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  • 04/25/2007 (7:01 am)

    S&Pによる日本のソヴリン格付けのAAへの格上げ

    Filed under: economy, treasury ::

    そもそも紙幣をすればいくらでも償還可能な自国通貨建て国債の格下げの趣旨がよくわからないわけですが、とまれ、引上げはなされました。S&Pのソヴリン格付けに関する説明を見る限り、

    政府には課税権限および自国通貨の発行権限があるため、格付決定プロセスにおいて、自国通貨建てと外貨建てとの区別をすることは重要なことです。このような権限があるため、多くの場合、外貨建て債務より自国通貨建て債務の返済能力の方が高くなります。反対に、外貨建て債務の返済の場合、そのために必要な外貨を取得する能力および意志が影響します。この外貨を取得する能力および意志は返済に関わるリスクを増大させる要因となります。

    国(ソブリン)の格付記号の説明

    と「自国通貨の発行権限」を認識しているにもかかわらず、どういう状況でデフォルトを起こすと考えていたのか、十分説明を聞きたいものです。考えられるのはインフレによる実質価値の目減りで、国会答弁でそれは含まれないと明言したMoody’sとは異なり、排除するとは明言していないS&Pは(少なくとも、webmasterが知る限りは)、実質価値毀損もデフォルトとみなすという言いぬけは可能ですが・・・。

    しかし、今回の格上げに関するリリースを見る限り、どこまできちんとわかってのことかは疑問です。結局のところはプライマリーバランスの回復を見てのことのようですが、例えば将来の懸念事項として、次のような言及があります。

    中期的な視野では、ほとんどのOECD加盟国と同様、日本も高齢化問題に直面する。2004年度には、国の社会保障予算の70%に相当する86兆円(対GDP比17%)が高齢化対策に充てられた。社会保障予算総額は2025年度までには対GDP比26%まで拡大するとみられる。政府は2004年の年金制度改革で、公的年金の支給開始時期の繰り下げ、加入者の保険料の引き上げなどに成功したものの、年金制度を長期的に維持するためには、より包括的な改革が必要である。

    日本の長期格付けを「AA」に格上げ、アウトルックは「安定的」

    高齢化要因による財政危機が深刻だとの見方についてはwebmasterは(当サイトで何度か言及してきたように)懐疑的ですが、それを受け入れるにしても、今後の社会保障関連支出で最も重要な要素として、よりにもよって年金を上げるとは。先日言及したように、年金のうち支出の過半を占める被用者年金については、そもそも国庫負担がない(公務員の共済年金については、使用者としての国の負担がありますが)上、マクロ経済スライドが適用されるので、いくら年金受給世代人口が増えand/or現役世代人口が減ろうとも、国の財政にとっては中立であり、心配する必要などありません。こと年金に関する限り、財政問題となり得るのは基礎年金の国庫負担にとどまるのです。

    厚生労働省が発表している試算を見ても、2004(平成16)年度の高齢化対策に充てられた「86兆円」とは年金、医療、福祉などの3分野を指すと思われますが(ちなみに財源をみると、保険料52兆円、公費26兆円、給付・負担差額8兆円)、財政にもっとも影響を与えているのは医療です。以後2025年度までの推計を見ても、むしろ医療の公費負担の比率は上昇しています(2004年度で年金8兆円・医療10兆円に対し、2025年度で年金14兆円・医療28兆円)。この程度のことも分析できないアナリストに格付けされるというのも、変な話ですよねぇ。

    #2004年度の「給付・負担差額」について追記すると、年金が8兆円の受取超過(国民から見れば。国から見れば支払超過)になっているということです(医療と福祉などは収支均衡)。その原資は、おそらく積立金の取崩しでしょう。

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    10 Responses to “S&Pによる日本のソヴリン格付けのAAへの格上げ”

    1. ブヒブヒ Says:

      >S&Pのソヴリン格付け

      この手の格付け機関なんて、ロックフェラーやロスチャイルドといった国際金融資本の下請けじゃないのかなあ?

      案外、円安や株安(欧米と比べて)が反転するキッカケになるかも?

    2. webmaster Says:

      >ブヒブヒさん
      格下げ時にほとんどJGBの価格には影響がなかったので、格上げされたからといってもこれまた大した影響はないのではないかと思います。

    3. 鍋象 Says:

      格付け機関の格付けが必要かなと思ったりしてw

      というか、意味不明な格付け変更をしたS&Pの評判が下がるだけじゃないかなと思っております。

    4. webmaster Says:

      >鍋象さん
      Moody’sはエントリで書いたとおりですし、Fitchは↓のとおり外貨建ての方が格付けが高かったりするので、相対関係においてどうやって差をつけるかはものすごく悩ましいのではないでしょうか(笑)。
      http://www.fitchratings.co.jp/profile.ctl.php?profileID...

    5. 鍋象 Says:

      ふと思ったのですが、現在格付け機関は自由参入で特に既成は無さそうですよね。で、利用者が各格付け機関の格付けに納得がいくかどうかで格付け機関を判断したとき、最終的にはある格付け機関の格付けの癖と、それに賛同する人たちのクラスターが構成されていくことになりそうな気がします。
      以前、新聞社の読者層で出てきた話の焼き直しです。全ての債権を自分で格付けするとキリが無いので、少数の債権の格付けを見て、それが自分の評価と一致していたら、その格付け機関を信用するみたいな形になって、利用者が自動的に集まっていくわけです。

      これって、率直に言って「格付けなんて誰にもわからんので、自分で考えなさい」というのとほぼイコールなのかなと。

    6. webmaster Says:

      >鍋象さん
      格付けの存在というのも、よく考えればいろいろと論点があり一筋縄ではいかないなぁ、と。そもそもは発行体と投資家との間の情報の非対称性を幾分なりとも解消するために登場したものが、今となっては格付け機関と投資家との間にも情報の非対称性があり、そのうち格付け機関を格付けする商売が出てくるのかも(笑)。発行体向けには、引受会社がそうしたコンサルめいたことをしているのでしょうけれども。

      クラスター化については、格付け機関間でそれほどの差がない(せいぜい1ノッチとか2ノッチとかで、AAAとジャンクという評価が並存することはないですよね)上、複数の評価を同時に用いることも多いので、少なくともある程度成熟した発行体については、あまりそうしたことは生じないのかな、と。IPOのような場合だとそうした選別も働くような気はしますが、複数回を重ねるうちにこだわりはなくなっていくのではないでしょうか。

    7. 鍋象 Says:

      そうなんですよ。で、こういう良く考えると悩んじゃう問題って、大抵、どこかに正の自己フィードバック的な箇所があるんです。普通制御では負のフィードバックかけて安定させるんですが、正のフィードバックだといわゆるバブル的な現象なわけで、自己増殖したりしちゃいます。これってまとめて体系化すると面白い領域じゃないかと思ったりします。

      余談ですが、もうちょっと現実味のある格付け機関としては、いわゆる企業の信用調査会社というのがあります。とある顧客の点数を大手2社で調べたら、例えば55点と45点のようにわかれまして(数字は実際の数字ではありませんが、似たようなものです)。45点はジャンク寸前で完全撤収モード行きの領域、55点は普通に安心して取引できる会社ですので、大きな差です。

      内情を良く知っている会社のデータも、あれれ?と思うようなものも見かけまして。こういうケースでは、信用調査会社より自分の方が関与度が高く詳しいので、そもそも点数を見るなよと言われてしまいそうですがw

      格付け機関の場合は、色々と理論武装して格好よい事を言っていますが、あれは顧客の独自観点で格付けにケチをつけさせないための盾の機能としてやっているんじゃないかと邪推してしまったりして。

      格付け機関の問題は、これをスクリーニングに使っちゃって自己の判断を停止しちゃう頭の悪い会社がありそうだという事か、それとも、関係ない外野が格付け機関を神聖視してしまって、格付けに一喜一憂したりピーピー文句言ったりするという事なのか。

    8. webmaster Says:

      >鍋象さん
      負のフィードバックとしては、それこそ内実をよく知っている者からの誹謗(笑)ではないでしょうか。本当は優良なのにヤバいと思って手を引く企業が増えれば、本当は優良だと知っている企業にとっては競争相手が減るわけですから。あそこは一見景気がよさそうに見えるけれども、実は台所は火の車だってよ、といった噂を流すとか(笑)。

    9. 鍋象 Says:

      誹謗による負のフィードバックですか。なんか誹謗自身が正のフィードバック起こしそうで。

      負のフィードバックは制御理論の話です。過大評価していたら過大評価を是正、過小評価していたら過小評価を是正する方向に、自立的に調整されていることを言います。経済学で言うといわゆる「見えざる手」のクモの巣過程なんかで説明されています。ちなみに、制御則的に見るとテイラールールは典型的な比例制御です。正のフィードバックの典型がバブルと経済成長ですね。

      ところで、信用調査機関の判定ミスでは、どちらかというと粉飾を見抜けない方がダメージがでかいですし、多いようです。あるいは、「問題があるのはわかっているけど、情報提供の見返りとして露骨には書けず、行間を読んでもらうことに期待した調査報告」もあると聞いています。

    10. webmaster Says:

      >鍋象さん
      冗談にお付き合いいただき恐縮です。まあ弊害の方が大きいのは間違いないでしょう。

      粉飾を見抜けないという意味では、エンロン破綻時の格付け機関が思い出されますね。

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