今日から郵政民営化ですが・・・
自民党の公約のとおりに、社会保障の充実や景気回復、地方経済の立て直しや戦略的外交の推進等につながるといいですね。
さて、t9930211さん、kei-zuさんのご紹介ですが、郵政民営化に関連して(霞が関の住人としては)気になる報道がありました。
10月1日施行の郵政民営化関連法を巡り、幹部の再就職を巡る条文に法制上のミスがあることが分かった。公務員の天下り規制に準じて再就職の承認権を「人事院」と規定しているが、先に成立した改正国家公務員法で承認権は来年10月にも「内閣」に移る。こうしたミスは「極めて珍しいケース」(関係者)で、法整備が急ごしらえだった実態がうかがえる。
何が気になるかといえば、webmasterが調べた限りでは、この問題は郵政民営化関連法ではなく国家公務員法改正の側のミスで生じたものだということです。本当のところはどうなのでしょうか・・・。
どのようなミスか、webmasterの考えを具体的に説明します。まず、郵政民営化関連法での関連規定を見ると、次のようになっています。
(国家公務員法の一部改正)
第12条 国家公務員法(昭和22年法律第120号)の一部を次のように改正する。
(略)
第103条第2項及び第9項中「、特定独立行政法人又は日本郵政公社」を「又は特定独立行政法人」に改める。(略)
附 則
(略)
(国家公務員法の一部改正に伴う経過措置)
第59条 (略)
2 施行日の前日から起算して7年を経過する日までの間における旧公社の職員であった者に関する新法第103条第2項の規定の適用については、同項中「又は特定独立行政法人」とあるのは、「、特定独立行政法人又は郵政民営化法(平成17年法律第97号)第166条第1項の規定による解散前の日本郵政公社」とする。
3 施行日の前日から起算して7年を経過する日の属する年までに人事院がした新法第103条第3項の承認の処分(同条第1項の規定に係るものを除く。)に関する同条第9項の規定の適用については、同項中「又は特定独立行政法人」とあるのは、「、特定独立行政法人又は郵政民営化法(平成17年法律第97号)第166条第1項の規定による解散前の日本郵政公社」とする。
郵政民営化法等の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律(平成17年法律第102号)
現行の国家公務員法がこれらによってどのように変わるのかは次に示すとおりです(国家公務員法の規定は正しくは項番号を持ちませんが、見やすさのため付記してあります。以下同じです)。
(私企業からの隔離)
第103条 (略)
2 職員は、離職後2年間は、営利企業の地位で、その離職前5年間に在職していた人事院規則で定める国の機関
、又は特定独立行政法人又は日本郵政公社と密接な関係にあるものに就くことを承諾し又は就いてはならない。3 前2項の規定は、人事院規則の定めるところにより、所轄庁の長の申出により人事院の承認を得た場合には、これを適用しない。
4〜8 (略)
9 人事院は、毎年、遅滞なく、国会及び内閣に対し、前年において人事院がした第3項の承認の処分(第1項の規定に係るものを除く。)に関し、各承認の処分ごとに、承認に係る者が離職前5年間に在職していた第2項の人事院規則で定める国の機関
、又は特定独立行政法人又は日本郵政公社における官職、承認に係る営利企業の地位、承認をした理由その他必要な事項を報告しなければならない。
国家公務員法(昭和22年法律第120号)
これらの規定は、
第103条第2項-
退職後2年間の天下り禁止 同条第3項-
退職後2年以内の天下りの特例(人事院承認による禁止の適用除外) 同条第9項-
退職後2年以内の天下りに係る人事院承認の報告義務
を定めたものです。現在の条文は郵政公社職員を対象としていますが、これらの改正により、国家公務員相当として扱われていた公社職員について、民営化に伴いその扱いが変わり天下り規制の対象外になるということです(すなわち、自由に天下り可能となります)。しかし、郵政民営化法等の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律(以下「郵政民営化整備法」といいます)附則第59条の規定により、法施行日より7年間は引き続き天下り規制の対象とします、ということとなっています。
さて、引用した記事中の「先に成立した改正国家公務員法」ですが、具体的にどのような改正だったのかは次のとおりです。
(国家公務員法の一部改正)
第1条 国家公務員法(昭和22年法律第120号)の一部を次のように改正する。
(略)
> 第百三条第三項中「前二項」を「前項」に改め、同条第七項中「、前項」を「前項」に、「場合に」を「場合について」に、「、第五項」を「第四項」に、「これを」を「それぞれ」に改め、同条第八項中「第六項」を「第五項」に改め、同条第二項及び第九項を削る。
(略)(略)
附 則
(略)
(郵政民営化法等の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律の一部改正)
第37条 郵政民営化法等の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律(平成17年法律第102号)の一部を次のように改正する。
附則第59条第2項及び第3項を削る。
(略)
国家公務員法等の一部を改正する法律(平成19年法律第108号)
ここでの改正を国家公務員法第103条に反映させると次のようになります。
(私企業からの隔離)
第103条 (略)
2 職員は、離職後2年間は、営利企業の地位で、その離職前5年間に在職していた人事院規則で定める国の機関又は特定独立行政法人と密接な関係にあるものに就くことを承諾し又は就いてはならない。
32 前2項の規定は、人事院規則の定めるところにより、所轄庁の長の申出により人事院の承認を得た場合には、これを適用しない。
43〜87 (略)
9 人事院は、毎年、遅滞なく、国会及び内閣に対し、前年において人事院がした第3項の承認の処分(第1項の規定に係るものを除く。)に関し、各承認の処分ごとに、承認に係る者が離職前5年間に在職していた第2項の人事院規則で定める国の機関又は特定独立行政法人における官職、承認に係る営利企業の地位、承認をした理由その他必要な事項を報告しなければならない。
国家公務員法(昭和22年法律第120号)
ご覧のとおり郵政民営化整備法附則第59条で参照している国家公務員法第103条第2項・第9項がなくなってしまう(形式的には第2項は存在しますが、郵政民営化整備法で適用対象としている条文ではありません)改正が行われており、このままでは郵政民営化整備法の参照規定が誤りとなってしまいます。そこでその改正を行った国家公務員法等の一部を改正する法律(以下、平成19年改正法といいます)においては、その附則第37条において郵政民営化整備法附則第59条第2項・第3項を削除し、そうした誤りを防いでいるわけです。
ここまでのところで大方の読者には想像がついたと思いますが、郵政民営化整備法の世界では、同法附則第59条第2項できちんと天下り規制が担保されていたわけです。それを後から削除する法律=平成19年改正法こそが、なくなる規制の代わりとなる新たな規制を課すか、それとも削除しっぱなし=新たな規制は課さないかのいずれかを決する役目を負うのです。
平成19年改正法は、郵政民営化整備法の天下り規制を削除するのみで、新たな規制を課しませんでした。冒頭の報道が正しければ、それは政策判断として自由としたのではなく、単純なミスということでしょう。本来、平成19年改正法により国家公務員法に設けられた新たな天下り規制(いわゆる人材バンク。改正国家公務員法の第106条の2以下)か、その立ち上げまでに課される経過的な規制(平成19年改正法附則第4条以下)のいずれかを、民営化された郵政公社の役職員に課すべきだったところ、それを課さなかったのは、郵政民営化整備法の問題ではなく、平成19年改正法の問題なのです‐「法整備が急ごしらえだった実態」があるとすれば、それは郵政民営化ではなく公務員制度改革の実態だったのです。
この記事で問題とされる条文は、次のとおりです。
第39条 (略)
2 旧公社法第52条第4項及び第70条(第2号に係る部分に限る。)の規定は、施行日から起算して2年を経過する日までの間は、なおその効力を有する。この場合において、同項ただし書中「任命権者」とあるのは、「総務大臣」とする。
郵政民営化法等の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律(平成17年法律第102号)附則
ここで参照される旧公社法=日本郵政公社法第52条第4項は次のとおりです。
(役員の服務)
第52条 (略)
2・3 (略)
4 役員(非常勤の者を除く。)は、離職後2年間は、商業、工業又は金融業その他営利を目的とする私企業(第70条第2号において「営利企業」という。)の地位で、公社又はその離職前5年間に在職していた人事院規則で定める国の機関若しくは独立行政法人通則法 (平成11年法律第103号)第2条第2項に規定する特定独立行政法人と密接な関係にあるものに就くことを承諾し、又は就いてはならない。ただし、人事院規則の定めるところにより、任命権者の申出により人事院の承認を得た場合は、この限りでない。
日本郵政公社法(平成14年法律第97号)
この条文を、次の条文と比べてみてください。
(私企業からの隔離)
第103条 (略)
2 職員は、離職後2年間は、営利企業の地位で、その離職前5年間に在職していた人事院規則で定める国の機関、特定独立行政法人又は日本郵政公社と密接な関係にあるものに就くことを承諾し又は就いてはならない。
3 前2項の規定は、人事院規則の定めるところにより、所轄庁の長の申出により人事院の承認を得た場合には、これを適用しない。
4〜9 (略)
国家公務員法(昭和22年法律第120号)
国家公務員法第103条はいわゆる天下り規制ですが、日本郵政公社法第52条第4項はそれと同じ内容を定めるものです。現在、日本郵政公社法は、国家公務員と同様の天下り規制を公社の役員に及ぼしてます。郵政民営化法等の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律は、平成17年における両者のそうした関係を前提として、平成17年における公社役員への天下り規制を民営化後も維持する(日本郵政公社法は郵政民営化に伴い廃止されるので、経過措置を講じないと規制撤廃となってしまいます)旨を定めているわけです。
さて、平成19年になって天下り規制を抜本的に見直す国家公務員法等の一部を改正する法律が成立したわけですが、そこにおいては郵政民営化法等の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律附則第39条について何ら手当てがなされておらず、廃止される国家公務員法の天下り規制を下敷きにした日本郵政公社法の天下り規制が、そのまま適用される状態になっています。
この状態にどう対応すればよいかといえば、
- このままにしておく(日本郵政公社役員に限り、引き続き人事院が天下り規制の主体となる)。
- 郵政民営化法等の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律附則第39条を削除する(日本郵政公社役員は自由に天下りできるようになる)。
- 郵政民営化法等の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律附則第39条を改正し、改正国家公務員法並びの天下り規制を課す。
のいずれかとなります。素直に考えれば1.ということになるのでしょうけれども、報道が正しいのであれば、気がつけば3.にすべきところを気がつかずに1.になってしまったということで、その意味では紛れもなくチョンボ(法改正におけるミスを指す霞が関のジャーゴン)です。
しかし、このチョンボは何に属するのかといえば、報道のように郵政民営化関連法(=郵政民営化法等の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律)にではなく、国家公務員法改正法にです。改正国家公務員法が制定されたからこそのおかしな状態なのであって、であるならば改正国家公務員法制定時に手当てすべきなのはご理解いただけるのではないでしょうか。郵政民営化関連法と当時の国家公務員法・日本郵政公社法との間には、何らおかしなことは存在しなかったのですから。
#以上、raさんのコメントを踏まえ改稿しました。(10/9追記)
#難しいことを言わずとも、平成17年に成立した法律が平成19年の制度改正を見通した措置を講じられるはずもなく、したがって平成17年におけるミスであるはずもないのですが。





10月 1st, 2007 at 19:20:26
>平成19年改正法は、郵政民営化整備法の天下り規制を削除するのみで、新たな規制を課しませんでした。冒頭の報道が正しければ、それは政策判断として自由としたのではなく、単純なミスということでしょう。
政策判断の結果だったら、どうなるのかな?
10月 2nd, 2007 at 1:33:01
t9930211さんが書いているとおり、役員についての条文とのことですので、郵政民営化法等の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律附則第39条第2項について手当していないことを言っているのでしょう。職員については手当てして、役員については手当てしないというのは、普通は政策判断ですが、記者さんには理解できなかったのでしょう。
第三十九条 (略)
2 旧公社法第五十二条第四項及び第七十条(第二号に係る部分に限る。)の規定は、施行日から起算して二年を経過する日までの間は、なおその効力を有する。この場合において、同項ただし書中「任命権者」とあるのは、「総務大臣」とする。
10月 2nd, 2007 at 23:16:47
政策判断かどうか、bewaadさんは中央省庁の役人なのだから、簡単に確認できるでしょう。
確認した結果くらいは、教えてください。
10月 3rd, 2007 at 0:06:56
>ダニアンさん
政策的に認めたのであれば、冒頭引用のような記事のトーンにはならないのではないでしょうか。
>raさん
ご指摘ありがとうございました。おっしゃるとおりです。
>通行人さん
当サイトでは基本的にインサイダー情報は取り扱わない方針で運営しておりますので、その旨ご理解いただければ幸いです。
10月 3rd, 2007 at 6:01:21
>自民党の公約のとおりに、社会保障の充実や景気回復、地方経済の立て直しや戦略的外交の推進等につながるといいですね。>
ワラタ。
10月 9th, 2007 at 4:21:42
>韓リフさん
黒歴史になってしまっているようなので、掘り起こさねばと思いまして(笑)。