bewaad institute@kasumigaseki

  • archives by smart archives
  • 04/29/2007 (10:24 pm)

    日銀2007/04レポートに係る主要各紙社説

    Filed under: economy, BOJ, media ::

    昨日取り上げた日銀レポートについて、全国紙では、朝日、毎日、日経、東京の4紙が社説の題材としていました。以下、それぞれを見てみます。

    最近、金融政策に関する社説としては東京新聞が出色ですが、今回もまたすばらしいものでした。

     日銀が展望リポートで、二〇〇七年度の物価見通しを下方修正した。物価がそれほど上がらない背景には、昨年来の日銀自身による金融引き締め効果もある。きちんとした政策検証が必要だ。

    (略)

     前回は「(需要が供給能力を上回る)需要超過幅が緩やかに拡大し、生産一単位当たりの人件費である単位労働コストも若干上昇する中で、〇七年度にかけて前年比プラス幅が次第に拡大していく」と予想していた。これが見事に外れた形だ。

     なぜ、外れたのか。

     日銀は原油価格の下落や携帯電話料金の改定などを理由に挙げているが、日銀が継続的に金融を引き締めてきた事実を見逃せない。日銀は昨年三月に量的緩和を解除し、七月にゼロ金利も解除、続いて今年二月には追加利上げに踏み切った。

    (略)

     そもそも、日銀は「消費者物価が安定的にゼロ%以上になる」と予想したからこそ、量的緩和を解除したのではなかったか。

     政策変更がほかになかった点を考えれば、引き締めも物価下落を招いた要因の一つと考えられる。見通しを誤った理由と金融政策効果を検証し、結果を公表すべきだ。「物価はいずれ、また上がる」などと言っているだけではすまない。

     もう一つ、注文がある。

     消費者物価指数は統計技術上の困難のために、実際よりも数字が高めに出る上方バイアスの存在が知られている。日銀はかつて「バイアスは0・9%」という数字を挙げた。これが正しければ、仮に物価上昇率が0%だとしても、現実は0・9%も下落していることになる。

     日銀は物価安定の水準を消費者物価上昇率で「0−2%程度」と考えているが、バイアス分を考えれば、低すぎないか。あるいは、バイアス幅が変わっているのか。技術進歩の速さは現実と統計にどんな影響を及ぼしているのか。この点もぜひ検証してほしい。

     生身の人間にとって大事なのは統計ではなく、失業や倒産、賃金下落といった現実そのものだ。実態を反映しない統計を基にすれば、政策も不適切になる恐れがある。

    東京「物価下落 引き締め効果の検証を」

    長々と引用しましたが、正直申し上げるならば、社説でここまでの水準の議論を見られるとは期待していませんでした。今後ともこの路線を期待したいと思います。

     日本銀行が金融政策の枠組みを説明する「展望リポート」を公表した。金融政策はこのところ、めっきり分かりにくくなっている。そのモヤモヤが吹っ切れるかと期待したが、当て外れだった。

     日銀は昨年3月、消費者物価指数が上昇傾向に転じたのを理由に量的緩和を終わらせ、7月にはゼロ金利も解除した。だが、物価が横ばいからマイナスに落ちる途中だった今年2月にも利上げした。このねじれは何なのか。

    (略)

     だが、「展望リポート」では基本的にこれまでの説明が繰り返された。賃金上昇が遅れている点などは認めたが、「いずれ物価は上がる」という言いぶりは変わっていない。

     腑(ふ)に落ちないのは、いまの物価下落と1年前までの下落と質的に違うのかどうか、説明が足りない点だ。日銀は石油や携帯電話料金の値下がりによる特殊要因というが、もしそうなら、昨年から利上げしてきた根拠である物価上昇も原油値上がりによる特殊要因ではないか、との疑問もわく。量的緩和やゼロ金利の解除の影響が、物価情勢にどう表れているのか、という分析もない。

     また、日銀は「金利が上がらないという期待が蔓延(まんえん)するとバブルによる資産価格の上昇を招く」というが、物価が横ばいなのに利上げの構えをとると、経済が萎縮(いしゅく)して物価を引き下げるのではないか、という見方も出ている。

     不透明感の根底には、バブルからデフレに至る経過について、日銀が踏み込んだ総括をためらっていることもあろう。

    (略)

     分かりにくいために国民の関心や支持が離れるなら、日銀が自分の首を絞めているのに等しい。残る任期が1年を切った福井総裁の課題である。

    朝日「金融政策―もっと分かりやすく」

    続いて朝日ですが、物価がそのうち上がるからといって引締め続けた日銀に、平たく言えば狼少年ではないかとの疑いが生じてきているのでしょう。東京のように明確に批判しているわけではありませんが、疑念を示しており、今後批判に移る可能性もあるといえるでしょう。同様の路線が日経です。

     確かに日本経済は底堅い。企業の業況感はやや足踏みだが、その一方で昨年後半はさえなかった個人消費に持ち直しの兆しもみえる。5月に発表される今年1―3月期の国内総生産(GDP)も堅調な伸びを予測するエコノミストが多い。

     こうした状況を踏まえれば、景気拡大に応じて日銀が徐々に政策金利を引き上げても、経済には無理がかからないと考えられる。

     難問は物価だ。同じ27日に発表された3月の消費者物価は生鮮食品を除くベースで、前年同月比0.3%低下した。物価下落幅は2月の0.1%より広がり、しばらくはマイナス基調が続くとみられる。

    (略)

     経済のグローバル化で海外の安いモノがどんどん入っている。労働市場が変化し賃金がなかなか上昇しない。デフレの経験が意識に染みつき経営者や消費者のインフレ期待が低下した。物価の感応度低下には、様々な要因が考えられる。日本経済の構造的な変化も関係していよう。

     快刀乱麻を断つ分析は難しいにせよ、日銀は自らの見解を世に問うべきではないのか。金融政策はフォワードルッキング(先見的)な姿勢が必要といっても、足元の物価がマイナスで近い将来もゼロ%近辺にある。そんななかで利上げを目指すのなら、物価に関する徹底的な議論を避けてはならない。

    日経「物価の説明、日銀はきちんと」

    同じ懐疑的路線とはいえ、日経の方が若干日銀に対して好意的で、こちらはきちんとした説明を怠っているといいますか、やろうと思えばできるのだからがんばれ、といったニュアンスでしょうか。あるいは、今のままでは擁護が難しいといいますか。

    という順序で並べてくれば、お察しいただけるように最後に控えるのはもっとも日銀に対して好意的なものです。

     過去の展望リポートで日銀が示してきた予想と、この間の経済の推移との関係について日銀は説明責任を負っている。そうしたリスクを背負い、政策運営に対する透明性を高めていくことが、日銀の金融政策への信認を高めることにつながる。

     そして、現在の日銀の判断によると、これまでの展望リポートの見通しにおおむね沿って現実の経済は動いているという。

    (略)

     物価上昇率が直近でマイナスになっている理由について日銀は「原油価格や携帯電話料金などの下落が大きな要因」と説明しているが、予想値が下方修正されたことを理由に、日銀の判断は間違っているという指摘も出ている。

     物価統計がマイナスだからデフレ状態にあるというのが、日銀の利上げに対する批判の論拠だ。ただし、マイナスといってもゼロ近辺で、統計上の誤差の範囲とも考えられる。また、物価下落の要因となっている原油価格や携帯電話料金など値下がり自体は悪いことではない。

     現在は銀行が巨額の不良債権を抱えていた時とは違っている。ゼロ金利を解除し、再利上げをしたといっても、あまりに低く、金利と呼べるような水準でもない。累積的に物価下落が続くことは回避しなければならないが、都心部での地価急騰などミニバブルと呼ばれる現象が周辺部に広がる気配もみせている。

     今回の展望リポートが示すように当面の経済見通しが順調に推移するなら、日銀は金融調整機能の正常化に向けた作業を継続すべきだろう。

    毎日「日銀展望リポート 金利機能の正常化は必要だ」

    というわけで、やっぱり毎日でした(笑)。

    #下記もご参照いただければ。

    add to hatena hatena.comment 9 users add to del.icio.us 0 user add to livedoor.clip 0 user

    Leave a Reply

    TrackBack URI