父親よりも「格下」だったのではとの疑念を掻き立てる‐存在に成長したからこそ、全力を尽くして万俵鉄平を叩き潰さねば、彼自身の人生の意味がなくなってしまうという設定にすることができます。万俵鉄平の経営者としての能力をきちんと描くことは、このような重要性を帯びざるを得ません。
では劇中での万俵鉄平の描かれ方はどうでしょうか。よき家庭人であり、技術者として有能であり、兄弟から頼られる存在であり、社員らと分け隔てなく接する偉ぶらない人間であり・・・ということは描かれはしても、経営者としての凄みといったものはまるで描かれることはありません。「社員らと分け隔てなく接する偉ぶらない人間」で万俵大介のアンチテーゼとしての有能な経営者を描いているつもりなのだとしたら、ちょっと世の中を知らなすぎるのではないの? 仲良しサークルの馴れ合いでもあるまいに。
たったひとつでいいのです。万表鉄平が、経営上の必要に迫られ、自分が嫌悪していたはずの万俵大介流の非情な決断をしなければならない場面を作れば。それを当人や自分を慕う部下に正直に告白して、というのでは今と大差ありませんから、本当は告白して楽になりたいのだけれども、告白してしまっては台無しになってしまうからということでそれもできず、ひとりで心の闇にしまいこんでときとして懊悩し、でもそれを糧に経営者として一皮むける‐そんな描き方ができていれば、ずいぶんと万俵鉄平の人物像にも深みが出、反射的に万俵大介の大きさも引き立つでしょうに。
木村拓哉が、組織のトップに立つ者のそうした色気を自然に滲み出させることができる役者であれば、わざわざ劇中に盛り込む必要はなかったかもしれません。しかし彼は、良くも悪くも個が視聴者に伝わってしまうタレントですから、例えばもっと早くに父親に反発して家から出て、フリージャーナリストにでもなって阪神銀行の暗部を暴くとか、そういった役柄だったらよかったのでしょうけれども・・・。





3月 6th, 2007 at 9:13:56
カミさんが見ているのを横目で見ているだけですが、原作とちがって、あえてキムタクを主演にした段階で、このドラマは失敗です。ベテラン陣がすばらしいだけに、余計目立つのでしょう。あんな軽い専務ではリアリティがなさすぎです。それにしても、オチはちょっと、くだらなさすぎませんか。血液型の検査をやり直せば、簡単にわかったことなんだから。
追伸
moreとか押すと文字化けが激しいです。
3月 6th, 2007 at 10:29:01
bewaad卿のご指摘をうけて、(原作と佐分利信主演の映画を)思い返してみると、鉄平の経営者としての有能さを描ききれてはいなかったのは原作からの弱点でもあったと思います。ただ、高炉建設へのチャレンジがそれにあたっていたわけです。政治家や通産・大蔵省への工作、資金調達、社内世論の統一などですね。これらのやり方は、大介流ではなかったわけで。
takeuchiさま 血液型のオチは、あえて触れないように。
3月 6th, 2007 at 13:09:25
鉄平のちっぽけさは、最終回で明らかとなる大介のちっぽけさに通じています。大介は、鉄平のみならず自分自身をも過大評価していたのです。
3月 6th, 2007 at 14:18:05
字が小さくなってしまって、目が弱くなった私には辛いです。
3月 6th, 2007 at 20:26:18
確かに文字が小さいw 表示では処理できないですね。
ところでトラックバックはどう送ればいいのでしょうか?
とりあえず関連ネタ書きました。
http://d.hatena.ne.jp/tanakahidetomi/20070306#p3
3月 6th, 2007 at 21:16:54
>moreとか押すと文字化けが激しいです。
前のエントリから気になってました。
多分、bewaad卿のフォースの暗黒面が時空を歪めているのでしょう。
ミステリックサインみt(ry
3月 6th, 2007 at 21:43:01
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3月 7th, 2007 at 2:11:15
ドラマは原作よりオーバーになっているぶんさらに軽さは増していますが、鉄平の経営者としての素質は原作でも感じられませんね。
個人的には、キムタクの演技より北大路欣也の演技の方が違和感があるのですがこれって少数派ですかね。
ドラマの脚本が、より器の小ささを強調しているが故にやむをえないのかもしれませんが。
3月 7th, 2007 at 15:14:31
ときに、comments というidが出力されているページ中に存在しないため、[コメント(〜)]というアンカーをクリックしても表示位置が移動しないようです。
3月 9th, 2007 at 6:08:34
>e-takeuchiさん
経営に携わることが嫌いで、技術だけに興味があるようなキャラとして描いていたら、という気はしますけれども>軽い専務。それを木村拓哉が受けるかどうかは別でしょうけれど。
moreは、プラグインを外しました。
3月 9th, 2007 at 6:08:55
>とおりすがりさん
官界工作は義父の、資金調達は三雲頭取の力で、社内世論は仲良しサークルですからねぇ(笑)。
3月 9th, 2007 at 6:09:25
>徳保さん
ちっぽけさを描くのであれば、マクベスのような作りこみの方が適していたのだろうなぁと思います。
3月 9th, 2007 at 6:10:04
>soberさん
一度に全部手が回っておりませんで、遅れての対応となりごめんなさい。このぐらいでいかがでしょうか。
3月 9th, 2007 at 6:12:50
>韓リフさん
そこまで手が回っていませんでした。調べますので、お時間をいただければ・・・。
3月 9th, 2007 at 6:13:12
>yyさん
文字化けを起こさせるフォース・・・あまりにちんけで、私にぴったりじゃないですか(笑)。
3月 9th, 2007 at 6:13:31
>cloudyさん
補足ありがとうございました。こういうことがあるから、今までの自作CSSではfont-sizeに絶対値指定はしていなかったのですが・・・。
3月 9th, 2007 at 6:13:52
>ばたーかっぷさん
そこでやっぱりマクベス路線、ですよ!
3月 9th, 2007 at 6:14:23
>τさん
手探りにてご迷惑をおかけしております。ちょっと調べてみます・・・。