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  • 04/14/2007 (7:33 am)

    プロ野球の経済学V(前編):裏を表にするには・・・

    Filed under: economics, sports ::

    世上、裏金問題が騒ぎとなっていますが。

    329: 名無しさんの冒険  2007/04/13(Fri) 15:19

    (略)

    プロ野球の裏金問題に個人的に興味があります。契約金の上限をオーナー会議で決めたにも関わらず、裏をかいて裏金を作ってまで学生にお金を渡して、選手獲得に励もうとしている球団があります。

    1. 契約金の上限をオーナー会で決める事で、選手の厚生的損得、チームの利益面での損得を経済学的に分析してください。

    2. 裏金を払ってでも有力選手を囲い込もうとするチームが、それを合理的と考える理由を経済学的に説明してください。

    3. 裏金問題をなくすためには、どのような賞罰設計をすればよいのか経済学的視点から制度設計を試みてください。

    4. そのような制度がオーナー会で採択されるのか、されないのかについて論ぜよ

    5. 今回の裏金騒動であなたが「おかしい」と感じた言論を列挙し、その理由を述べよ

    こんな感じでどうでしょ。学生さんの練習問題に使えるかもよ。

    いちごびびえす経済/経済学板「プロ野球の経済学」スレ・レス329

    というわけで、以下webmasterなりの考えを。

    Q1 契約金の上限をオーナー会で決める事で、選手の厚生的損得、チームの利益面での損得を経済学的に分析してください。

    オーナー会議で契約金の上限を定めるとは、カルテルの締結ということになります。すなわち、選手という労働力の買い手である各球団が連携して、あたかも独占企業であるかのように振舞うことにより、価格を引き下げているわけです。

    もともとドラフト制度自体が、独禁法上どうかという法律問題は脇に置くとしても、経済学的に見れば買い手によるカルテルだったわけです。すなわち、ドラフトで指名されれば、選手は指名した球団としか交渉できない(それ以外の球団には入団できない=それ以外の買い手を選べない)ので、その段階で買い手独占が成立し、選手側は他球団と競合させることによる価格の引上げができなくなり、その分だけ価格が抑えられていたわけです。

    名称は自由枠や希望枠など時代により異なりますが、いわゆる逆指名(ドラフト会議前に選手側から球団を指名すること)は、ドラフト会議に先立って逆指名を獲得するための複数球団の競合を可能にするわけですから、つまりはドラフトによる買い手独占を破る効果がありました。ドラフト前には市場における自由競争状態が実現するので、それがなく買い手独占が維持されている状態に比べれば価格を上昇させることになります。

    契約金の上限カルテルは、この価格上昇を抑制するものです。言い換えれば、いわゆる逆指名によりいったんは崩壊したドラフトという買い手カルテルの実効性を回復させる意図を有するものだと言えるでしょう。したがって、「選手の厚生的損得、チームの利益面での損得」としては、

    選手の厚生的損得

    本来自らの能力の対価として得られてしかるべき価格(球団にとってのその選手を獲得することによる限界収入)以下の価格しか得られず、損をしている。

    チームの利益面での損得

    選手を獲得することによる限界収入以下の価格で選手を獲得することができるので、差分が超過利潤となり、得をしている。

    ということになります。

    Q2 裏金を払ってでも有力選手を囲い込もうとするチームが、それを合理的と考える理由を経済学的に説明してください。

    第1問の裏返しとなります。つまり、本来球団は選手を獲得することによる限界収入を支払ってもペイするわけですが、それを買い手カルテルの締結により引き下げているのですから、カルテルによる価格を上回る費用を支出しても、それが限界収入に達するまでは、利益を確保することができるわけです。

    ある球団にとって、もっとも利益が大きいのは、他球団がカルテルを遵守する一方で、自分だけがカルテルを破ってカルテル価格よりほんのわずかに高い価格を提示し、それにより逆指名を得ることです。すなわち、

    自らがカルテルに参加してい(て逆指名が得られず、抽選にな)る場合の事前の期待便益

    =(限界収入−カルテル価格)×抽選により獲得できる確率(=1/競合球団数)

    自らのみがカルテルを破(り、逆指名が得られ)る場合の事前の期待便益

    =限界収入−カルテル価格+α)(4/18訂正)

    ということになります(同一の収入に対しては、球団の違いに関わらず同一の便益が生じるものと仮定)。

    ご覧のとおり、競合球団数の増加により期待便益は1/2、1/3・・・と急速に減少していきますから、相当程度高い水準のαを支払っても割に合うことになります。これが、「裏金を払ってでも有力選手を囲い込もうとするチームが、それを合理的と考える理由」です。限界収入=限界費用が均衡価格となりますから、つまりはα=限界収入−カルテル価格となるまでは、α=裏金を支払った方が得になるのです。例えば限界収入が5億円、カルテル価格が1億5,000万円であれば、3億5,000万円までなら裏金を支払っても割に合います。

    しかしながら、当たり前のことですが、ある球団がカルテル破りをしたというのに、他球団がそれを黙って見過ごすはずもありません。ある球団がカルテル破りをしたにもかかわらず、それを黙って見過ごす場合には、「自らがカルテルに参加してい(て逆指名が得られず、抽選にな)る場合の事前の期待便益」は、他球団が逆指名を獲得するわけですから「抽選により獲得できる確率」がゼロになるわけで、つまりは期待便益もまたゼロです。

    かくて買い手カルテルは崩壊し、裏金が横行するようになったのが現状、ということになるのです。

    (以下後編)

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