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  • 07/27/2007 (6:50 pm)

    8月利上げ観測を踏まえての意見表明‐CPIと「柱」と

    Filed under: economy, BOJ ::

    8月に日銀が利上げに踏み切るとの観測が広まっている中、その政策決定会合に先立つ最後のCPI統計が公表されました。日銀が指標としているコアCPI(生鮮食品を除く)、およびwebmasterがコアCPIよりも着目すべきと考えるコアコアCPI(酒類以外の食料およびエネルギを除く)の推移(対前年同月)を掲げれば次のとおりです。

    年月 コアCPI 同左(連鎖方式) コアコアCPI 同左(連鎖方式)
    2006.07 0.2 ▲0.3
    .08 0.3 ▲0.4
    .09 0.2 ▲0.5
    .10 0.1 ▲0.4
    .11 0.2 ▲0.2
    .12 0.1 ▲0.3
    2007.01 0.0 ▲0.1 ▲0.2 ▲0.3
    .02 ▲0.1 ▲0.1 ▲0.3 ▲0.3
    .03 ▲0.3 ▲0.3 ▲0.4 ▲0.5
    .04 ▲0.1 ▲0.2 ▲0.2 ▲0.3
    .05 ▲0.1 ▲0.2 ▲0.3 ▲0.4
    .06 ▲0.1 ▲0.2 ▲0.4 ▲0.5

    常識的に考えれば、すなわち金融政策は安定的な物価動向(=マイルドインフレ)の実現を目的として用いるとの理解に基づけば、このような状況で利上げすべき事情はまったくありません。むしろ、CPIの上方バイアスを捨象するとしても、継続してコアコアCPIが下落基調であるわけですから、利下げ(さらには量的緩和への復帰)すべきというのがwebmasterの考えです。

    しかし、日銀はこの見解ではありません。日銀の採用する金融政策運営の基本となる考え方は、第一の柱・第二の柱と表現されていますが、それをwebmaster流に翻訳すれば次のようなものとなります。

    第一の柱

    2年間の将来予測に基づく金融政策判断

    第二の柱

    2年後以降のリスクに対応するための金融政策判断

    日銀自身の自覚がどうであるかはwebmasterはよく知るものではありませんが(笑)、第三者として観察するに、量的緩和解除〜ゼロ金利解除あたりまでは第二の柱=バブル再発防止を相当意識した説明ぶりであったところ、その後の株価の推移等により自信を喪失したのか(笑)、最近では第一の柱を中心とした説明となっています。デフレ脱却を口にして量的緩和を解除したのにもかかわらず、コアコアCPIで見ればずっとデフレですし、コアCPIで見てもデフレ回帰が観察される(しかも、くどいようですが上方バイアスを考慮せずとも、です)中、なぜ第一の柱で利上げが可能なのか、おそらくは次の前提を置いているからでしょう。

    • 潜在成長率を上回る経済成長
    • 国際的なディスインフレーション傾向
    • 絶対水準としての低金利=緩和的状態

    これらの前提から、次のようなストーリーを日銀が描いているものと考えられます。

    1. 経済成長においては、好況であれ不況であれ過度の変動は望ましくなく、行き過ぎた好況が見込まれるのであれば、引締めを図るべき。
    2. 近年は潜在成長率を上回る経済成長=経済は過熱気味であり、その継続が見込まれるので、1.に照らせば、徐々に引締めへの方向転換を図るべき。
    3. 他方、物価は「経済は過熱気味」との認識とは逆向きの動きであるが、国際的なそれはディスインフレーション傾向ゆえのことであって、その傾向を差し引けば上昇しているも同然である。
    4. そうはいってもそれほどの上昇幅ではないだろうから、物価への配慮として金利の絶対水準は低く抑えている=金融は緩和気味を維持しており、引き締めているわけではない。

    webmasterはこのストーリーを採らないわけですが、つまりは前提がおかしいと考えるからです。具体的には次のとおりとなります。

    • 潜在成長率は過小推計ではないか。コアコアCPIが対前年同月マイナスを続け、失業率もNAIRUに達していないのは、依然として潜在成長率以下か、上回るとしても若干程度に止まっていることを示唆するのではないか。
    • 国際的なディスインフレーション傾向なるものが仮に存在するとしても、それはあくまでマイルドインフレの達成がなされているということであり、(インフレ率に基づき定義する)デフレから脱却できないことの理由にはならない。
    • 名目金利の絶対水準で引締めか緩和かを定義するのはナンセンス。たとえば現状であれば5%の金利はすさまじい引締めとなりますが、インフレ率が10%であればすさまじい緩和なわけですから。

    付け加えるならば、このような理屈を別にしても、上記ストーリーに基づく金融政策は、運営のあり方としても疑問です。というのも、CPI統計が国際的なディスインフレーション傾向なるものによって政策の指標足り得ないとしてしまっており、となれば政策の指標としては経済成長を見てということと思わざるを得ません。しかし、経済成長率(GDP統計)は算出にCPIよりもはるかに時間を要し、たとえば現時点で利用可能な最新データは本年の第1四半期の2次速報に過ぎません。すでに第3四半期に入っているというのに、2期も前、しかも確定でない計数ということになります。

    当然ながらそれを理由に足下の金融政策を説明することはできません。となれば、この手の統計数値には基づかず裁量的に経済成長の程度を総合判断して金融政策を決定している、ということにならざるを得ませんが、これでは金融政策判断の是非を議論しようにも水掛け論になってしまいます(現実がそうであるように)。第一の柱に基づき、しかもCPIを事実上無視して金融政策を決定するというのであれば、短観でもなんでもいいのですが、基本となる判断指標は何かを明らかにし、裁量で他の要素を考慮したというのならば何をどのように考慮したのかを明確にするのが、中央銀行に求められる真の透明性というものでしょう。逆に言えば、その手の透明性をあやふやにしているからこその利上げであるということにもなるのですが・・・。

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    6 Responses to “8月利上げ観測を踏まえての意見表明‐CPIと「柱」と”

    1. yy Says:

      潜在成長率を用いたGDPギャップの推計には、以前から疑問を感じています。

      私の理解が間違っていなければですが、現在の潜在GDPの推計方法だと、資本や労働の稼働率が、過去の平均的な水準を上回れば、GDPギャップはプラスに出る筈です。
      しかし、この状態は稼働率の上昇を示すに過ぎず、本当に需要超過であると言えるのかは疑問です。
      例えば、デフレが長期に続いた後では、過去の平均的稼働率は低下している筈です。この場合、潜在成長率を上回った成長というのは、デフレギャップが縮小したことを示すに過ぎず、需要超過になったことの証明にはならないでしょう。

      この根拠として、GDPギャップがプラスになっているにも関わらず、名目成長率が低迷していることを挙げられると思います。本来、供給力の上限以上に経済が成長していれば、名目成長率は実質成長率を上回っていると考えられるので。

      とりあえず、日銀の利上げの前提はおかしいというのに同意、ということで。

    2. 徳保隆夫 Says:

      先日、竹中平蔵さんが日銀総裁就任説を決してありえないことだと否定していましたが、ありえる・ありえないは別として、どうして「やりたい」といわないのか不思議です。

      中原伸之さんの本を読んで思ったのは、日銀の政策を変える方法って、案外簡単なんじゃないかと。有力な総裁候補といわれる竹中さんと、過去に審議委員就任の打診を蹴った浜田さんと岩田さんを説得すること、それで全てのように思います。3人揃えば、財界出身の2人を取り込むことで多数派形成に成功、インタゲでも何でも可能になる。少なくともデフレが続いているのに利上げが話題になるナゾはどこかへすっ飛ぶのではないでしょうか。

      敵を批判しても聞く耳を持たれないなら、味方を送り込むしかないと思います。

    3. cloudy Says:

      ワインシュタイン教授et al.から「日本のCPIはかなり上方バイアスがある」という指摘があったそうです。

      http://www.plateaus.com/econ/blog/archives/286

    4. webmaster Says:

      >yyさん
      そのあたり、専門的な議論は私にはついていけないのですが(笑)、多くの潜在成長率推計が要するに実績に引っ張られるので問題だ、ということと理解しています。簡単に言えば、循環要因が長くても数年だという枠組みの下では、「失われた十年」とやらは定義として構造要因に分類されてしまうということなのでしょう。日銀の姿勢を構造要因と呼べば的確な評価だとは思いますが(笑)。

      >徳保隆夫さん
      竹中先生の態度については、下手にやる気を見せるとつぶされるというリスクへの政治的配慮やもしれず、と期待を完全にはなくさない私は甘いかもしれません(笑)。

      上を替えれば、というのは、やっぱり日銀も大組織であり、サラリーマンは上の指示に案外従うものだ、ということなのだと理解しています。個人的情報としても、たとえば速水前総裁についてはかなりの日銀職員はいかがなものかと思っていたようですが、とはいっても対外的にはごらんの通り、ということで、仮に竹中総裁が実現し、多くの日銀職員が彼の考えに個人的には反対だったとしても、そうしたトップを裏切るような真似をするようなサラリーマンはそれほどいないのだろうなぁと。

      蛇足ながら、浜田先生や岩田先生のご判断について、もちろん職業選択の自由は憲法上の権利ですからそれが問題であるとはもうしませんが、私の意見としては残念だなぁと思います。日銀職員にも、しょせんは評論家的な意見であって現場に出る勇気がないんだと馬鹿にされもしたでしょうし・・・。

      >cloudyさん
      以前↓でご紹介したように、ワインシュタイン教授がかねてから問題視されているものと理解していますが、なかなか反応はなされないようで。エントリにて連鎖方式の数字をご紹介したのは、その趣旨への賛同を表すものとご理解いただければ。
      http://bewaad.sakura.ne.jp/20061024.html#p02

    5. koge Says:

      実は日銀は対外的だけではなく内部でも「独立性」が重要視されていて、本当は上の方はやらざるを得ないと思ってるけど反発にあってできない、北〇〇のように組織を把握してないなんてことだけはないと思いたい…。

    6. webmaster Says:

      >kogeさん
      私の半径5mではそのようなことはないのですが、全体の傾向はどうなんでしょうか・・・。

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