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  • 09/13/2007 (6:07 am)

    安倍総理辞職表明と小泉純一郎の呪い

    Filed under: politics ::

    以前webmasterは、次のように書きました。

    • 今回の組閣で一番割を食ったのは明らかに安倍官房長官でしょう。というのも、閣外にいれば担がれやすいので取り込んだということもありますが、それ以上に、官房長官は総理の盾となる身ですから自分の主張は殺すことが求められ、したがって彼独自の見解として支持を集めていた主張(北朝鮮への経済制裁、人権擁護法反対など)を引っ込めざるを得ないどころか、それに反する政府公式見解を述べなければならないからです。それだけ小泉総理が彼のポテンシャル(=自らの退陣後に独自路線を打出す可能性が高い)を恐れているということかと思います。。

    第三次小泉改造内閣発足(2005/11/1付)

    突然の安倍総理の辞職ではありますが、先の参議院選挙での大敗を含め、大枠としてはこの「取り込んだ」ことに源を発しているとwebmasterは思います。引用における官房長官就任がその後の事実上の禅譲につながりましたが、これにより安倍総理は小泉前総理の後継者としての立場をとらざるを得ず、仮にその認識に反するような振る舞いがあれば、後継者のくせに、と反発を招いて支持が離れていく構造になってしまったわけです。禅譲政権であるため、非小泉路線をとればすなわち反小泉路線だということになってしまうのがつらいところで、後継者だとみなされていなければ、明確に反小泉路線でない限り、非小泉路線であっても許容されたことでしょう。

    実際、先の参議院選挙の敗因について、伝統的自民党支持基盤の離反といった話がよく取り上げられているものの、実態としては、

     確かに今回の選挙では、05年の郵政選挙で小泉自民党を支持した都市無党派層票の大半が民主党に流れた。そのことは、首都圏、愛知、大阪などの3・5人区で自民党が辛うじて一議席を死守しているのに対し、民主党は軒並み複数議席を獲得していることを見ても明らかだ。

     しかし、地方・農村票などの自民党の伝統的支持層が、小泉構造改革の影響で自民党から離反したとの説明に対して森氏は、自民党の支持基盤の崩壊は既に小渕・森政権時代から継続的に起きている現象であり、小泉政権の5年間は首相の個人人気によってそれが覆い隠されていたが、今回それが改めて表面化したに過ぎないと説明する。

     実際、今回の選挙で自民党の絶対得票率(有権者数に対する得票数の割合)は、獲得議席が49だった04年の参院選の19.21%と比べても1.4ポイントしか下がっていない。伝統的自民支持層に長期減少傾向があることは否定できないが、特に今回の選挙でそれが一気に加速したとの事実は、データを見る限りはうかがえない。

    データから見えてくる「やっぱり自民党は終わっていた」

    とのことですし、これは「自民党をぶっ壊す」という小泉前総理が橋本元総理を総裁選において破った機運が地方から生まれたこととも整合的です‐伝統的自民党支持基盤が掌を返しただけで今般の大敗をもたらせるほどに強固であるなら、そもそも「自民党をぶっ壊す」なんていうような者を総裁にしたいとは思わないでしょうから。衆議院総選挙における「一区現象」といわれる、各地での人口集中地域における従来型自民党への反感は、農村票を補って余りあるほど構造改革への支持をもたらすものなのでしょう。

    この「小泉純一郎の呪い」、すなわち安倍総理が構造改革路線から外れるようなことがあれば支持率の低下を招くので構造改革路線を維持せざるを得ないことは、しかしながら安倍総理の思いもよらぬ振る舞いにより、おそらくは小泉前総理の意図を遙かに超えた強力な効果をもたらしたように思われます。「思いもよらぬ振る舞い」とは、小泉路線の後継者であったからこその高い支持率を、自力で勝ち得た自分の路線(憲法改正その他)への支持だと安倍総理が勘違いしてしまったことです。

    先の参議院選挙後、大敗を承けてもなお、安倍総理は自分の路線は支持されていると語りました。年金問題や政治資金スキャンダルなどによる大敗だとすれば、確かに本来の路線は支持されているのに、という状況は想定できないわけではありません。報道によれば、投票直前であっても、官邸においては40議席台前半は確保できるとの票読みがなされていたとのこと、これも自分への支持を確信するがゆえのバイアスではないかと。

    そのような誤解をもたらしたのは、政権発足直後にちやほやされたことを真の実力だと考えてしまったことでありましょうし、「美しい国へ」がベストセラーになったことを自らの路線への支持の高まりだと考えてしまったことでもありましょう。誤解なく、高い支持率は小泉後継であるがゆえの上げ底であると認識していたならば、造反組復党騒動の際の支持率低下に直面して路線の修正を図ったところ、認識せずに就任時の路線を追求してしまったために支持率の低下に歯止めがかからず、ついには選挙の敗北・退陣にまでいたってしまったわけです。

    なぜこのタイミングで辞職を表明したのかについては、あくまで勝手な憶測ですが、こうした実態に安倍総理が最近になってようやく気づいたということでしょう。きっかけがどのようなものかはわかりませんが、自分の路線が支持されたわけではなかったとようやく悟ったことで、苦境を耐え抜くだけの根気がなくなってしまったということではないかと。そうした根気を養う試練を経ずに総理になってしまったというのも、思わぬ「呪い」の副産物ではありましょうが。

    さてこの「呪い」、安倍総理だけではなく、日本の政界の隅々にまで及んでいます。となれば、安倍総理以外にも囚われる人間が出てくるはずで、その候補は後継総理と小沢代表ということとなります。改めて小泉路線の支持構造を俯瞰すれば、

    • 「勝ち組」には資源配分・所得再分配機能の抑制による財源負担の軽減という実利を与え、
    • 「負け組」には「構造」の破壊による鬱憤晴らしと、そうした破壊にはあなたの助力が必要だとの自己実現を与え、

    双方から支持を集めていました。ここで格差だの地方だのを持ち出して資源配分・所得再分配機能の復権を図ろうものなら、財源負担を嫌う「勝ち組」に見放されるのみならず、そこそこの規模では「負け組」に生活改善を実感させるようなことはできない一方で鬱憤晴らし・自己実現を取り上げてしまうこととなり、「負け組」にすら見放されてしまうことになってしまいます。先の選挙結果は民主党の農業政策が評価を受けたから、なんてことを思っているとすれば危ないことです。

    ヴェネズエラのチャベス大統領やタイのタクシン前首相のように行き着くところまで行ってしまい、「負け組」に実利を行き渡らせる路線にまで舵を切るというのであれば、話は変わってきますが・・・。

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    8 Responses to “安倍総理辞職表明と小泉純一郎の呪い”

    1. PK Says:

      小泉の呪いというより、小泉のパラドックスですね。
      それは、森派という想像以上に古臭い、朝鮮や満州を引きずった戦前右翼派閥が、小泉の訪朝を試みたが、拉致問題と言う想定外の展開によって、派閥の意思に全く反する状況を担わされた。それが、田中派の泥臭いアジア臭から自由な、健全なナショナリズムに映ったということです。
      そして、安部は森派の嫡子として意思どおりに政治を行った。ところが、それが思いのほか古臭くて朝鮮臭を放っていた為に、反中反韓反朝の若い世代から総スカンを食らったと言うことですね。
      森派が、ここまで古臭いとは驚きだ。

    2. 偏差値30の男 Says:

      こめんと欄になんかすごい電波を感じました

      小泉が創りだした勝ち組、負け組という構造ができあがる以前にもなんらかの構造はあったわけで、意外と簡単に変わったりしてね。今が永遠と続くように感じるようではまだまだ修行が(ry

    3. なぜこの鯖は午前・昼にこんなに重いのか? Says:

      負け組の負け具合・生活苦って、もう観念的な「自己実現」でどうにかなるようなものでは無いと思いますが・・・

    4. no-name Says:

      久々にこのサイトを見ることができました。
      政変が起きるたびに今後も鯖落ちしそうですね。

      http://bewaad.com/2007/03/09/18/
      > 避難所をはてなダイアリーに作ろうかと考えはしたんですよ

      そろそろ本当に避難所だけでもお作りになりませんか?
      https://www.hatena.ne.jp/register
      まだid:bewaadは人に取得されてはいないようですので。

      本エントリと関係なくてすみません。

    5. adhoc Says:

      なんぼなんでも、ヴェネズエラやタイのようになりたくはありません。そこそこでバランス取って欲しいですよ。

      負け組の鬱憤晴らしに訴えるというのはその通りですね。衣食足りると逆に左傾化しますから、生活するだけでいっぱいいっぱいにして、余計なことを考えさせないのが、統治の要諦でしょう。

    6. webmaster Says:

      >偏差値30の男さん
      デフレ脱却がなされれば、そうした構造は変わってくると思うのですが、何分いつデフレ脱却がなされるのやら、という状態でして・・・。

      >なぜこの鯖は午前・昼にこんなに重いのか?さん
      自己実現とは、てーこーせーりょくを小泉さんが成敗できたのはぼくたちが彼を支えたからだ、という自己認識を指しています。

      鯖が重いのはメモリ不足が原因でして、したがってcacheをかませるなどの対応策もとれず、専鯖移転(現在はVPS鯖です)かblogポータル移転か、そういったことでないと解消しないようで悩んでます・・・。

      >no-nameさん
      やっぱり抜本対応を考えなければならないかもしれません。でもはてダですと、これまで苦楽をともにした(笑)独自ドメインと別れるのがつらいなぁ、という感傷が・・・。一時的な避難所であればともかく、恒久的に引っ越すとなると、なかなかふんぎりがつかないのです。

      >adhocさん
      食うに困ると、右か左かはさておき暴発の温床となってしまうでしょうから、それなりに食わせることで保守化させるのが統治の要諦ではないでしょうか。左傾化するほどの食える状態とは、かなり豊かなものだと思うのですが。

    7. yy Says:

      >bewaadさん

      小泉路線の支持構造についてですが、上述されたような勝ち組・負け組に入らない勢力が結構大きくはありませんか?
      特に、負け組については、もしいわゆるフリーターやニートといった階層を想定しているのであれば、増えたと言っても合わせて300万程度、それほど大きな勢力ではありません。
      (厚生労働省定義の方を用いればですが)

      それよりも、とりあえず定職についてそれなりに生活できてはいるけれど、将来に不安を感じているという人々の方が、数的にはずっと大きいのではないかという気がします。
      そういった、現在の状況に不安や閉塞感を感じている人々が、小泉氏が構造改革で現状を打破してくれることに期待して支持を寄せた、という面が大きいのではないでしょうか。

      ですから、今の状況についての認識も異なります。構造改革によっても状況が改善されない状態が続けば、構造改革に対する支持も徐々に低下します。少なくとも、地方や準負け組の低所得サラリーマン層は、構造改革を支持していないのではないでしょうか。私は、今回の参院選の敗北には、そういった要素も少なからずあるのではないかと感じています。

      安倍総理が小泉氏の後継になったがための失敗、という点には同意ですが、今後も小泉流でないと支持が得られない、という点には上記のような理由から疑問です。
      鬱憤晴らしや気分だけの自己実現で、実利を与えてくれない政権が、いつまでも支持されることはないでしょう。(この点では勝ち組には支持する理由がありますが)
      特に地方の人々は、構造改革が自分たちに何の利益ももたらさないということを感じつつあるのではないですか。
      であれば、今後小泉政権の模倣のようなことをしても、以前のような支持は得られないように思うのですが。

    8. webmaster Says:

      >yyさん
      たとえば夕張においても、これまでの市政が悪かったとの責任追及がもっぱらですから、やっぱりまだ改革されざる構造の問題だとの理解が多いのではないかと思います。もちろん、次第に減ってきているとは思うのですが。

      あわせて、本日(9/16)のエントリをご覧いただければ幸いです。

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