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  • 05/29/2007 (7:02 am)

    MYUTAストレイジサービス著作権侵害判決

    Filed under: law, WWW ::

    いろいろ議論になっているようです。

    判決を読み、多くの批判の中心にあると思われる、他のストレイジサービスへの影響に絞って考察してみます。

    事件の概要は上記リンクなどをご覧いただくとして、判決において主要な争点となったのは、MYUTAストレイジサービスがサーバにデータを保存し、それをユーザの携帯電話に送信する行為について、それぞれが私的複製かどうか(著作物の複製は、それが私的使用であれば原則許容されます。為念)、自動公衆送信かどうかというものです。MYUTA側は、ユーザ個人によるハードディスクへの保存及び読み込みに等しく、それぞれ私的複製であり、自動公衆送信ではないという主張をしていました。

    判決においては、こうしたMYUTA側の主張は退けられ、複製(アップロード)及び送信(ダウンロード)はそれぞれMYUTAにより行われるものと認定されました。すなわち、私的複製ではなく、自動公衆送信ではあるということですが、そのように判断した要因が、それぞれ次のように整理されています(適宜一般用語に置き換えていますが、それにより意味が変わっていた場合、その責任はすべてwebmasterにあります。為念)。

    • 複製について(pp30-31)
      1. 提供するサービスにおいて複製が不可欠である。
      2. サーバはMYUTA側が保有・設置・管理していた。
      3. ユーザはMYUTA側が提供するアプリケーションなくしてはサービスの提供を受けられなかった。
      4. アップロードは上記アプリケーションにより行われていた。
      5. 提供するサービスによらなければ素人ではCD等の音源を携帯電話にコピーすることは困難であった。
      6. ユーザはアップロード・ダウンロードなどの操作を行うのみで、実際のコピー作業そのものはMYUTA側の提供するアプリケーションやその保有するサーバが行っていた。
    • 送信について(pp33-34)
      1. 提供するサービスにおいて送信が不可欠である。
      2. サーバはMYUTA側が保有・設置・管理していた。
      3. ダウンロードはMYUTA側の設計どおりに行われていた。
      4. 提供するサービスによるダウンロードによらなければ素人ではCD等の音源を携帯電話にコピーすることは困難であった。
      5. ユーザはアップロード・ダウンロードなどの操作を行うのみで、実際のダウンロード作業そのものはMYUTA側の提供するアプリケーションやその保有するサーバが行っていた。

    それぞれの条件が独立しているのか微妙ではありますが、webmasterなりに理解するならば、

    • サービスを提供するMYUTA側が独自アプリを提供し、その上でアップロード・ダウンロードが行われていたこと、
    • 素人では同じことを別の一般的な手段で行うことが困難であること、

    が決定的になったということになります。荒っぽく言うならば、このサービスがなければ似たような複製を個人ではできないのだから私的複製ではないし、その過程で行われる送信は自動公衆送信に該当する、ということになりますでしょうか。

    であるならば、Yahoo!ブリーフケースその他のストレイジサービス、ましてメイルの添付ファイルなどは、サービス提供者がそれに用いられるブラウザやメイラーなどを専用に開発・配布しているものではありませんし、ファイルのコピー自体、OSの提供する機能として素人が容易にすることが可能なわけですから、この判例のロジックにより著作権法違反となるものではないとwebmasterは考えます。

    #ちなみに、JASRACも同様に、MYUTAはアップローダや通常のストレイジサービスとは異なるとの見解を述べています(判決pp5,6)。

    もちろん、本件はまだ地裁判決でしかありませんし、あくまでMYUTAのサービスについての判断であってその他のストレイジサービスなどに同様の基準が適用されることが明示されているものでもありませんから、それらのサービス等が完全にシロと決まったわけではありません。そもそもwebmasterが間違った読解をしている危険だって多分にありますし(笑)。

    しかしながら、この判決に対する意見として、「副作用が大きすぎるストレージ・サービス違法判決」「ネット上にデータを保存するサービスはすべて著作権侵害で違法です」「JASRACもJASARCだし裁判官も裁判官」という主張をするのであれば、少なくとももう少し理論武装をする必要があるのではないかとwebmasterは思います。そうでなければ、かえって主張の信頼性を損ねてしまうのではないでしょうか。

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    17 Responses to “MYUTAストレイジサービス著作権侵害判決”

    1. fcp Says:

      いつも資料に基づいて議論をされていて大変ためになります。

      判決と同じ基準を他のストレージサービスに当てはめてみると、他も著作権侵害だとは簡単には言えない、という結論には今のところ賛成です。それ以前に、「この判決が通るなら他のストレージサービスも著作権侵害だ」と主張するならば判決と同じ基準を当てはめてどうなるかを考えるべきだ、というスタンスが素晴らしいと思います。

      ただ、「独自アプリケーション」と「同じサービスが容易に実現できない」という二つの条件のうち、「独自アプリケーション」の方はウェブを使った他の一般的なストレージサービスでも当てはまるのではないかと思います。

      Bewaad さんは
      >サービス提供者がそれに用いられるブラウザやメイラーなどを専用に開発・配布しているものではありませんし
      とおっしゃいますが、アプリケーションというのはブラウザーなど OS の実行ファイルの形をしているものだけとは限りません。ウェブブラウザーの上で実行されるアプリケーション (ウェブアプリケーション) もアプリケーションの一種です。

      Yahoo! ブリーフケースの詳細は知りませんが、ユーザーは Yahoo! が独自に開発・配布しているウェブアプリケーションを用いてストレージにアクセスするのでしょう。 MYUTA サービスではブラウザーの上で動作するのではない OS レベルの実行ファイルを開発・配布しているようで、両者は独自開発しているソフトウェアのレイヤーが違いますが、その違いは重要ではないと思います。

    2. 栗原潔のテクノロジー時評Ver2 Says:

      MYUTA事件の判決文が公開されました…

      裁判所のWebサイトにアップされました(判決文, 別紙1) ゆっくり読んでる時間 (more…)

    3. Says:

      昨日のエントリに関して思った(どうでもいい)こと
      残(ザン)念    慙(ザン)愧
      檄(ゲキ)を飛ばす 激(ゲキ)励 

    4. Says:

      昨日ではなく今日でした(どうでもいい)

    5. Eiji Says:

      >素人では同じことを別の一般的な手段で行うことが困難であること

      これをネットワービスの不法適法の判断に使われちゃ、新しいサービスは何も出来ませんよ。

      目の前の問題を解決したら即法的制約に抵触では、技術開発方面への萎縮効果は凄まじいです。

    6. bn2islander Says:

      MYUTAストレージサービスは、ユーザー個人の領域が存在しないことが判決文で述べられていますが、これが本当だとしたら、一般的なストレージサービスとはいえないかも知れないなあと思っています。

      また、個人的にはなぜサーバーに複製するのかがわからなかったりします。ソフトさえあれば変換できるのなら、ユーザーにソフトを配布してしまって、ユーザー個人がメールで送ればいいじゃないかと思ったりします。

      ところで、高部判事を批判する意見としてよく引き合いに出されるのが、一太郎裁判ですが、あれのどこが批判されなければならないのかもわからなかったりします。

    7. webmaster Says:

      >fcpさん
      おっしゃるような判断がなされる可能性はあると思います。その点についての議論を通じて裁判所の判断の妥当性を検証するということであれば、まったく異論はありません。

      >あさん
      できれば、該当エントリにコメントいただけるとありがたいです。

      >Eijiさん
      その解釈が現行著作権法のものとして適切かどうかという議論があり、適切であるならば立法的解決が望まれるということだと理解しています。相当現実離れしていたとしても、司法に与えられた権能では現行法をひっくり返すには違憲立法であるとの判断が必要であり、それに該当しなければ現実よりも法律を優先させざるを得ません。それによる現実問題は、立法府にその対応が任されるべきだと考えます。

      >bn2islanderさん
      ユーザにソフトを配布してしまっては、このサービス(システム)の著作権者としてはおいしくないからでしょう(笑)。

      高部判事については、霞が関住人としては、「ローマの休日」裁判での日にち処理には大いに異論があるわけですが(笑)、それをとっても著作権者の言い分ばかり聞いているというのは違いますよね。

    8. 通りすがり Says:

      サーバーを経由する理由ですが、Docomoの携帯はサーバーを経由してダウンロードしないと着信音として設定できないようになっているからだと思われます。

    9. 通りすがり Says:

      物理的なものではないので、自分がどこかへ送信するデータは全てコピーですよね。ネットを使う時点で、見えないところで色々なデータに変換されたり、また、違う情報が付加されて、相手に届いたり、サーバに保存されたりするわけで…。

    10. bn2islander Says:

      >bewaadさん
      >このサービス(システム)の著作権者としてはおいしくないからでしょう(笑)。

      この裁判の肝はまさにそこにあると思います。音楽を着メロに変換することで、サービス提供業者が利益を得るというのなら、対価を払えというのがJASRACの主張であり、裁判所もそれを追認したのではないかなと。

    11. webmaster Says:

      >通りすがりさん(http://bewaad.com/2007/05/29/135/#comment-5678)
      ご教示ありがとうございました。

      >通りすがりさん(http://bewaad.com/2007/05/29/135/#comment-5687)
      著作権法上、許される複製と許されない複製があり、前者の基本は著作権者等の許諾のあるものと、私的複製ということになります。

      >bn2islanderさん
      そうなると、本来的には著作権法上、営利目的と非営利目的で書き分けるべき、ということになるのでしょう。裁判所としては(明文では書いていませんが)可罰的違法性で仕分けているようにも見えますが、不透明であることはやはり問題でしょうし。

    12. BUNTEN Says:

      >音楽を着メロに変換することで、サービス提供業者が利益を得るというのなら、対価を払え

      フォーマット変換から料金を取るために理屈をひねり出したのなら、CDをMP3に変換するソフトの会社とかから料金を取るためにも裁判所が理屈をひねり出してくれるかもしれんなぁ。したら今はタダで使えるものがあるその手のソフトもタダではすまなくなるだろう。

      自分で買ったCDの曲を外で聞く時は携帯CDプレーヤーでしか聞けないとかなったら激しく不便な世界のような気がするが、著作権者はCDプレーヤーで聞くことしか認めていない、それが証拠に同じ曲をラジオで聞くときには別口で料金を取っているぞ、とか言われたら俺はよう反論できへん。orz

    13. fcp Says:

      独自開発しているソフトウェアのレイヤーの「違いは重要ではないと思います」と書いてしまいましたが、判決文からはソフトウェアのレイヤーが判断に影響したとは読めない、という点を書くべきでした。

    14. bn2islander Says:

      >bewaadさん
      >BUNTENさん

      「企業法務戦士の雑感」さんのところにあるように、貸金庫とダビング屋のメタファーがわかりやすいように思います。

      貸金庫ならば著作権は適用されないが、ダビング屋は著作権が適用される。そして、このオンラインストレージのサービスは、私にとっては(企業法務戦士の雑感さんとは違い)ダビング屋そのものだと思うので、さほどはこの判決に違和感を抱きませんでした。

      BUNTENさんのおっしゃるような、自分でCDをMP3に変換するような行為は、ビデオデッキのメタファーが使えるのではないかなと思います。つまり、私的複製という事になるのかなと。

    15. koge Says:

      >著作権者はCDプレーヤーで聞くことしか認めていない、それが証拠に同じ曲をラジオで聞くときには別口で料金を取っているぞ、とか言われたら俺はよう反論できへん。
      それならCDやDVDも無料配布する代わりに聞くたびに従量制で金を取る、著作権者は技術的に許せばそうしたいんですかねぇ?

    16. bn2islander Says:

      >kogeさん
      おそらく、著作権法は将来的にはそのような形に移行すると思います

    17. webmaster Says:

      >fcpさん
      そのあたりは、厳密には次の判決でそういった事例が扱われないと何とも言いがたいところですが(いずれにも解釈可能であるように理解しています)、今後のネット上での著作権の取扱いを考えるに当たっては、面白い論点であるように思われます。

      >bn2islanderさん
      あるいは、封書とファクスとか。

      >kogeさん
      利潤の最大化を目的にしていると仮定すれば、どのような料金設定がその実現に資するかは、各人の嗜好に依存するのでしょう。CDを買って一度聞いたけれども趣味に合わなくてそのままお蔵入り、という場合であれば、従量制よりも固定制(=CDを買えば何度でも聞ける)が結果として有利になるわけですし。

      究極的には、携帯電話の各種料金プランのように、各人の視聴状況に合わせて最適化することになるのでしょう。技術的にどこまで可能なのかはわかりませんが・・・。

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