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  • 04/27/2007 (6:45 am)

    年金の繰下げ受給、何歳まで生きればお得?

    Filed under: pension ::

    4月から公的年金の制度が大きく変わった。なかでも経済的に余裕のある人に魅力的な選択肢に映るのが、厚生(共済)年金の受給開始を本来の65歳から最長70歳まで遅らせることができる「繰り下げ支給」制度。繰り下げると年金額が割り増しになるが、どこまでお得なのか――。

    この制度は、受給開始を65歳から1カ月遅らせるごとに年金額が0.7%増える。最長の70歳(60カ月)まで繰り下げた場合の割増率は42%。

    (略)

    割増率から計算できる「損益分岐点」は11.9年だ。つまり受給開始から12年以上過ぎると、どのケースでも繰り下げた方が総額では上回る。

    男性が平均寿命(78歳)まで生きると、通常1400万円対1年繰り下げ1409万2000円で、繰り下げが得に。女性は平均寿命の85歳まで繰り下げた場合は2272万円になる。

    毎日「春からこう変わってます 年金/繰り下げ受給 復活」

    この記事では、以上の具体例として、年額100万円の厚生年金を繰下げ受給した場合の累計受取額を示す次の表が掲載されています。

    年齢 通常受給 1年 2年 3年 4年 5年
    65 100
    66 200 108.4
    67 300 216.8 116.8
    68 400 325.2 233.6 125.2
    69 500 433.6 350.4 250.4 133.6
    70 600 542 467.2 375.6 267.2 142
    71 700 650.4 584 500.8 400.8 284
    72 800 758.8 700.8 626 534.4 426
    73 900 867.2 817.6 751.2 668 568
    74 1000 975.6 934.4 876.4 801.6 710
    75 1100 1084 1051.2 1001.6 935.2 852
    76 1200 1192.4 1168 1126.8 1068.8 994
    77 1300 1300.8 1284.8 1252 1202.4 1136
    78 1400 1409.2 1401.6 1377.2 1336 1278
    79 1500 1517.6 1518.4 1502.4 1469.6 1420
    80 1600 1626 1635.2 1627.6 1603.2 1562
    81 1700 1734.4 1752 1752.8 1736.8 1704
    82 1800 1842.8 1868.8 1878 1870.4 1846
    83 1900 1951.2 1985.6 2003.2 2004 1988
    84 2000 2059.6 2102.4 2128.4 2137.6 2130
    85 2100 2168 2219.2 2253.6 2271.2 2272

    しかし、よく考えてみればおかしな話で、65歳での平均余命を平成17(2005)年簡易生命表で見れば男性が18.11年(つまり、平均死亡年齢が83.11歳)、女性が23.16年(同じく88.16歳)ですから、65歳時点で癌などの重篤な疾患に罹患していない者については(、それらの者を除けばさらに平均余命は長くなるはずなので)、全員が最大の5年延長を選ぶことが合理的選択ということになります。そのように国が一方的に損をするような制度だというならば、なぜ導入されたのでしょうか?

    #記事で引用を略した加給年金の存在や、年金のみが生活原資となる者といった要素はあるでしょうけれども、ここでは捨象します。

    結論は簡単で、国が一方的に損をするかのように見える上記の試算が間違っているからです。当サイトの読者であればピンときた人も多いでしょうけれども、上記は単に名目額を足しているだけで、受給開始時点が異なることの評価が含まれていません。それをあわせる‐基準時点を揃えて、その時点での価値を比較する‐ことなくしては、本当に得なのが何か、わかるはずもないのです。

    というわけで、累計受取額の65歳時点での割引現在価値で比べてみますと、男性の平均余命を踏まえた83歳まで受給した場合では次のとおりです(強調は、最も有利となる繰下げを表します)。

    #以下の試算は、物価スライド・賃金スライドの影響を勘案していません(スライドゼロの場合の試算となっています)。スライドがある場合、その分だけ割引率が小さくなるものとご理解ください。(4/28追記)

    割引率 通常受給 1年繰下げ 2年繰下げ 3年繰下げ 4年繰下げ 5年繰下げ
    1% 1,739.8 1,777.6 1,799.7 1,806.4 1,797.9 1,774.5
    2% 1,599.2 1,625.1 1,636.6 1,633.9 1,617.6 1,588.2
    3% 1,475.4 1,490.9 1,493.0 1,482.4 1,459.6 1,425.2
    4% 1,365.9 1,372.3 1,366.3 1,348.8 1,320.5 1,282.2
    5% 1,269.0 1,267.2 1,254.1 1,230.7 1,197.9 1,156.4

    割引率(金利)によって、最も有利となる繰下げが0〜3年と変わってくるのがおわかりいただけるでしょう‐0年の繰下げが最も有利な場合があり、つまりは割引率が5%となるときには、繰下げをせずに65歳からの受給とすることがもっとも有利になるのです。続いて、女性の平均余命を踏まえた88歳までの需給の場合です。

    割引率 通常受給 1年繰下げ 2年繰下げ 3年繰下げ 4年繰下げ 5年繰下げ
    1% 2,145.6 2,217.4 2,273.6 2,314.4 2,340.0 2,350.6
    2% 1,929.2 1,982.9 2,022.0 2,047.1 2,058.6 2,056.8
    3% 1,744.4 1,782.5 1,807.2 1,819.2 1,819.0 1,807.2
    4% 1,585.7 1,610.5 1,623.0 1,623.9 1,614.1 1,594.2
    5% 1,448.9 1,462.2 1,464.2 1,456.0 1,438.2 1,411.9

    長生きなので繰下げ期間が長い方がより有利になりがちですが、それでも割引率によっては、繰下げ期間を短めにしておいた方がよいということになります。

    こうした計算を各年齢について行い、最も有利となる死亡年齢をならべると次のとおりです。

    割引率 通常受給 1年繰下げ 2年繰下げ 3年繰下げ 4年繰下げ 5年繰下げ
    1% 65〜77 78〜79 80〜82 83〜84 85〜86 87〜
    2% 65〜78 79〜81 82〜83 84〜85 86〜88 89〜
    3% 65〜79 80〜82 83〜85 86〜88 89〜90 91〜
    4% 65〜81 82〜84 85〜87 88〜91 92〜94 95〜
    5% 65〜83 84〜87 88〜91 92〜96 97〜101 102〜

    毎日の記事にしたがって、78歳には死にそうだから1年繰り下げればいいのかなんて判断をしますと、ちょっと金利が上がればかえって損になり、繰り下げなければよかったと後悔することに。毎日も罪な記事を書くものです(笑)。

    さあ、もうそろそろ65歳だという皆さん、今後の金利動向とご自身がいくつまで生きられそうかをよーく考えて、繰り下げるかどうか、繰り下げるならば何年にするか、心行くまでお悩み下さい(笑)!

    #言うまでもありませんが、それなりの資産なり退職金なりがないと、繰下げの余地はあまりないわけですが。

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    10 Responses to “年金の繰下げ受給、何歳まで生きればお得?”

    1. ブヒブヒ Says:

      >厚生(共済)年金の・・・「繰り下げ支給」制度。繰り下げると年金額が割り増しになるが、どこまでお得なのか――。

      より多くお得になる人達ほど、年金制度自体を左程必要としない層のように思えますが。
      このパラドックスにクラクラ来ましたが、私の勘違いでしょうか?

    2. 西麻布夢彦 Says:

      もともと年金保険は社会保障なので、損得で考えるものではないのですよ。
      それを、損得でとらえようとするから、フリーター・ニートは「保険料払っても帰ってこないから払わない」とか言い出すのです。

      保険だぜ。
      無事息災なら帰ってこないのが当然じゃん。

      まあ、保険談義の背景には、厚生省が無駄遣いしたという怨念が横たわっているので、単純には解決しませんが、本当は、消費税を増税して、所得税と年金保険料を大幅に引き下げれば、解決する問題で、支給額いじっても仕方ないでしょうね。

      なお、保険料引き下げはフリーター対策。所得税減税は、バータという面と、社会の公正を実現するには直接税は廃止した方がよかろうという価値判断です。
      国家が個人の「所得(プライバシー)」に関心を持つような社会は不健全だし、(徴税)コストが高いのでは、という問題意識。
      (現在の所得税[直接税]は、課税標準の定め方や引用が複雑すぎて社会コストを増大させている。企業が税金払うために、何人の経理マンを雇わなければならないか……)

    3. Pyonta Says:

      上記の計算式は割引率の上昇にあわせて物価・賃金の上昇による給付額の増加(マクロ経済スライドでいくぶん打ち消されるものの)を考慮してないので不完全では?

    4. koge Says:

      >西麻布さん
      保険=金融商品だと割り切るなら、そもそもわざわざ政府が運営する必要はないわけで、民間の貯蓄商品に任せて国は貯蓄しなくても最低限の生活が送れるような生活保護だけやっときゃええんじゃないかと。
      あと、所得税が社会的コストが高いというのは同意ですが、税務署員はまだしも税理士や会計士を何万人と路頭に迷わせるのはさすがに難しいのでは。

    5. 規制業種 Says:

      繰り下げ制度は、65歳を越えてもなお、働いていて収入のある人には大変便利な制度です。
      事実、私のしっている人で、60歳を過ぎても会社を辞めさせてもらえず、そのままだと収入に応じて年金が減額されるので繰り下げしている人がいます。

    6. webmaster Says:

      >ブヒブヒさん
      働き続けるという選択肢はあるので、ご指摘の傾向があることは事実かと思いますが、例外も多々あるということではないでしょうか。

    7. webmaster Says:

      >西麻布夢彦さん
      所得再分配機能を完全に放棄するというのでなければ、所得補足そのものは不可避でしょう。といいますか、所得税を全廃するならばさておき、軽減では所得補足はなくならないわけですし。

    8. webmaster Says:

      >Pyontaさん
      確かにそれらは考慮しておらず、組み込んだ方がより現実を正しく表しますね・・・金利が同じであれば、スライド分だけ「実質利回り」が下がるわけですから、「割引率」を「金利予測−スライド予測」として考えていただく、ということになりますでしょうか。その趣旨で追記させていただきましたが、お気づきの点がありましたら再度ご指摘ください。

    9. webmaster Says:

      >kogeさん
      そもそも公的年金が各国に(先進国においてはほとんど)存在するのはなぜか、という議論につながるでしょう。基本は逆選択防止ということでしょうけれど。

    10. webmaster Says:

      >規制業種さん
      在職老齢年金については、そのとおりの影響があると私も思います。

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