S&Pによる日本のソヴリン格付けのAAへの格上げ
そもそも紙幣をすればいくらでも償還可能な自国通貨建て国債の格下げの趣旨がよくわからないわけですが、とまれ、引上げはなされました。S&Pのソヴリン格付けに関する説明を見る限り、
政府には課税権限および自国通貨の発行権限があるため、格付決定プロセスにおいて、自国通貨建てと外貨建てとの区別をすることは重要なことです。このような権限があるため、多くの場合、外貨建て債務より自国通貨建て債務の返済能力の方が高くなります。反対に、外貨建て債務の返済の場合、そのために必要な外貨を取得する能力および意志が影響します。この外貨を取得する能力および意志は返済に関わるリスクを増大させる要因となります。
と「自国通貨の発行権限」を認識しているにもかかわらず、どういう状況でデフォルトを起こすと考えていたのか、十分説明を聞きたいものです。考えられるのはインフレによる実質価値の目減りで、国会答弁でそれは含まれないと明言したMoody’sとは異なり、排除するとは明言していないS&Pは(少なくとも、webmasterが知る限りは)、実質価値毀損もデフォルトとみなすという言いぬけは可能ですが・・・。
しかし、今回の格上げに関するリリースを見る限り、どこまできちんとわかってのことかは疑問です。結局のところはプライマリーバランスの回復を見てのことのようですが、例えば将来の懸念事項として、次のような言及があります。
中期的な視野では、ほとんどのOECD加盟国と同様、日本も高齢化問題に直面する。2004年度には、国の社会保障予算の70%に相当する86兆円(対GDP比17%)が高齢化対策に充てられた。社会保障予算総額は2025年度までには対GDP比26%まで拡大するとみられる。政府は2004年の年金制度改革で、公的年金の支給開始時期の繰り下げ、加入者の保険料の引き上げなどに成功したものの、年金制度を長期的に維持するためには、より包括的な改革が必要である。
日本の長期格付けを「AA」に格上げ、アウトルックは「安定的」
高齢化要因による財政危機が深刻だとの見方についてはwebmasterは(当サイトで何度か言及してきたように)懐疑的ですが、それを受け入れるにしても、今後の社会保障関連支出で最も重要な要素として、よりにもよって年金を上げるとは。先日言及したように、年金のうち支出の過半を占める被用者年金については、そもそも国庫負担がない(公務員の共済年金については、使用者としての国の負担がありますが)上、マクロ経済スライドが適用されるので、いくら年金受給世代人口が増えand/or現役世代人口が減ろうとも、国の財政にとっては中立であり、心配する必要などありません。こと年金に関する限り、財政問題となり得るのは基礎年金の国庫負担にとどまるのです。
厚生労働省が発表している試算を見ても、2004(平成16)年度の高齢化対策に充てられた「86兆円」とは年金、医療、福祉などの3分野を指すと思われますが(ちなみに財源をみると、保険料52兆円、公費26兆円、給付・負担差額8兆円)、財政にもっとも影響を与えているのは医療です。以後2025年度までの推計を見ても、むしろ医療の公費負担の比率は上昇しています(2004年度で年金8兆円・医療10兆円に対し、2025年度で年金14兆円・医療28兆円)。この程度のことも分析できないアナリストに格付けされるというのも、変な話ですよねぇ。
#2004年度の「給付・負担差額」について追記すると、年金が8兆円の受取超過(国民から見れば。国から見れば支払超過)になっているということです(医療と福祉などは収支均衡)。その原資は、おそらく積立金の取崩しでしょう。
