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  • 04/15/2007 (4:09 am)

    プロ野球の経済学V(後編):裏を表にするには・・・(続)

    Filed under: economics, media, sports ::

    昨日の続きです。

    Q3 裏金問題をなくすためには、どのような賞罰設計をすればよいのか経済学的視点から制度設計を試みてください。

    昨日申し上げたように、裏金問題とはすなわちカルテル破りですから、それをなくすには、

    1. カルテルを破っても得をしない制度とする。
    2. カルテル自体を止める(存在しないものは破れない)。

    のいずれかということになります。

    前者については、昨日の便益計算を再掲すれば(4/18一部訂正)

    自らがカルテルに参加してい(て逆指名が得られず、抽選にな)る場合の事前の期待便益

    =(限界収入−カルテル価格)×抽選により獲得できる確率(=1/競合球団数)

    自らのみがカルテルを破(り、逆指名が得られ)る場合の事前の期待便益

    =限界収入−カルテル価格+α

    ということになりますが、カルテルを破った場合の期待便益が、

    • 期待収入−カルテル価格+α)×抽選により獲得できる確率(=1/競合球団数)

    となれば、「α×抽選により獲得できる確率」分だけカルテル破りをした際に損をすることになりますから、誰もカルテルを破ろうとはしなくなるでしょう。すなわち、いわゆる逆指名の廃止がこれに当たります。

    #カルテル破りが判明した際に課徴金を課すといった制度も考えられますが、カルテル破りを調べるコスト等を考えれば現実的でないと思いますので、詳述はいたしません。

    後者については、こと裏金問題に限定するのであれば、契約金(初年の年俸等の契約時に取り決められるその他の金銭給付を含む。以下同じ)の上限を撤廃する、ということになります。つまり、選手その他の関係者にいくらでも渡してよいこととすれば、すべては「表金」になりますから、裏金はそもそも存在しなくなるわけです。

    ただ、そもそもドラフト自体がカルテルなわけですから、「カルテル自体を止める」という路線を徹底するなら、ドラフトも廃止して、完全な自由競争にするということになるでしょう。選手が特定の球団と契約を締結するまでは、どの球団も自由に条件を提示することを可能とし、選手はその中からもっともいい条件を提示していると思う球団を選ぶ、というものにすることが、究極のカルテル廃止ということになります。

    Q4 そのような制度がオーナー会で採択されるのか、されないのかについて論ぜよ。

    カルテルを締結している目的は、昨日書いたとおり、「選手という労働力の買い手である各球団が連携して、あたかも独占企業であるかのように振舞うことにより、価格を引き下げ」ることですから、Q3の2つの選択肢でいえば、カルテルを維持してカルテル破りを防ぐ制度を球団オーナーは選ぶことでしょう。現に、2008年実施ドラフトから、希望入団枠を撤廃することが決められました。

    Q5 今回の裏金騒動であなたが「おかしい」と感じた言論を列挙し、その理由を述べよ。

    本来算盤勘定が原因である本件について倫理的な側面からのみ論じることなどもいかがかと思いましたが、もっとも「おかしい」と感じたのは、次のような評価でしょう。

     ◇今年度から希望枠廃止、難しくないはず=解説

     球界は、巨人は、いつまで内輪の論理に拘泥するのか。

     会議の席で、巨人とともに今年からの希望入団枠撤廃に反対の意見を述べた根来コミッショナー代行は、「制度を作るときは十分に研究しないといけない。勢いに流されてはいけない」と語った。一理はあるが、プロ野球が客商売であり、ファンあってのものであることを忘れている。

     西武の裏金問題が起き、アマ3団体が一致して希望入団枠廃止を要望しながら、それでも今年度からの廃止が合意できなかったことを、世間はどう見るか。多くの人は「すでに今年の希望枠で入団する選手と話ができているから、撤廃できないのだろう」と疑念を持ってしまう。イメージダウンの大きさは計りしれない。アマ3団体がそろって失望を表明したのも当然だ。

     また、巨人・清武代表は「希望枠を無くすなら、選手の自由がかなえられないといけない」として、ドラフト改革はフリーエージェント(FA)権取得期間の短縮と一体で論じる必要があるとした。しかし労組日本プロ野球選手会ですら、13日の話し合いで「FAの話はいったん置いて、まずは希望枠を廃止すべき」と、ドラフトとFAの切り離しを容認している。これでは巨人は、今回の問題をFA短縮に利用しようとしていると勘ぐられても仕方があるまい。

    毎日「プロ野球:希望枠08年廃止で一致 球団代表者会議」

    これまで繰り返し書いたことですが、ドラフトというカルテルの中で、それを破る道として機能しているのがいわゆる逆指名ですから、それを維持することは新人選手にとって得になることです(昨日のQ1への回答をご覧ください)。現行の希望入団枠の維持、あるいはその廃止に対する代替措置としてのFA期間短縮(ご存知のとおり、FA宣言した選手は全球団と交渉可能となりますから、これまた一種のカルテル破りとして機能します)は、いずれも選手の利益につながる措置です。それを主張するジャイアンツが、なぜこれほどまでに悪役とならなければいけないのでしょうか。

    アマチュア野球団体や選手会が希望入団枠廃止を主張するのも、当然ながらそれら団体にとって得になるからで、逆に言えば新人選手の利益よりもそれら団体の利益を優先してのことです。具体的には、

    アマチュア野球団体

    入団交渉が自由化され(いわゆる逆指名による実質的なそれも含む。以下同じ)、早い段階でプロ野球球団入団が決まるようになった場合、入団の決まった選手が怪我などを嫌って手を抜くのは困るので、ドラフト会議まで入団が決まらないことが望ましい。

    選手会

    球団の人件費という限られたリソースをめぐって、現役選手と新人選手は対立構造にありますから、入団交渉が自由化され、新人選手に対してより多くの支出がなされるようになった場合、現役選手の人件費が削られる(引退勧奨の増加and/or年俸削減)のは困るので、カルテルによる契約金上限が守られることが望ましい。

    ということになるでしょう。

    もちろんジャイアンツとて新人選手のためのみを思って利他的にそのような主張をしているはずもなく、自らの利益になると考えての行動であることは間違いありません。しかしながら、結果としては、関係者の中で新人選手の利益に沿う発言をしているのは、ジャイアンツしかいないわけです。

    そのジャイアンツをバッシングして、カルテルに基づく各球団・団体の既得権維持があたかも素晴らしいことであるかのように誉めそやす言論というのは、いかがなものでしょうか。まだそれがためにする理屈であるとわかっている(よね?)各球団やアマチュア団体、選手会はましでしょう。そうとも理解せず(少なくともしているようには見えません)、一方的な報道を垂れ流すマスメディアというのは、ねぇ。

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