観光庁設置要求と「スクラップ玉」
branchさんが好きそうなネタ(笑)ですが。
国土交通省は26日、観光振興の担当部署を統合した「観光庁」(仮称)を2008年度に新設する方針を固めた。外国人客の誘致や観光を起爆剤にした地域再生など、観光立国を推進する体制を強化するのが目的。08年度予算概算要求と組織・定員要求に盛り込んだ上で、必要な法令を改正する考えだ。
観光庁の設置をめぐっては、昨年12月に観光立国推進基本法が成立した際に、衆参両院が「実現に努力する」と決議。旅行業や航空、鉄道などの業界からも政府、与党に新設の要望が出ていた。
仮にこの報道が正しければ、ということではありますが、一般の方々とは異なり霞が関住人として真っ先に気になるのは、スクラップ玉は何だろうか、ということです。上記報道でいえば「予算概算要求」は財務省に、「組織・定員要求」は総務省にということになりますが、ここで重要なのは後者の方。何らかの幹部ポストを新設しようとするならば、今時純増が認められるはずもなく、替わりに同等のポストを廃止することが当然の前提となっているわけですが、この廃止されるポストを業界用語で「スクラップ玉」といいます。
「同等のポスト」でなければならないわけですが、課長は横滑りにすれば純増はないので、この場合はスクラップ玉をあえて考える必要はありません(現在本省にある課長ポストが全廃されるので、それが自動的にスクラップ玉となります)。外局ですと課の上の組織単位は部となりますが、部長職も(局)次長・審議官級ポストを差し出せばいいので、なんとかなるでしょう。問題は、観光庁長官ポストです。
外局の長のランクは、指定職第6号俸ということになっています(人事院規則9-42)。これを新設するために、既存のポストをスクラップしようとすれば、国土交通省内のものでいえば、
- 技監
- 国土交通審議官
- 気象庁長官
- 海上保安庁長官
ということになります。
#船員中央労働委員会事務局長(こちらは多分違う)と高等海難審判庁長官(こちらは大いに迷います)はどうなんでしょうか。中の人等でご存知の方がいらっしゃいましたらご教示いただければ幸いです。
気象庁や海上保安庁を外局でなくするというのも考えづらい一方、技監ポストを廃止しようとすれば事務官と技官の血みどろの内部闘争に発展するでしょうから、これも考えづらいです。あえていえば国土交通審議官は3名いるので1名ぐらい減らしても、とは考えられますが、これも事務次官が旧建設出身の場合には旧建設1名・旧運輸2名、逆に事務次官が旧運輸出身の場合には旧建設2名、旧運輸1名という微妙なバランス(笑)が成立しているので、それをどう維持するかはなかなか頭の使いどころ(無駄な使い方であるのは同業とて認めざるを得ませんが(笑))ではあります。
出身の異なる事務次官の下で旧省の担当を見る国土交通審議官は外せないとなると、スクラップ玉となる国土交通審議官は消去法的に国際担当ということになります。観光重視路線が引用記事のとおりに海外からの観光客の呼び込みもその射程に収めているなら、観光庁長官がスクラップ玉となる国際担当国土交通審議官の職務を実質的に継承する、といったあたりが無難な落としどころなのかもしれません(で、残る2名の国土交通審議官は旧建設1名、旧運輸1名で固定)。





6月 27th, 2007 at 11:26:12
観光庁の職制を考えてみると、旧運輸の観光部門の横滑りは確実ですが、旧建設には対応しそうな課がなく、旧国土の地方整備課(離島振興課もいれようかな)があるだけとみました。このままだと、観光庁長官は運輸の指定席ですね。
6月 28th, 2007 at 1:27:51
純粋に興味があるのでお伺いしたいのですが、このような形で組織を変えることのメリットとデメリットとの関係はどのようなものなのでしょうか。
もちろん、このお話は法律が通っているのですから、「やらなくてはならない」というお話なのかもしれませんが。
このような形で組織を変えるのはお役人にとっては大仕事になったりしないのでしょうか?お役人というと、何か過去の遺産を変える際には、細かい細かい話をあーだこーだと議論しているというイメージがあります。とすると、こんな大掛かりな組織替えのためには、山のような資料を作ったり、莫大な説明をあちこちにしたり、ひょっとしたら法律や政令を改正したり・・・・要は莫大な残業が生じたりしないのでしょうか?
一方、メリットの方では、「観光庁」という名前が格好がいいのはわかりますし、「国土交通審議官」よりも「観光庁長官」の方が偉そう、というのも理解できるのですが、別に元々「観光」が国土交通省の仕事であるなら、無理に組織替えしなくても、仕事のやり方次第で「観光行政の活発化」くらいできそうな気がするのですが。「課が横滑りできる」などと聞くとなおさらそう思います。
長々と書きましたが、一言で言うと「組織替えのために残業するくらいなら、その部分観光振興の仕事そのものに時間を使う方が生産的ではないのかな」ということです。
6月 28th, 2007 at 1:28:04
「中だけど外」の人です。
私が耳にしたのは昨年度末になってからですが、どうやら、アメリカのNTSBをモデルにした総合事故調査機関を創設しようという構想の下に、海難審判庁(長官は指定職)と航空・鉄道事故調査委員会を統合しようという話があるそうで、この行方によっては指定職のタマが出るのではないでしょうか。
6月 28th, 2007 at 5:05:53
>通りすがりさん
所掌のみを考えるならばそうなりますが、それだと次官級ポストの配分ルール変更になってしまいますので、観光庁長官はたすきがけにならざるを得ないと思います。旧運輸にしても、旧運輸担当国土交通審議官のポストに旧建設を受け入れるよりは、そちらを選ぶのではないかと。
>元経済学部生さん
以前防衛庁→防衛省の際にも、大要実質的には大差なく、シンボリックな効果ではないか、という趣旨のことを書きましたが、この場合も同様だと思います。その意味では本件も、引用の報道のように、与党や関連業界にとって大きな意味があり、内部の人間からすれば、だからどうなのよ、という部分は正直言ってあるんだろうなぁと。
必要な作業は、おおむねお察しのとおりで、国土交通省設置法の改正その他の作業があります。が、最大のものは、そもそもの組織・ポストの新設に係る総務省との折衝であろうかと愚考いたします。
>Schumpさん
高等海難審判庁長官の号俸がどうかということと、統合後の(常任)委員ポストの数やランクがどうかということにもよりますが、それらのバランスがとれるならば、いい収まりであるように思います。
6月 28th, 2007 at 22:29:09
中の人です。
観光庁長官は民間人を持ってくると聞きました。
あと、海難審判庁に加えて船中労もスクラップにするという噂も聞きました。
6月 29th, 2007 at 4:10:26
観光庁要求…
bewaadさんの「観光庁設置要求と「スクラップ玉」」(http://bewaad.com/2007/06/27/182/) #船員中央労働委員会事務局長(こちらは多 (more…)
6月 29th, 2007 at 5:14:14
>ななしさん
情報提供ありがとうございます。大規模なスクラップですね・・・海難審判庁は事故調にくっつけるとして、船中労は、その機能を中労委に持っていくのでしょうか?
とまれ、お示しの話は、qh-nuさんのtrackbackにあるように、公知の話になっているようですから、その方向で調整が進むことになるのだろうと思います。