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  • 09/09/2007 (3:17 pm)

    地方分権と経済成長

    Filed under: economy, government, politics ::

    とあるところにて、

    中央集権国家と地方分権国家の成長率の実証分析が欲しい。

    というものを見かけ、確かに興味深い話だと思いましたので、簡単な分析を。

    材料としては、当サイトでは何度か取り上げているアレンド・レイプハルト「民主主義対民主主義」を用います。その第10章は「連邦制と分権」であり、「連邦制・分権指数」として、まずは連邦制と非連邦制(単一国家)に分かち、それぞれを分権と中央集権とに細分し、「半連邦制」を追加した1から5までの指数が定義され、36ヶ国について分類がなされています(一部、.5や.2といった調整があります)。

    それに、国際貿易投資研究所がまとめた世界各国の実質成長率(GDP伸び率)を重ね合わせると、次のような表ができます。

    連邦制・分権指数 90-95 95-00 00-05
    オーストラリア(*) 5 2.69 4.22 3.15
    カナダ(*) 5 1.72 4.14 2.54
    ドイツ(*) 5 1.48 2.01 0.72
    スイス(*) 5 0.08 2.02 1.00
    アメリカ(*) 5 2.46 4.10 2.39
    ベルギー(*) 5 n.a. n.a. 1.48
    オーストリア(*) 4.5 2.17 2.94 1.51
    インド 4.5 5.20 5.78 6.00
    ベネズエラ 4 3.45 0.61 ▲3.22
    イスラエル 3 n.a. 4.82 1.96
    オランダ(*) 3 5.52 4.05 1.16
    パプアニューギニア 3 n.a. 0.75 1.37
    スペイン(*) 3 1.94 4.11 3.23
    デンマーク(*) 2 2.34 2.86 1.39
    フィンランド(*) 2 ▲0.72 4.65 2.27
    日本(*) 2 0.93 0.76 1.69
    ノルウェー(*) 2 3.85 3.60 2.06
    スウェーデン(*) 2 0.98 3.23 2.24
    フランス(*) 1.2 1.31 2.80 1.49
    イタリア(*) 1.2 1.80 1.92 0.63
    トリニダッド 1.2 n.a. 7.55 7.37
    バハマ 1 ▲1.64 n.a. n.a.
    バルバドス 1 ▲0.75 3.34 1.68
    ボツワナ 1 4.37 7.96 6.35
    コロンビア 1 4.55 0.92 3.44
    コスタリカ 1 6.28 4.93 4.07
    ギリシャ(*) 1 1.25 3.42 4.43
    アイスランド(*) 1 n.a. 4.74 3.87
    アイルランド(*) 1 4.65 9.78 5.16
    ジャマイカ 1 2.21 ▲0.08 1.47
    ルクセンブルク(*) 1 6.78 6.13 3.29
    マルタ 1 n.a. n.a. 0.30
    モーリシャス 1 n.a. n.a. 3.35
    ニュージーランド(*) 1 3.12 2.99 3.51
    ポルトガル(*) 1 n.a. n.a. 0.64
    イギリス(*) 1 1.66 3.19 2.44

    #国名に「*」が付してあるのはOECD加盟国です。また、ベルギーは1993年以前は指数3.1とされていますが、実質GDP成長率が2000年以降のものしか記載されていないので、指数5にのみ掲げてあります。

    指数と言いつつ、先の定義のように序数として振られているので、まずは指数ごとの平均値を比較してみます。

    指数 平均実質GDP成長率 うちOECD加盟国
    5 2.26 2.26
    4.5 3.93 2.21
    4 0.28 n.a.
    3 2.89 3.34
    2 2.14 2.14
    1.2 3.11 1.66
    1 3.44 3.95

    これを見る限り、先進国であろうとなかろうと、地方分権かどうかによって経済成長の程度が変わってくるとの傾向は観察されません。

    さて、この指数は序数ではないかとはレイプハルトも気にしていたようで、全税収に対する中央政府税収の比率(これは当然基数となります)との相関係数(▲0.66、1%有意)や、ラーネとアションによる制度的自律指数との相関係数(0.82)をチェックしています。これらからすると、基数として扱うことがナンセンスというわけでもなさそうです。

    一応この指数が基数としても扱えると仮定して、上記の表から散布図を作成し、近似曲線を求めると次のようになります。

    1. 全体
      • y=−0.2204x+3.4026
      • R-squared=0.0262
    2. うちOECD加盟国
      • y=−0.2408x+3.3765
      • R-squared=0.0513

    R-squaredがほぼゼロですからほとんど無関係だということになりますが、にしてもおぼろげに見えるトレンドの傾きにあえて触れるならそれは負、つまり地方分権が進めば進むほど経済成長率は低くなるようです。地方分権が進めば経済成長が可能だとは、少なくともレイプハルトの分析に依拠する限り、あまり確からしい政策提言ではなさそうだといわざるを得ないでしょう。

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    16 Responses to “地方分権と経済成長”

    1. PK Says:

      バランスシートが公会計に入り込んだ歴史は浅い。
      私は、経済体系は無数の経営主体がバランスシートをバッファとして調整して全体を成していると考えているので、
      自治体もまたバランスシートを持たなければならないと考えている。農家も、家計もいずれは持つべきだが、そこまで行くにはまだ遠い。
      企業に続いて、次は自治体が持つべき段階に来ている。
      私にとっては、地方自治・分権は進むべき方向だ

    2. とおりすがり Says:

      中央集権か地方分権か、というより許認可権行政から届出(と罰則強化)制の行政にもっと移行して欲しいと思っています。
      で、地方分権を進めるといっても、国Iキャリアさんが牛耳っていたことを、そのまま地方上級が仕切るのは勘弁して欲しいと思います。質的に無理がある(違います?)。
      地方の人材レベルにはほとほと困っているので、地方分権というのは正直なところとっても不安を持っています。

    3. webmaster Says:

      >とおりすがりさん
      許認可行政(事前統制型)から届出・罰則行政(事後チェック型)への移行は、行政府により多くの頭数が必要とならざるを得ません。少なくとも国家公務員については、総定員法の縛りがある以上、なかなか進みがたいといわざるを得ないのが現状ですし、地方公務員についても、状況は団体によってさまざまでしょうが、総じて増員は難しいのではないでしょうか。

    4. PK Says:

      経済システムの中でバランスシートが形成されるのは、成長のためではなくて、適応のためであって、成長は適応のための戦略の一つに過ぎない。
      道州制などの分権化に際して、何も全国でいっせいに始める必要は無い。九州なら九州が先行して、不足する人材は全国化調達すればよく、ある程度のノウハウが蓄積された後に、人材育成と平行させて、分権の全国化を進めればよい。
      分権化のノウハウは、バランスシート上の移動として記述されテキスト化されないといけない。

    5. 地方公務員 Says:

      施策と財源配分を効率よく行うには、地方分権の進展はじゃまでしょう。

      正直これ以上の分権は財源がついてこないとどうしようもありません。規制緩和すればするほどそれを監視するコストは増大しますが、現状は逆ですしね。

      それよりも問題は、地方の意見を全く聞かずに制度変更を行う(それも突然一方的かつ頻繁)中央政府です。
      政治主導の弊害かと思いますが・・・

    6. webmaster Says:

      >地方公務員さん
      地方分権に関して言えば、一部の知事の意見が六団体の総意であるかのようにプレゼンされるのはどうかなぁ、と思います。税源移譲や交付税改革が一部の団体の利益にしかならないなんて最初っからわかりきっていたことなのに、今文句を言うなら六団体の総意でないと当時言ってくれれば、と。

    7. 地方公務員 Says:

      >>地方公務員さん
      >地方分権に関して言えば、一部の知事の意見が六団体の総意であるかのようにプレゼンされるのはどうかなぁ、と思います。税源移譲や交付税改革が一部の団体の利益にしかならないなんて最初っからわかりきっていたことなのに、今文句を言うなら六団体の総意でないと当時言ってくれれば、と。

      全くその通りだと思います。
      声の大きい人の主張がまかり通るのはどこでも同じですね。
      その他の知事は何してるんだといいたいですが。

      増田総務相は税収比率を6:4から5:5にすべきだと言っておられますので、ますます地方は奈落の底 フニャニャ・・・

      そろそろ所謂「改革派知事」の本当の実績の検証が必要だと思います。元鳥取県知事も職員給与を引き下げただけとしか思えないのですが(本人は慶応大教授ですからね〜)

    8. webmaster Says:

      >地方公務員さん
      結局のところ、知事会できちんと利害調整ができないということが原因といいますか、まして市町村長会等にいたってはなおさらといいますか。改革派知事たちだって、地元マスメディアが都道府県庁とはなかなか決定的な対立構造になりにくいことの恩恵を受けているんですよねぇ。

    9. 通行人 Says:

      つか、知事同士が勝手に話し合うのはなぁ。
      何のために衆議院があると思ってるんだよと。

    10. webmaster Says:

      >通行人さん
      世の中では、霞が関はもちろんのこと、国会よりも知事会が信頼できるとされがちなようです・・・。

    11. 地方公務員 Says:

      >bewaadさん

      知事自身の選挙のことを考えて、税源移譲がさもすばらしいかのような風潮において、あえてまっとうな意見を言うことを躊躇したのかも。

      私の所(改革派ではないです)では、地元マスコミは県政の批判はあっても知事の批判はありませんでしたからね〜
      全国紙の支局の記事は、選挙直前にだけそれとなく掲載するだけでしたね(あとは定例の年中行事の記事)。

      改革派知事の所のマスコミさんにとっては、知事が旧体制の(アホな)県庁職員を糾弾する姿の方がネタになるんでしょうな。

    12. webmaster Says:

      >地方公務員さん
      三位一体話とは違いますが、田中前長野県知事は東京のメディアから高く評価され、それが現地に逆流して高い評価が(少なくとも前半は)地元でも形成された、なんて話は聞きますね。税源移譲に反対だなんていったら、同様のメカニズムで評判が悪くなると危惧するのは合理的であるように思われます。

    13. 地方公務員 Says:

      >bewaadさん
      >田中前長野県知事は東京のメディアから高く評価され、それが現地に逆流して高い評価が(少なくとも前半は)地元でも形成された、なんて話は聞きますね。

      マスコミ(情報発信)の地方分権が先ですね、、、

    14. webmaster Says:

      >地方公務員さん
      地方紙・地方局はあるわけで、となると「地方分権」のためには地方メディアに補助金でも渡しますか、ということになってしまいます。実際問題として、難しいといわざるを得ないのではないかと思います。

    15. koge Says:

      すべての地方局をCSやネットに上げて日本中で見られるようにすればいいんですよね。ただ、ネット番組がなくなると三大都市圏ですら今の全局合併させて1県1局にしてももローカル番組だけじゃうまらなそうなんですが。
      でも、もし今の日本がちょっと前までの米国のような、町ごとの地方紙・ローカル局が中心の社会になったら、スキャンダリズムによって首長や地方議員も最近の首相並みにころころ変わる社会になりそうな気がします。そのほうが今の長期政権よりは「地方分権」が進むのかもしれませんが。

    16. webmaster Says:

      >kogeさん
      >すべての地方局をCSやネットに上げて日本中で見られるようにすればいいんですよね。
      どうなんでしょう、新幹線や高速道路の開通でかえって都市に産業が吸い取られるように、ケーブル等でキー局とガチンコになったら、地方局は壊滅しちゃうんじゃないでしょうか。現時点では、キー局の番組を放送せずに独自作成番組を流すことについて独占状態ですが、これはかえって地方局を守っているものであるような気がします。

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