MYUTAストレイジサービス著作権侵害判決
いろいろ議論になっているようです。
- 「副作用が大きすぎるストレージ・サービス違法判決」(@栗原潔のテクノロジー時評Ver25/26付)
- 「ストレージの利用がなぜ著作権侵害なのか」(@ナガブロ5/26付)
- 「ネット上にデータを保存するサービスはすべて著作権侵害で違法です」(@GIGAZINE5/26付)
- 「JASRACもJASARCだし裁判官も裁判官」(@Web屋のネタ帳5/26付)
- 「たけくまさん、こっちを騒ごうよ(笑)」(@切込隊長BLOG(ブログ)〜不滅の俺様キングダム〜5/27付)
判決を読み、多くの批判の中心にあると思われる、他のストレイジサービスへの影響に絞って考察してみます。
事件の概要は上記リンクなどをご覧いただくとして、判決において主要な争点となったのは、MYUTAストレイジサービスがサーバにデータを保存し、それをユーザの携帯電話に送信する行為について、それぞれが私的複製かどうか(著作物の複製は、それが私的使用であれば原則許容されます。為念)、自動公衆送信かどうかというものです。MYUTA側は、ユーザ個人によるハードディスクへの保存及び読み込みに等しく、それぞれ私的複製であり、自動公衆送信ではないという主張をしていました。
判決においては、こうしたMYUTA側の主張は退けられ、複製(アップロード)及び送信(ダウンロード)はそれぞれMYUTAにより行われるものと認定されました。すなわち、私的複製ではなく、自動公衆送信ではあるということですが、そのように判断した要因が、それぞれ次のように整理されています(適宜一般用語に置き換えていますが、それにより意味が変わっていた場合、その責任はすべてwebmasterにあります。為念)。
- 複製について(pp30-31)
- 提供するサービスにおいて複製が不可欠である。
- サーバはMYUTA側が保有・設置・管理していた。
- ユーザはMYUTA側が提供するアプリケーションなくしてはサービスの提供を受けられなかった。
- アップロードは上記アプリケーションにより行われていた。
- 提供するサービスによらなければ素人ではCD等の音源を携帯電話にコピーすることは困難であった。
- ユーザはアップロード・ダウンロードなどの操作を行うのみで、実際のコピー作業そのものはMYUTA側の提供するアプリケーションやその保有するサーバが行っていた。
- 送信について(pp33-34)
- 提供するサービスにおいて送信が不可欠である。
- サーバはMYUTA側が保有・設置・管理していた。
- ダウンロードはMYUTA側の設計どおりに行われていた。
- 提供するサービスによるダウンロードによらなければ素人ではCD等の音源を携帯電話にコピーすることは困難であった。
- ユーザはアップロード・ダウンロードなどの操作を行うのみで、実際のダウンロード作業そのものはMYUTA側の提供するアプリケーションやその保有するサーバが行っていた。
それぞれの条件が独立しているのか微妙ではありますが、webmasterなりに理解するならば、
- サービスを提供するMYUTA側が独自アプリを提供し、その上でアップロード・ダウンロードが行われていたこと、
- 素人では同じことを別の一般的な手段で行うことが困難であること、
が決定的になったということになります。荒っぽく言うならば、このサービスがなければ似たような複製を個人ではできないのだから私的複製ではないし、その過程で行われる送信は自動公衆送信に該当する、ということになりますでしょうか。
であるならば、Yahoo!ブリーフケースその他のストレイジサービス、ましてメイルの添付ファイルなどは、サービス提供者がそれに用いられるブラウザやメイラーなどを専用に開発・配布しているものではありませんし、ファイルのコピー自体、OSの提供する機能として素人が容易にすることが可能なわけですから、この判例のロジックにより著作権法違反となるものではないとwebmasterは考えます。
#ちなみに、JASRACも同様に、MYUTAはアップローダや通常のストレイジサービスとは異なるとの見解を述べています(判決pp5,6)。
もちろん、本件はまだ地裁判決でしかありませんし、あくまでMYUTAのサービスについての判断であってその他のストレイジサービスなどに同様の基準が適用されることが明示されているものでもありませんから、それらのサービス等が完全にシロと決まったわけではありません。そもそもwebmasterが間違った読解をしている危険だって多分にありますし(笑)。
しかしながら、この判決に対する意見として、「副作用が大きすぎるストレージ・サービス違法判決」「ネット上にデータを保存するサービスはすべて著作権侵害で違法です」「JASRACもJASARCだし裁判官も裁判官」という主張をするのであれば、少なくとももう少し理論武装をする必要があるのではないかとwebmasterは思います。そうでなければ、かえって主張の信頼性を損ねてしまうのではないでしょうか。
