昨日の続きのようなものですが。
小池百合子防衛大臣が、トップダウンで守屋武昌事務次官を退任させようとしたものの中に浮き、人事が凍結されて内閣改造後に判断することになりそうだとのこと。以前、田中真紀子外務大臣が同様のことをしてバッシングされたことがありましたが、報道によると守屋氏は「聞いていない」と怒り、官邸の安部首相を訪ねたとか。テレビや新聞社は、相変わらず「政局」として伝えていますが、官僚の増長ぶり、省庁のガバナンスの問題として捉えるべきではないのでしょうか。
小池大臣が、官僚や防衛族などへの寝回しといった霞ヶ関と永田町の論理に従わず、人事を記者にリークしたという戦略がまずかったこと、人事について相談されていないことに事務次官が不快に思うことは理解できますが、国民に選ばれたわけでもない事務次官が大臣の判断に公然と反旗を翻し、首相の貴重な時間(まあ、安倍氏なので貴重かどうか分からないという議論はさておき)を自身の進退について割くというのは官僚の分を超えています。政党がシンクタンク機能を持たず、政策立案を霞ヶ関に丸投げしている政治の問題、官僚の流動性がないこと(民間企業のように、次の事務次官がダメなら守屋氏を呼び戻すというのもアリにすればいいと思う)、も議論しなければなりませんが、その前にあくまで官僚は公務員であり、国民に選ばれた大臣を支えるのが仕事のはずです。
「官僚天国ニッポン、事務次官はクビに出来ないのか」(@ガ島通信8/13付)
そもそも事務次官人事は、大臣の専決事項ではなく、官邸の意向も踏まえて行うものとされています。だからこそ、塩崎官房長官も待ったをかけているわけです。
小池防衛相が一度内定した守屋武昌防衛事務次官(62)の退任が13日、凍結された。在任5年目で官邸と太いパイプを持つ守屋氏に相談しないまま小池氏が警察庁出身者を後任に決めたため、守屋氏が反発。塩崎官房長官も根回し不足を理由に「待った」をかけた。13日には小池、守屋両氏が代わる代わる首相官邸を訪れ、安倍首相や塩崎氏と直談判する異例の事態に。結論は27日ごろの内閣改造後に先送りされる公算が大きく、安倍政権の求心力の低下が露呈した形だ。
小池氏は13日午前、官邸に塩崎氏を訪れ、15日の閣議で次官人事を決めるよう要請。しかし塩崎氏は「事前に相談がなく、手続きが非常識だ」などと突っぱねた。この直後、今度は守屋氏が官邸で安倍首相と会談。さらに小池氏が再び訪れ首相と面会。首相は13日夜、「人事検討会議は官房長官が開きます」と記者団に語り、現段階では塩崎氏の判断を支持する考えを示した。
収まりがつかない小池氏は同夜、周囲に怒りをぶちまけた。「塩崎さんは、官僚の長期在任を許さないのが持論だったはずではないのか!」
事務次官などの省庁幹部人事は通例、大臣と官邸双方の意向が反映される。大臣が現職事務次官と相談して大筋の人事を決め、正副官房長官による人事検討会議の了承を得て閣議で決定するのが慣例となっていた。
朝日「防衛次官人事で火花 防衛相の独断に官邸「相談ない」」
塩崎氏は「次官人事は正副官房長官による人事検討会議で決めるべきだが、事前に報告がなく報道だけが先行した。人事の意思決定システムが大きく揺らいでいる」と指摘。さらに「内閣改造後に新しい防衛相の下で決めるべきで、これは正副官房長官4人の総意だ」と小池氏の提案を拒否した。
東京「小池氏、一時辞任も示唆 防衛次官人事先送りへ」
民間企業でたとえるならば、部長人事は本部長権限ではなく取締役会事項とされているような場合において、取締役会をさしおいて本部長が部長人事を決定したので、総務担当取締役が異を唱えた、というようなものでしょう。藤代裕之さんがエントリのタイトルに冠したように事務次官を辞めさせることができないなんてことはまったくなく、それこそ閣議決定(前述の例で言えば取締役会決定)をしてしまえば終わる話です。閣議の主宰者である総理(とその補佐役である官房長官)が閣議でなく凍結を選んだのですから、仮に小池大臣の意向が尊重されるべきなのだと藤代さんがお考えであれば、その批判の対象は総理・官房長官であるべきでしょう。
まして、branchさんが言及されているように、小池大臣は事前に総理の了解はとりつけていた可能性があります。もしそうであるならば、ことは官邸内の意思疎通・ガヴァナンスの問題、つまりは総理が担当である官房長官の了解を得ずして了承したことについて、担当の意向とトップダウンとのいずれを重視するかの問題でしょう。ま、塩崎官房長官が官僚の操り人形であるとお考えであるならば、話は違ってくるのでしょうけれども。
#正直に申し上げるならば、総理の寵を小池大臣と塩崎長官とが争い、今のところ塩崎長官に軍配が上がっているようにしか見えない気が(笑)。
蛇足ながら藤代さんは、同エントリにて、
先日は、天下り斡旋を調査するために公開ヒアリングに、財務、厚生労働、農水、国土交通各省の事務次官経験者全員が出席要請を拒否していることも明らかになりました。小泉政権は国民の圧倒的な支持があり、ある程度(あくまである程度)は官僚に押さえが聞きましたが、支持率が低い安倍政権は既に官僚に見切られているのは明らか。政治もだらしないですが、増長した官僚の行動を批判なく伝えるマスメディアも、官僚天国ニッポンを支えているのです。
「官僚天国ニッポン、事務次官はクビに出来ないのか」(@ガ島通信8/13付)
ともお書きです。しかしこの件については、
(問)昨日の懇談会のお話で恐縮なんですけれども、事務次官OBの出席要請というのは、なされたのかなされてなかったのかがはっきりしなくて……。
(答)これは私の方から行政改革推進本部事務局に対して23日の会合に7名の次官OBの方に出席をお願いするように明示的に指示を出しております。したがって、週末の時点で事務局から事務次官OBが都合がつかないようだという報告がございました。これを塩崎官房長官の方にも報告をしておりますので、官房長官の方では事務次官OBが出席したくないと言ってきているという理解をされたんだと思います。
昨日の説明によれば、皆様もお聞きになっていたと思いますが、行政改革推進本部事務局と各省との間でどういう内容を聞くかなどの打合せをしておったと。そのうちに時間切れになってしまったという説明でした。つまり、次官OBには直接声をかけていなかったというのが真相だったのというのが昨日の説明でした。
これは私の理解では、行政改革推進本部事務局と各省が、意図的にか意図せざるものかは別として、結果としてサボタージュを行ったと言われてもやむを得ない結果だと思います。事務局にはこうした不手際を繰り返さないよう私の方から強く指示を出しております。
事実関係というのはそういうところですね。
(略)
(問)確認なんですが、要するに次官OBのところまで、本人には伝わってなかったという認識でよろしいんですか。
(答)事務方の説明では、結果としてそういうことだと思います。つまり、各省といろいろ打合せをしているうちに時間が過ぎてしまったということですから。ですから、結果として伝わっていなかったと。ですから、それが意図的にやったのか、成り行き上そうなってしまったのかについては判然としません。結果としてサボタージュと言われてもしようがないなということではないでしょうか。
渡辺内閣府特命担当大臣記者会見要旨(平成19年7月24日(火)10:06〜10:19 於:内閣府本府 522号室)
と渡辺大臣がはっきりおっしゃっているように、「事務次官経験者全員が出席要請を拒否している」というのは事実無根です。まあ何をやっても官僚が批判される現状はあきらめていますが、せめて事実に基づいた批判をお願いしたいもので。それとも、官僚は存在自体悪だから、言いがかりだろうと何だろうと、あらゆる批判は望ましいものであるとお考えなのでしょうか?