ミートホープの偽装牛肉ミンチ事件と情報の非対称性
もちろん、ミートホープ社の虚偽表示は弁護の余地もありませんし、適切な情報開示体制が不備であることも事実なのでしょうけれども、そもそも虚偽表示が容易に可能であり、人為的な情報開示体制を整備しないとそれを見抜けないことが根源的理由なのです。経済学用語でいえば情報の非対称性があるということになりますが、よく教科書に出される例としては中古車の品質、現実の事例としては耐震偽装マンションもこの問題の範疇となります。
中古車の例で言えば、試乗でわかるような不具合‐エンジン音がおかしいとか、サスペンションが完全にへたっているとか‐は回避できるでしょうけれども、たとえば走行距離が偽装されていた場合、確率論的に故障が起こりやすくなるとしても、偽装どおりであれば統計的に本来1万km走行あたり0.5%のはずが、実際には1%だなんてことは、平均0.5%の分散としてそうであったこともあり得るわけですから、なかなか見破ることができません。
耐震偽装にしても、一定の加速度の地震に遭った際に壊れる確率を低く偽ったというものですから、そもそも地震が起こらなければ偽装かどうかが試される機会がありませんし、地震に直面して壊れたから偽装、壊れなかったから正確な表示とも限りません。その道のプロであっても見ただけではわからず、きちんと裏を取るには設計図等を基に構造計算をしなければならないわけです。
今般の偽牛肉ミンチにしても、加ト吉や味の素をはじめとする企業が気付かずに仕入れ続けた、すなわちプロが見抜けなかった偽装なのですから、素人が見抜けないのも仕方がありません。というわけで、情報の非対称性を緩和する措置が必要なのです・・・あれっ?
中古車は長い間乗ってみないとわからない可能性が高いですし、耐震偽装は地震が来てみないとわからない可能性が高いですが、では牛肉はと考えると、食べればわかるはずなのです。少なくとも、なぜ鶏や豚に比べて牛に高い値段がついているかといえば、高い金を支払うに値する味だと多くの人が思っているからということになります。視覚では判別できず虚偽表示にだまされたとしても、口にすることで高い金に値する味かどうかについての判別は簡単に可能となり、その時点で情報の非対称性は解消されることになるわけです。
#鶏、豚、牛はアレルゲンでもあるので、それによって肉を選んでいる人もいるでしょうし、ヒンズー教徒やムスリムは宗教上の理由によって肉を選ぶでしょうけれども、ここでは捨象します。
となれば、初回はだまされて買ってしまったにしても、二度とはだまされるはずがない、はずです。しかし実態はといえば、長きに渡り虚偽表示は行われ続け、今まで牛肉ミンチ製品であるとして口にしたものは、そうではないとは見破られてはこなかったのです。この事実が示すのは、牛肉に対する相対的高値は、味ではない何かのために支払われてきたということに他なりません。
それが何か、webmasterにはよくわかりませんが、食材を味で選びさえすれば、このような事態は生じるはずもありません‐今般の事件からわかるのは、上記のとおり、味の満足度でいえば、鶏や豚でも牛と同じ程度の満足が得られるということなのですから。どうせ牛を食べたって牛だとはわからないのだから、安い鶏や豚を買おうと合理的に皆が行動するならば、自ずと牛の値段も下がり、すべての消費者にとって幸せな事態が到来するわけですが・・・。
ま、ミンチだからこそ、ということは言えるでしょうし、コロッケ等に加工された後であればなおさらなのですが。仮にミンチでない肉の印象から牛がいいと思っているのであれば、ミンチは質の悪い肉でもそこそこ食べられるようになる、という事実ぐらいは学ぼう、ということでしょうか。ミンチにおいて元の肉が何かに過剰にこだわることの意味はそれほどありませんし、逆にそれほどこだわりたいのであれば、自分で挽け、ということになるのでしょう。
#webmasterの主観では、たとえばハンバーグだと鶏を混ぜたほうが食感がよくなる(脂の融点が低いため)と思うので、鶏や豚を「質の悪い」と評価するには抵抗もあるのですが、一般的な理解としては、ということで。
