bewaad institute@kasumigaseki

  • archives by smart archives
  • 05/21/2007 (3:40 am)

    最適なインフレ率についての日銀試算

    Filed under: economy, BOJ ::

    2ちゃんの某板某スレ経由。

    本稿では、日本経済における定常状態インフレ率がどの程度であることが望ましいかを議論した。はじめに、分析上の各論点を整理したうえで、貨幣保有の機会費用、ゼロ金利制約、価格粘着性、賃金の下方硬直性に着目し、日本経済の特性に考慮してモデルを設定した。その下で、ゼロ金利制約を勘案した確率シミュレーションにより、社会損失を定量的に評価した。また、モデルの設定を変更した場合に結果がどのように変わるかについても分析した。その結果、社会損失を最小化する定常状態インフレ率は、概ね0.5%から2.0%の間であるとの結果を得た。また、定常状態インフレ率が社会損失を最小化する水準から1%程度乖離すると、社会損失はGDP の0.2〜0.3%程度増大するという結果となった。なお、本稿の分析結果は、特定のモデルやパラメータを前提としており、その前提を変えれば結果がかなり変わり得る点には留意する必要がある。

    (略)

    技術的な問題としては、インフレ率の計測の問題がある。本稿で分析の対象とした物価指数はGDPデフレータであるが、多くの国で現実に金融政策運営上のメルクマールとして参考にされている物価指数は消費者物価指数である。GDPを構成する財と消費者物価指数を構成する財とで技術進歩率が異なれば、GDPデフレータと消費者物価指数の間で定常状態インフレ率に格差が生じる可能性がある。(後略)

    鵜飼博史、小田信之、渕仁志「インフレのコストとベネフィット:日本経済に対する評価」(日本銀行ワーキングペーパーシリーズ)

    GDPデフレータ(パーシェ指数であることによる下方バイアスがある)で0.5〜2%ということは、おそらくCPI(ラスパイレス指数であることその他による上方バイアスがある)で見れば1〜3%ぐらいですよね? 審議委員の皆様、本論文をじっくり読んでください!

    05/21/2007 (3:39 am)

    NHK「日本の、これから/地方衰退」(5/19 on air)雑感

    Filed under: economy, government, politics, media ::

    NHKのページでは残骸しかありませんが、視聴者を何十人か呼んで政治家や学者らを交えて討論、というスタイルでした。参加した政治家は菅総務大臣、他には経済学者として土居先生と八田先生、その他に作家の高村薫、片山前鳥取県知事といった方々が来ていました(他にもいたと思いますが、記憶が(笑))。

    • 高村薫が、webmasterの言い方でいえばナショナルミニマムは何かということをきちんと議論する必要があると問題提起をしていたのに、それがスルーされたのは残念でした。
    • 地方財政悪化の原因として公共事業悪玉論が多く語られていましたが、1993年をピークに単独事業は減少、補助事業のピークも1995年である一方、地方債の残高の伸びが急になったのは90年代後半であり、まったく影響していないという気もありませんが、それがなければといった議論はミスリードでしょう。主因は、地方税の減少および地方交付税交付金の減少であるとwebmasterは考えます。
    • もうひとつ当然視されていたのが、国の財政危機で、ない袖は振れないという前提からすべての議論が始まっていました。大いに余裕があるという気もありませんが、デフレによる財政逼迫ということを誰も言及せず、したがってデフレに問題があるのだということにもまったく触れられないというのは、財務省と日銀が後援でもしていたのでしょうか(笑)。
    • 住民が頑張ればどの地方もなんとかなるという楽観論からは、もうそろそろ目覚めた方がいいのでは。番組で取り上げられていた山口県美祢市の美祢社会復帰促進センターにせよ、先日の統一地方選の結果を受けて取り下げられた高知県東洋町の高レベル放射性廃棄物最終処分施設にしても、そんな奇麗事ではないことを如実に示しているわけで。現に消滅した集落はいくらでもあり、それらはより広域の地方公共団体に吸収されて「無主地」にこそなっていないものの、頑張ってもなんともならなかったものがいくらでもあることを示しているわけです。
    • 関連して、東北地方の視聴者の意見として、高度経済成長期には都市部を優先し、その際には地方は後でと言っておきながら、ようやく順番が回ってきたかと思えば金がないというだけでも腹が立つのに、地方の投資は無駄だからダメだといわれるのは許しがたいというものが紹介されていましたが(かつてwebmasterもそうした言い方が地方を逆なですると指摘しましたが、ファイルが見つかりません・・・)、他方で上記のように刑務所や核処理施設などの地方への立地は今であっても(中央の)抵抗なく進められるわけで、これでは地方から見れば、都市部がおいしいところを独り占めして、地方には損ばかり押し付けるという気持ちになっても致し方ないでしょう。
    • 八田先生は当然ながら(笑)、菅大臣その他もずいぶんと霞が関を欠席裁判であしざまにののしってくれたわけですが(笑)、結局のところ、皆霞が関に汚れ役を押し付けているんですねぇ、といじけてみます。会場でもさんざん意見が分かれていたわけですが、当事者同士でけんかするようなことはまったくありませんでした。たとえば八田先生のご意見にしても、それに対する異論が社会においてごく少数にとどまるならば霞が関だって喜んでその施策を推進するわけで、そうはならないのは社会において意見対立が存在することの必然的帰結です。別に自分で意見集約をしろという気もありませんが、そうした対立の存在を完全に無視して、霞が関が自分たちのためにあれこれしているように言われるのは、非常に心外です。
    次のページ »