武田邦彦先生からのメイル
#先日のエントリを受け、武田先生とメイル交換をさせていただいておりましたが、その際、『環境問題はなぜウソがまかり通るのか』のウソに対する反論をお寄せいただきました。公開をご快諾いただいたので、以下、関係部分を転載いたします。
ネットでご指摘されていること(1)
「私は当日の番組は見ていなかったが、6月3日(日)にテレビをつけると、再び武田氏がゲストに呼ばれ、主張の違う細田衛士氏(慶應義塾大学教授)と議論を戦わせていた。細田氏はごくまっとうな話をされ、「(武田氏の著書にある)ペットボトル再利用量の数字はおかしい」とも指摘されていた。」
これについて事実を示したいと思います。
事実は、「ペットボトルの再利用量の数字はおかしい」とのご発言に対してパネルの方から「それでは何万トンですか?」という質問に対して「そんなことはわからない」とお答えになりました。
つまり、ペットボトルの再利用量は拙著「環境問題はなぜウソがまかり通るのか」で示した数字が日本では初めてで、その他の数字はいまだにありません。細田先生がお答えできなかったのも、リサイクルに関係している機関が公表しないからです。
もし、細田先生が「数字がおかしい」と言われる場合は、「数字」を示さなければならないと思います。
私は、10年間も多くの日本人がペットボトルのリサイクルに協力してきたのだから、リサイクルしてきた方は、それが何にどの程度使われているかを知りたいと思い、ペットボトル・リサイクル協会の数字に基づき数量を出し、理論計算などでチェックしました。それは私のホームページに示してあります。
数字は常に公的機関の数字が正しいとは限りません。私の場合、著作はリサイクル、地球温暖化、ダイオキシンと多岐にわたるのでその根拠を細かく示すわけにはいかなかったので、ネットで公開しています。
ご検討ください。
ネットで指摘されていること(2)
「報告の「将来予測」では《南北両極では海氷の縮小が予測される》《グリーンランドの氷床の縮小は、2100年以降も引き続き海面水位の上昇を引き起こすと予測される。地球の平均気温が産業革命前と比べて1.9〜4.6度上昇し、それが数千年間続くとグリーンランドの氷床はほぼ完全に消失し、海水面が約7メートル上昇する》《人間が排出する二酸化炭素は1000年以上、温暖化と海水面の上昇を引き起こす》とあり、武田氏の引用とは全く違う。」
これについて説明します。
(1)ここで引用しているのは2007年2月にでた第4次IPCC報告で、拙著の後に世に出ていますので、時間的な順序で拙著に「引用」するのは物理的に無理であることをまずご理解ください。
(2)内容的には、「地球の平均気温が・・・上昇し、それが数千年続くと・・」ということを前提にしています。私は今後30年程度を目安にしておりますので、数千年後を論評しているわけではありません。
私も温暖化が数千年続けば海水面が上がると考えています。というよりこの記事はIPCCの報告書に基づいていますが、私はIPCCにそって話をしていますので、数値は同一です。
私は地球温暖化をはじめ、多くの将来予測には30年を一つの目安としています。それは、次の3つの理由によります。
- 温暖化の原因になる二酸化炭素は石油の燃焼によって出ますが、石油は30年後にはかなり供給に問題が生じると言われており、それが事実かどうかは別にして、相反すること(石油の枯渇と地球温暖化)を同時に論じるのは誠意がないので、30年をとっている。
- 30年が一世代程度だから長さとして適当。予測もこのぐらいが良い。
- 日本がこれまで
1930年 ロンドン条約で軍拡中
1960年 所得倍増計画で大量生産中
1990年 バブル崩壊で環境重視
と30年ごとに大きく変化している。
従いまして、数1000年後を論じるか30年後を論じるかの問題ですから、「私の引用と違う」というところを何とかしていただければと存じます。
ネットで指摘されていること(3)
「これは、武田氏が「浮かんでいる氷」しか見ていないからそういう結論になるのだ。IPCC報告のように、極地(北極圏)にある世界最大の島、グリーンランドの氷床(広い土地を覆う厚い氷)に目を向けると、一転して上記のような予測となり、水位は7mも上昇する。」
これについてはIPCCの記述にそったということです。
IPCCの報告では、グリーンランドは「北極、北極圏、極地」とは別に「グリーンランド」として表示しています。従って、拙著でもグリーンランドと北極を区別しています。
たとえばIPCCの第四次報告(ご参照になっていること)でも、次の表が示されており、グリーンランドはグリーンランドとして表示しています。(これまでも区別しています。)地質学的には北極圏の中にグリーンランドを含む場合がありますが、地球温暖化では区別しています。
|海面水位の上昇率(mm/年)||
| 海面水位上昇の要因 | 1961〜2003 | 1993〜2003 |
|---|---|---|
| 熱膨張 | 0.42±0.12 | 1.6±0.5 |
| 氷河と氷帽 | 0.50±0.18 | 0.77±0.22 |
| グリーンランド氷床 | 0.05±0.12 | 0.21±0.07 |
| 南極氷床 | 0.14±0.41 | 0.21±0.35 |
| 海面水位上昇に寄与する個別要因の合計 | 1.1±0.5 | 2.8±0.7 |
| 観測された海面水位上昇 | 1.8±0.5 | 3.1±0.7 |
| 差異(観測値から気候の寄与の見積もりの総計を差し引いたもの) | 0.7±0.7 | 0.3±1.0 |
この表からは、グリーンランドの氷床が融けることによって将来、起こると考えられる海水面の上昇は、年に0.21mmですから、30年で6ミリメートル程度です。
30年で6ミリメートルだけ海水が上昇する場合、それほど大きな影響はありません。日本の場合、潮の満ち引きなどで2メートル40センチ、地盤沈下で2メートル程度の海水面の上昇は経験済みです。回避できないほどの問題が起こったことはありません。
ゴア氏の6メートル(7メートル?)については私が執筆した文芸春秋の記事をご参考になってください。6ミリメートルと6メートルでは1000倍も違いがあり、正確な事実認識が必要と思います。
また日本のマスメディアの報道は主として北極に浮かんでいる氷が融ける映像を流していましたので、それが物理的原理(アルキメデスの原理)と違うことを示しました。学校でならう基本的な法則を日常生活に活かすことが大切と思います。
ネットで指摘されていること(4)
「しかし、出典と記されたPETボトルリサイクル推進協議会の「PETボトルリサイクル年次報告書2006年度版」を読むと、05(平成17)年の国内生産量は53万t、実質回収量(国内回収+輸出)は38万t(回収率72%)、そしてその全て(38万t)がリサイクル(指定法人による引き取り+輸出による海外リサイクル)に回っているとあり、同書の3万tとはひと桁違う。」
上記の記述ではつぎのことをご考慮ください。
「38万トン」はリサイクル(場合によって定義が違うことに注意)した量ではありません。日本国民の手にとどかず、再利用されていません。
私は著作でも書いてありますように、容器包装リサイクル法には「資源の節約のために、資源を繰り返し使う」とある。そこで、リサイクルでは、まず
・・・現実に国民が再利用している(業者が取り扱ったということではない)・・・
を前提として、
- 焼却はリサイクルに入れない。
- 国際的な約束(先進国の廃棄物を開発途上国に出さない)を守る
- 資源の有効利用になっている
の3つを制限を加えています。私には当然のように思います。
そこで、「リサイクル率」の定義として、「廃棄されたペットボトル」を分母とし、「日本国民が利用したリサイクル・ペットボトルの量(用途は制限しないが上記条件は制限する)」を分子として示すとしました。
政府やマスメディアがリサイクルを国民に呼びかける時に、同じことを言っています。つまり、
「皆さん、ペットボトルをリサイクルしましょう。焼却は有害ガスを出すので焼却せず、自分たちが出す廃棄物は自分たちで処理しましょう」
と呼び掛けています。
またリオデジャネイロ宣言で、「先進国の廃棄物を発展途上国に出さない」と約束していますし、ここは「約束を守る」という「日本人の誠」を信じています。先進国が廃棄物やそれを処理したもの、または中古品を国をあげて輸出する弊害は、次のようなものです。
発展途上国が貧乏だからと言って寿命12年のテレビを10年は日本で使って中古品として輸出するのも日本人の誠に反すると私は思っている。このようにすると、発展途上国は2年使ったら捨てなければならず、日本は廃棄物ゼロ、発展途上国は5回、買わなければならないので、もし日本人が自分で廃棄物を処理した場合に比較して5倍の廃棄物がでるからです。
拙著では法律の趣旨に基づいてリサイクルの定義をし、ペットボトル・リサイクル協会から示されている数字をもとにして計算した数字とそれを理論的な計算でチェックして掲載しました。
ペットボトル・リサイクル協会が拙著の数字を「捏造」と表現しているということですがが、日本で利用されたリサイクル・ペットボトルの量は拙著で示した量が唯一なのでもともと捏造ということはありません。また計算ではリサイクル協会の数値をもとにしていますので礼儀として出典を示したものです。
